これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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魔王の日常風景

【死霊術師】に就職した。

カルディナの街では浮浪者などの死体は街の外側に投棄されている。金が無ければ墓にすら入る事が出来ないのが商人の国だ。

 

スラムの死体廃棄場に粗末な看板が立っていた。

 

『税金を納めない浮浪者の遺体を埋めるスペースはなく、また火葬による燃料費も捻出できないため、浮浪者は砂漠による風葬。あるいはモンスターによる鳥葬又は蟲葬とする』

 

『遺体の持ち出しは自由。ただし、街の中での《死霊術》の行使による死者の蘇生は禁止とする』

 

俺は〈蜃気楼〉カルディナ支部から大量に貰った【高位霊水】で、漂う怨念の浄化と見えない霊達を成仏させて、死体をアイテムボックスに入れた。

 

カルディナ支部の支部長は【道士】系統の超級職らしく、魔力式アンデットである僵尸の使い手だ。

 

その伝手を借りて【高位霊水】を仕入れて貰った。結構金を費やしたが。金の国カルディナで大量受注は超高額だ。

 

死体用アイテムボックスの価格だって馬鹿にならない。《腐敗防止》や《自動修繕》付きの高級品だ。

 

俺が必要なのは死体だけだ。魂は要らん。怨念だけではアンデットは非実体しか作らない。

 

この世界では怨念というのは死者の魂を溶かす事が確認されている。【グデアメール】が魂を持ったまま怨念の塊であるアンデットになっていたのは驚愕的な事なのだ。

 

だから【グデアメール】を死に損ないと言ったし殺したけど、その魂の強さだけは認めている。怨念に溶けないからって尋常な魂では常に纏う怨念の怨叉で狂ってしまうから。

 

怨念式の意思あるアンデットは怨念に残留思念が纏わり付いただけで本人ではない。

 

魔力式アンデットは理性を持っているが主人に存在維持を大きく依存している。

 

死体に魂が留まっているべきではない。飽くまでも死体は物質でなければならないのだ。

 

いずれ朽ちて土に還る物質に。

 

俺は意思がない怨念だけの怨念式のアンデットを作成するつもりだからな。魂を溶かして作るのは後味が悪い。

 

【高位霊水】で湿った廃棄場の大地に乾いた風が吹いていった。

 

風が通った大地は涙が乾いたかのように水気を無くしていた。【高位霊水】が染み込んでいた跡はもう無かった。

 

俺は死体が無くなった廃棄場を後にした。

 

・・・・・

 

俺式アンデット作成は人形術師系統を参考にしている。俺が加工して安定した怨念を死体に入れて操るという形だ。

 

人形術師系統が人形を器に召喚モンスターや精霊を入れて自立稼働させるように。簡単な命令を聞く事が出来るクリエイトモンスターを作成する予定だ。

 

怨念式アンデットの利点は生者に自動で襲い掛かる自立稼働戦力を少ない魔力で維持できることにある。

 

怨念は生者にヘイトを持っている性質から、精霊や召喚モンスターを入れる必要がない。

 

高い召喚コストは必要ないのだ。外部コストである怨念が用意できれば良い。

 

普通の【死霊術師】は死体に怨念をぶち込んで外から少ない魔力で操っている。

 

だから魔力の制御を離れる程、強くて膨大な怨念を入れようとはしない。もっと言えば複数の怨念を入れようとすると必ずと言っていいほどに暴走する。

 

制御が一対不特定多数になった時、制御術式が極めて不安定になる。そうなった時更に魔力を注ぎ込んで常に縛り続ける必要がある。

 

もっとも上級職の【大死霊】は、同格の上級職で作ったハイエンド・アンデットのパーティを支配できる程にアンデットの支配と従属キャパシティに長けているが。

 

まぁ俺は材料の怨念そのものを支配できるので魔力すら必要ない。

 

人馬族体型の全身鎧である【グデアメール】をアイテムボックスから出して《禁忌融騎》を発動させる。

 

俺のアバターが【グデアメール】に吸い込まれていく。【グデアメール】を俺が装備するモーションじゃ無いんかい。

 

そして俺の顔を写し出す血色の球体になっていた。久しぶりの体がない感覚だ。懐かしい。

 

意識すれば全身鎧に溶け込む事は容易だった。生前と操作は同様らしい。しかし今度は怨念の僅かな抵抗しかない。【グデアメール】の意思はもう無いのだろう。

 

短かったが、同じ体で過ごした仲だったから少し寂しい気がした。

 

と思ったのは間違いだった。

 

生前よりも抵抗してきた!これ呪いの装備扱いかよ!?そりゃ怨念生成機能付いてるけどさぁ!?

