それがダンジョンでドラゴンの尻尾を食うのは間違っているだろうか?になっているかどうかの差だったんです!!はい!!
黒いゴライアスを倒し、地上へと無事に戻るベル・クラネルご一行を護衛して地上に上がったパラケルであったが、ここから彼女はベル以上の苦労をすることになっていた。
ギルドに事情を説明して、その奥にいるウラノスに箝口令を守るように厳命される。やっと【黄昏の館】に戻ってきたと思えばまずフィンとロキに報告をして事情を聞かれ、アイズに【黒いモンスター】という項目について問われ、どこから漏れだしたのか【四方天陣】についてリヴェリアに質問責めされ……この錬金術師はすっかり疲れきってしまっていた。
「全く……ひどい目に合ったよ……と、いうわけで料理をします」
「は? あの……今日の料理当番は私なのですけれど……」
「あぁ……悪いが変わってくれ、私のストレスと疲労の解消に料理は必要不可欠なんだよ」
「え? あ……はい? わ、わかりました」
目に暗い色を宿しながら、料理当番を変われと言うパラケル。エルフの女性団員はパラケルへの恐怖と料理当番をやらなくていい歓喜に震えながら立ち去ることとした。
この大所帯のファミリアにとって、料理番とはすなわち戦場の最前線だ。料理の味、量、適切な栄養、すべてを満たした上でエルフ、ドワーフ、ヒューマン、獣人の舌に合うものなど作りようもないので別々のメニューも用意する必要がある。
それを勝手に引き受けてくれるのはありがたいことなのだが、なにぶん引き受けるパラケルの目がヤバい。赤い瞳がいつにもまして赤い……というよりは、紅い。
「(まあ……とりあえずリヴェリア様には報告しましょうか……?)」
リヴェリアでなければもはや止められないだろうな、と。そう思われるほどに、今のパラケルはイカれていた。
「さて!! 料理の時間だよ!!」
誰にも聞こえるわけがないのにうっきうきの声を張り上げてパラケルの料理がスタートする。虚空から牛肉をなぜかついてきている葉ごと取り出し、厨房の空きスペースに敷かれた魔法陣の紙の上に置く。
「まずこれは三十分程度置いておき、肉の中と外の温度を均等に近付ける必要があるんだが、錬金術の小規模陣形魔術に反応加速というものがある。これを使えばだいたい10分くらいで済むから……先に他の仕込みからかな」
手際よく野菜を切っていく。じゃがいもとにんじんは一口サイズより少し小さめ、たまねぎは薄切りにする。ブロッコリーは小さく分けておく。
「野菜はある程度大きく切ったほうが食べ応えが出て好みなんだが、エルフに配慮も必要だろうと思わなくもない。やはり万人が食べられるものであるべきだ」
肉を、バターのひかれた弱火のフライパンに叩き込む。
「最初は時間をかけ弱火で焼く。これは肉の細胞が収縮するのを防ぐためだ。途中からどんどん熱量を上げて、最終的には焦げ目をつける。これには表面細胞を破壊して香り成分を産み、うまみを閉じ込める効能がある。しっかりとやっていこう」
独り言を呟きながら楽しそうに料理をするパラケルを覗く影2つ。
「(リヴェリア様。よろしいんでしょうか、その……)」
「(これは覗きではない……監視だ。彼女が倒れないか不安なだけだ、そういうことだ)」
とある団員からの報告を受けてやってきたリヴェリアとお供するレフィーヤである。
パラケルはその間も手際よく進めていく。
「さて本題の煮込みだが……野菜は水から、肉は後から投入するのは基本、水はこだわって昔に行った霊峰のモノを使う」
大量のカットされた野菜に虚空から水を取り出し巨大な鍋で一煮立ち。
「肉を入れる際にここで調味料系を投入していく……私手製のデミグラスソース、【デメテル・ファミリア】謹製トマトケチャップ、【ソーマ・ファミリア】の赤ワイン、そして普通の塩を投入。ローリエもここで投入して弱火で3時間。とろとろに溶かすなら5時間……これだけの量なら6時間でもいいか。アク取りも随分とありそうだな……ふふふっ」
各ファミリアの逸品をふんだんに調味料として使用、鍋に叩き込みながらなにがおかしいのか高らかに笑いだすパラケル。
「いやぁ料理は最高だ……結局料理が一番私の心を癒してくれる!」
「(ほんとにだいじょうぶなんでしょうか……)」
