バカと無情の試召戦争 ~番外編という名の復習ノート~ 作:Oclock
四月もあと二週間弱で終わりを迎える今日この頃。
このわたし、広報部部長にして、3-C代表も務める青葉文は、原稿の確認作業を行なっていた。
文「あやー……、今月は随分と良質な新聞が作れそうですねー。」
標示「……そうですね。こうして大量の原稿を見ると、例年よりイベントが多く感じますね、部長。」
副部長の木地君も、抑揚のない口調で話ながら、手伝ってくれている。
標示「先週の水曜にDクラス、金曜にはBクラスに勝利。それから今週火曜にはAクラスに宣戦布告……。2年Fクラスは異例のスピード、異例の回数で試召戦争を繰り返していたことが先日の取材で判明。それに影響を受けたのか、偶然なのか、3年Eクラスが同学年Bクラスに宣戦布告、からの勝利。」
文「それから、君のクラスメイトで美術部部長の
標示「ちょうどαクラスの入部試験だとかで、我々が潜入調査を行なう日ですね。」
そう。まさかまさかのダブルブッキング。と言っても、想定していなかったわけではない。広報部メンバーでαクラスの調査を行なうメンバーは既に決めているのだ。
まず、先日の取材敢行のMVPである花沢ちゆりさんは確定。当然、わたしも参加する。後は、一年の残り七人から、学力の高い生徒三名を選出。
αクラスは勉強のための部活だから、ある程度の実力がなければ振り落とされる。そう思っての構成だ。
文「まあ、入部届は我らが同志、近衛さんに預けたから、後は入部試験に向けて勉強しましょう。木地君、今日もご指導お願いしますよ。」
標示「……そうですね。ですが、まずは目の前の原稿を片付けましょうか。今はまだ、部活の時間ですし。」
・・・
それから一週間が過ぎました。正直に言いましょう。……眠いです。
ここ最近、αクラスの試験を突破するために、朝から晩まで、寝る間も惜しんで木地君と二人三脚で猛勉強しました。彼からも『次からは一人でやってください』とまで言われましたからね……。まあ、わたしも二度とやりたくはないですよ、こんな勉強法。
試験会場となっている、二年のAクラス教室へと足を運ぶと、もう既に他の入部希望者や広報部の潜入取材班が何人も……、二十人とちょっとくらい居ますね。
その中には、霧島さんに坂本君、土屋君など有名な人物の姿もちらほら見えている。
それから、数十分後。残りの入部希望者と思われる生徒がやって来た。やって来たけど……、花沢さんから聞いていた人数より少ない気がする。入部希望者の数は百と両の手でギリギリ数えられるくらい。もう少しで試験時間になるのに、まだ六十人くらいしか来ていない。
秋希「はーい、皆さん着席してくださーい。机に名前が書かれてるプラカードがあると思うので、自分の所にお願いしますねー。」
美穂「あ、もし自分の名前が見当たらない場合は言ってください。」
さらに数分後。時計は10:00を示した頃、現状αクラスとしてポスターに書かれたメンバー4人と思われる人達(近衛さんは知っているけど、他の人は曖昧なんです)が、教室にやって来て、着席を促してました。
秋希「はーい、どうも皆さんはじめまして。そうでない人の方が多い気がしますがはじめまして。私はこのαクラスの副部長……一応『クラス』と銘打ってるから、副代表かな……を努めさせて頂いております、近衛秋希と言います。よろしくー。」
「ん?今、副代表って言ったか?」
「じゃあ、代表って誰だ?」
「普通に考えて久保だろ?」
「でも、それなら後ろの方に構えてないよね……。」
秋希「さて、と。それじゃ、聞きますか。このαクラスの代表の姿……。見たい人は挙手をお願いします!」
あやや、希望者ほぼ全員が手を挙げますか。代表のことを知っているこっちからしたら、この後の展開がなんとなーく読めるんですけど。
秋希「……もう一度聞きます。本当に代表に会いたい?」
手が下げるものはいなかった。
秋希「きっと後悔するよ?」
その言葉で二人ほど手を下げた。
秋希「誰が代表でも、本当に文句言わない?」
さらに三人ほど手を下げる。
秋希「……本当に?」
一人の手が下がる。
秋希「……ここまで念を押す時点で、大体察しがつくと思うけど……、本当に文句言わないのよね?」
その言葉に一気に手が下がる。
秋希「一、二、三……………………、三十一。ギリ過半数か。分かりました。それじゃあ代表、入ってきて。」
やや呆れ気味にそう言うと、代表が姿を表した。
一部男子生徒「「「……………………は?」」」
一部女子生徒「「「……………………え?」」」
あー……。やっぱり予想通りの反応ですね。驚いてないのは、既に事情を知っている私達広報部のメンバー…………と、霧島さんと坂本君だけですか。
零次「おはよう。俺のことを知らない奴は、この文月学園にいないだろうが、自己紹介といこうか。俺が、2年Aクラス代表にして、このαクラスの代表、そして今回のαクラス入部試験の総監督を任された、双眼零次だ。」
重く張り詰めた空気の中、αクラス入部試験が、始まりを告げようとしていた。