これは恐ろしい発明品だ・・・俺は背中から怖気にも似た戦慄が止める事が出来なかった。
カルディナにあるマスターがいた。
一言で言えば変人だ。何処に出しても恥ずかしいまで変態的でもある。
しかし悲しいかな。【拳姫】がそうであるようにこのマスターも天才であった。
この世界に変人と天才は紙一重という呪いが、醤油の染みのようにクッキリと染み付いてるかのようだ。
凡百の白い布地の中に浮かぶ黒い点の異端児ども。
そしてその才能を遺憾無く発揮させた発明品が、
「全自動卵割り器 」だ。
は?
と思うだろう。正気か?とも。
しかしこれはただの「全自動卵割り器」では無い。
「卵を手で割った方が早い」という評価のキワモノとは存在する領域からして違う別物だ。
その正体は科学と魔法と超越存在が蔓延るアーキタイプシステムを土台にして生み出された尋常ならざる機械だ。
この「全自動卵割り器」は卵かけご飯を如何に最高に作り上げるかという、天才が朝食時に思いついて数ヶ月を注ぎ込んだ逸品。
その性能は卵かけご飯を入れる食器からご飯、醤油、卵を「最高」とされるデータから逆算して全てをその場で創造するという、無からの創造を実現させた。
神の御業に限定的ながら手掛けて見せたのだ。卵と醤油と米と器だけの創造はまさに神業そのものである。
そしてその神域の「卵かけご飯」を俺は目の前にしている。
◯ザエさんの「全自動卵割り器」に酷似したフォルム。手触りから重さまで偏執的に同じであるように追求した狂気。
しかし卵の受け皿をセットする台には何も載っていない。
3Dプリンターのように光の線が機械から放たれて、神々しくもデザインは素朴な器を現世に出力し、湯気をあげる透き通った白米が器の中に一つ一つ創造される。
白米の山は中央に丸い窪みが形成され、「全自動卵割り器」の特徴的な卵を受け止めるパーツに見るものを驚愕させるリソースを放つ白い卵をページを捲ったかのように出現させた。
この卵を割ることが出来る存在はいるのか・・・?
卵の殻は神話級金属の装甲よりも硬く見えた。そもそも卵としての役割を果たせるかすら分からない。
きっと中の幼体生物が殻の内部に閉じ込められて腐り果ててしまうだろう。
そんな超常的卵を最も容易く真っ二つに割った瞬間は目を見張る。《硬度無効化》がついているとでも言うのか。
そして卵はあるべき姿かのように窪みに嵌った。玉座に座る巨大な器を持つ大王のように。
純竜級上位のスライムでもここまでの威厳を放つことは無いだろう。
仕上げに黒い宝石が液体化したかの如し醤油が綺麗に散りばめられる。
震える手で箸を持つ。卵とご飯をかき混ぜる必要すらない。これは「卵かけご飯」なのだから。
既に完成された芸術に三流芸術家の技法は無粋だ。
味わい尽くすように口に入れる。
宇宙は何から始まったのか。一の物体から全の宇宙に至るまでの過程を経て生命の歴史を紐解いていく。
手を繋いで歩く猿人の親子。
成体の猿人が穴の底に横たわっている。白い花が胸に置かれていた。
屍血山河の犠牲をより少ない命のために強いてきた人々。
戦争、掠奪、侵略、調停、過ちを繰り返してより成熟した社会を形成していく。
コンクリートで星を覆った現代の街並み。
夕焼け空の公園で、迎えに来た人の顔は夕陽で出来た影で黒く染まっていて、
今ではどんな顔だったのか思い出すことが出来ない。
どんな顔だったのだろうか・・・?
