IS〜総てを守り、総てを砕く牙〜   作:白銀色の黄泉怪火

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1話

ISと呼ばれる物がある。

正式名称インフィニット・ストラトスというそれは、宇宙空間での活動を想定されたパワードスーツの事で、ある一人の科学者が製作した事で有名である。

しかし、ISには『女性にしか使えない』という致命的とも言える欠陥があり、それによって今の世界は女性が過剰に優遇される女尊男卑の世界となっていた。

そして、女尊男卑の世界になって約十年、世界が再び騒然となった。

 

世界初のIS『男性操縦者』織斑一夏の発見によって。

 

世界は他にもISを起動できる男はいないかと各地で一斉に検査を始める。

そして......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがIS学園か......」

 

 

近未来的、というより最先端の科学を集めた建物を前に俺はポツリと呟く。

 

久々にあの二人......あ、三人か。

三人に会えるんだが、まさかこんな形で再会する事になるとはな......。

軽くため息をついているとツカツカと前からヒールで歩く音が聞こえてくる。

そこには狼の様な鋭い目をした女性、世界最強という異名を持つ織斑千冬が立っていた。

 

 

「やっと来たか」

「やっとって、これでも急いで来たんですよ?」

「まあいい、もうHRも始まっている。お前が所属するクラスに案内するからついて来い」

「ヘイヘイ」

 

 

言われるがままに彼女の後ろを付いて行く。

 

 

「そーいや、俺は何組で、誰が担任何ですか?」

「お前は一組所属で、担任は私だ」

「......一人目もですかね?」

「ああ」

「うん、完全に面倒事を押し付けられてますね」

「そう思っているならくれぐれも問題を起こすな」

「現在進行形で問題児みたいなモンなのに、それは無理な話ですよ......因みに、箒と簪は何組ですか?」

 

 

ピタッと、織斑先生の動きが止まり、振り向く。

困惑、というより疑問って感じの表情を浮かべてる。

 

 

「あの二人を知ってるのか?」

「ええ、因みにその二人の姉貴達......CCRと......更識ダンゴムシだっけ?その二人とも知り合いですよ。箒と簪は接点無いですけど」

「更識楯無だ、馬鹿者。それとCCRとは何だ?」

「え、クレイジー・チャイルド・ラビットの略ですが?」

「......的確だな」

 

 

何か呆れた様な、諦めた(?)様なため息付かれたんだけど?

 

 

「篠ノ之はお前と同じ一組で、更識妹は四組だ」

「分かりました。簪の方は時間見つけて会いに行きます。姉貴の方はどうでもいいや」

「お前は更識姉の事が嫌いなのか?」

「いや、優劣があるだけですよ。『家族』とそうではない奴、優先するのはどっちか決まってるでしょ?」

 

 

その言葉にフッ、と笑う織斑先生。

 

 

「『家族』、か。お前の住む街は、家族の定義のスケールが大きいらしいな」

「まあ、先ず街の人間全員を『家族』って言い切る奴等の集まりですからね、スケールもデカくなりますよ」

 

 

それもそうか、と微笑を浮かべながら再び歩き出す織斑先生。

そして一年一組と書かれたプレートのやたらと騒がしい教室で止まると「呼ばれるまでここで待て」と言い残し教室に入っていく。

 

......さてと、自己紹介の台詞でも考えとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、織斑一夏は今、とても気分が悪い。

理由としては簡単だ。

現在俺は、教室の最前列中央の席で左右と後ろ全方位から視線と言う名の無言の攻撃を浴びてるからだ。

 

 

(......幾ら一人しかいない男って言ってもなぁ、見すぎだろ)

 

 

