これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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何かを思い出しそうだ・・・

結跏趺坐。

 

坐禅や瞑想の際に尊ばれ、最も安穏な形にして最も尊い座り方とされる由緒正しき有名なあのポーズである。

 

精神修養としても用いられ、自らの内面に向き合うことで精神的な成長を得る事を目的として行われる事もある・・・

 

数々の悪行()によって信用を失った俺は、フィンから精神修養を命じられた。

 

完全に立場が逆転しているような気がしないでもないが、是非もなし。

 

精神修養ついでに魂の状態でも見てみるかと体感時間を最大まで上げて瞑想に勤しむ。

 

SP(魂力)とは名前こそ魂が入ってはいるが、必ずしも魂を知覚しなければ使えない類ではなく、なんなら汎用下級職であってもジョブスキルがあれば使える程度のものでしかない。

 

魔術師系統がスキルによってMP(魔力)を消費するように、SPも魂を知覚せずとも扱う事も、より深く追求すればスキルに頼らずとも操作する事だって可能だろう。

 

だが魂力の本質とは己という存在(在り方)に対する変革を齎す事にある。

 

自然魔力に大きく依存するエレメンタルなら兎も角、肉体に宿る魂そのものが自らの根幹を為す以上、魂を知覚した俺ならば“より大きな変革”を齎す事とて可能になるだろう。

 

まぁ、つい最近ハッスルしすぎて魂魄自殺紛いの事をやらかした事はあるのだが。

 

己の在り方を極端に偏らせすぎて危うく人間を超えた力を得ると同時に、人間性を喪失してしまったのはやり過ぎたと反省している。

 

人間性を捧げずともデチューンして(性能を落として)調整すればエンブリオなしでもそれなりに戦える可能性を証明したとも言えなくもないが、

 

それを知ったカーソンが確実に拗ねそうなのでうっかり思考を漏らす訳にはいかなくなってしまった。

 

下手したらエンブリオの存在意義の否定に繋がりかねないし・・・

 

いや、超級進化が残されているからなんだかんだでアジャストはするだろうしその心配はないとは思うが、超級進化の際にほぼ確実にその旨のパーソナルデータを読まれそうだな・・・

 

拗ねた時の対策を予め考えておいたとしてもその思考を読まれては台無しなのでは?

 

結局アドリブかよ。いや、マスターのプライバシーガン無視の生態が悪い。

 

帰ってきたらハラスメントの罰としてこちらもセクハラで相殺を試みるべきではないだろうか。

 

彼方が先に(やっとう)を抜いたならば、此方も抜かねば無作法というもの・・・

 

 

ベシッと乱雑に頭を叩かれた。

 

「集中。」

 

「はい。」

 

俺は己の内側に意識を飛ばすことに集中した。

 

決して、山姥の様に刃物を研いでいるフィンに怖気付いた訳ではない事をここに記しておく・・・

 

この際だし魂の診断のスキル(テンプレート)を作っておいて次もやり易くしておくか。

 

え、この後も折檻を受ける予定を立てているのか、だって?

 

いやぁ、気のせいじゃないかな・・・(まさかフィンも読心を・・・)

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

精神の階層を超え、深く、暗い所に沈んでいく感覚。

 

魂の波長にピントを合わせ、五感が機能しない領域に到達する。

 

己を観測する視線と、魂を外側から眺める視点を奇怪な感覚として捉える。

 

 

その光景(視覚ではないが)を一言で言うならば。

 

 

異様。

 

 

予想通り俺の魂はおかしな事になっていた。前々からそうだったけれども。

 

予想と違ったのは、其処にはプレーリードッグの姿はなく、殺戮人形の姿形も無かった事。

 

 

そこにあったのはただ一つ。ガチガチに鎖で固められたでっかい扉。

 

 

扉や鎖は見覚えのある赤い命の火によってメラメラと燃えていた。

 

一目見ただけで分かった。これはカーソンの封印だ。

 

 

扉の先から巨大なナニカの気配を感じる。

 

 

それに意思と呼べるものは無いが、確かに此方を封印越しに“見ている”のを感じた。

 

 

生ているし、死んでいる。

 

 

鼓動のように消滅と再出現を繰り返す莫大な呪いの気配と、荒れ狂う魂の波長。

 

 

とても馴染み深い気配だった。

 

 

鎖が小刻みに震えている。

 

 

鼓動の頻度が心臓の様に大きく、早く鳴り響く。

 

 

俺の世界と鎖が同調するよう震えていた。世界が端から崩れ落ちていく。

 

 

扉の先から視線を感じる。

 

 

扉との距離が縮まる。

 

 

それは

 

 

リソースとして昇華(消化)された筈の─────

 

 

「  」

 

 

誰かの声を聞いた気がした。

 

 

温もりを感じる炎に包まれ、全てが闇に閉ざされる。

 

 

・・・・・・・・

 

 

気付くとヨガのポーズを解き,横たわっていた。

 

寝てた?

 

何か良い感じに思い出しそうな感じだったが、一体何の夢だったのだろうか。

 

 

「取り敢えず精神修養は禁止。」

 

 

疑問を挟む暇も無く、フィンが研ぎ澄まされた刃物を振り下す。

 

 

耳障りな断末魔をあげるマンドラゴドラがさくりと真っ二つに割れて、息絶えた。

 

 

フィンの側には調理済みと思われる食材と火にかけられた鍋があった。

 

 

もしや、俺が寝たのではなく【気絶】していたのでは???

 

 

俺は訝しんだ。

 

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

思い出すな

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