燃え尽きたぜ・・・真っ白にな・・・
超圧縮ゾーンに脳内麻薬と精神に過大な負荷を掛けた俺はうわ言を漏らすだけの廃人になっていた。
車椅子をカーソンが甲斐甲斐しく押して身の世話をしている。
見るからに萎れたプレーリードッグが真っ白な状態で車椅子という異様な光景に、皇国の子供達も寄って来ずに遠巻きに見るだけだ。
カーソンがとても嬉しそうに食事を食べさせて、口元を拭く。要介護者のように頼るしかないという、滅多にないシチュエーションに若干興奮を覚えていた。このマスターは大抵の事を自分でしてしまう。手遅れのギャンブル中毒者なのに家庭的ですらあった。
しかしマスターの勇姿と今のギャップはかなり良い意味でクるものがあった。意外と尽くすタイプ・・・いや、散々色んなことに付き合ったのだから元々だった。どこの誰が自分のメイデンに裏の用心棒をさせるマスターがいるのか。
いたな。ここに。
腹いせに抵抗がない事を良いことにプレーリードッグの着ぐるみの上からコスプレさせる。
雪国の皇国にはサンタコスが似合っていたが、今のマスターだとブラック企業に勤めるサンタさんにしか見えない。明らかに過労の症状だ。隣にトナカイがいない事がひどく不吉に思えて仕方がない。サンタ業界は闇が深い。
いずれ元気になった時はクリスマスパーティがしたい。このマスターが主催だと鉛玉が飛び交うクリスマスになって別のパーティを開催しかねないから、比較的常識人な人に準備してもらって招待される形で行こう。料理とプレゼントを持ち寄れば喜んでもらえるだろう。
今まで料理にチャレンジした事が無かったが、この機会にやってみようか。マスターは料理になると大分煩いから、煩くない今が好機だ。味見も反応を見て判断しよう。
・・・・・
「ふぅむ。料理は基本に忠実とマスターが言っていたか。ならばまずは手順がシンプルな料理が良いのぅ。」
デンドロで出版されている料理本をペラペラと捲っていく。材料はマスターの財布から金を勝手に使って買う。どうせ汚い金だ。この際、しっかりと表社会に還元してしまえばいい。
取り敢えずフライパンを熱してから油を敷き、怪鳥卵と砂糖、魔牛の乳にバニラに似た鞘状植物を煮込んで置いた液にパンを浸してフライパンに投入。
焼けた液の水分が蒸発して甘い匂いがフライパンの表面から香る。
マスターの指がピクッと反応した。
フライ返しで表面も焼き目をつけて皿に盛り、マスターお手製のアイスクリームを乗せる。
濃い黄色のパンに溶け出したアイスが食欲を唆る。キュアミントもアイスに添える。完成だ。
マスターの目がピクピクと動いた。
いざ実食。ナイフで切り分けてフォークで頬張る。
甘い。以前野宿した時の焼き芋の甘味と違ってより主張が強い甘味だ。しかし卵の旨味と乳の風味が合わさって舌の上で幸せなハーモニーを繰り広げている。
アイスクリームも実によく出来ている。勝手に冷凍保存用のアイテムボックスからネコババした甲斐があった。キュアミントの甘い清涼感も良いアクセントになっている。
マスターの脚がガタガタと震える。
皇国で買っておいた珈琲豆を挽いてフィルターに入れ、熱した純水で成分を出していく。黒いコーヒー液の水面から芳しい芳香が湯気と共に出ている。
スゥと舌に流し込み、残った強い甘味を洗い流す。苦味に酸味、後に消える甘味を堪能してから乳と砂糖を入れる。
マイルドになって甘味が主張するようになった。しかしコーヒーの香ばしい風味が乳の風味に負けず強調する。
マスターの腕が痙攣を起こす。
ホゥ。感動を溜め息に込めて吐き出す。戦いの興奮から平和な日常もまた良いものだ。
マスターはなんか凄い勢いで魂を燃焼させていたが。自分はあまり戦いの喜びというのはわからない。どちらかと言うとマスターの介護が出来ている今がとても幸せな瞬間だ。
男というのはいつまでも子供の心を残しているものだ。しかし、いつもは賢いフリをしているマスターがはしゃいでいる姿を見るのも嬉しいと感じる。負担になるとわかっていても頼られるのもだ。
緊急進化した事で更に同期より遅れをとっていることは既に承知済みの事。マスターにとって【アガナースタ】との戦いは何よりも大切な事だった。
なんか獣畜生にマスターを寝取られた感じがしなくも無いが。それは私より大事か?
普通、獣畜生と自分を天秤にかけた時「カーソンの方が大事だ」と言うところなのだ。それでも願われると言うのは舞い上がりそうになるほど嬉しい。言っていることはダメ男に依存する女みたいだが。
全く、本当にこの男は聡いくせに鈍い。
初体験が風俗嬢を交えた3Pなど、女心を解しているとは到底思えない所業。挙げ句の果てに暗殺者の血で手を汚させるなんて。もっと気遣う点はあるだろう。料理人目線で観察している場合か。
本当に、生粋のダメ人間だ。人の心を忘れたサイコパス。脅威を振り撒く闇の住人。私が隣に居てやらねばなるまい。
私以外であれば見捨てられている。土砂降りの雨の中、ゴミ溜めで埋もれていてもおかしくないのが、マスターだ。きっと次の瞬間復讐に燃えて豪雨の中飛び出していくだろう。
他の誰よりも私はずっと隣にいる。
長い付き合いの【瘴鼠衛衣】が消えて。旅の同行人である【霊公形代】が生きる事に満足して去って。下僕の【グデアメール】がポックリ成仏して。【もかでぃあ】が自分の脚で旅立っても。
私は貴方と共に歩む。血泥に塗れようと、地獄の苦行に溺れようと、決して離れることは選ばない。私だけだ。貴方と最期まで供をするのは。
ーーーだから、もっと頼って。私に全てを願って。貴方の願いが私の存在理由なのだから。
ーーー私は貴方が私に対して行う全てを赦そう。だから永遠に手離さないで。
ーーーどんな重荷も全て引き受けよう。私はその全てを支えてみせる。
ーーー貴方が好きです。私を愛してくれますか?
こんな事、普段は恥ずかしくて言えないけれど。今なら、良いよね?
マスターの全身が痙攣を起こして泡を吹き出す。
ルンバは死んだ。カーソンが作った料理は美味だったが遅刻性の劇物だったのだ。
鞘状の植物は甘い風味付けに使われるが、熱すると非常に強い致死性の猛毒になり得る。
肝心の《窮鼠精命》も燃え尽き症候群で使用できず、平穏な中で毒殺される。
ガタガタと全身を震わせるルンバを、安らいだ表情のカーソンがギュッと抱きしめた。
その様子は、欲しかったクマのぬいぐるみを手に入れた少女のように、無垢な喜びに包まれていた。
これはとある夢のVRMMOの物語。
飯マズ系では無いが満面の笑みで出される愛情たっぷりの毒物。天にも昇る恋の味。
浮気性の彼もこれにはニッコリ。彼女は動かなくなった彼をようやく手に入れた。
彼は私だけの物だ。他の誰にも渡さない。
ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート
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一人(抗菌と同じく特典化)
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双子
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五つ子(五等分の花嫁√(嘘))