前提として、拙作では例の宴がパラケルの加入により豊穣の女主人から黄昏の館で行われ、結果としてヘスティアたちと関係が悪化していません。
また、ロキたちは正式に謝罪をヘスティアたちに対して行い、その賠償の一環としてアイズがベルに修行をつけています。
つまり、ヘスティア様もにっこりな合法ベルアイです。
パラケルとラグランジュという2面をもつ錬金術師が【ロキ・ファミリア】に加わり、幾ヶ月か後のことだ。
部屋の扉を叩く音がして、錬金術師の彼女……パラケルは顔を上げずに、入っても構わないよ、と声を出した。
「すまんな、邪魔するで! ……頼みたいことがあるんや」
扉を開けたのはこのファミリアの主神、ロキ。
「頼み事……? ふぅん? いいだろう、錬金薬の生成ということかな?」
「その通りや! ……胸、デカくできへんかなぁ」
「あのなぁ神ロキ? なにを言い出すかと思えば……そんなにくだらない願いに昇華の可能性すらある錬金薬を使うのかい……?」
全くもってくだらない願いと断じるパラケルに対し、ありとあらゆる方法をもって頼み続けるロキという構図が出来上がる。
最終的には、
「わかった! わかったよ……! 作ればいいんだろう……? まったく……錬金とはこんなものに使うものでは……!」
「こんなものってなんや! 『持ってる』奴の言うことは違うわちくしょう! うちにとっては死活問題やねん!」
ロキの願いをこのようにして受け入れたパラケルなのであった。
数日後。前の日のように扉を叩き入ってきたしたロキは、パラケルに声をかけた。
「完成したかー? パラケルー?」
「あと1日くれ、試験の段階までこぎつけたんだ」
「さすがやパラケルぅー! 問題点を解決したら完成ってことやんな!」
頷くパラケル。口角を上げるロキ。だが、その後に悩んでいるような様子でパラケルはこう続けた。
「まあ……そういうことになる。問題はこんなものの実験台になる人間はいないということだ。私だけでは不足でね……ある程度多くのデータを取りたいのにこれを使うとセクハラになってしまいそうだ。私が神ロキのようなイメージを持たれるのは避けたい」
「誰がセクハラ神やって……? あ、せやせや。昼ができたから呼ぶようにって言われとったんや、はよ!」
「……」
大丈夫、どうあがいても君はセクハラ神だ。そう言いたくなる気持ちをぐっと抑え込み、パラケルは頭を悩ませる。
試薬をとりあえず特注白衣の普段は回復薬を五つ全てにいれて20回ぶん相当にしている試験管ホルダーの一番右、最も右側のホルダーに差し込み、食堂に向かうパラケルなのであった。
今日の料理当番の料理は当たりだな、などと思いつつパラケルは手を合わせ、感謝を述べる。そうして、横に偶然座っていた、今日の食事当番……ラウルの肩をとんとんと叩く。
「ご馳走さま。このまま昼下がりの鍛練を見させて貰おうか……ラウルくん、一緒にいいかな?」
「お粗末様です! パラケルさんに見て貰えるなら大歓迎ッス! こっちっすよー!」
「元気だねぇ……やれやれ、お姉さんにはちょーっときついぞ?」
「パラケルさんもまだまだ若いじゃないっすか、体力つけましょうよ体力!」
そんな言葉を交わし向かった鍛練場で、ラウルを含めさまざまなものたちの練習を見ては科学的な観点からアドバイスをしていくパラケル。
これもまた、最近の日常に増えた風景である。同じように増えた風景として……
「ベート、一手どう?」
「お……おう任せろ、やるぞアイズ」
「団長ーっ! たまには一試合っ、いかがですかーっ!」
「ティオナ……うん、いいだろう。たまには僕も体を動かさなくてはね。なにより」
模擬試合が増えたことがあげられる。パラケルがメンバー入りしたことにより、彼女の回復薬を制限なく使えるようになって、ある程度の怪我もできるようになることでより実戦的に打ち合えるようになったのだ。
それぞれの確立された戦法を見ながら、パラケルは団員たちに腰のホルダーから回復薬を配っていく。
どうにか今日も回復薬が足りそうだと安堵しながら、最後に幹部たちに右腰の試験管を差し出して……
「あっ」
右腰の試験管、というところでパラケルは顔を硬直させた。そしてその様子を見て首を傾げる四人。
「「「「ん? (……?)」」」」
「もう……飲んじゃったよねぇ……うん、ごめん」
「えっちょっと待ってなにがどうごめんなんだいパラケルくん!?」
「おい待て! 説明しやがれ!? なんか、なんか変だぞこれ!?」
「……!?!?」
「全団員至急たいひーっ!!」
パラケルは高らかに、忘れてた、という思いを乗せて団員を鍛練場から追い出した。
そして振り返り……パラケルは爆笑しながら崩れ落ちた。
「ど……どうなっているんだ!? これは!? パラケルっ!?」
「ふくっ……くはっはははははっ!!」
