ということで"感謝"の4日連続投稿……!!
人間の性格や見た目に千種万態あるように、ウマ娘にも個性や容姿に違いが存在する。優しいウマ娘に荒くれ者のウマ娘、背の高いウマ娘、背の低いウマ娘といった区別がつけられる。それらがウマ娘たちにとってどう関係があるのか。彼女達も"ウマ"とついているものの、心は乙女である。ヒトと異なる耳と尾があるだけで、中身は人間と変わりはない。
芝や砂の大地を駆け、晴れの日でも雨の日でも、雪の日でもレースとなればその足を使い頂点を目指す。それは見た目がどうあれ、中身がどうあれ関係ない。確かにウマ娘の中には陸上競技ではなく、ウマドルといったアイドル業を目指すウマ娘もいれば、モデル業と両立させているウマ娘やヒトと同じ道を歩む者も存在する。
けれども、トレセン学園に通っているウマ娘の多くは永遠の憧れと言える花形職業である、トゥインクルシリーズに出場したいと願っている。
足が遅いなら、速くする。集団から割り込んで出ていくパワーがないなら、パワーをつける。スタミナが足りないなら、スタミナを増やす。根性がないなら、根性をつける。レース運びを行う頭がないなら、勉強して賢さを身につける。
ウマ娘も人間とおなじく、努力次第で変わることが出来る。だが、どんなに努力しても変わらないものはある。それが身長である。
通常のヒト族とは少し異なる種族であるが、外見は前述の通り、頭の上のウマ耳と腰から伸びる尻尾を除けばヒトそのものであり、眉目秀麗かつ人間よりも遙かに優れた身体能力を持つ神秘的な種族とされている。
基本的な身体能力はヒト族より優れている部分も多く、特に最大の持ち味とも言える走力は時速60キロを楽に超えるため、自動車との並走も可能である。
また可憐な少女の姿にも関わらず十枚は積まれた瓦を拳の一撃で叩き割ったり、体の数倍はある超巨大重機のタイヤを引きずったり、側溝に嵌った車を持ち上げたりと、鍛え上げられたウマ娘の中には規格外のパワーを発揮する者が多い。肉体的に未成熟な子どものウマ娘であっても、後ろ蹴りや体当たりでヒトの大人を軽く吹っ飛ばすほどの膂力を持つため、人間が走るウマ娘の前に立つのは、車道に飛び出すのも同然と言われるほどである。
ただし、眉目秀麗かつ優れた身体能力を持つ者は時代の流れと共に減少傾向にあるようで、一部の優秀な血統から生まれた者だけとされている。しかしそれでも、ヒトより優れた運動神経と普通以上の容姿になる種族である。
だが、ヒトの牝と近いため、身長が170cmを超えるウマ娘は少なく、身体能力的な違いはないにしても、足の長さという走る上では重要となってくるアドバンテージを獲得できないウマ娘も存在する。そのウマ娘の1人がナリタタイシン。身長は145cmとやや小柄な体型ゆえにとある悩みを抱えていた。
「クソっ……! まただっ! またっ!」
基本的にレースにおいて、有利とされるウマ娘はサイレンススズカのような理想美とされるスラリとした体型のものか、トレセン学園現生徒会長のような恵まれた身長と脚質を持っているとされている。
だが、背は低いというだけで小柄だからと、スピードやパワーに欠けるという不当な判断を受けたナリタタイシンは、デビューレースに出場出来ず、また周囲のそういう目のせいで自信をなくしていた。今日もスカウトを受けるための模擬レースにおいて、周囲からの目線に耐えられず逃げ出した彼女は自らの心の弱さに苛立ちを隠せず、トレセン学園の中でも人目の少ない場所で悪態をついていた。
「小柄だからなんだ! アタシは、好きでこんな身体に……クソっ!!」
彼女を苦しめているのは周囲の人間だけではなく、自分よりも先にデビューレースで勝利を飾った親友のビワハヤヒデやウイニングチケットに嫉妬し、心配して声をかけてくれた彼女たちに当たってしまったことを悔いていた。
「ぐすっ、ふえぇ……うぇぇぇぇ〜ん!!」
どうすればと考えあぐねていると、近くで誰かが啜り泣く声が聞こえた。今は他人を気にかけている場合ではないが、いつまでも泣き止まないその誰かは先程のナリタタイシンのように自分を責め始めた。
