俺は今、現実では見たことの無い、周りに転がっているものから空までが、真っ白で、ただ虚無が広がっているだけの場所にいた。
「どこだ?ここ。」
「ここは、セカイだよ。」
先程見渡した時には誰もいなかったが、後ろから返事が帰ってきた。
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奏と腹を割って話した次の日、晴れて俺もニーゴのメンバーに伴奏担当として入ることが出来た。基本的にみんなが作業してる最中は練習で、音を合わせて欲しいと頼まれた時に伴奏を入れるという形だ。雪、えななん、amiaも快く迎え入れてくれてほっとしている。ちなみにナイトコードではアハトと名乗っている。意味としてはドイツ語の八だ。
「アハト、ここのリズムを確かめたいからドラム叩いてくれる?」
了解だと返して楽譜に合わせてドラムを叩く。叩き終わると少し違うかな、と言ってまた作業に戻る。
『ところでさ、アハトって結構ドラム上手いけどいつから始めたの?』
「あん?昨日からだが…。」
そう返すと奏以外の素っ頓狂な声が聞こえて、顔を見なくても酷く驚いている様子が伺えた。
『嘘でしょ!?普通楽器って年単位でかかると思ってたんだけど!』
と言うえななんの声がスピーカー越しに聞こえた。
「まぁ、素晴らしい師匠がついてくれてたからな。俺自身の才能じゃねぇよ。」
コンマ一秒だけ会話が止まる。普通なら違和感を覚えることもないだろうが、俺にはどこか引っかかった。
「そっか。でもいくらすごい師匠がついてたって、才能がなきゃ一日でマスターはさすがに無理だよ。」
と雪も言う。
「まぁ、確かにな。そんな才能をいち早く見つけられた俺はラッキーだったって事だな。」
と返す。
そもそも俺は誰しもがどんな才能でも持っていると思っている。ただそれが安易に見つけられるか、いつまで経っても見つけられないかの差だと思っている。
「それじゃあ、私は明日学校だから落ちるね。」
「そうか、この中で全日制に毎日通ってるのって雪だけだもんな。」
ニーゴのメンバーは俺以外全員高校生だが、奏は通信制、えななんは夜間定時制、amiaは不登校ぎみということで、雪だけいつも早めに寝るようになっている。
「うん、それじゃあみんな、おやすみ。」
そう言ってナイトコードからログアウトした。
「それじゃ、俺も眠いからそろそろ寝るわ。」
おやすみという声を聞き届けてからスマホのナイトコードを切る。そしてホーム画面を見ると、見覚えのないアプリが一つだけあった。
「untitled?」
入れた覚えもなかったので消そうとすると、次の瞬間、勝手にそのアプリが起動された。
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「セカイ?」
「うん、ここは、あの娘の想いで出来たセカイ。」
想いで出来たセカイ?あの娘?まだ分からないことが多すぎる。
「まず、お前は誰だ?」
目の前の白髪ツインテールでオッドアイの少女に問う。
「私は、ミク。あの娘の想いから生まれた存在。」
想い、ね。どうやらこのワードがかなり重要になってくるらしい。想いとはおそらく、こうなりたいという心の表れだと推測する。
つまり、
「このセカイの持ち主は、このセカイのように真っ白に…、つまり、消えてなくなりたい、ってことか?」
ミクは抑揚もなくそうだと答える。
「それで?なんで俺をここに呼んだんだ?」
「八幡にしか、あの娘を救えないの。だから、救ってあげて欲しい。時間がなくなる前に。」
ここでも「救う」という単語が出てくるのか。
「手の届く範囲で救える人は救うと決めたんだ。俺に出来るなら、俺にしか出来ないと言うのなら、やってやる。だけどその前に聞きたい。これだけは聞いとかないといけない。」
「ミクの言う、あの娘って誰だ?」
「八幡たちが呼ぶ、雪。朝比奈まふゆ、だよ。」
そうか。だから彼女の作る歌詞は、どこまでも歪で、後ろ向きで。だけど自分の芯が通っていて、美しかったのか。
売れたいという歌詞では無い。相手に届けたいと言う歌詞でもない。ただ、自分の想いを乗せた歌詞。だからこそ、そう思えたのだろうか。
「…まだ実際にあった訳では無いし、雪の事情も分からない。だから、必ず救うとは、悪いが言えない。だが、そう出来るように善処する。」
「ありがとう、八幡。」
その声を聞いた後、俺は自分の部屋に戻ってきていた。
救う、か。かつて俺は、救うことは傲慢だと言った。それが今や、その傲慢を自分が現実であったこともない相手に対して為そうとしている。本当、人ってどう変化するか分からないものだ。
そんなことを考えながら、短針が五を指したと同時に布団へと潜った。
ヒロイン別でルート分けた方がいい?
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分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
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分けるな。1本でいけ。
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その他。この質問にその他ってある?