カルディナは禁制品を当然のように売買している。表には出てくる事はないが。
そして俺が今検分している青い液体もその一つだ。
エンブリオは戦うだけの存在という訳でもなく、非戦闘に特化しているエンブリオだって大体の割合で存在している。
調理、建築、芸術、医療etc・・・
その中で目をつけたのが調薬だ。
つまり、俺はエンブリオで調薬が出来るマスターとコンタクトを取ることに成功した。
デンドロは様々な効果を持ったアイテムというのが存在しており、建物や絵画、料理ですら例外では無い。
そして持ち運びが容易で保存しやすい。そして使いやすく、効果が幅広いという特徴を持つアイテムとは、ポーション類だ。
しかし効果で注目されがちなアイテムは、製作時間や製作技術を必要とし、用途と効果が戦闘に限定される武具が多い。
というのは、UBMを討伐した証であるMVP特典を戦闘職が取ることが多く、その大多数が戦闘に適して武具としてアジャストするからというのも原因の一つだろう。
宝剣、巨鎧、大砲、着ぐるみ(!?)、戦車、戦艦など見る者を圧倒する特典武具の数々。
UBM討伐というのは一種のステータスでもある為、自然とMVP特典とその所有者が注目されるのだ。
話が逸れたがポーション類というのはデンドロでかなり有用な存在という事だ。その用途は戦闘にとどまらず、様々な場面で使用される。
とある【大教授】が個人的な趣味で【ケモ耳薬】というポーションを開発したように。
肉体変化すらポーションには実現可能というケースの一つである。
ある意味装備枠に干渉しているケモ耳には更なる可能性を感じるものはあるが・・・
俺の目的は肉体変化の効能のポーションだ。
マスターのアバターの容姿は変更できない。変装用の装備アイテムや【詐欺師】や【隠密】のように容姿を偽る手段はある。
より例外的に言えば着ぐるみだ。着ぐるみは全身の装備枠を使用する。その癖あまり性能は高くないというネタ装備。
MVP特典は着ぐるみの中でも、もっと例外的な代物と化すが。
或いは幻術や光の操作など、よりダイレクトに偽る方法もある。
しかし《看破》など隠蔽を見破る手段は実在する。
だが肉体そのものが変化していたのであればどうなるか?
変化した後の姿で有れば外見のままに映るはずだ。【化粧師】では出来ない変装も可能になる。
難しいだろうが性別だって変更できる。【拳姫】のように。
肉体変化というのはとても難しい現象だ。
【拳姫】は性転換に特化したエンブリオで解決しているが、【ケモ耳薬】が激しい頭痛を発症するように、実現する為のハードルは高い。
そのハードルを超える為に調薬に特化したエンブリオが必要だったのだ。
研究者系統の【大教授】はモンスターの専門家であって調薬が専門では無い。【ケモ耳薬】は【パンデモニウム】で創ったモンスターが調薬を担当したのだろう。
モンスタークリエイションに特化したエンブリオが創った調薬専用モンスターと、調薬に特化したエンブリオのどちらが優れているか論じるまでも無い。
調薬特化のエンブリオの方がより優れたポーションを生成できる。
肉体変化が出来たならデンドロで実行できる幅も増える。
勿論、実行可能になった薄暗い事はしない。俺は、という注釈が付くが。
需要は極めて限定的だが高額で売れると見込んでいる。しかも生産難易度の高さから独占販売が可能。
装備枠を消費しない隠蔽手段は希少だ。
誰にでも使えて、一回だけの消耗品。そして元に戻る薬品もセットで必要。
これはもう商機ってやつよなぁ?
俺は両目を$にして頭の中で算盤を弾き始めた。
莫大な利益が期待できる。それだけで俺のデンドロライフの未来は明るいと感じた。
・・・・・
完成した・・・!長かった・・・!
俺と【高位薬師】のマスターはぴょんぴょんと跳ねて喜びを表現した。
ポーション作りは難航した。
材料の調達。触媒に高位モンスターの素材が必要だと判明した際、カーソンと融合して生息地まで飛んでいった。
カルディナで流通しない超希少素材だったのだ。
ドロップしない触媒。積み重なる高位モンスターの屍血山河。山の主として君臨するUBMが怒って、地形を揺れ動かす天変地異を起こし始めた時は死ぬかと思った。
なんとか這々の体でドロップした触媒を握りしめて山から出てこれたが。
その時点でカーソンは死んだ。怒り狂ったUBMの足止めを単身で引き請けた結果だった。
技術を盗もうとする商売敵の粛清。
〈蜃気楼〉カルディナ支部の伝手を頼って、相手方を脅迫。【上級契約書】で事実上乗っ取って商会を支配した。
商会の依頼書から実験室のメンバーに変装し、潜入した産業スパイのマスターを割り出し、人体実験の被験体に登用。
彼の死に様は壮絶なものだった。
我々開発メンバーは失敗作が齎す凄惨な光景に顔を青ざめさせた。変身薬が一歩間違えてしまうと拷問薬に様変わりすることが判明したのだ。
偶発的に出来た【拷問薬】のレシピ、商会の権利書と【上級契約書】の権利は〈蜃気楼〉の支部長に売り渡した。
お互いにいい取引だったと自負している。開発資金はそこから捻出することに成功した。
失敗と成功の生体実験。ゴブリンを被験体に試作薬を投与。
虫並みに縮小して死んでしまったゴブリンがゴキブリに食われた瞬間は恐怖と驚愕で跳び上がった。
実験室の天井にカンストしたレベルによるSTRで風穴が空いた。
ドロップしたミニチュアゴブリン肉を実験室に潜んでいたゴキブリが掠め取って行ったのだ。その後潜伏したゴキブリを抹殺する為に実験室を大掃除する羽目になった。
実験室のメンバーのロッカーから異臭を放つ【カースマルツゥ】が出てきた時にはブチ切れた。【カースマルツゥ】とは、ハエの幼体の蛆を利用した腐ったチーズだ。
最も次の瞬間青褪めた顔に変貌したが。
ゴキブリの巣窟はそのメンバーのロッカーだった。黒い波が一気に流れ落ちる。
ロッカー室が阿鼻叫喚の恐慌を起こした面子で恐怖の空間と化した。
【高位薬師】のマスターが混乱のあまり強化爆薬を取り出した時は、メンバーが全滅する所だった。
ゴキブリ大量発生の原因になったメンバーは《峰打ち》の装備スキルが付いた【木刀】でリンチされ、特殊装備品の【サンドバッグ】に吊るされた。
そして、幾つもの犠牲者(ゴキブリ84%高位モンスター10%その他6%)の上に、
【可逆性変身薬】を完成させたのだ・・・!!
これはとある夢のVRMMOの物語。
後に影武者、成り代わり、アリバイ工作と政治的に猛威を奮うことになる【可逆性変身薬】。
犯罪に悪用されやすい性能の為、各国によって禁制品に指定されたが、カルディナからの裏ルートで出回る事になる。
流通の流れが幾つもの売人を経由している為、売上金が流れ着く先が一切不明となっている。
〈蜃気楼〉という組織が関連しているとの噂が流れているが、詳細は闇に覆い隠されている。
〜〈DIN〉所属【記者】の手帳より抜粋〜
ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート
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一人(抗菌と同じく特典化)
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双子
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五つ子(五等分の花嫁√(嘘))