本物を求める青年と救いたい少女   作:ばやす

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第3話

 

奏の家に居候してから早3日。最近、奏が夜にボイスチャットをしながら曲を作るようになった。グループ名は「25時、ナイトコードで」と言うらしい。

 

メンバーは4人で全員コードネーム。奏がKで、あとはそれぞれ、雪、えななん、amiaと言うらしい。

 

担当は奏が作曲、雪が作詞、えななんがサムネイル、amiaが動画、と言った感じらしい。

 

まぁ、俺が関わることは無いだろうし特に気にしなくてもいいだろう。

 

ここ最近の俺の生活としては、奏のご飯を作ったり、掃除したり、洗濯したり、株で稼いだりといった感じだ。

 

買い物は奏が大量に買ってあった缶詰やカップ麺をアレンジしたり、家事代行サービスの人が置いていった食材を使っているので、俺の服を買いに行った一回きりだ。でも、そろそろ行かないと冷蔵庫が空になってしまうので、面倒くさいが、今日行くことに決めた。

 

「奏、ちょっと買い物に行ってくる。」

 

わかったという返事を聞いて、出かける準備をする。ちょうど準備を終えたところで、家のチャイムが鳴った。宅配便だと思って、宵崎と書かれたハンコを持って玄関を開けた。

 

しかし、そこに立っていたのは、宅配便の人ではなく、買い物袋を抱えた一人の少女だった。

 

「あ、あれ?ここ、宵崎さんのお宅ですよね?」

 

戸惑い気味に聞いてくる。そりゃそうだ。一人暮らしの知り合いであろう人の家から、知らない男が出てきたのだ。

 

「ああ、悪いな。俺は宵崎の家に居候させてもらってる、八幡だ。」

 

そう言うと、少女は納得したような表情をする。

 

「ああ、そうだった!昨日から連絡貰ってたんですよ。居候の人が来たから家事は大丈夫だけど、アップルパイは食べたいとの事なのでお邪魔したんです。あっ、私は望月穂波と言います。」

 

なるほど、それで買い物袋には大量のリンゴが入っているのか。そして、聡い娘なのか、俺が苗字を言わなくてもスルーしてくれた。

 

「おお、そうか。なら、奏から許可貰ってるよな。入ってくれ。」

 

お邪魔しますといってぺこりと頭を下げ、家に入る。キョロキョロと家を見渡して、その他の家事の必要が無いことを確認して、キッチンに向かう。

 

「奏、望月さんが来てくれたぞ。」

 

「うん、今行く。」

 

そう言って奏が部屋から出てくる。奏はアップルパイが好物なのか?しかし、それだったら拾ってもらった日の買い物袋にアップルパイの1つぐらいは入っているものだろう。よくわからんな。

 

そんなことを考えながら待っていると、キッチンからいい匂いがしてきた。…そういや、今まで焼きたてのパイって食べたこと無かったな。作ったこともなかったし。

 

「さ、出来ましたよ〜。」

 

望月さんの言葉と共に、アップルパイがリビングの机に置かれる。はっきり言って、圧巻だった。食レポなんてしたことがないので、気の利いた事は言えないが、すごく美味かった。これが食べられるのなら、他のアップルパイを食べようとは思わなくなるな…。

 

あっという間に食べ終わってしまったので食器をシンクに運ぶ。

 

食後に紅茶を3人分入れて二人がくつろいでいるリビングに運んだ。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「八幡はこう見えて結構気が利くからね。」

 

おい奏、こう見えてってなんだよ。俺なんて気づかいができすぎて誰にも話しかけないまであるぞ。

 

家でのんびりと茶を飲んでいる時間がこんなにも有意義だとは知らなかった。前の家では息つく暇もなくパシられたり勝手に休日に予定を入れられたりしたからな…。

 