「ばかっ、ばかばか、ライスのばか! がんばるって、がんばろうって、決めたのに……」
ぐすっ……! と鼻をすする音が聞こえ、ナリタタイシンはその女の子がいる方へと足を向けた。黒く長い髪を垂らしたウマ娘は偶然か否か、タイシンと同じ身長であり、溢れる涙を拭きながら彼女は続けた。
「なんで……なんでライスは、こんなにダメな子なの……?」
泣きわめくウマ娘があまりにも痛ましく思えたのはまるで鏡を見せられているようだったからだろうか。タイシンは放っておこうと決めていたが、心が締め付けられ、ここでこのまま進んだら自分は後悔すると感じてか、彼女の元へと足を進めていた。
「……おい」
「うぅ、あの、ごめんなさい……それ以上、こっちに来ないで……?」
「え? なんでさ」
「だ、だって……ライスのそばにいたら、不幸にしちゃう」
訳が分からなかった。どういうことだとタイシンは首を傾げた。聞けば、泣いているウマ娘・ライスシャワーは周りにいるヒトやウマ娘を不幸にしてしまうらしい。鳥の糞が落ち、雨の日は傘を忘れ、持ってきても傘は吹き飛ばされてしまうそうだ。
「迷惑かけちゃうよ……ライスがダメな子なせいで……。ライスもダメじゃないライスになりたかったけど……頑張ろうってレース出ようって思ったけど、結局……!」
ライスシャワーもまたナリタタイシンと同じくレースから逃げ出したウマ娘であり、その顔には走りたいけど走れない理由があるということがタイシンには伝わった。
「アンタも、なのか?」
「えっ……?」
お前もその身体のせいで周りに認められない、活躍することを期待されないウマ娘なのかとナリタタイシンは問いかけたかった。けれども、ライスシャワーは「おまえも」ということは貴方もライスと同じで自信が無いのかと思った。近いようで遠い偶然の勘違いではあったが、それが2人を強く結び付けた。
「……背が低い者同士、あいつらを見返したくない?」
「あ、あいつらって……?」
「決まってるじゃん。アタシたちを見た目だけで判断したやつらのことだよ」
「ふぇっ? で、でも……」
「アンタもトゥインクル・シリーズに出たいでしょ? そのために頑張りたいって思ったんじゃないの?」
ナリタタイシンの言葉にライスシャワーは弱々しくではあるが頷いた。レースに出て、勝つことで誰かを笑顔に、幸せにできたのなら自分にも走る意味があるのではと感じていた彼女にはどうしてもレースに出たいという意思があった。それでも、今まで自分のせいで起こった不幸な出来事や、周りから期待していないという冷たい目線が彼女のチャンスを奪い続けていた。
「う、うん……! 私も、出たい! がんばり、たい……!」
「だったら……やってやろうよ……!」
ナリタタイシンは1人が好きだ。それは煩わしさから解き放たれるため、また素直になれないという感情の裏返しでもあった。しかし、今ここに自分と同じ悩みを抱える仲間ができたことで、彼女は一歩進むことができた。それはライスシャワーも同様であり、共に進む友達の存在に彼女の心は蘇った。
「となれば……」
自分達の勝てない理由は、小柄な体躯にあるのなら、そこを差し引いてもレースで勝てるだけの実力と自信をつけなければならない。けれども、その練習を支えてくれるトレーナーは共に不在であり、自分たちで練習メニューを決めようにも限度がある。
「そういえば、なんか相談室が出来たって言ってたな……」
「え、えっ、い……いくの……?」
人見知りしがちかつ、自分が周りを不幸にすると思っているライスシャワーの当惑の混じった声にナリタタイシンは尻込みするも、使えるカードが少ない自分たちに選んでいる暇はないと、行くことを決意した。肉のお兄さんによる相談室と書かれているが、まさか絵の通りの身体がムキムキのような男は出てこないだろうと心に余裕を持たせてその教室へと足を運んだ。