「(そろそろ姿を見せたほうがいいのではないだろうか……)」
同時、2人のエルフに真面目に心配され出してもいた。が、6時間は付き合っていられないので、2人は……
「「(まぁ……本人が楽しそうならいいか……)」」
さすがに諦めた。リヴェリアは他の団員に定期的に……具体的に時間を言うと二十分に一度は様子を見るように指示したりしたのだが。
アクを取り続け煮込むこと6時間半。ついに完成したそれを彼女は完全回復したいつもの調子で皿によそい、出していく。
「今日は私の料理番だ! 目の前にあるビーフシチューだがそこらのビーフシチューとはひと味もふた味も違う! どうか存分に食らい、存分に楽しんでくれたまえ!」
高らかにそう宣言する彼女に期待を抑えられず、皆が匙を口へ運び始めた。此処彼処で上がる美味であるという声。
「ん……! お肉も野菜もこんなに柔らかく……これは美味しい! じゃがいもを使った料理で二番目に!」
「んー! 最高だね! これは確かにアイズが笑うほどの逸品だ!」
【剣姫】がまずいつものように先陣を切り、笑う。【大切断】がためらいなく後を追い、同じようにほろほろと溶け落ちる肉や野菜を噛み締める。
「間違いなく一番はじゃが丸くんでしょうね……まあアイズさんがそこまで言うなら相当な……ん! これは……野菜のうまみと甘味が前面にしっかり出てます、溶けるような感覚なのにこれだけの味わいを……美味しいですね!」
「ふん……やるじゃねぇかあの女。食い応えのある肉もいいがこういう溶けるような、肉の味だけが舌に確かに残るような肉も確かに悪かねぇ。旨いなこれは!」
【千の妖精】と【凶狼】がそれぞれの好物についてとても美味であると感想を残す。
「ふふ……これは野菜と肉の調和が素晴らしいな。それにとても品良く食べることができるようにか少し野菜のサイズを小さめにしているな? 全く……自分が休むことを知らん奴だ」
「この芳醇な香り……酒で出したものと見た。赤ワインじゃろうか? 悪くない、むしろいい。リヴェリアの言うとおり、肉も野菜も小さめじゃが……深い味わいじゃ。確かに満足感があるな」
【九魔姫】がその味と細やかな気配りに呆れたように笑い、【重傑】が美酒を料理に使うに足る美味と述べる。
「うん、これは美味しいね……このパンともとてもよく合っている。コクのあるシチューがしっかりとパンに吸われ、ありとあらゆるうまみをパンが持ち合わせるようになる。悪いが……パラケルくん、もう一皿重ねたい」
「団長がおかわり……!? なら……わ、私ももう一皿頂ける?」
「無論さ、そこまで評価してくれてありがとう。すぐ持ってこよう」
【勇者】はそのあまりの美味に思わず皿を重ねようとし、【怒蛇】は【勇者】の前では淑やかにと思っていたが肝心の【勇者】がおかわりすると知り己も所望する。
「あぁ、旨いなぁ全く……みんなも嬉しそうやなぁ。なぁパラケルたん。いやパラケル、しっかり休むんやで……休めんっちゅーならうちが寝たってもええわ!」
「それは遠慮しておくとしよう。おかわりはいるかい?」
「なんでや……ええやん一緒に寝ても! あとおかわりはいるで!」
【道化】は辺りを見渡して、みんなの笑顔を見て冗談を飛ばしてみるも、見事に撃沈。
「そうさ、これが見たかったんだ。結局人が喜べばそれでいいなんて言わないけども……料理をしている時、一番幸せになれるのは作ったものを旨いと言われる時だ」
「パラケルさーん!」「こっちだこっち!」
「こちらのテーブルへもしよければどうぞー!」
「騒がしいのは……そんなに好きじゃないんだけどね」
【叡知】は笑みを浮かべながら、手招きしている【千の妖精】の元に一歩踏み出した。
特製ビーフシチュー回でした。これを書くにあたって当家母のレシピをそのまま用いました。
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フィンの一目惚れイベント。想いは届くのだろうか?リリルカは…
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フィンの想いを受け入れる。
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