これはとある夢のVRMMOの物語。

マイナスより生まれしもの

マニゴルドが女性の水着を広げている姿がとても面白かったのでスクショした。

やっぱイケメンは得だぜ。どう見ても変質者なのにコミカルにしか見えねぇ。

ボスドロップなだけあって高性能な水着で、ダメージ軽減に軽減分のダメージを衝撃波として任意の部分から発生させる事が出来る。

ダメージ軽減の数値も中々の数値だ。後衛のステータスなのが些かマッチしていないが、接近された時に使って時間を作る事は出来るだろう。

あとは問題点を挙げるとしたら、それがスク水にしか見えない事だろうか。竜鱗というか鮫皮に近いザラザラとした感触がそれを後押ししていた。

《適温調整》の装備スキルが付与されているとはいえ、常に厳しい寒さの厳冬山脈の近くなのだ。此処も麓とはいえ吹き込む風で当然寒い。こんな所でスク水着ている人がいたら見てる側の方が寒い印象を受けるだろう。

TPOを考えた時、グランバロア辺りが1番あっている。衝撃波は水中でも使えるわけだし。でもやっぱり地上が戦場の【黒土術師】にアジャストしていないので私服扱いだろうか。

・・・いつかはグロンバロアで水着美女を追っかけるのも良いな。

それはそれとして初めて【塞翁の虹運賽子】を使ったが中々面白い。どこでも緊張感ある体験が出来るってのは、すごく良い！

まぁ、1日一回限定だから今日は使えないが、これの効果は24時間継続するタイプだ。もし1日の終わりに転がして日を跨いで転がせば二重の嵩増しが出来る。マイナスとプラスの両方で。

すごく気になる。グランバロアの海の上で釣りをしながらマイナスを出したとしたら、どうなるんだ・・・？何とも知れない植物の種を育てても良い。適当に買った卵を孵してみようか。

不確定要素を意図的に身近に設置した結果マイナスのＬＵＣはどんな結果を齎すか。

その時、きっと世にも珍しい物が見る事が出来るだろう。

という訳で適当な謎の種と謎の卵を買った。

カルディナの裏道にあった『魔王商店　中央大陸支店』という古びた石造りの店舗で買った物で、店主が深くケープのフードを被っているのが特徴の店だ。

店主が1番怪しい雰囲気のある店である。俺の経験則から顔を何かで被って隠す奴らは大抵何か有るもんだが。手出しされなきゃこっちも詮索はするまい。

盗難防止のガラスケースで商品が一つ一つ覆われている。しかも値札が大抵万単位だ。

武器防具に限らず、アクセサリーに小物や家具まで売っている。中々の品揃えだ・・・

適当に店主に中が解らない卵とか種なんかある？と聞いたら店の倉庫から持ってきてくれたのを買い取ったのだ。

怪しい店の店主も知らない謎の卵と謎の種。一体何が出てくるのだろう。

翌日の深夜。時間が11:57分をさすインターフェースを見た俺はフレンドになったマニゴルドて一緒に暴竜がいた土地で落ち合っていた。

マニゴルドは金を生み出すエンブリオの持ち主で、孵化機とか成長剤を買ってマイナスＬＵＣの検証のパトロンとなってくれたのだ。

本人曰く、金で買えない珍しい体験だからなんだと・・・

禁制品であり、希少なＬＵＣをマイナスするアイテムだ。手に入れようとしたらそれなりの伝手と金銭が必要となるだろう・・・

今卵と種は孵化機と成長剤を浸透させたプランターに植えてある。もうすぐで変化が起きるだろう。

◯ＲＥＣ　録画開始。

そして俺はこの時の為に五十面賽子の目的の目を出す訓練に時間を費やした。

今の俺なら49を必ず出せる自信で溢れている。絶好調だ。試行回数が膨大で頭がアッパラパーになっていたからかも知れない。

59分。ゲーミング色の賽子を水平にした板の上に転がして49の目を出す。

俺のＬＵＣは36だ。幸運をあげるジョブに一切就いてないからステータスはレベル0の時と同じ。

すかさず拾って

0:00。

賽子を転がす。

49。

これで俺のＬＵＣはマイナス4766。

さあ何が起こる・・・！

卵の殻に罅が走った！ヒヨコの孵化みたいに広がっていくのではなく、全体に罅が入っている！

高級肥料から芽が出てきた！小さな種に見合う小さな芽・・・

しかし俺の《危機察知》は小さな芽の方に激しいアラートを鳴らしていた！！

卵ではない・・・！！マニゴルドが孵化した卵を持って避難した！

俺は避難しない。死ぬ事が確定している・・・！

最後の瞬間まで楽しい事から目を逸らさない為にカーソンと【瘴鼠衛衣】と融合する！！

プランターが破裂した。病的までに白い根の塊が膨張してゆく・・・！！

劇的に膨張していく白い根が巨大な鼠の異形に触れた瞬間。

ズリュリュリュリュリュリューーーーー！！

と大きな音を立てて皮を貫通し、バキュームでぐちゃぐちゃになった肉や骨を勢い良く吸われていく！

そうきたか！

肉体ごとカロリーを奪われては特異な生存能力も形なしだった。

ペラペラになった俺達が光の粒子に変わっていく。

俺達が親なんだ。実際血を分けたどころか体を奪われたが。

消えてしまう前に、我が子に名前をつけよう。面白そうだ・・・

お前は今日から【メガプランテスト】だ・・・

俺はカーソンを道連れに死んだ。

【（＜UBMユニーク・ボス・モンスター＞認定条件をクリアしたモンスターが発生）】

【（履歴に類似個体なしと確認。＜UBM＞担当管理AIに通知）】

【（＜UBM＞担当管理AIより承諾通知）】

【（対象を＜UBM＞に認定）】

【（対象に能力増強・死後特典化機能を付与）】

【（対象を伝説級――【古種峰芽　メガプランテスト】と命名します）】

これはとある夢のVRMMOの物語。

ダンジョンからドロップした謎の種。それは鑑定すら出来ず謎の店に売られ、買い取った育ての親を吸い上げ、ＵＢＭとなった。

それはマッドハッターが回収した絶滅危険種の種を適当に管理した結果だった・・・

次回、突然同僚2人に、背中を撃たれたキャタピラーが死ぬ。