しかし、望月さん、何か悩みでもあるのだろうか。今まで悪意に晒され続けてきたおかげで、人を見る目には多少自信がある。今の望月さんは何か悩みを抱えていそうな気がした。しかし所詮は他人。聞いたからと言って助けられる訳でもないし、そもそも他人に悩みを相談なんてしたくないだろう。そう結論づけて、静かなリビングでゆっくりとくつろぐ。

 

このままのんびりしていたいところだったが、望月さんが来る前に買い物に行こうとしていたことを思い出した。

 

「奏、忘れてたけど今から買い物行くから。」

 

奏はわかったと返す。

 

「あ、私もそろそろお暇しますね。」

 

望月さんももう帰るらしい。

 

「ああ、アップルパイごちそうさん。うまかったわ。」

 

「うん、また作りに来てね。」

 

望月さんは了解です~と緩く返事をしてから帰っていった。

 

「それじゃあ、俺も行ってくる。」

 

奏のいってらっしゃいを聞いてから家をでる。街で総武校生に出くわさないかと考えたが今は平日の二時なので、さぼりの奴でもいない限り出くわすことはないだろう。しかもここは東京だし。

 

そう考えながら街を歩く。制服を着ていないし、腐った目のおかげで見た目の年齢はかなり上がっているので、周りからチラチラ見られるようなことはなかった。というよりも、俺と目を合わせたくないというのが正解だろうか。

 

特に問題なく買い物を進めていく。セール中らしく、卵と野菜は他の主婦の方々と取り合いになったがここでも俺の目が役に立ち割とすんなりゲットできた。

 

買い物を終えてスーパーを出る。思った以上に多く買ってしまって、かなり荷物がかさばっている。自転車を買うか、それとも18歳まで待ってバイクの免許でも取るかどうかで悩んでいると、聞きたくない声が聞こえた。

 

「ひゃっはろ〜、比企谷君!」

 

魔王の降臨である。

 

「…どうしたんですか、雪ノ下さん。あと、俺はもう比企谷じゃ無いですよ。」

 

「今から少し時間あるかな?」

 

はっきり言って行きたくない。さっさと帰りたいし、ましてや魔王の相手なんてゴメンだ。

 

「すみません、今日はあれがアレなので無理です。」

 

「ゴメンね、ほんとに時間は取らせないから。」

 

いつもの軽薄な態度はどこにも無く、目の前には普段の魔王ではなく、雪ノ下家の長女が立っている。これではどうも断りにくい。

 

「…分かりました。この辺り、あまり詳しくないんで、どこか話せるところに案内して貰えますか?」

 

「うん、近くの喫茶店に行こうか。」

 

そう言って歩き出す雪ノ下さんの後ろに着いて歩く。

 

修学旅行の件を雪ノ下から聞いたのだろうか。しかし、雪ノ下のことを信じたのなら、喫茶店では無く俺を路地裏にでも突っ込んで投げ飛ばした事だろう。

 

しかしそうはせず、俺との会話を要求してきた。恐らく半信半疑なのであろう。雪ノ下さんはシスコンだが馬鹿ではない。恐らく雪ノ下の話に疑問を抱いたのだろう。俺をからかうのはやめて欲しいが、人の意見に流されず、自分で見たこと聞いたことを信じるという所はありがたいと思う。

 

どちらにせよ、少なくとも俺が話をするまでは潰されることは無いだろう。

 

そう結論づけて、いつの間にか着いていた喫茶店に足を踏み入れた。

 




追記:pixivの方で取ったアンケートの結果発表です。

1.セカイの狭間に入れる 8票

2.誰もいないセカイに入れる 12票

3.セカイにいれない 2票

ということで、八幡君は誰もいないセカイに入れることになりました!セカイが出てくるのはもう少し先ですが楽しみにしていて下さると幸いです!

ヒロイン別でルート分けた方がいい?

  • 分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
  • 分けるな。1本でいけ。
  • その他。この質問にその他ってある?
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