ゾンビ•セルフ•ダイアリー   作:ゾンビのモブ

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回想

 俺は屑だ。

 

 人間なんて皆いなくなればいいと思える程に大した十字架を背負っているわけでもなくそんな痛い事を思えるくらいには屑だ。

 

 才能がなかった。

 人並みの能力もなかった。  

 

 能力なんて歳食えばいくらでも水増しできると言われたし実際俺はそのツイートにいいねをしたが激しく意味のない行為だった。

 

 自らの力の無さを露見させずに、騙して誤魔化して教師や強い生徒に無意識に胡麻すりしながら生きてきた。

 無意識だから罪の意識はない。

 

 イジメも喧嘩も厄介事全般全てスルーして生きてきた。どうせ俺がやらなくても解決するし誰かが助ける。勇気もない。気力はあっても気が向かない。

 

 そうして気付いたら我のないポキャブラリーも魅力も特技もない、ザ空気みたいな奴になっていた。

 

 だから見た人は皆俺に対してこう思う。

 つまらない人きたって。

 

 そして空気のように扱う。お義理の会釈。お義理の会話。お義理の話題振り。俺も義理で返す。

 

 本当はすぐにでもその場にコーヒーぶちまけたかった。ちゃぶ台返しがしたかった。薄ら笑って皮肉を言って、そのまま消えたかった。

 でもやらない。怖いからだ。

 

 俺のような自分がない人間は世の中にごまんと居る。

 店長に誰でもできると言われてコンビニでバイトを始めた。

 

 そこでもミスをした。マイナスを一万くらい出した。しかし俺は内引きを疑われもしなかった。印象の薄い人間というのは犯罪を疑われにくい。俺は何にイラついているかわからない心境で不足分を天引きして貰った。

 

 俺はレジでも接客でも簡単な調理でも漏れなく全部ミスをした。でもめちゃくちゃすごいミスはしない、平凡でもない。平均より劣っている。だがめちゃくちゃ劣っているわけじゃない。

 

 ドラマのような劇的な不幸も劣化もなく、テレビでよく見る耳を疑うような能力や成功談がある訳でもなく、顔もガタイも普通で『でもやっぱり劣っている』。

 

 ある日、国道を十字に横切る橋を渡りながら俺は思った。これらもいわゆる地獄(つまらない人生)なんだと。家族も健在で五体満足で金銭的苦労もなく変な病気もない。

 

 一見幸せにみえる。

 

 しかしつまらない人生を100年送って辞世の句すら見向きもされない人間の人生にどれだけの価値があるのか。

 

 俺は思った。だから思った。全部消えてしまえと。

 そしてもしこれがまあ少しは見どころのある人生ならば、面白みも小指の先くらいは辛うじてある話ならば、何かが起こるんじゃないかと。

 

 宝くじに祈るような取るに足らない心境で冗談半分に、俺は思った。結果はツンでもデレでもいい。台風でも地震でもどっちでもいい。

 

 ぬいぐるみの位置が変わって隙間から万物の霊力が漏れ出して消えた世界を直す雑展開でもなんでもいい。

 

 そしてそれら全て思考を自己紹介の代わりにそのまま合コンで口にした。最後にジョークを添えて。

 

「○○ちゃん、昨日飼い猫に噛まれたんだろ。それゾンビ映画のオープニングみたいじゃね?」

 

 笑いが起こるかと思ったが、葬式のように静かになって、

 

「うわ、さむ」

 

 俺はすぐに誤魔化した。能力はないがKYと言われた事もない。

 

 いきなり痛い自分語りを始め出したと思いきや取り繕うように空気の読めないジョーク。自業自得だ。

 

 ちょいトイレ行くわと言ってしばらく出れなかった。しかし笑い声が聞こえた。恐る恐る帰ってきたら辛うじて空気が戻っていた。

 

 一つ上の先輩メンズは気にすんなぁと言って周りも頷いていた。

 

 だからまぁいいかと俺はまた元の鞘に戻り、でも忘れていた。合コンにもたまに論外が混ざる。その時の俺は論外枠だった。

 

 怪訝な表情でみつめる女子に俺という存在を拒否ってた女子にノリと悪戯で告白してみた。

 

 当然すぐに断られた。その笑い方が苦笑いにしても苦し過ぎる笑い方だった。その後の先輩方の爆笑にもなんかぎこちなさを感じた。仮にジョークだと捉えられていても、

 

『うぜーこいつ』

 

 感のスメルを場の全員が発していて、俺はやはり劣化しているのだと、或いはワンチャン狂っているのだと自覚した。

 

 笑って誤魔化されたが、皆の顔が言っていた。

 

『お前痛過ぎ』

 

 本当にそうだったのかはわからない。

 確認したわけじゃない。

 でもそう感じた。感じたら俺も一緒に苦笑い。速攻でちょっと用事できましたと雑に退場していた。

 

 つまらない人生につまらないジョーク、つまらない人間関係にしょうもない洞察力。しょうもない毎日にしょうもない……

 

 家に帰って気付いたら、あれだ。

 

 首を吊っていた。

 そして数分後、外の全然関係ない救急車のサイレンで目を開けた。

 

『あ? なんで生きてんぐぷ。生きてんゲホッ、だよ……イミフ』

 

 当初感覚はあった。しかし首から上に血が回ってない感じ。死に物狂いで病院に向かったのはそのすぐ後だった。そして薬で一部軽快したのである。

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