そう、この教室、というよりこのIS学園には男子生徒は俺一人しかいない。

何故なら、『ISは女にしか動かせないから』。

その固定概念というか、基本中の基本を覆しちゃった俺は受験しようとしていた藍越学園ではなく、IS学園に強制的に放り込まれた。

どうしてこうなったかというと、それは高校受験の日まで遡る。

藍越学園受験の為に勉強していた俺は、受験日の二日前にカンニング対策として突然試験会場が変わった事を知らされる。

それなりにコツコツと勉強をしていたお陰か、時間的に余裕があったので受験日前日にその試験会場の下見をして、当日に迷ったりしない様に道筋を把握しておいた。(会場そのものが複雑な構造になっている、と追記で書かれていた為)

そして当日、トラブルは勘弁願いたいので、試験開始の一時間前に会場に到着した。

......ここまでは良かったんだ、ここまでは。

自分の席で最後の復習でもしようと歩いてると、明らかに一人で運ぶようなサイズでは無い荷物を運んでいる女性が目に入った。

台車を使って運んではいるけど、かなり重いらしく、台車を押す度に顔を歪ませてるので、時間的に余裕もあったせいかふと湧いた親切心で「手伝いましょうか?」と声を掛けたのがいけなかった。

突然声を掛けられたのに驚いたのか、その女性は台車に脚をかけて転んでしまい、台車がバランスを崩す。

俺は咄嗟に台車に乗せてあった荷物を支えようと、荷物に手を掛けた。

そしてキィィィンといった音が鳴り響く。

梱包されていて分からなかったが、それはIS......確か打鉄だっけ?だった。

どうやら梱包の一部が破れていて、そこに触ってしまったらしい。

電子音と共に流れてくる情報に頭を痛めていると、ふと浮遊感が訪れる。

恐る恐る足下、正確には自分の体を見てみると ......俺はISを装着していた。

そんな経緯があって、俺はここに居る。

そして、回想に浸っている間にも無遠慮に刺さる視線視線視線視線。

しかもガン見ではなくチラチラ見てくるから質が悪い。

それに右隣、教科書読んでる振りしてチラ見してるのはいいが、教科書逆さまだからな?読んでないの丸分かりだからな?

そんな俺の胃が痛む様な空間となっている教室のドアがガラガラと音を立てて開かれる。

 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよー」

 

 

緑色の髪の先生が教卓の前に立つとにっこりと微笑む。

おっとりとした雰囲気を持ち、どこか幼い......というか、子供が無理して大人ぶってる、って感じの先生だ。

着ている服もサイズが合ってないのか、全体的にダボっとしている。

それにしても、どこかで見たような......あ、自爆乳先生か。(失礼)

なら服に関しては納得だ。恐らく、自分の体(胸部装甲)に合うサイズの服を選ぼうとすると自然とダボっとした感じになるのだろう。

 

 

「私は一年一組の副担任の山田真耶です。皆さん、一年間よろしくお願いします」

 

 

笑顔のまま俺達に向け自己紹介をする自爆乳......山田先生。

だが、聞こえてて無視しているのか、そもそも聞いてないのか、相変わらず俺に意識を向けて反応しない女生徒達。

それを見て困ったような顔をしてちょっと涙目になっている山田先生......ってメンタル弱っ!?

 

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 

 

狼狽えながらもSHRを進めていく山田先生。

クラスメイトの自己紹介に耳を傾けながら、俺はチラッと窓側の席の方を見る。

そこには、凛とした雰囲気を纏ったポニーテールの少女、俺の幼馴染みである篠ノ之箒が座っていた。

俺の視線に気づいたのか、箒は俺はへと顔を向けると、「大変そうだな」という意味を込めてか、苦笑をしてくる。

俺はそれに肩をすくめると、顔を教卓の方へと戻す。

 

 

「次は、織斑一夏くん、お願いします」

「あ、はい」

 

 

どうやら俺の番らしいな。

返事をして立ち上がり、後ろに振り向く。

途端に襲いかかって来る、箒を除いた二十八対の視線。

真正面から見ると、ある意味恐怖を感じるなぁ......。

思わず顔が引き攣りそうになりながらもそれを留めて、自己紹介をする。

 

 

「織斑一夏だ。高校受験の日に偶然ISを触って動かしてしまった事が理由でここに入学する事になった。今までISとは殆ど縁のない生活を送って来たから、皆より『知識面』に関しては劣っている。暫くは迷惑をかけたりする事が多くあると思うが宜しく頼む」

 

 

最後に一礼をする。

そして顔を上げるが、拍手も無く、クラスメイトは静寂を保ったままだ。

え、俺何かミスった?

