自称錬金術師のオラリオ暮らし!   作:ふぃーあ

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不快描写あるかと存じますがお許しあれ。


第十二講 錬金術師と太陽神(ただのアホ)

 錬金術師、パラケル・タキオンの朝はとても早い。早朝から錬金術を行いポーションの補給などをする。今日はたまにある朝のアイズとベルの鍛練のない日だが、そういう日はパラケルはある場所に毎度足を運んでいる。

 

 そこは朽ちかけた教会。教会の奥へ向かう。壊れた椅子やらなにやらはすでにこのすぐ真下に住まう【ヘスティア・ファミリア】の手によって薪に変えられ、随分と進みやすくはあった。

 

「私にとって、また『私』にとって初めて救えなかった人。今なら、救えるのだろうか? 無意味な問いなのはわかっているつもりなんだがねぇ……」

 

「あ、パラケルさん! おはようございます! ……なにを祈られていたんですか?」

 

 ひとりごちるパラケルの後ろから声がかけられ、パラケルは姿を確認するまでもなく声を出した。

 

「珍しく早いねベル君、おはよう。まぁ……過去を思い出すための祈りといったところだろうか。私の転換点は今ここにあるんだよ……そう、ここに確かにある」

 

 語るつもりもないのに、言葉がこぼれ落ちる。真横にまで歩いてきたベルが、辺りを見回す。

 

「……ここは、僕たち以外にも大事な場所なんですね」

 

「私以外にもう何人か、きっとここを大事だと思う人に心当たりがある……もう、この世にいるはずがない者たちだけれどね」

 

 崩れかけた天井を眺めやりながら、そう呟くパラケル。いくらかの心地よい無言の後に、ベルは一言。

 

「きっと一緒に生きていなくても、天界から見ていたとしても、その人たちはパラケルさんを見守っている……んじゃないですか?」

 

「ふふ……そうだと、嬉しいねぇ。なんだか付き合わせて悪いね、突然ここにいただけの私に……そうだ、夜に食事でもどうだろうか? 無論君のファミリア総出だ……といっても、リリルカ君もヴェルフ君もここではないんだったな」

 

 失敗失敗と軽く耳元をかいて、とかくその2人を呼べるならと告げる。

 

「ありがたいんですけど……あの二人も呼んでいいんですか?」

 

「いいものを見せて貰ったからねぇ……礼くらいはするさ。それに……君はいろいろと成し遂げたんだろ? 誰にも讃えられないだけで。私にも全部が全部なにをしたのかはわからないけれど」

 

「……はい。そういう、ことなら……2人も連れてきます。きっと喜んでくれるでしょうね!」

 

 ベルの表情の曇りを見逃さないパラケルではあったが、一切そこには口を出さないパラケルでもある。精神的な壁は自ずからして乗り越えるべきである……そう思うパラケルなのであった。

 

 

 

「「「乾杯!」」」

 

「よくよく楽しんでくれると嬉しいですね……にしてもこんな店よく知ってましたねヴェルフ君も」

 

 杯を合わせるベルたちと白ローブ。盛り上がるようにと告げる彼女にヴェルフとリリルカは口々に問いを投げた。

 

「今日のお誘いがなければ自分がベルを誘うつもりだったんです。ところでその……口調と格好が普段と違いますね?」

 

「リリもそこのところは気になってました。柔らかい敬語で、白いローブで……珍しい格好ですよね? 普段のパラケルさんは白衣を脱がないクラスですし……」

 

 白ローブでフードも完備している彼女……すなわちラグランジュは困ったように顎に手を当ててから、こう言った。

 

「フィンが言ってたんですよ……今日だけは、今日だけは【ロキ・ファミリア】のパラケルではなくこっち……ラグランジュで、と。嫌な予感がするから、と……せっかく君たちがある程度名の渡った一人前になったことを祝うつもりだったのですけれど」

 

 その言葉と同時、罵声が飛んだ。

 

「あ゛ぁなんだぁ!? どこぞの兎がいっちょまえに有名だって聞こえたぞぉ!?」

 

 ラグランジュはため息をついた。嫌な予感、というかこれは狙い撃ちだ。そう理解したためである。

 

「いいですか、ベルくんたち。こういう手合いはこうだから面倒なんです……最悪、因縁だけで吹っ掛けられますのでそのときは後日もこの姿でお手伝いしますね……はぁ」

 

「あ、あの……どういう」

 

 ベルがそう聞き返す前に再び罵声が飛ぶ。

 

「新人は怖いものなしでいいご身分ってか、レコードホルダー? 世界最速のレベル2ぃ!? 嘘つき放題だなぁ!」

 

 ラグランジュはベルに目線だけで「こういうことだよ」と告げ、ベルは頷いた。ロクでもない酔っ払いであるという認識であった。

 

 無論放っておかれた男はいい気分というわけでもなく、言葉を重ねる。

 

「まわりの奴らも大したことねぇンだろ!? 知ってるぜ俺はよ、チビサポーターにしょうもねぇ売れない鍛冶、貧乏女神にはお似合いだよ!」

 

 ベルが拳を握る。ラグランジュは慈愛の心と呼んで差し支えない聖人よりの人間だと自分に言い聞かせながらベルを説得しようとする。

 

「ベル、気持ちはわかりますけど……」

 

 そう声をかけた瞬間だった。

 

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 彼らは、踏んではならない地雷を高らかに踏み抜いたのだ。ベルたちには見えていた。ラグランジュの表情が能面のように抜け落ちたのを。

 

 ラグランジュにとって、娼婦という言葉は生まれ変わる前の己そのもの。正しく、己に反吐が出るのだ。いわば、放言から出た矢が的の中央をぶち抜くようなもの。

 