涙。涙が頬を伝っていた。
郷愁と感動が涙腺を緩める。
家に帰りたくなった。かつての手のひらの温もりが恋しい。
俺は震える唇から一言を絞り出して言った。
「もはや卵かけご飯じゃねぇよ・・・」
・・・・・
「どうだ!傑作だろう!?これが卵かけご飯なんだよ!」
興奮し切った声が研究所に響き渡る。研究所の床にはエナジードリンクらしき缶がそこらかしこに転がっていた。汚い。生活臭が極まって汚部屋に進化している。
エナジードリンクは恐らくエンブリオの生産物。ティアンに金属缶に液体を保存するものはそういない。ポーションのガラス瓶がメジャーだからだ。
ドス黒い隈が目の下に広がっていた。徹夜明けのテンションだ。缶詰になっていた時に解放された人間は鬱憤を晴らすように理性が緩みまくる。
つまり。なんでも出来てしまえる気分になる。
「制作時間に数百時間!その結晶だ!めちゃくちゃ大変だった!」
取り敢えず寝ろ。
「頭おかしいなどと言う戯言など響き渡るぐらい聞いたよ!卵かけご飯を食べた顔を見たらスカッとしたね!ファァァァwww」
今絶賛おかしくなってんだろ。寝ろ。
「だがね!ここまで出来たものが他にいるか!?僕にしか出来ないよ!こんな偉業!」
そうね。卵かけご飯の為にここまで出来た奴はお前が初めてだろうな。
「僕は新世界の神になる!(ドンッ)・・・( ˘ω˘)スヤァzzzz」
逝ったか・・・
こいつは【設計王】だ。設計士系統超級職【設計王】。【拳姫】の同類だな。もっともベクトルが違う変態だが。折角良い顔をしていると言うのに性欲がぶっ壊れていて、性的欲求が無い。
つまり不能である。女を知らない悲しい生き物だ。
天与呪縛かなってぐらいスペックが高いけど。
性欲が無い代わりに集中力がおかしい事になっている。
奴はアーキタイプシステムに干渉している、現時点で唯一の存在だ。この世界には【竜王】とかすごく古くから生きている存在がいるらしいが。
言ってしまえばジョブシステムから外れたスキルを自力で編み出すことが出来ている。
デンドロってやっぱ頭おかしいゲーム?だよなぁ・・・
キャラクターがゲーム法則を改変するとか糞ゲーになりかねんって。バランス崩壊の諸原因じゃん。
【設計王】には「全自動卵割り器」を作っていた時に就いたらしい。
やっぱ超級職はヤバいやつしかいねぇのかな・・・?「全自動卵割り器」作成でなれる超級職ってさぁ・・・
狂人専用ゲームとか勘弁して欲しいんだが。
俺は狂人じゃないから超級職になれる自信がない。俺は精々がギャンブル中毒者ぐらいよ。
同じギャンブル中毒の【詐欺王】が超級職になれるって言ってたのはきっと何かの間違い。
俺は奴に用があって来たのだ。「全自動卵割り器」のインパクトで塗りつぶされたが。
机の上に「全自動卵割り器」があったら誰でも気になるだろ?誰だってそうする。
うっかり質問してみたら奴の狂気に飲み込まれてしまっていた。
同じシステムの応用が出来る奴に《グラッジ・アンデット・クリエイションver1.10》の設計図を見て貰おうとして来たのだが。【死霊術師】の習得スキルにこのスキルの元となったスキルは無いからだ。誰かが編み出したオリジナルスキルというべきものである。
しかし肝心の本人はぐっすりと寝ている。仕方が無いので汚部屋の掃除でもしていよう。
卵かけご飯の礼だ。
でも。
・・・なんで街の中の屋内に野生のモンスターがいるの?ダンジョンじゃん。
これはヘビーな掃除になりそうだぜ・・・
カーソンと融合は出来ない。研究所の設備は壊せない。奴は躊躇なく襲い掛かって来る。
とても不利な状況で俺は笑っていた。魂が燃える。これだから逆境は面白いんだよ!
「掛かってこい!このゴ◯ブリどもがーー!!一匹残らず駆逐したらぁ!!」
俺は掃除手袋で触らないようにして徒手空拳の構えを取った・・・!
後ろのソファーでは【設計王】が全自動卵割り器のCMの夢を見ていた・・・!
これはとある夢のVRMMOの物語。
黄河帝国首都龍都の牢屋で【拳姫】がふと顔を上げた。近くて遠い同質の存在の気配・・・
今はカルディナにいるであろうギャンブル中毒者を頭に思い浮かべて微笑を浮かべる。
バイツァダスト=第3の爆弾事件の首謀者で【ツチノコ地竜開拓団】元サブマスター。
あの黄河の大惨事を仕組んだ黒幕は今どうしているのだろうか、と。
ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート
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一人(抗菌と同じく特典化)
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双子
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五つ子(五等分の花嫁√(嘘))