黒い人影が赫焉の業火の中から現れる。
そして、不自然に揺れる影法師から金属片が溢れ出し、過去の幻影が金属片を依代に形を織り成した。
海面に揺らぐ亡者の影。
それは、バグの集合体として融けた決戦兵器の────“残骸”だった。
【魂魄復元術式《黄泉比良坂》】
【【機械仕掛けの英雄】復元完了】
【対化身撃滅魂魄開発術式《Dyrition Ego Machina》】
【勝利条件が追加されました】
【勝利条件:『我らの時代は、再び輝ける夜明けを迎える』】
【制限時間:00.00】
【目標……】
【繝ウ繝ェ】【繝ォ繝ウ繝ウ繝ォ】【繝サ繝舌?】
渾々と間欠泉の様に噴き出す金属片が蝗災の様に終末の眷属の群れに殺到し、生きたまま再生出来なくなるまで小さく、細かく裁断していく。
“残骸”は過程を消し飛ばした様な不可解な挙動で終末の眷属を鏖殺し、深紅に染まった豪腕でエネルギーに対して強力無比の耐性を誇る《■■■》を叩き割った。
しかし巨大な感情を吐き出す様に吼える“残骸”の気配からは、何も読み取る事は出来なかった。
生きる希望も、奪われる憤怒も、傷つけ合う憎悪も、高みへの憧憬も、敵へ抱く敬意も、感傷も、疑問も、闘争心でさえ。
そこにかつてマスターと呼ばれた者、ルン・バ・ンルと呼ばれた者は存在しなかった。
今まで剥がれ落ちたことも無い“殻”が剥がれた後なんて、誰も知らない。
だから、そこには“余計”なもの全てを取り除いた“無“が存在していた。
空虚で無機質な“残骸”だけが。
・・・・・
硬質な物体が奏でる音音
鉄屑のような、歪んだ歯車
歯車は回る
歯車は周る
歯車は廻る
たとえ化身の尖兵に取り込まれ、復元された情報の集合体と化そうとも
“彼”が創られた意味を果たす為に、“存在するだけの力”に指方向性を与え、化身を抹殺するための兵器を開発した
そんな“彼”に
───何処からか、静かにさざめく樹々と鈴虫の『声』が聴こえた
『マスターが望んだ事だとしても』
『パパがなにをしたいのかわからないけど』
『今回だけは無理矢理にでも譲歩してもらうぞ、マスター』
『なんとなくだけどわかったよ』
『『其処は────貴様(あなた)が居座って良い場所ではない(って)!』』
『・・・・・・』
・・・・・
とあるマスターが“残骸”と化した後、たった一つの存在によって傾いていた戦場は覆された。
肉片から再生する眷属達は鏖にされ、空間移動を先回りして潰され、属性魔法は対魔法に特化した兵装に無効化され、エネルギー吸収においては無敵である筈の《■■■》は瞬間火力に勝る法則の押し付けによって打ち砕かれた。
ステータスに任せた近接戦闘も決戦兵器の演算力を手に入れた“残骸”の学習と開発を前に意味を為さない。
じりじりと削られていくHP、MP、SPの上限。
怨念を原動力とする呪術に対して効果を発揮する海属性と聖属性に対応した呪術式によってステータスを削られ、尽きる事はない様に思えたリソースは次第に底をつき始めた。
特定の相手に対する絶対優位。
それが鹵獲した化身を分析し、新たな機能を開発する事に特化した決戦兵器の本領。
未完成かつ復元された情報が劣化しているだけあって本来のカタログスペックとは比較にはならないが、適宜性質を切り換え、あらゆる開発を“受け容れる”素体によって決戦兵器に劣らぬハイスペックを叩き出す。
────魂魄を弄った代償と引き換えに。
それが“残骸”の限界だった。
器としての強度が高く、幽体に対してこれ以上無いほどの適性を持つ【死霊王】だったとしても、限界は存在する。
かつての【死霊王】は当時の【拳姫】を始めとした猛者達の魂ごと知識と技術を吸収し、センススキルとして一級の戦闘技術を自らの死した血肉に馴染ませる事に成功したが・・・
限界を超えて魂を吸収した結果、最終的に破綻した。
片や超級職を含む歴戦の猛者達がその生涯をかけて蓄積した魂。
片や先々代文明から存在し、莫大な情報を蓄え続けた決戦兵器の魂。
どちらに天秤が傾くかなど、自明の理。
圧倒的な情報量を持つ魂を吸収した、一人の人間にかかる負荷は一体、どれほどのものか。
ましてや肉体に【死霊王】の器が離れる程の自己改変を施し、自身の性質の切り換えを可能にするなどという蛮行。
自らの負荷によって魂魄は軋み、器は罅割れていく。
では臨界点に達した時、“自滅するだけ”で済むのか?
判り易く例を挙げよう。
ブラックホールという天体が自らの自重によって重力崩壊を起こす事で生まれるように。
それは創造ではなく、崩壊から産声を上げるものである。
・・・・・
ガチャン!ゴキッ!
『これは・・・取り外していいモノだったのか?』
『えっと・・・たぶん、そう?』
謎のレバーを引いたり機械っぽいパーツを除去してマスターを復元しようとした蜘蛛と幼女は・・・特に二体とも機械や魂の専門家でも無かったので揃って首を傾げていた
絶妙なバランスで現実世界に顕現している“残骸”のボディが何の前触れも無くメキメキメキッッッッ!!!と衝突実験の人形の様にひしゃげて、あらぬ方向へ吹っ飛んでいく
蜘蛛と幼女は慌てて取り外したパーツを元の場所に捩じ込んだ
しかし元々耐久度が落ちていたのか、やはり精密機械の様に繊細だったのか、無理矢理捩じ込んだパーツから何処かコメディタッチでベタな音が鳴る
たとえばそう、流れていた力が一点に溜まっていく様な・・・
『『・・・あ』』
『─────』
それはパンパンに膨れ上がった風船に針で穴を開ける様に。
自滅のリスクを背負い、危ういバランスの上で保っていた“残骸”は自爆した。
・・・・・
初めてinfinite dendrogramにログインした記憶。
鬼畜眼鏡管理AIに高空から投げ出された記憶。
碌に準備もせずに黄河帝国の荒野で野垂れ死にかけた記憶。
鮮明に流れてゆく走馬燈。
しかし、それは有り得ない。
“思い出す機能は俺が凍結した筈“
今の俺は思い出す事が出来ない。
”誰かの記憶を見せられている“
疑問が浮かぶ。疑問を覚える自分に疑問を感じる。
そもそも戦闘以外で思考出来る筈が無い。
ならば俺は?
自分が────少しだけ人間に戻っている事に気付く。
『あの二体に任せるのはちと心配ではあったが・・・結果おーらいという事にしようかの。』
声が聞こえた。聞き覚えのある芯の通った女の声だ。
何故、何故お前が此処に居る────
そこには俺が良く知る女の姿があった。
『のぅ、主様?』
────カーソン
これはとある夢のVRMMOの物語。
色は人を堕落し、愛は人を支配し、恋は人を狂わせる。
悍ましい穢れ、焼け爛れる熱病、それは人ならざる者が与えた寵愛。
業を知り、黒く染まった太陽は人を呪った。
子供の教育方針はどれにする?
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蠱毒にぶち込む
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普通の子供のように育てる
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子供の為だけの揺籠()で育てる
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放任主義。子供は勝手に育つ
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帝王に愛など要らぬ!!