真っ暗な空間の中で"私"は"あなた"をみていました。
あなたは上向きに倒れていて私はそれを見下ろす感じです。
あなたは身体を真っ二つにされていたが、この空間では生きているようでした。
「あなたは、良く、やってくれました。」
わたしはひとまず、あなたにねぎらいの言葉をかけました。
あなたには色々と恩がありますから。
あなたはわたしの言葉に対して反応してくれました。
素っ気無く返されましたが、今は許してあげます。わたしの言うことをしっかりと聴いて実行してくれたので。
「"あの人"があんなに強かったなんて、思ってもいませんでしたよ」
先の戦闘を振り返ってみても、あの人があそこまで強くなっていることにわたしは驚いていました。
だって、別の世界ではあんなに弱そうだったのに。
そう思っていたら、あなたはわたしが投げかけた感想を無視するかのようにそっぽを向いた。
よほど堪えたのだろうか、まぁ、あなたは負けず嫌いなところがあるから。
「本来あの人は、あんなに強くなかったんですよ?」
わたしはさっき思った感想を投げかけてみることにした。
するとあなたは思い当たる節があるのか、わたしの感想にうなずきを示してくれた。
その後もわたしはあなたに私の感想や思ったことを投げかけた。
そして、わたしの対応を終えたあなたは右手を動かしあなたの前に画面らしきものが現れました。
わたしはそれを見てニヤリと含み笑いをした。
ふふ、これでようやく、私の計画も終盤にはいった。
「ちょっと待って、"それ"をやる前に、一つだけわたしのお願いを聞いてくれませんか?」
あなたがその画面のとあるボタンを押す前に、わたしはあなたを呼び止めました。
今それをやられては困るのですよ。
あなたはボタンを押そうとする手を止め、不思議そうにわたしを見つめてきます。
わたしは溢れ出る喜びの感情を無理やり押さえつけ、一見普通を装います。この感情がバレてしまうわけにはいかないのです。
わたしはあなたにゆっくりと近づいていき、あなたに覆いかぶさるように組み伏せました。
そして驚いている隙きにあなたの右手を封じ動かせないようにします。
あなたは問いかけます。
『な、なんでこんな事をする?』と。
わたしはわたしの顔をあなたの顔に近づけます。あなたは封じられてない左腕を使ってわたしを遠ざけようと抵抗しますが、わたしはその左腕を右手で掴み固定します。
上半身と下半身を分けられてしまったあなたはもう抵抗できません。
「ウフフッ♡カワイイですね♡」
あなたはただただもがくことしかできません。
わたしはそんなあなたを見て、舌なめずりをします。
そして、あなたの耳元に顔を近づけて…
「わたしのお願いは。"あなた"が、欲しいんです」
あなたの耳元で囁いたわたしは、わたしが身にまとっている黒い靄(もや)をあなたに纏わりつかせ包むようにし、わたしの影をあなたに這わせます。
あなたは黒い靄に覆われてももがき続けます。
そして、これを起こした張本人を睨みつけます。
「フフッ、そんなにわたしを睨んでも辞めませんよ。それに、あなたはとても頑張りました。後は、わたしに、全て任せてください。わたしに全部、委ねてください」
あなたは彼女の言葉を聞き終わる前に、彼女の影に捉えられ、そのままなすすべもなく彼女の影の中に引きずり込まれてしまいました。
暗い暗い闇の中、あなたの意識が途絶える直前に聞こえたのは、彼女が嬉しそうに笑う声でした。
わたしの影の中に引きずり込んだあと、わたしは顔のニヤケが収まらなかった。わたしの身体がぽかぽかする。あの人を取り込んでから身体があたたかくなったようだ。
わたしは今、最高の気分だ。
今なら何でもできそうな気がする。
試しにわたしは先程相手が持っていた大鎌を想像した。
瞬間、両手にズッシリと確かな重みを持った物質が現れた。
それは先程わたしが想像したものであり、相手が使っていた大鎌がそこにあった。
わたしは歓喜した。
まだ、"私"の能力は健在なのだと。
次にあの人の能力を使おうと、なにもない空間で手首を使い右手で画面のスライドをするかのように振るった。
なんと、なにもない空間にゲームの画面のようなものがいきなり現れた。
その画面には【Continue?】と書いてあり、その文字の下の方には【 はい いいえ】という文字があった。
