これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

15 / 117
愛すべき日常への帰還

【<UBM>【幽智霊血 スゥチェング・ヘイワン】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ルン・バ・ンル】がMVPに選出されました】

【【ルン・バ・ンル】にMVP特典【霊公形代 スゥチェング・ヘイワン】を贈与します】

 

世界がボロボロと崩れていく。

 

今度は主人が死んで、世界を維持する者が居なくなったからか。

 

「主様。おんしが無事で良かった・・・」

酷く安堵した様子のカーソンが言った。今にも泣き出しそうだ。

 

現実世界の俺はログインしたと同時に意識がこっちに来ていたから、さぞかしビックリしたのだろう。

 

話を聞くところによると、どんな能力を使っていたのか、現実世界の俺の体も此処で起きたように傷ついているらしい。

 

寝たきりの植物人間がいきなり足から大量出血を起こしていたら俺もビックリするわ。

 

それはさておき。

 

「なぁ。此処から脱出するにはどうしたら良いと思う?」

 

カーソンが涙を引っ込めてカチンと固まった。勢いでこっちに来たのか。

 

俺と奴もだ。その場の勢いで帰還手段を用意して貰うのを忘れて、奴にとどめをさしてしまった。

 

ここって体に起きた事が現実に反映されるんだよな。

 

世界の崩壊に巻き込まれたら夢オチのように帰れるなら良いんだが。

 

最悪、崩壊に巻き込まれて全身バラバラになるんじゃないか?

 

「い、嫌じゃーーーー!!!見目麗しい乙女が爆散して死ぬなんて嫌ーー!!」

 

どうにかしてくれ、と言わんばかりに乙女の尊厳が懸かったカーソンがパニックに陥った。

 

「の、のう主様。主様ならなんとか出来んか!?前に一度、爆散して死んだ事あったじゃろ!」

 

無茶言うなよ。俺はニッコリと笑って言った。

 

「死ぬときは一緒だ。カーソン。俺たちは一心同体だから当然だろ?」

 

カーソンが顔を引き攣らせて叫んだ。

 

「い、嫌ーー!!そ、そうだ!スキルが使えたんじゃし、紋章に入ればワシだけでも・・・」

 

『やれやれだな。我が友であり、マスターよ。折角の旅出のときだと言うのに。』

 

奴の声だ。姿が見えない。

 

『まぁ、トドメを刺せと言った私にも責があるが。』

 

どっから話しかけてんだ。1人だけ安全圏に居るんじゃねぇ!

 

『現実世界から夢に逆干渉を行なっている。特典武具としての能力に夢を干渉する力が残されていたのは僥倖だった。アジャストの結果によっては能力自体がカット、或いはリソースの不足で弱体化していただろうからな。』

 

そうか。で、どうすんだ?脱出、出来んのか?

 

『然り。我が力であればそれも可能だ。』

 

じゃあ早く脱出させてくんねぇかな。相方が見るに堪えない醜態を晒しているんだが。

 

『了解した。マスターよ。こちらからはそちらを精細に見る事が出来ん。化身の相方と接触したら言え。2人同時に脱出させる。』

 

俺は振り返ってカーソンに手を繋げと伝えようとしたが居なかった。

 

「カーソン?まさか、崩壊に巻き込まれたのか!?」

 

だとしたらカーソンの尊厳が現実世界で肉片を撒き散らすことになるだろう。

 

崩壊した世界の穴に落っこちてしまったであろうカーソンの身を案じる。

 

「おい!世界の穴にサルベージってのは出来んのか!?」

 

『・・・接触出来たなら落ちても無事に脱出する事は出来る。しかしサルベージはそちらの様子が見えん以上、する事は出来ない。』

 

飛び込むしかない。俺は夢の世界まで助けに来てくれたカーソンを見捨てる真似はしない。

 

脳内に声がした。紋章からカーソンが話しかけるときの声が。

 

『の、のぅ主様?ワシはここじゃぞ?』

 

・・・良かった。いつの間にか紋章に入ってたのか。それにしてはおかしい。カーソンが今まで黙っていた理由がわからない。

 

なんとなくさっきの醜態と関係している気がした。

 

・・・なんでこんな緊急時に黙ってたんだ?怒らないから言いなさい。

 

『びくっ!?お、怒らない?絶対じゃぞ?』

 

あぁ。約束するよ。脳内の表でそう返事する。

 

もっとも、誠意というのは見せて貰うがね。俺は脳内の裏側でそう考えた。脳内では奴の処刑方法を考案していた。

 

『イヤー、主様の紋章に避難したら、ワシが入ってた紋章に通るダメージは主様だけになるからの。ちょっと先に避難させてもらってたら、何か言い出せんくなってのぉ。』

 

そうか。

 

『だが、主様。これで脱出出来るぞ?早くこんな所から脱出してしまおう。ね?』

 

「現実世界から夢は精細に観測出来ないんだっけか?」

 

『肯定。』

 

俺は紋章に手を置いた。エンブリオの出し方は心得ている。

 

「1人だけマスター犠牲にしようとしてんじゃねーーー!!!」

 

不忠実なエンブリオを物質化させて、紋章から引き摺り出す。だが、奴も残されたらミンチになるから必死で抵抗する。ステータスが高い奴の方が有利か。

 

「や、やだやだやだやだ嫌じゃあーーー!ミンチだけは、ミンチだけは辞めてくれたもぅ!さっき、怒らないからって言ってた!怒らないからって!!」

 

「うるせぇーーー!仲間を捨てるような奴に人権はねぇんだよ!!くたばれやーーー!!」

 

『時間がない。続きはこっちでやれ。』

 

激情に燃えていた筈の意識が遠のく。

 

 

 

・・・・・

◇地竜街郊外

 

俺はパチっと目が覚めた。隣はカーソンが目覚める瞬間だった。

 

ムクっと起き上がった俺はボキボキっと指の音を立てる。

 

「・・・ミンチににゃあ出来んかったがよ。落とし前、キッチリと着けようやぁ。」

 

ウルウルと涙目の奴が最後の遺言を言った。

 

「主様。や、優しく、優しくじゃぞ?」

 

あぁ。優しくし過ぎて、天国を見せてやるよ。

 

その日、地竜街郊外の夕焼け空に絹を裂くような絶叫が響き渡った・・・

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

仲間を見捨てない男は裏切りを決して許さない。因果応報はここに果たされた。

ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート

  • 一人(抗菌と同じく特典化)
  • 双子
  • 五つ子(五等分の花嫁√(嘘))
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。