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ポスターに書いてあった通り、その教室には1人のトレーナーがいた。爽やかを絵に書いたような顔とスラリと細い体格をした青年で、たづなの描いた筋肉隆々のマッチョメンには見えない。ナリタタイシンはやっぱりかと鼻で笑い、ライスシャワーは安心すると、自分達の悩みを吐露した。
初対面であったが、適切な相槌を打ち、口を挟んでこない鳴造は話しやすかったのか、言い淀むことはなくスムーズに自分達の目的を話すと、傾聴していた鳴造はウンウンと頷いた。
「手足の長さは変えられないけど、筋肉は変えられる。走る時に重要な筋肉を鍛えれば、結果が変わるかもしれないよ」
「ほ、本当……?」
「もちろんだよ」
「でも、走る時に重要な筋肉って具体的になんなんですか?」
タイシンの質問に答えるべく鳴造は人差し指を立てた。
「走る時に重要な筋肉と言うと2人はどこを想像するかな?」
「そりゃ、走るんだから足なんじゃないの?」
「ら、ライスも、そう思う……」
だよなと同意するタイシンとライスに鳴造は「そうだね」と肯定し、さらにつけ加えた。
「確かに走るとなれば足の筋肉は重要だね。例えば、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングス。他にも股関節周りやふくらはぎの筋肉も鍛えるのもオススメだよ」
「だ、だいたい……?」
首を傾げるライスシャワーに鳴造はいつものホワイトボードを持ってくると、キュピキュピとペンで先程述べた筋肉がどの位置にあるのか記していく。すると、太ももやその裏、ふくらはぎといった下半身の部位に集中していた。
「じゃあ、やっぱり足を鍛えればいいってこと?」
「いやいや! ただ足だけを鍛えていても体幹の筋トレが弱いと軸がぶれて余計な体力を使いやすくなってしまうんだ」
そう言って、鳴造はお腹と背中周りの部分に線を入れる。先程述べた脚部の筋肉に加えて、この辺りの筋肉を鍛えておけば走りに安定感が出てくると「!」をつけた。
「筋肥大をさせる必要は無いし、自重トレーニングだけで十分なんだ。自分の部屋やちょっとしたスペースがあれば何時でもトレーニングできるよ」
バランスが安定することでスタミナの消費を抑えられる上に、安定感がつけば力負けする危険性も減る。足のトレーニングばかりを行ってきたナリタタイシンにとっては目からウロコであり、興味津々に鳴造の話に耳を傾けていた。
「あ、あの、例えば……ど、どんなトレーニングがあるんですか……?」
街雄の筋肉講座〜♪
「えっ、えっ!? ……な、なに!?」
やぁ、みんな肉のお兄さんだよ〜!
今日は走る時に身体の安定感を図るトレーニングを学んでいこう! 走る上で必要な筋肉のうち腹筋と体幹を鍛えるにはプランクがオススメだ!
基本姿勢は肘を直角にして腕を地面につけて、腹筋に力を入れて体を一直線に! 腰が上がったり、下がったりすると効果が薄くなるから注意だ!
「……こ、こう、ですか?」
うん! 顎は上げずに後はひたすらキープしよう! 最初は30秒から1分を目標にしてみよう! 毎日続けて理想の腹筋と相手に押し負けない体幹を手に入れよう!
次に背筋と体幹を鍛えるトレーニング、バックエクステンションについて説明するよ!
「おおっ、なんかカッコイイ名前だな」
これは名前がカッコイイだけじゃなくて、簡単に背筋を鍛えられるからとてもオススメなトレーニングなんだ。基本姿勢はうつ伏せに。あとは脊柱を逸らして、上体を伸ばす。これの繰り返し。学校の体育や部活動でも取り入れられてるトレーニングで、1セット15~20を目標にやってみよう!
「んっ、こりゃ、いいな。結構、背中に効いてるって、感じがして!」
そして、最後はランジ! これは下半身の筋肉と股関節周りやふくらはぎの筋肉も鍛えられる一石、いや一石五筋のトレーニングなんだ!
「なんだ一石五筋って」
足は肩幅に開いて、あとは片足を大きく1歩踏み出すだけ。この時、身体は地面と垂直になるように。片足10回ずつを目標にやっていけば、自然と足周りの筋肉がパワーアップ! 他のウマ娘を追い抜ける自慢の脚の出来上がりだ! さらにダンベルなどの重りを持てば効率アップ!