 そんなことは無論知らない男はなおも言葉を重ねようとして、凄まじい殺気に肌を粟立たせた。そして、別の怒声と立ち上がる音。

 

「………………」

 

「取り消せ!!」

 

「っ……なんだよ、文句あるなら言ってみろよぉ! 事実だから怒るンだろ!?」

 

 ラグランジュは、向き直るとベルに続き立ち上がった。

 

「主神の名前はなんですか? 聞かせてくださいよ……ご立派な神なんでしょう?」

 

「……はは、てめえみたいなドブから這い出た跡隠すために真っ白な服着てますって娼婦以下にうちの神の名前なんざ……ごぶっ!?」

 

「取り消せ……! その暴言も!!」

 

 聞いても答えず、罵倒を繰り返す男にベルの拳が飛ぶ。ついに、戦いの火蓋が切られる。冒険者たちは一斉に立ち上がり、意味もつかない罵声を飛ばして殴りかかる。

 

「クソが……兎ぃ! 白ローブ! ふざけやがって! 娼婦は娼婦らしく男にヘコってればいいんだよ!!」

 

 そう言いはなった最初の男は、さらにベルに殴打されていた。そして、ベルの体が吹き飛ぶ。

 

「ぐぅっ!!?」

 

 一番奥に座っていた男がベルを殴り飛ばして……

 

「どうした【リトル・ルーキー】。まだ撫でぐぉぁっ!?」

 

 キメ台詞不発……LV7が凄まじいキレッキレの殺意の籠った左ストレートを披露したためである。ちなみに筋力ステータスがあまりにも低い上に普段肉弾戦などしないので威力はキメ台詞不発の男のそれの一段上程度である。

 

「あぁ……これが腹立たしい、あぁ……これが苛立ち。これが怒りかと理解する……なるほど、こうも冷静さを欠くんですね? 白衣の時に幾度となく感じた怒り……なるほど、なるほど」

 

 殴り飛ばした後、手をぷらぷらとさせて痛みを逃がしているのかなんなのかといった様子でぼやき続けるラグランジュ。

 

「女……貴様いったいなにものだ!?」

 

「名乗る名前なんてないですよ。あなたの神は随分と高尚な神なんでしょう? 私の名前を耳にいれたら汚れてしまうんでしょう? その神は天の太陽のように……まあこの様では落日の煌めき、といったところでしょうけど」

 

「なっ……言わせておけば……!」

 

「そこで頭でも冷やすんですね……動けないでしょう?」

 

 言葉の応酬の合間に、ラグランジュはポイントを操り、重力により完全に動きを封じている。耳元まで近付き、小さな声で囁く。

 

「【アポロン・ファミリア】。敵に回してはいけないもの、回しちゃいましたね?」

 

「なに……を……」

 

「お支払いはしておきますから、その特等席で時間をお楽しみください」

 

「ま、待て……!」

 

 すでに店を出た他の者たちの後を特段急ぎで追わず、ゆらりと悠然と歩み去るラグランジュを誰も止められず、見送ることしかできなかった。

 

 

【アポロン・ファミリア】の面々は時間が立ってからポイントから主要メンバーが解放されることとなり、団長ヒュアキントスと主神アポロンは報復とこれを機とするベルクラネル強奪を決意していた。

 

 

 

 翌日の朝、轟音で目が覚めたベルは表に出ようとして……魔法の攻撃を受けた。

 

「んなぁっ!? もしかして、昨日の……!!」

 

「ベルくん! クソ……アポロンめ! 逃げるよ!」

 

 無論、ヘスティアらを追い込みベル・クラネルの身柄を要求する悪どい襲撃だ。

 

 道中ヴェルフからリリルカが拐われた報告があったりなど非常に状態は悪いと言わざるを得ず、【ヘスティア・ファミリア】は悩まされていた。

 

 

 

 その頃、ラグランジュはぶちギレていた。

 

「やめて……許して……助けてくださいぃっ……アポロン様に命令され」

 

「それはもう、何回も……何回も何回も何回も何回も何回もなんっかいも聞きました……情状酌量の余地はないんですよ残念ながら」

 

 空中に縫い止められている冒険者たち。【アポロン・ファミリア】の魔法使いであった。

 

 縫い止めたのはラグランジュの手中にある輝く杖……【アイグレ】が増幅した【ラグランジュ・ポイント】だ。

 

「あの教会は……私の転換点なんですよ。報復だかなんだか知りませんけど……残念ながら今私はあなたたちを殺すことに躊躇いがない。救えない……そう思ったのは久しぶりです。悪すら救った私が、『このファミリアは救えない』と断じます」

 

「ひっ……」

 

「悪は確かな信念を持っているから正義の反対として、あるいはまた別の正義としての価値がある。かの邪神風に言うなれば……空虚にして卑劣なる愚者よ、汝の名は外道なり……ですか? あの神の考え方なんて分かるわけもないですが」

 

「殺さないで……私たちは……」

 

「情報と引き換えましょう……どこと手を組めばこんな街中で戦闘する余裕が出るんですかね?」

 

 尋問が終わったのち、空中をポイントからポイントへ吹っ飛ぶという方法で【ソーマ・ファミリア】の酒の貯蔵庫へと飛んでいくラグランジュであった。

 

「へぇ……リリルカちゃんは誘拐されたんですねぇ……ベルたちへの手土産にでもしますか」

 

 かつて去った理不尽が再びオラリオに君臨する。回復だけが理不尽というわけでもないそれ。【ソーマ・ファミリア】が絶望の奇襲を受け半壊するまでは5分もかからなかった。

 

 

 

フィンの一目惚れイベント。想いは届くのだろうか?リリルカは…

  • フィンの想いを受け入れる。
  • フィンの想いを拒否する。
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