ゴライアスを助力の元見事に討ち果たした偉業を果たした彼らを祝福しようと思っていたら【ロキ・ファミリア】の旗が建っているのを確認し、思わず頬をひきつらせたパラケル。
仕方ないと言ったような顔でテントの群生地に出向く彼女たちは、群生地の入り口からしてかなり驚かれた。
「パラケルさん……ですか? なぜこちらに?」
「実験に必要な物品の採取を上層でするつもりだったんだがね……つい、人助けなどしてしまった。ということからリヴィラで精神面的リソースを補給しようという訳でね。そっちはどうだい?」
「此度も死者はありません。パラケルさんの薬品のおかげでもあります、本当にありがとうございます」
「遠征に行けない分の埋め合わせみたいなものなんだ、気にしないでくれ」
こんなやりとりを各所でいちいち行っているあたり、何気なく律儀な錬金術師なのであった。
それを見ていた【ヘスティア・ファミリア】の面々はというと。
「ねぇリリ、【ロキ・ファミリア】が遠征に出ててパラケルさんが遠征に出てない理由、なんなんだろうね?」
「リリには分かりかねます……けど、案外体調不良とかその程度の物なのかもしれないですね」
「お前らは呑気だな……近づいてるぞ、ロキ・ファミリアの本陣に」
「「そうだった(でした)……」」
「お前ら……?」
ヴェルフ・クロッゾ、それなりに苦労人ポジション形成の瞬間であった。
そんなこんなで気がつけば、彼ら彼女らは【ロキ・ファミリア】本陣、団長たちのテントまであと数歩というところ。
立っている門番……入り口番? の団員にもおおまか同じように会釈と軽い会話をしてから、パラケルは彼に用件を伝える。
「紹介したい人物をつれてきた、団長たちにお目通り願えるかな?」
「もちろんです。ただいまお伺いして参りますが恐らくはすぐお通しできるかと」
「助かるよ、無理を言っているつもりだから今度なにか贈ろう」
パラケルがそう言って見送り、後ろを振り返り、ふっと笑い出す。
「固まりすぎだろう! 私を笑い殺すつもりか!?」
「だって……だって本物の!」
「ベル様落ち着いてください! 私だって小人族の【勇者】と会えるなんて聞いてないですけど! 落ち着きますから!!」
「二人とも……深呼吸だ。火を前にして鍛冶をする時のような……」
「「その感覚はちょっとわからないかな(ですね)……」」
本当にガチガチに固まっている……左足と左腕が同時に出かねない……ベルに、小人族の英雄たるフィンの前に立つことに割と恐れ戦くリリルカ。
そして今まで鍛冶に集中しすぎた結果として「すごい人」という印象しか持ち合わせないために、軽い緊張程度で済んでしまい、結果として感覚ズレを起こしたヴェルフ。
【ヘスティア・ファミリア】の面々はそれぞれにそれぞれのリアクションを持ち、全部がパラケルの腹にクリティカルヒットしていた不思議な状態を作り出していた。
笑うパラケルに、戻ってきた彼が声をかけてきた。
「パラケルさん。お連れ様。許可が出ました。どうぞこちらへ」
「あー……面白かった! あぁ通れるのか? ありがとう。では行こうか【ヘスティア・ファミリア】!」
「「「はい!」」」
テントの口を潜ればそこは予想よりも広い中に置かれたテーブルと椅子……人数分置かれているがひとまずは立ったままに。
「順調に帰ってこれているようでなによりだ、団長。傷病者は後で診るから居たら教えてくれると嬉しい」
「傷病者すらも君の薬のおかげで居ないんだ。多くの団員にも言われたと思うが、団長としても、個人としても心から感謝するよ。ところで紹介したい者たち……とは?」
「薬に関してはそれが私の仕事だから構わないとして。彼らが紹介したい者たち……【ヘスティア・ファミリア】の冒険者とサポーター、それに【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶だ」
そこでパラケルは彼らをずいっと押し出し、挨拶を促した。