「おい本当に何を飲ませやがったパラケル!? キリキリ吐きやがれ!!」
なにせそこには、豊満な胸を持つフィンとベートという地獄のようなそれがこちらに詰めよってきていたのだから。
普通の人間ならばまず何事かと己の目を疑うものだが、この錬金術師、あいにく普通ではない。呵々大笑しながら、己の笑いという感情そのものに許しを乞いつつびっくんびくんとのたうち回る。
「あは、あははははっ! も……もう許してくれっ!! くふっ……あははははぐぷぁっ!!?」
「いつまで笑ってんだてめぇ!!」
ベート・ローガ、たわわな双球を揺らしてなお衰えぬ豪脚であった。
落ち着いた後に、笑いを堪えるためにセルフでタオルを巻き目隠しをして話すパラケル。
「新薬の治験を誰かに頼もうと思って持ってきていたのを忘れてつい渡してしまったんだよ……いやぁ……ふふふ……」
「それでなんで巨乳になるんだい!? 僕たちは男だぞ!?」
「そういう薬ですので……」
「誰に作れって言われたんだ!? ロキか!! ロキだな!?」
めちゃくちゃ取り乱すフィン。当然だ、なにせ突然男なのに巨乳になったわけなので。
「なぁ、ところでなんだが」
「「なんだいベート(くん)」」
「俺たちは千歩譲るとしてもそこの2人どうするつもりなんだよ」
そしてそこの2人、と親指で差されたそこには。
「おっきい……すごくおっきい……私が……アマゾネスの中でも屈指のコレだとバカにされ続けてきた私がコレを……!」
「……これ動きづらい……ティオネってこんなに大変なの? ぁ……そういえば男の人はコレが大きいとすきなんだっけ? ベルは……どうなんだろう?」
軽く目測で見てもFは固いだろうと言うべきソレを手に入れたティオナとアイズが、かたや感慨に浸る、かたや2つの意味での戦闘を想定する。
どのみちどの男から見ようがそれらは劇物なのに違いはないだろう。
「……効果解除薬、持ってきますね」
「おう是非そうしろ」
ベート・ローガ、迷いなき即答。彼は今この瞬間、巨乳の想い人という奇跡の存在を切り捨てた、この場における最も冷静な存在であった。
単純に自分の胸がある事実が気持ち悪すぎるだけなのでは、という疑問は胸にしまいこんでおくといい。
そんな悲劇(?)があった翌日。
「さぁ神ロキ、結果的に試験になってしまったアレの反省を活かして作ったそれ、試してみてくれ」
パラケルはロキに完成品となるそれを手渡す。
「ほんまに、ほんまに、ありがとうなー……んくっ、んきゅっ……ぷぁ、これでええんよな?」
「あぁ、あとは待つだけだ」
希望に満ちた顔で、ロキは頷いた。
十分後。
「変化ないで?」
「人によって効果は左右するのかもしれないね」
二十分後。
「変化ないで?」
「最遅タイム更新かなー?」
三十分後。
「さすがにおかしいやろ!?」
「神だから地上の昇華に関わる錬金薬は効かないのかねぇ……」
「それが失敗したんやろ……?」
失敗を疑うロキとパラケル。そうしてパラケルが腰に手を当てて勢いよく飲み干す。
「どれどれ……ごくっ……んんっと」
「待ってみよか」
2人は目を見合わせて頷くのであった。
四十分後(パラケル服用から十分後)。
「わぁ」
「なんでやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
そこには白衣の前がはちきれんばかりとなったパラケルがいた。
ロキは勢いよく目の前の机を叩く。
「神は完成されきった存在である……昇華する余地、ないんだねぇ……」
「クッソ……! なんでや、なんでやぁ……うちは……」
「願いは、叶わないから願いなのかもしれないなぁ……」
「ええ風に終わらすなこんちくしょうめぇ!!」
いつまで立っても悔しがるロキと、即座に解除薬を服用して元のサイズに戻すパラケル。
ロキの慟哭はそれからしばらく続くこととなる。
この後、話を聞きつけたティオナが駆けつけてきて薬をねだったり、それをさらに聞き付けたアイズがやってきたり、そのアイズを目撃したリヴェリアが雷の魔法を覚えるかと言わんばかりになったりと様々あったのだが……ここは割愛する。
こんな感じで、ショートに楽しめる短編を書いていこうかなーと。
日常ものの練習として書いているので、こうしたら?とかそういったご意見ご感想は常々お待ちしております。
どうぞよろしくお願いします。
追記 ごちゃごちゃだったヒリュテ姉妹の名前を修正しました。
フィンの一目惚れイベント。想いは届くのだろうか?リリルカは…
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フィンの想いを受け入れる。
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フィンの想いを拒否する。