自称錬金術師のオラリオ暮らし!   作:ふぃーあ

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「AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…」を書く前にぽろっと書いていたダンまちオリ主二次創作が今さらになって出てきまして、一応投稿しておきます。本来は短編だったという奴ですね!

需要があるとか、感想が頂けたとか、高い評価が頂けたらたぶん次が出ます。


第一講 錬金術師がやってくる

 青い、雲一つない空の下、都市の門までの直線ををゆったりと歩む女がいた。

 

「ふーっ……あの好々爺の言うことを信じてもう一度迷宮都市に戻るなどと言わなければ今ごろは研究……いや、言っても仕方ないことか……」

 

 そう女は独りごちる。女の格好は独特で、旅をするようには見えない。試験管をホールドするパーツがいくつも腰回りに取り付けられた奇妙な白衣を纏い、荷物はどこにも伺えない。おおよそ旅をしていると言われても信じられないような女であった。

 

 そんな怪しい彼女の名は、パラケル・タキオン。なお、タキオンは家名が本人にもわかっておらず自称している名前であるがために、パラケルのみが今彼女が名乗るべき明確な名前である。

 

 さらに女はごちる。

 

「『また迷宮都市に戻って、研究してみる気はないか? ワシが一筆認めてもいい、悪いことにはならんじゃろ』……か。あの不真面目爺さんが真面目腐ってそんなこと言うんだったら行く他ないじゃないか」

 

 彼女にはかつて、オラリオの中で錬金術と科学について学びを深め、ある神に……というかあの好々爺のファミリアで更なる学びと研究をしていた経歴がある。

 

 黒龍に己のファミリアの仲間が敗れ、多くの仲間が死に、そして美の女神とトリックスターにオラリオを追われたあの日の彼女はふとこう思っていた。

 

 山奥で研究したいな、と。どこまで行っても研究であったのだ。最初はエダスの村に住んでいたが、だんだんと人付き合いが面倒になりより奥の村へと越した。そこでなぜか農家の真似事をしている己の主神と出会うとは思っていなかったが。

 

 まあとにかく、女は戦いを求めてオラリオに戻るのでも、金を求めてオラリオに戻るのでもない。科学と錬金の神秘を求める学者たる彼女は、オラリオに戻ることが叶えばまた山奥よりも専門的な研究ができる、と考えていたのだ。それが叶うことはなかろうと達観しながら。

 

 だが、それが叶う日が来てしまったのだ。運命は巡り合わせだと、彼女はほいほいと誘いに飛び乗った。

 

 その結果がこれである。彼女は誘いに飛び乗った己の愚かさを悔いながら、オラリオの門を潜ったのであった。

 

 それは【剣姫】と【未完の英雄】が出会い、【凶狼】が図らずも【未完の英雄】に火を灯したあの宴が過ぎ去って数日のことだった。

 

 

 

 

 

 門を潜ればそこは迷宮都市。当然のことではある。中央広場までやってきたパラケルはまた独り言を呟く。

 

「見慣れた……いや、だいぶ変わったか? 改めて見ると良い町並みなのだなぁ……さて、【魔女の隠れ家】とはどこにあるのかな……? っと、独り言が癖になってしまっているのは良くない……直さなきゃな」

 

 パラケルはあたりを見渡して、近くにいた二人組の女性に目を付けた。金髪の少女と山吹色の髪を持つエルフ……エルフは魔法使いが多いらしい、魔法使い向けの店としての側面が強いらしい【魔女の隠れ家】の位置を聞くにはいいだろう。

 

「すまないね」

「……!?」

「うわぁぁっ!? び、びっくりした……!」

「驚かせて申し訳ない、店の場所を知りたいんだが……」

 

 パラケルのあまりにも静かな接近に驚いて手に持った揚げ物らしきなにかを落としかける金髪の少女と、より驚いて飛び上がったエルフ。愉快な気持ちになりながらも問いを続けると、エルフの方から言葉が帰ってきた。

 

「なんのお店でしょうか?」

「【魔女の隠れ家】という店をね……。エルフには優れた魔法使いが多いと聞くし知っていないかと思ったのさ」

「【魔女の隠れ家】ですか……アイズさん、いいですか?」

「ん、レフィーヤがいいなら」

 

 軽く2人が会話してから、レフィーヤと呼ばれたエルフが申し出た。

 

「私たちの次の買い物の目的が【魔女の隠れ家】にあるんです。もしよければ、一緒に向かいませんか?」

「願ってもないことだよ! ありがたいありがたい、その厚意に甘えさせて貰う」

「わかりました! それじゃあ……ついてきてもらっても?」

 

