これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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いずれ来る別れ。無意識に魔王。

あのツチノコ捜索隊もとい開拓団は「ツチノコ地竜開拓団」として黄河のクランとして登録された。

 

勿論あの探査エンブリオの団長がクランマスターを拝命し、サブマスターの座に俺が就くことになった。俺がサブマスターになったのはクラン運営できる人材が少ないのが理由だった。

 

いずれ後任を育てて、サブマスターとして後を継いでもらうまで、クランの運営に携わる事になったのだ。

 

サブマスターを継続するのを断ったのは訳があった。

 

俺にはまだデンドロでやりたい事が沢山だったし、【ヘイワン】に約束したようにこっちの世界を実際に歩いて回りたかったから。

 

団長は男前になった表情で、笑って脱会する事を許してくれた。

 

「猫バス式に替わる新しい足を見つけんといかんね。」と言って。

 

本心では寂しさも、理不尽な八つ当たりに似た葛藤も感じていただろうに、仲間を笑って送り出してやろうとした心遣いがこの上なく有難かった。

 

俺は人間臭い感情を持ちながらも寛容で、偉大なこの人の元で開拓の偉業に携わることが出来た事が、どうしようもない程に嬉しい。

 

「デンドロで、あんたに会えて良かった。感謝してんだ。団長の下で、この開拓団の一員として働けた事が。」

 

俺と団長はここから始まるであろう小さなクランハウスで抱き合いながら漢泣きした。話をドアの裏側で盗み聞きしていたクランメンバーも貰い泣きして、円陣を組んで漢泣きした。

 

涙も涸れて脱水症になったクランで結成記念&気が早過ぎる送別会をした。

 

酒を飲み交わしてリアルの愚痴を言ったり、女の好みを呪術廻戦の東堂式で語り合ったり、クランメンバー全員でティアンのキャバ嬢を店貸し切りにしてみたりと色々した。全員が場の空気に酔っててフラフラだった。

 

俺の全裸芸が火を吹いて、団長によるボディビル大会が開かれる。外部のフレンドもティアンもマスターも関係なく招いた。最後にお祭り騒ぎの仮装大会を起こして、大きな花火を打ち上げた。

 

黄河の夜空に【高位花火職人】が手掛けた色々な彩りを誇る大輪が咲いては散って行く。

 

花火は遠くの人々が見える程に一瞬の光を放って輝いた。

 

 

 

黄河の官憲に無許可の騒音による公害罪で仮装したクランメンバー全員が連行されるまで花火は打ち上がった。

 

まったく、締まらねぇ最後だぜ。だがこれが俺たちらしいってね。

 

官憲に連行される道中仮装したクランメンバー全員が可笑しくって、馬鹿笑いをしていた。心なしか官憲のティアンも楽しげだった。

 

誰も悲しそうな表情はしておらず、心から今を楽しんでいた。

 

・・・・・

 

ようやく釈放された所で後進の育成という一大仕事が待っていた。

 

サブマスター候補のツチノコ地竜発見者さんの育成だ。彼はクラン運営適正を持っていて、時間的余裕があったので最適な人材だったのだ。

 

彼には、クラン運営の心得、人心掌握の術、経営術の講義、政界への根回し、洗脳による擬似人格の植え付け方法、クランメンバーのメンタルカウンセリングの資格まで様々なサブマスターに必要な事を教えなければなるまい。尚、重要な団長への尊敬はもう既にあるので教える必要は無い。

 

やり過ぎぐらいで丁度いいのだ。寧ろこれでも手加減している。大事な後進だ。

 

精神的重圧で潰さないように丁寧に、開拓団の副団長に相応しい曲者の図太さに。

 

短時間で長期間拘束する事なく仕上げて見せよう。

 

俺は椅子に縛り上げたサブマスター候補の前にコロコロとホワイトボードを移動させた。辺りは密室で、音が漏れる様な事はない。

 

キュポンとインクペンの蓋を抜いて言った。手はホワイトボードにキュキュと音を立てて要項を書き込んでいく。

 

「この授業では紙媒体を使用した教育はしません。

 

知識と動作は全て逐一、貴方の無意識領域に刻み込み、私監修の実践で無意識を自分のものにさせます。実践体験の過程で無意識が履修した教育課程を復習する形になるでしょう。

 

この技術は教育課程で教える洗脳による擬似人格の植え付け方法に応用できますので、今後の参考にしてください。

 

なおこの記憶は残る事はありません。無意識下に沈殿する事になります。」

 

俺が掛けたメガネが天井の光源でキラリと光る。小さなペンライトを手で玩ぶ。密室の光源をソッと消した。

 

「この教育で貴方は人格をそのままに立派な開拓団の副団長に生まれ変わるでしょう。」

 

そう言って彼の顔にペンライトの光を照射した・・・彼の視界が白く染まった・・・

 

 

・・・・・

 

おはよう。随分と良く眠っていたね。調子はどうだい?絶好調?そりゃあ良かったぜ。

 

「君を【ツチノコ地竜開拓団】サブマスターの後進に認める。あの団長を支えてやって欲しい。頑張ってくれよ?」

 

「うっす!全力で!【ツチノコ地竜開拓団】サブマスターの!任をこなして見せましょうっす!」

 

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

とあるクランのサブマスターは後に語る。あの人こそ魔王に相応しい・・・と

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