「わぁ、こ、これで……ライス、強くなれるかな……?」
「けど、本当にこれだけで速くなれるのか?」
「筋肉に貴賎はない! 努力すれば努力した分だけ、結果は自ずと見えてくるはずだよ!」
前述の通り、走る上で筋肥大をさせる高強度なトレーニングは、優先順位が高くないので、まずは「身体の安定感」を意識しながら、トレーニングを行っていこう! もちろん、ランニングもして、持久力アップも忘れずに。
「安定感と持久力のどちらも欠かさず鍛えれば、効率アップは確実! 一緒に筋肉の成長は分かち合おうっ!」
「「はいっ!」」
楽しい。2人にとって練習とはレースに勝つために必要な手段であるため、仕方なくという気持ちでやっていたが、こうして誰かと共に汗を流すことがこんなに気持ちのいいものだとは思ってもみなかった。それもこれも、目の前にいるわかりやすい説明に、指導上手の鳴造がいたからだろうか。
「なぁ、街雄さん」
「ん? どうしたのナリタさん」
「私のトレーナーになってくれないか?」
「あっ、ずっ、ずるいっ! ら、ライスも!」
これだけの指導力にトレーニングに対する知識、さらに隣で励ましてくれる存在がいれば、もっと頑張れるのではないかと思った2人は自分のトレーナーになって欲しいと鳴造に懇願するが、彼は困ったように頬をかいた。
「……ごめんね。僕、ウマ娘のトレーナーになる資格は持っていないんだ」
「ええっ!?」
「そ、そんな……」
あくまで指導員であって、マンツーマンでのコーチングは出来ないと言う鳴造に2人は肩を落とした。そんな2人を見て、鳴造は優しい表情で口を開いた。
「君たちなら大丈夫だよ、僕のトレーニングに文句も言わずについてきてくれたんだ。これからも諦めずに続けていれば、君たちの良さに気づいてくれるトレーナーは必ず現れるよ」
語りかけてくる声はとても柔らかで、鳴造の言葉にナリタタイシンの不安は吹き飛んでいた。しかし、自分が周りを不幸にしてしまうと思い込んでいるライスシャワーは悲しそうな顔で首を振った。
「む、無理だよ……ライスは、みんなを困らせて……不幸にしちゃう……だから、ライスについてくれる、トレーナーさん、なんて……」
目を逸らし、身体を強ばらせたライスシャワー。過去の経験からずっとそうだと思い込んできた偏見は消えない。彼女の中ではそうだと決まってしまっているから、覆せない事実だと思っているからこその言葉だった。
出会ったばかりで付き合いの短いナリタタイシンには本当にそうなのか分からず、安易に言葉をかけていいものかと悩んでいると突然、目の前の男が弾け飛んだ。
「はいッッッ!!!! サイドチェスト!!!!! 」
その言葉通りのポージングをしながら、艶のいい肌と肥大化にも程があるだろうという筋肉を見せつけてくる鳴造に2人は悲鳴にも似た声を出すが、目の前の男はポーズを解かずに口を開いた。
「大丈夫だよ、ライスさん。僕はこの1時間、君といたけど不幸になんてなっていないからね! むしろ、君とトレーニングをしたおかげで、ほら見て? 僕の大腿四頭筋が喜んでいるよ!」
「ほ、ほんと……?」
そう言われても分からないナリタタイシンに対して、ライスシャワーは真面目に聞き返していた。鳴造は力強く頷くとさらに言葉を続けた。
「今まで誰かを不幸にしてきたからって、これからも不幸にするなんてことはないと思うよ。今日の君は誰よりも僕を幸せにしてくれたからね!」
声も、言葉も、身体も力強く、ライスシャワーの苦手なタイプに該当する鳴造だったが、不思議と彼女は心にいつもの怯えはなく、むしろどこか安心感を感じていた。
鳴造の言う通り、今から未来まで誰かを不幸にするという確実性はない。あくまで可能性の話だ。ライスシャワーはその可能性に怯え続け、自分の殻に閉じこもっていた。しかし、その殻を打ち破った鳴造の言葉に彼女の瞳には涙が溜まっていた。
「最後に付け加えると頑張る君は美しかった。もちろん、ナリタさんもね!」
だから、これからも進み続けていれば、見る目のある誰かが君たちを見つけてくれるよと親指を立てて彼女達の心を押し上げる。
2人の不安やコンプレックスは見事に消え去り、1ヶ月後2人は新たなトレーナーと共に笑顔でデビュー戦を勝利したのだとか。そして、2人を幸福な道へと導いた鳴造は今日もあの部屋で様々なポージングを決めていた。
「頑張ります! ます? ますっ! はいっ! モストマスキュラー!!! 」
ナリタタイシン と ライスシャワー の 体力 が 5 下がった!
ナリタタイシン と ライスシャワー の スピード が 10 上がった!
ナリタタイシン と ライスシャワー の パワー が 10 上がった!
ナリタタイシン とライスシャワー の スタミナ が 10 上がった!
ナリタタイシン と ライスシャワー の 根性 が 10 上がった!
スキルはくれないけど、少しの体力消費で基礎能力上げてくれるトレーナーがいるらしい。
あらすじには書きましたが、目標というか終わりが決まっていると書きやすいかなということで全12話で終わらせることにしました。一応、把握よろしくお願いします。まぁ、まだ誰を登場させるとかどんな話にするかとかは決めてないんですけどね。たづなさん回は予定外だったので、加筆修正した後に1.5話みたいな感じで変更するかもしれないです。
次の候補は取り残された桐生院葵に、サイボーグウマ娘、モデルウマ娘かウマドルに憧れるウマ娘の話にしようかなと。
SSR街雄鳴造
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欲しい
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いらない
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SSRたづなさん欲しい
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SR桐生院葵欲しい
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全員欲しい