 そうして、2人が3人になって歩き出す。会話を始めたのはパラケルからだった。

 

「とりあえず自己紹介させてもらおうか。私はタキオン、パラケル・タキオン。パラケルでもタキオンでもいい。神秘の深奥を探るべく日々研究に没頭する研究者さ」

「【ロキ・ファミリア】のレフィーヤ・ウィリディスと言います、こちらの方は同じく【ロキ・ファミリア】の【剣姫】……」

「アイズ・ヴァレンシュタイン……よろしく」

「噂は遥か遠くまで聞こえているよ。【千の妖精】に【剣姫】。まさか本人に会えるとは思ってもよらなかった幸福だ、よろしく頼むよ」

 

 その言い回しと道案内の頼みというところから、次はアイズとレフィーヤが質問を飛ばす。

 

「いつ……ここにきたの?」

「つい三時間ほど前に門を潜ったばかりだよ……ファミリアにも今は入っていない」

「そう、なんだ……」

「【魔女の隠れ家】になにをお求めなんですか?」

「魔石さ、魔石。研究をするにも魔石がなければ始まりもしないからね」

 

 魔石。魔法使いも用いるそれは、錬金術の魔素コントロールに必要なデバイスを生成する素材の一つでもあるのだ。また、科学法則と魔素の為す神秘との違いを探すためにも魔石はあって然るべき代物であったりする。

 

 そんな会話をする内に、いつの間にやら【魔女の隠れ家】に到着し、それぞれがそれぞれの買い物を済ませて行く。

 

 レフィーヤが必要な物を物色する間に、パラケルは店主に何事か囁きながら手紙を渡していた。店主は二、三見返すと店の奥へ戻り、それをパラケルに手渡して……パラケルはそれを『消し去ってしまった』。

 

 それをたまたまあくびをしながらとはいえ見てしまったアイズは、目を見開き、あくびを引っ込めてレフィーヤに耳打ちした。

 

「(レフィーヤ、あの人にホームまで来て貰おう)」

「(は、はい? なにをいきなり……)」

「(見たことない技を今見せられた……あの人が無所属なんて信じられない、うちに引き込むべき。フィンたちへの説得は……私が頑張ってみる)」

「(アイズさんがそこまで言うんですか……? なら、試しては見ます)」

 

 そうと決まれば迅速に。レフィーヤは物色を手早く終えると会計を済ませた。そして、ほくほくとした表情で手に魔石の入った袋をぶら下げて2人を待つパラケルに声を掛ける。

 

「その……せっかくですし、縁もあると思うので私たちのホームにですね……」

「【ロキ・ファミリア】のホームにかい?」

「はい! パラケルさんはその……まだ無所属と仰っていたので」

 

 その次の瞬間。パラケルがそっと左手で己の胸を撫で右手を顎に当て、首を傾げだした。レフィーヤもなにがなんだかわからずに首を傾ぐ。

 

「んー……? なにか忘れてるような……ロキ……ロキ? 主神がロキ? トリックスターの?」

「ぇ? あ、はい……そう、ですがどうかされましたか……?」

「あーっ! 爺の一筆ーっ!!」

 

 パラケルには欠点がある。それは忘れっぽいということであり、咄嗟に彼女は白衣の胸ポケットからメモ帳を引き抜いた。

 

 ・やることりすと! 

 1.オラリオに着く! 

 2.【魔女の隠れ家】で魔石を買い預けていた研究キットを回収する! 

 3.じじいの手紙をギルド経由でもなんでもいいからとにかくロキに渡す! 

 

「……まだ、セーフだよね? うん。セーフだ。思い出したから、いいだろ? いいよな?」

「落ち着いてくださいパラケルさんっ!?」

「と、とりあえず……案内、してくれるかな?」

 

 

 

 自分の人生がかかった一筆の存在を忘れていたパラケルは、すっかり燃え尽きながらも【ロキ・ファミリア】ホーム、【黄昏の館】の方まで移動してきていた。

 

「あのー……そろそろ、着きますけど」

「あぁ……」

「元気、出して?」

「あぁ……」

「あぁしか言わなくなった……!」

 

 相当致命傷だったらしい。忘れるという悪癖は山間生活で矯正しきったものだと思い込んでいたのだが、全然そんなことはないと言われてしまったようであったのだろう。

 