「え、えっと、【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルです、フィンさん始め【ロキ・ファミリア】の方々を尊敬しています!」
「間違いを訂正させて頂きますが、【ソーマ・ファミリア】所属、【ヘスティア・ファミリア】にお世話になっているリリルカ・アーデと申します」
「【ヘファイストス・ファミリア】、ベル・クラネル専属鍛冶師のヴェルフ・クロッゾだ。願えるならヴェルフと呼んでくれると嬉しい」
フィンはひとつ頷くと、パラケルに確認を取った。
「なるほど。彼らは強くなる……いや、既に強い。彼らに足りないのは経験。だから僕に助けたついでに知らせる……と?」
「おおまかその通りだ。私が支援したとは言えど、彼らはゴライアスを倒すほどの力も持っているからね」
「なに? ゴライアスの再出現が起こっていたのかい? 君が支援して倒した、と?」
パラケルはその疑問に頷いた。フィンはそこで考え込んだ。
「……うん。わかった、僕も彼らに見出だすものはあった。というか、彼らを捨て置くという考えをするたびに親指が震える」
「フィンの勘……親指の震えは全くもってよく当たるからねぇ……君の親指の震えという不思議な現象もいつか研究してみたいなぁ?」
「ははっ、その機会が訪れないことを願おう」
フィンはひとまずベルたちのことに対して協力姿勢を取ることとした。話を戻すパラケルの言葉に耳を傾ける。
「まあとにかく、私から彼らに教導しようと思っているんだ。それにあたって、いくらか人員を借りれる時に借りようと思うがどうかな?」
「具体的には誰を?」
「ベルに対しては早朝戦闘訓練を行いたい。監督は私がする。人員は……ベートかアイズだ。できればアイズ」
「なぜ?」
「アイズが人に教えることになれば変化が見込めるだろう? 教えるというのは人を理解するということだ。人付き合いが不器用な彼女だが……少しでも変わるといいな、というのと彼女の戦闘技術を彼……ベルは簡単に吸い取るはずだと思ってね」
「……君がそこまで言うなら認める。旗に恥じることのないようにしてくれよ?」
「任されたよ。残りの2人に対しても私なりにメニューを考えておく。リリルカなどは指揮官タイプだ、君にも声をかけるかもしれない」
「その時は同胞のためにも喜んでやらせてもらうよ」
いいようになったか、とひとつパラケルは息を吐く。
ベルとアイズは既に早朝戦闘訓練を行っている。それをここでフィンに認めさせたことで大手を振ってより整った場所でもできる、それだけでも十分だった。
「よし、ここからは私とフィンだけでいくらか話がしたいから……ベルくんたちはどこかに通してあげてくれないか?」
「ひとつ空きがある、そこに通すといいよ。もとはそのテントは傷病者用だったんだけど空いたものは仕方ない」
「はい、ありがとうございます!」
「それではパラケル様、また」
そうしてテントの中が【勇者】と【叡知】だけになったとき、そっと【叡知】は呟いた。
「アラフォーの恋か」
「なっ!!?」
【勇者】フィン・ディムナ、リリルカに心を奪われる。
どうにも運命なのか。リリルカは盗人をやめた結果、今度は概念を盗み出したようであった。無論彼女がどうあったかなど二人とも知らないのではあるが。
その後、リリルカと2人になる策をフィンに入れ込んだパラケルは、しばらく急に自分への好感度が高まったフィンと紅茶を嗜んでいた。
少し立ってからティオネが飛び込んできたのは語らずともといったところだろう。
状況が動くのはこのさらに何日か後。
リヴィラの街への神ヘスティアの到着があってからだった。
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フィンの一目惚れイベント。想いは届くのだろうか?リリルカは…
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フィンの想いを受け入れる。
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フィンの想いを拒否する。