 

 

『キ......』

「え?」

『キャアアアアアアアア!!!!!』

「うおっ!?」

 

 

爆音。

女生徒達から発せられた声と言う名の爆弾に驚き耳を塞ぐ。

 

 

「男子!男子がいる!!」

「クールな感じのイケメン!!」

「お母さん産んでくれてありがとう!!」

 

 

......元気だな、このクラス。

耳を塞いでも貫通してくる爆音に顔を顰めてると、再びガラガラと教室のドアが開かれる音がする。

 

 

「む、騒がしいと思ったら、お前の自己紹介だったか」

 

 

ん? この声は......。

声のした方向に振り向くと、そこには見慣れた顔があった。

 

 

「......職業不明で何やってんのか分かんなかったけど、ここで教師やってたのかよ、姉貴」

 

 

ヒュンッ

ガッ!

 

 

咄嗟に腕を頭上でクロスさせてガードをする。

が、ガード越しに伝わる衝撃に腕が痺れる。

 

 

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

 

うるせぇよバル〇トス。

またの名を筋肉蒼ダルマ、Mr.理不尽。

そして再び振るわれる黒い板。

次はバックステップで距離を取る。

というか、それ出席簿じゃねぇか。

アンタにはディア〇リックファ〇グの方が似合ってると思うんだが。

 

 

「貴様、今失礼な事を考えていただろ。それと、避けるな」

「俺は叩かれて喜ぶような性癖は持ち合わせて無いんでね、そりゃ避けるわ」

 

 

腰を低くして、何時でも動けるように構える。

目の前の狂戦士は、恐らく出席簿を一振りするだけで零戦を縦に割るだろう。横では無く、縦に。コレ大事。

 

 

「お、織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

 

 

うん、今あなたのことすげー尊敬したわ、山田先生。

この空気の中話し掛けるって、かなり勇気いると思うんだが。

 

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

 

姉貴が纏っていた空気が変わったのを尻目に、素早く席にもどる。

というか、そんな優しい声も出せるんだな、姉貴。

 

 

「い、いえっ。副担任ですから、これぐらいはしないと......」

 

 

若干熱っぽい声で姉貴......織斑先生へと返す山田先生。視線も声に合わせて何か熱っぽい。

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言う事はよく聴き、理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。いいな」

 

 

完全に暴君じゃん。

「貴様等は俺の最高の玩具だったぜぇ!!」とか言いそう。

そして、織斑先生の登場に一気に沸き立つ女子達。

 

 

「キャアアアアアア!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

 

ここって倍率凄くなかったっけ?

憧れだけで受かるなんてスゲェなオイ。

 

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 

最後の奴、命は大事に。

 

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 

クラスの反応に本気でうっとうしがっている織斑先生。

それに対して、更にヒートアップするクラスの女子達。

 

 

「きゃあああああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして〜!」

 

 

……このクラス変態しかいねぇ。

俺が内心このクラスでやっていけるのか頭を悩ませていると、織斑先生の声が響く。

 

 

「静かに!SHRを終わる前に、事情があって入学が遅れた者を今から紹介する……それでは、入って来い」

 

 

そういえば、俺の左隣の席が空いているな。

サボりとかじゃなくて、入学遅れか、納得。

そんな事を考えていると扉が開き、生徒が一人入って……え?

 

 

「簡潔に自己紹介をしろ、藤木」

「ヘイヘイ。俺の名前は藤木総牙、世界で二人目の男性IS操縦者だ。宜しくな」

 

 

入って来たのは、男だった。




という事で第1話でした。

オリ主ほとんど出てねぇ……。

一夏の性格が変わってますが、話が進んでいったら変わった理由を書くつもりです。
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