「お、アイズたんにレフィーヤやんな、思ったより遅いな……ってなんやそいつ?」

「あぁ……」

「こっわ!? 目こっわ!?」

「あ……パラケルさん? こちらがロキ様で……」

「お会いしたかったよ神ロキ」

 

 驚くべきテンションの復活。曲がった背筋がしゃきっと伸び、デキる女の雰囲気を醸し出し始める。目にハイライトが戻り、口元に自信からくる笑みが浮かぶが先ほどまでの姿を見ていると流石に威厳がない。と思っていた矢先。

 

「神ロキ。お渡ししたい書状が一枚、『ここにある』」

「ん? なんや、見せてみぃや」

 

 なぜかパラケルは買ってきた魔石の入った袋から魔石を取り出し、砕き、破片を手に取ると、小さく横に斬りつけるようにして振った。

 

 空間に穴が空き、歪みに腕を突き入れて引き抜くと、そこには手紙が握られていた。

 

「……なんや、お前は」

「私が何者かについてもそちらに。とにかく、書状を読んで頂ければと」

 

 さて、ここにかの不真面目爺さんことゼウスが書いた書状を簡潔に纏めたものがある。読んで頂こう。

 

『かつての抗争の際は世話になった。こちらは今も元気にやらせてもらっている。孫も巣立ち、そちらで【未完の少年】やら【兎脚】やらと2つ名を受けたと聞き驚いたものだ……(ここからベルの話が続くので略)

 さて、話は変わる。その手紙を持ってきた人物……我が眷族、パラケル・タキオンをお主の眷族へ改宗させてやってほしい。メンツに合うかどうかはわからぬが、悪いことにはなるまい(以下略)』

 

「ゼウスの眷族だったんか……うちら、どう思っとるんか聞かせや」

 

 一瞬で空気が剣呑な雰囲気を孕んだ。なにせ、【ゼウス・ファミリア】を追い出したのは己たち【ロキ・ファミリア】だ。恨まれていて然るべきであろう。

 

「……あぁ、追い出されたことで恨んでたりとかってことかい? 全くないよ? 研究ができればどこでも変わらないのが私さ」

 

 その答えにロキは脱力した。

 

「ほんまかいな……あかん、ゼウスの眷族おかしいのばっかやと思ってたの正解や……」

「……ロキ、パラケルさんを」

「わーっとるわアイズたん、だが無条件とは行かんで? 入団試験……つまりある程度の戦闘能力があるかはテストさせて欲しいんやがどうや? パラケル」

「構わんよ……あと自己申告だが私は非戦闘員で弱いよ?」

「ゼウスんとこの眷族の【非戦闘員】は基本なんかバグっとるのは知っとるわ」

 

 パラケルは非戦闘員だ。それはまぎれもない真実なのだが、如何せんあのファミリアの非戦闘員はなにかがおかしいというかそもそも探索系ファミリアに非戦闘員として居られる時点でなにかがおかしいのだ。

 

「まあいいかな……? さっき買い漁った魔石のおかげで今なら多少は戦えなくもないかな……とは思いますし」

「ほな、奥の訓練場でやるから……こっちや」

 

 

 

 いつの間にやら、話が広まっていたのだろうか? 訓練場には多くの【ロキ・ファミリア】のメンバーがすでにおり、その数の圧に普通の冒険者は圧倒されるだろうと思われるほどだった。

 

 その奥にて話す少年のような人物を中心とした【ロキ・ファミリア】幹部たち。

 

「パラケル……」

「元ゼウスの眷族……か。誰を当てるのがいいと思うか、忌憚なき意見を求めるよ」

「新人の入団試験じゃ、いつも通りじゃろ? なぁフィン」

 

 いつもの試験のように団長【勇者】フィン・ディムナを出し筋を見るのがいいだろうと言うのは【重傑】ガレス・ランドロック。

 

「俺はいつも通りとは行かねぇと思うがな」

「ベート……?」

「あの女は弱ぇ、だが……雑魚じゃねぇ」

 

【凶狼】ベート・ローガ。多くの新人を雑魚と呼び忌み嫌ってきた彼にしては高い評価に対戦相手はなおのことフィンが務めるべきだろうという意見にまとまりかけて。

 

「はい団長! 私にやらせて欲しいんですけど!」

「ティオネか……最近のランクアップもある、そのくらいで相応か? どう思うリヴェリア」

「少し不安が残るが……まあその程度ならティオネがヒートアップすることもないだろう。フィンは少し休むべきだろう? ここはそれで行くしかないな」

 