 

デメリットとして【グデアメール】の意思が残っていたらしい。俺がテイムしなきゃいけない系?殺し殺された仲なんだけど。

 

放置してたら叛乱起こす系のアイテムだな。怨念を蓄積して手が着けられないくなるパターンの。

 

取り敢えず反抗できない程度に支配してボコボコにする。相手も怨念を支配できるが今の俺は【死霊術師】だ。《死霊術》の応用で前よりも怨念を操る事ができる。

 

【グデアメール】の反応が弱々しくなった所で準備完了。

 

感覚としては【グデアメール】が【パシラビット】ぐらいの反応になるまで瀕死にしている。

 

どうせ殺しても特典武具の機能として復活するだろうし、怨念生成機能の出力が高くなっている。【グデアメール】の負の感情が高まっているからなのか。

 

《自動修繕》で綺麗に修復された死体に《死霊術》のアシストを含めて怨念を注入していく。

 

意思を工業製品のように加工されて画一化された純正怨念というべき怨念は、俺と融合した【グデアメール】から死体に延々と流し込まれていく。

 

大分死体が禍々しくなってきた。見た目はただのティアン男性に死体だが、死体を食性とするモンスターが絶対食べないと断言できる。

 

逆にアンデットを好んで食べるモンスターがいたら涎を垂らすだろう。

 

肉体と怨念の割合が逆転し掛かっている感じか?一般ティアン男性だからそんな強く無い死体だったわけだし。

 

取り敢えず供給終了。

 

アイテムの説明欄を見てみると【人間完全遺骸(死霊術)】と表示されていた。特に怨念の総量は鑑定結果に影響されないようだ。

 

【死霊術師】のジョブスキル《アウェイキング・アンデット》を発動させてみる。

 

怨念が肉体に癒着した感覚。怨念の操作が少し鈍くなった。【グデアメール】の怨念と別個体の怨念になったからか?

 

看破結果は《ハイ・レヴァナント》。最初からハイを冠しているとは中々の結果では無いであろうか。怨念の割合が多いとレヴァナントになるようだ。

 

保有スキルには《呪怨付与》と《自動修復》がついていた。まぁ最初はこんなものか。

 

で。俺としては黒い卵型呪物の再現がしてみたい。あれは細胞の集合体のアンデットの核だった。【フレッシュゴーレム】というモンスターだな。術式の結果自体は普通だが、過程がエゲツナイのが気に入った。

 

術式の内容は周囲の怨念と生者と死体を吸収して【フレッシュゴーレム】を作るというものだ。

 

制御が無く、術者ごと踏み荒らして暴れ回るアンデットを作る事になる。恐らく諸共自決か足止め用の術式だったのだろう。

 

証拠に条件付けに対応アイテムボックスの破壊と所有者の死亡が設定してあった。

 

完成品の【フレッシュゴーレム】の頭部が、設計図だと何故か牛頭だけど。牛のモンスターでも混ぜる気だったのか?

 

兎にも角にも作成者はものすごい勢いで外道チャートを走っている走者のようだ・・・

 

生きている俺とアンデットをイレギュラーな形で別のアイテムで合成されたので、ただの怨念の塊として使われてしまったが、特典武具となった【グデアメール】にその術式が残っている。

 

そしてここに丁度いい暗殺者系統上級職【兇手】の死体が。とても良く鍛えられている死体です。使っても心が傷まないのも評価点が高いですね。

 

これをメインに【フレッシュゴーレム】を作っていきたい。どうせだから【グデアメール】の意思を搭載できれば良いなと。

 

【グデアメール】には【グデアメール】の意思が残っている、が、当然のことながら装備品はテイム出来ない。

 