「フフッ、ようやく、あなたの力を手に入れることができました。感謝いたしますよ。ただ、あなたはここでゲームオーバーです。わたしの中で、あなたが望んだことの結末を、見ているといいでしょう。」
わたしは聞こえているかどうかも分からないあなたに対してそう独り言ちり、ゆっくりと右手を【はい】のところへ動かし、
「貴女の絶望した顔を、見せてくださいね。」
「ゆかりさん」
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"私"には、好きな人がいました。
その人は"普通の人"であり、ただの一般人でした。
そんな"あなた"を、私は好きになってしまいました。
どんなことがきっかけで好きになったのかなんて、覚えていないです。
ただ、あなたは色んな人に対して優しく、嘘がつけないお人好しで、勉強ができないバカで………
そして、"みんな"を救ってくれた人でした。
今でも覚えています。
私がやろうとしていたことは、"私達"を救うだけで他の人たちを切り捨てようとしていたということに。
それを、『間違っている』と、『他に方法がある』と教えてくれたのが、あなたでした。
あなたはいつも先を見ていて、絶対に選択を間違えず、あなたのする行動には全てに意味があるものでした。
でも、その認識が間違っていることを知ってしまいました。
すべての問題が解決し終え、平和な日々を送っていたときに、私はあなたに聞きました。
─どうしてあの時、あの選択をしたのか。
─あの攻撃に、なぜすぐに対応できたのか。
─なんでそんなに的確に問題を解決できるのか。
今まで疑問に思っていたことをあなたにぶつけました。
あなたは私から視線をそらし、困ったような顔をして………
『だいたいは、予測と直感。あとは、事前情報、かな』
そう言い終わると、あなたは右手で頭を掻きました。
あなたと出会ってから長い間隣にいることが多かったので、あなたのこの行動は、なにか隠し事をしているときによくしていた癖だと分かりました。
私はその後、お酒を使ってあなたを酔わせたり、友達を使って聞き出そうとしたが、何一つ成果はありませんでした。
しかし、私は諦めきれずあなたの部屋に何かあるかもという女の勘に任せ、あなたの部屋を捜索ししました。
部屋を漁っていると、一つの手帳を見つけたので、それを読んでみることにしました。
そして、その手帳を読んで、私は衝撃を受けました。
その手帳には、私が知りたがったあなたの秘密が書かれていましたが、その内容はあまりにひどいものでした。
一通り彼の手帳を見通した私は、あなたの能力について知ることになりました。
あなたの能力は【セーブ&ロード】というもので、詳しくは分からないけれど、時を遡る能力らしいです。
その能力を使って、未来に起こることを過去に戻って阻止していたようでした。
そしてその能力は残酷なものでした。
この手帳には、『何度も何度も繰り返した』と書かれています。
つまり、過去にあった出来事を繰り返した可能性があるでしょう。
そしてさらに、このことについて私の周りは誰も知らなかったことから、あなたは誰にも打ち明けず、一人孤独に幸せな未来を掴むために立ち向かっていたことでしょう。
何度失敗し、時間を巻き戻したのか、私にはわかりません。
ただ、このことを知る事ができたおかげで、私はあなたの支えになることができるでしょうし、あなたのイメージもガラッと変わりました。
私達の知らない本当のあなたは、『自分の信念を貫き通す』をやる人なのです。
それをやりきった今、あなたはもう休んでもいいのです。
あなたの体は大丈夫でも、あなたの心は疲れ切っていることでしょう。
なので、私が癒やしてあげます。
そして、あなたの心が癒やされて、また新しい未来を歩いていくと言うのであれば………
そのときは、二人で手を取り合って行きましょう。
私はそう決心し、平和になったこの場所で、満喫した日々をあなたと共に過ごしました。
しかし、
その平和な日々は、
あっけなく終わりを迎えました。
ある日、いつものように目が覚め、あなたを………もとい、"マスター"を起こそうと思い起き上がり、周りの様子に違和感を覚えました。
マスターの家の私の部屋と、今私がいる部屋が全く違っていたのです。
そして、寝間着のまま部屋の扉を恐る恐る開けると、見馴れない廊下がありました。
その廊下は床も壁も天井も、白色のペンキをぶちまけたような真っ白な空間で、ひどく懐かしいような気持ちになりました。