 名乗りを上げたのは【怒蛇】ティオネ・ヒリュテ、頷きを返したのは副団長【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ。そして【大切断】ティオナ・ヒリュテが模擬戦の相手を務める姉に言葉を送った。

 

「お姉ちゃん頑張ってねー?」

「もちろん!」

 

 そして、人の海が割れるようにして道となる。

 

 既にパラケル・タキオンと名乗ったその女はその道の果てに傲岸不遜な笑みと共に立っていた。

 

「私が貴女の対戦相手……【ロキ・ファミリア】所属レベル6、【怒蛇】ティオネ・ヒリュテ」

「名乗り返そう。元【ゼウス・ファミリア】所属レベル5、【叡知】(ソピア)パラケル・タキオンだ」

「非戦闘員の割にはレベルが高いわね?」

「ステータスなどはそんなに溜めぬままにランクアップだけしてきたからさ、気にすることはない」

「どうなのかしらね……さ、始めましょうか」

 

 それを最後に2人が無言に戻ると、リヴェリアが声を張り上げた。

 

「お互いに致命傷は避けろ! これは模擬戦だ! いいな! ……始め!!」

 

 開幕、一歩踏み込んで斬り込むのは無論ティオネだ。

 

「はっ!!」

 

 剣もなにも持っていないパラケルだったが、その剣戟に合わせて何かを握り振り抜くと……ガキンッと音がした。

 

「なっ!!」

「ふふっ……【錬金術】の体系として【魔術】の術理に至ればこんなものだよ? モノに意味を持たせるのが【魔法】であり【詠唱】だ、私はそう結論付けている」

「随分と余裕ぶってるわね……!」

「すまないね、だが己の研究成果となると饒舌になってしまうのは研究者共通のものだろう?」

「なら……! 次は!」

 

 連撃を繰り出さんとして刻む華麗な動き、斬り込みが見えて、やっとパラケルは腰の試験管を引き抜いた。

 

「【複合色式錬金】……赤と緑、混ぜて【茶色】!!」

「っ!?」

 

 途端、一瞬だけ大火が沸き起こり、パラケルは身を任せ後退してティオネはその耐久をして踏みとどまる。

 

【複合色式錬金】。これは【錬金術】というよりは【魔術】によった術理である。色の付いた液体の、その色に対して先もって魔素を以て意味を付属させ、意味を混合することでより強い概念を生み出すのだ。

 

 赤に持たせた意味は火、緑に与えた意味は樹木、足し合わせて火に薪を焚べるというわけである。

 

「まだまだ行こうか! ついてこい、【怒蛇】!」

「っ!」

「これが私の武器だよ……っと!」

 

 周囲をふわりと周回しだした透明な玉。全員がそれに注目した。

 

「【湿った道】……無論概念的には異なるものなんだろうが、錬金術といえば【石の錬成】だろう?」

「なにを言っている……!」

「時代を遡れば、【四元】の世代。【錬金術】とは相反する性質を以て調和し、完全なるモノに至るための学びだった……例えば!」

「させるか!!」

「【火】よ【風】よってね!!」

 

 次の瞬間、パラケルの動きが速くなった。

 

「風の元素が持つ意味は重量低減、火の元素が持つ意味はベクトルエネルギー、この2つは物質の運動を助ける元素なんだよ、覚えておくといい!」

「っ……速い!」

 

 

 

 そこまでの流れを見ていた【ロキ・ファミリア】の者たちは唖然呆然といった感じであった。レベル5? 勢いでランクアップしたから弱い? 非戦闘員? アレで? という感じである。

 

 ティオネの攻めをいなしあしらう。むしろ攻める時さえある。狂気的なほどに言葉に説明を挟みながらも錬金術を用いて戦うパラケル。

 

 とりあえずこれを他所に行かせるわけには行かないという思いだけが全員の共通した思いであった。

 

 

 

「ふむ……なかなかなかなか、やるじゃないか! いいだろう! たまにはこれを使っても……まあそう悪いわけではあるまい、あまりにも学術としては誉められたものじゃないんだが……これを使わされるのはいつぶりだろう!」

「なにを……これでも喰らえ!!」

「甘い……!」

「その口を……! 閉じろ!!」

「うぐっ!! いったぁ……! なんだかんだやるよねほんとに……」

 

 剣が舞い、打開はさせぬと盾殴りまで絡めた連撃。

 

 盾に直撃し、それでも当たる瞬間に自分から後方に飛んで衝撃を軽減したパラケルは痛いなどとぼやきつつ、言葉を続ける。

 