改めて【グデアメール】をクリエイトモンスターとして出力してから、テイムすればOK。

 

全ての死体を怨念で《ハイ・レヴァナント》にしてから【兇手】の死体に怨念と【グデアメール】の意思を落とし込み、アンデットにしてからテイム。

 

流れるように【フレッシュゴーレム】の術式を叩き込む。

 

術式が発動して周囲のアンデットを材料に【グデアメール】の意思を持った【フレッシュゴーレム】を作成するというプラン。完璧だ。

 

しかし、

 

当然の権利の如く【グデアメール】は抵抗しまくるでしょう。

 

だから【グデアメール】を【パシラビット】並に衰弱させる必要があったんですね。(メガトン構文)

 

取り敢えず設計図は牛のモンスターは使わないので書き換えておきます。条件付けの術式も参考資料としてメモに書き込んで保存、今回は要らないのでカット。

 

とても筋肉質な牛頭の【フレッシュゴーレム】を作る予定だったようですね。設計図の完成像がムキムキのボディービルダーみたいなのになってます。

 

その姿には筋肉は全てを解決すると言わんばかりの説得力があります。

 

ですが今回は暗殺者系統の【フレッシュゴーレム】なのでチェンジです。

 

・・・・・

 

書き換えた設計図を【グデアメール】のストックに登録する。

 

準備完了。【グデアメール】は瀕死のベストコンディション。

 

【兇手】に【グデアメール】と純正怨念を流し込んでいく。上級職の死体だからか、入れられる怨念の総量が全然違う。死体の山の数の《ハイ・レヴァナント》に使用した怨念以上に入る。

 

低レベルと上級職じゃあ天地の差か。

 

すごい禍々しい【兇手】の死体の完成。まるで、あるべき姿に戻ったかのようなフィット感すら感じる。

 

RキャラがSRキャラになった感じだ。

 

生きている人間よりアンデットが天職だったんだな・・・きっと彼には【大死霊】の才能があったことだろう。

 

あれは種族がアンデットに変わるらしいし。外道適正も兼ね備えていたから。

 

《アウェイキング・アンデット》

 

ビクンビクンと痙攣する【ハイエンド・レヴァナント・アサシン】の完成。そしてテイム可能状態化腹パンを決めて契約印を刻み、テイム成功。

 

流れるようにガッと顔を掴み《グラッジ・アンデットクリエイションver1.10》を発動。

 

周囲の《ハイ・レヴァナント》に管が突き刺さり、俺と融合している【グデアメール】に直接刺さって怨念を吸い出す。

 

黒い繭に包まれる。《暗視》で内部の様子がよく見える。肉の胎児みたいのが脈動していた。

 

グロッ!?オロロロロ・・・

 

キモいのを見てしまった俺は繭の中で吐いた。胎児が何か言いたげに揺れた。

 

繭が割れていく。【ハイエンド・フレッシュゴーレム・アサシン】の完成だ。

 

死体の山を材料にしたにしては、大分小柄だ。

 

しかしながら怨念の総量は膨大であり、暴走の危険が無く、卓越した戦闘技術を持っている。しかも人間並の知性がある。元人間そのものだが。

 

しかも操作する【グデアメール】は【ハイエンド・フレッシュゴーレム・アサシン】が破壊されても特典武具の機能として復活する。

 

これならばいくら酷使しようが構わない。

 

更に街に入る事だって出来る【鎧巨人】サイズだ。全身を瘴気を遮断する全身鎧装備を着けさせれば街の中だって入り込める。

 

用途は幅広い。随分と役に立ちそうな手駒が手に入ったものだ。

 

今度補充用の死体を盗賊団を狩ってストックしておくとしようか。

 

その薄ら笑いをカメラはアップで捉えていた・・・

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

掲示板の目はどこにでもある。この一連の過程は隠れて録画され、R18Gの動画として投稿された。

 

暗殺チーム全滅事件、バイツァ・ダスト=第3の爆弾事件に続き、禍々しいアンデットの作成。

 

ルン・バ・ンルの渾名が【魔王鼠】から【魔王】に変化した歴史的瞬間だった・・・

 

 

 

 

ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート

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