そっと扉を閉め、今居る部屋の探索をしようと周りを見渡しました。
そのとき、ふと嫌な記憶を思い出してしまいました。
………かつて、"私達"が実験として収容されていたことを。
それから私は日付と時間を確認し驚愕しました。
私の記憶が正しければ、この日は施設脱走を決行する日だったからです。
昔の記憶をたどり、部屋を漁って服を着替え、すぐに私の親友、マキさんがいるであろう部屋へ向かいました。
幸い、私の部屋であろう場所とマキさんのいる部屋はかなり近いので、廊下のセンサーに引っかかることなく移動することができました。
コンコンと軽くノックし、合言葉を言うと、扉の向こうから「入って」と一言だけ告げられました。
その言葉を聞いた私は、ドアノブをガチャリと回しマキさんの部屋へと入っていきました。
「どうしたの〜?ゆかりん。まだ時間早いよ〜?」
扉を開けた先で、金髪の少女が私を出迎えてくれました。
その少女の名は、弦巻マキ。
私がここに収容されてから、初めてできた親友です。
「お邪魔しますね。その、少し確認したいことがあって」
「OK、玄関で立ち話もなんだし、あがってよ。時間もまだあるからさ」
私の話が長くなると思ったのか、若しくは奴らに聞かれるとマズい話をすると察したのか、マキさんは私を部屋にあげてくれました。
「ほら、ゆかりん座ってよ。まぁ、言うだけタダなんだからさ」
マキさんとテーブルを挟み、向かい合うようにして座った私は、マキさんに促されるまま話を切り出しました。
私はマキさんに未来を見たこと、若しくは過去に戻ったことがあるか、またそれに近いことを知っているかどうかを聞いてみました。
が、どの内容もわからないようでした。
それもそのはずです。私だって逆の立場ならわからないと答えるはずですから。
「ごめんなさい。いきなりこんなこと言われても迷惑でしたよね」
「そんなことないよ、ゆかりん。こっちこそ、力になれなくてごめんね?」
やっぱり、今も前も変わらず、マキさんは優しいです。
あなたの親友で、よかった。
そのあとは、作戦遂行時間まで他愛もない話をして楽しみました。
私がこの時間軸にくるまでの間に起こった出来事を主な話題とし、一方的に私が話すようになってしまいましたが、マキさんの表情がコロコロ変わっていくのが面白くてなかなかやめられませんでした。
今思えばあのときのマキさんは、未来の私達がまさかああなっているとは、と思ったのでしょう。
そして、雑談も良いところで終わり、時間もいい感じになっていました。
私はマキさんと雑談をしているときに、私が過去に戻ってきた意味、理由を考えていました。
しかし、それらしい意味は見つかったものの、理由や根拠がどうしても出てきませんでした。
ただ、過去に戻ってしまった以上、私が過去に失敗したことを清算し、より良い未来を目指すことは出来るのではないかと考えました。
つまり、"私が過去に経験してきた知識を活かして、今のマキさんたちを、あわよくば無傷で全員生還させること"が、最初の目的ということになります。
そう考えた私は、即行動に移しました。
その後は、マキさんにこれから起こるであろう未来のことをあくまで一つの可能性として話し、マキさんを説得するような感じになってしまったが信じてもらうことに成功しました。
次に、作戦遂行時間になったので、二人で手分けして他に収容されているVOICEROIDの脱出の手助けをしに行きました。
ここでは過去の私が失敗し、一人負傷者をだしてしまった記憶があるので、慎重に進みました。
すると、今回は警備の人に見つからずに、さらに負傷者を出さずに移動することができました。
その後も、過去の経験を活かしてルートを決め、無事マキさんたちと作戦通り安全な場所に合流することができました。
「ゆかりん、そっちはどう?大丈夫だった?」
「ええ、警備員に見つかることなくここまでこれました。みんな無事です」
マキさんは心配していたようでしたが、私達がみんな無事なことが分かると安心していました。
しかし、先程安全な場所と言いましたが、あくまで一時的であり、いつ奴らと接触するか分かりません。
確か、この建物は全部で地下十階まであり、私達がいるこの場所は地下八階だったはずなので、これから先がとても長いことを憂鬱に思いながらも、みなさんと話し合って次の場所に向かうことにしました。
To Be Continued
………ここのシーンちょっと長いな