「ほんとに使いたくなかったよこれ……しんどいからね! でも使おう。使ってこそ切り札に意味がある! 【マグナム・オプス】……【ニグレド】!」

 

 次の瞬間、浮かんでいた水晶玉が黒くなり、黒い炎がティオネを追尾する。

 

「なっ……あっぶなっ!! でも盾で……こうっ!!」

「わぁ……浄化の炎、盾でパリィ……巧いね? 次だ、【アルベド】!」

 

 次は水晶は白く濁り、波動を放つ。カッターと呼ぶべき円板状の波動を四、五発と放つが……

 

「【リスト・イオルム】!! 喰らえ!!」

「ちっ、それに捕まるのは洒落にならない……! 断ち切れ、我が刃!」

 

 カッター波動が魔力の縄を消すために突貫し、完全に相打つ。

 

「さて、いいことを教えてあげようか?次がラストチャンスさ……【ルベド】!」

 

 最後と言われた少女の前で、水晶玉が赤く染まる。そして、著しいまでの魔力……果ては、神のそれまで混ざり込んでいるかもしれないと錯覚してしまいそうなそれを見て、ロキが声を張り上げた。

 

「しまいにしてくれ! パラケル!! そこまでや!」

「……神ロキ?」

「僕も同感だよ。パラケルくん! リヴェリア指示を!!」

「わかっている! 審判より、試合を終了する!」

 

 突然の終了の理由もわからずに首を傾げながらも2人は手を握りあった。

 

「……貴女、強かった」

「いやはやそちらこそだ、まさか【大いなる業】で【賢者の石】まで作らされることになるとは予想だにしていなかったとも。正直に言ってこちらの負けだな」

 

 そう親睦を深める2人、そして次の瞬間。

 

「なんということをしようとしていたんだこの馬鹿者!!」

 

 後ろから不意打ちでリヴェリアの拳骨が振り下ろされ……

 

「【土】【土】足して【硬化】!!ぐぉっ!!?」

 

 凄まじい早口言葉で頭蓋骨を保護するパラケル。この瞬間だけは錬金術の詠唱を簡略化するという研究に意味を強く見出だしたとは後のパラケルの言葉である。

 

「パラケル・タキオン。奥の部屋に来てくれ……そこでその【錬金術】とやらについて聞きたい」

「わかった……できれば黒板をだな」

「講義とかじゃないからな!?」

 

 あまりにも濃い一日は、まだ終わりそうにない。

 

 

 

 

 

 

 




・パラケル・タキオン
錬金術というジャンルの上で、パラケルススとするべきかヘルメス・トリスメギストスを語るべきか迷ったものの、ヘルメスという神がダンまちに存在する以上はトリスメギストスは使えなかった。

タキオンとは超光速の粒子のことであり、科学の先進の象徴たりえるのもポイントが高かった。

・【複合色式錬金】
本文通り、どちらかといえばウィッチクラフト(魔女術)の領域である。色に意味を見出だした古来の民族は、色同士を掛け合わせ生まれた色に対してさらに強大な意味を与えていく。

基本の三色を基準として、自然に現れた色合いにそれぞれの意味を与え、自然に現れない色合いに強大な意味を持たせて物を強くする方式は錬金術の体系に取り込まれる場合もあったらしい。

・【四元】
四元素の世代と呼ばれる、もっとも古い錬金術の体系。【火】【風】【水】【土】とそれらを組み合わせた性質変化を以て金を生み出そうとした。【火】と【風】は物質の運動に関わり、【水】と【土】は物質の構成に関わると考えられ、これによりホムンクルス…人造的な生命とその魂の生成も可能と考えられていた。

・【大いなる業】
湿った道か乾いた道のどちらかを利用した賢者の石の錬成に必要な大作業のこと。

大作業という言葉をそのまま言い換えて【マグナム・オプス】。【ニグレド】は黒化という作業で、腐敗、浄化を兼ねる。【アルベド】は白化、あるいは再結晶を意味し、精神的な浄化を行う。最後に【ルベド】により赤く染まり、賢者の石として完成する。

この一連の作業を【マグナム・オプス】と呼ぶか【アルス・マグナ】と呼ぶかについてはかなり意見が別れるものの、個人的には大作業の意味を持つ【マグナム・オプス】が作業部を、【アルス・マグナ】が成功したという意味を持つと解釈している。

フィンの一目惚れイベント。想いは届くのだろうか?リリルカは…

  • フィンの想いを受け入れる。
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