これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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出落ちと化した【最悪の香水兵器】

俺の副業は幾つかある。禁制品密造、〈蜃気楼〉の依頼

 

ーーーそしてスカウトマンだ。

 

スカウトするのは戦闘職では無い。スカウトした戦闘職を使うと俺の存在が露見しやすくなる。それでは副業の意味がない。

 

よって俺がスカウトするのは生産職一択という事になる。かつて【可逆性変身薬】開発の為、製薬のエンブリオを持つ【高位薬師】のマスターをスカウトしたように。

 

発覚のリスクが戦闘職よりも低く、組織に対する貢献度が高くなりやすい。

 

俺はティアンの生産職よりマスターの生産職をスカウトする事に意味を見出している。

 

ティアンはリアルの事情に左右されない事や専門技術がマスターより蓄積されている事からそちらをスカウトした方が良いと考えるだろう。

 

実際、俺の製造工場では多数のティアンを雇用している。繊細な薬の製造には熟練したティアンに一任した方が良い。リアルで用事があるからと言って量産途中でログアウトされては困るのだから。

 

しかし俺は新規商品開発室にはマスターを重点的にスカウトした。それはマスターが新しい物を作るのに長けているからだ。

 

既存の固定概念を超えて新しい物を作るのはとても難しい。

 

0から1を作るのは一握りの天才の業であるが、既に100ある物に1を加えるのも一握りの存在。0と100を天才と存在と称したのは100からは努力次第で加えるのも可能だから。

 

100あるのであれば既に積まれた先人の知恵を用いて、さらに新しい物を作ることができる。

 

しかしながらこちらはそう悠長に構えてられないのだ。単純に努力の時間を待つ時間が無い。新参者であるマスターが既にある構造の中を既存の手段で勝負するのは極めて難しい。

 

100を1にするのは難しい。先人の知恵を我が物にする時間がない。

 

ならばデンドロの外から0を1に変えるものを持ってくれば良い。

 

それはリアルでの空想の伝説だったり、唯一無二のエンブリオだったりだ。

 

ティアンに服用者を変身させる薬の発想は無い。ティアンに無理を道理にするエンブリオは無い。だからこそマスターは新しい物を作るのに向いている。

 

そのレシピが有ればティアンでも製造することが出来る。

 

例えば皇国で人型戦闘機械を開発しようとするマスターによるクランがあるように。

 

既に文化に関しては運営が予め流布していたようだが、世界観を大きくぶち壊す文化は流石に流布したりはしないだろう。

 

リアルでのinfinite dendrogram は子供から死にかけの老人まで楽しめる全年齢対象のゲームなのだから。

 

ーーーだからこそ日本の誇るR18文化はそれほど流布出来なかったようだ。

 

エロに関する文化は娼館や遊郭程度の風俗組織を作る程度にセーブされている。

 

ティアンが運営できるように鋳型を残して発展するに任せる方針だったのだろう。

 

しかし、infinite dendrogramがサービス開始した時点でマスターによるエロ文化は輸入を始めているのだ。

 

例えばカルディナで発見してしまった同人誌はログインしたマスターが持ち込んだ概念だ。

 

俺の【可逆性変身薬】だって美形にする整形手術代わりに使われている娼館だってあることを俺は知っている。

 

エロには明確な需要がある。

 

エロ本が女性から軽蔑の目を向けられようと絶滅しないのはエロ本を出版する会社がそこに利益を見出しているからだ。

 

俺は既に需要の一部を見ていた。地下室で飼育されたドリアード。人外娘だ。モンスター娘とも呼ばれる。

 

デンドロには天然の人外娘が存在する。元から人型のモンスター、高位のモンスターが人間の形を取る伝説もある。

 

しかしながら俺は思った。人外娘の存在はモンスター全体の中では僅かなのでは、と。

 

人型のモンスターは少ない。人化出来るモンスターはもっと少ない。人化出来るモンスターは総じて強力無比な存在。

 

強力なモンスターのテイムは困難でしかなく、リターンに見合うとは言い難い。

 

エロ文化の需要に供給そのものが難しいという事実。

 

そこに俺はチャンスを見出した。他の誰にも出来ない更なる商売のヒントを垣間見ていたのだ。

 

【可逆性変身薬】を改良してモンスターが使えるようにし、生体的特徴を残して人間の姿に変える【人化薬】の開発。

 

肉体変化の応用で美少女モンスターをこちらで用意してしまうのだ。元が低位モンスターなら費用効果も良い。高位モンスターなら希少度を売りに出来る。

 

俺の新しい金の成る木になる。そう確信した。性癖とは拗らせるものである事を俺は知っているからだ。(実体験)

 

俺は金と危険を秤にかけて、変態の国にして大魔境であるレジェンダリアでのスカウトを決断。

 

過去にあれほど行きたかねぇと宣っていたが今は生憎と金欠なので金が欲しかった。

 

軍資金が足りねぇ。ギャンブルに打っ込む額は大きければ大きいほど良い。

 

掲示板での募集は機密性など無いに等しく、金の匂いを嗅ぎつけたゴミどもに予期せぬ横槍を入れられるかもしれない。

 

【人化薬】開発においてアドバイザーとして最適なレジェンダリアンのスカウトはデンドロ内で行う他無いと判断した。これは最重要機密なので仲介屋に頼る事は出来ない。

 

信用が物を言う業界であれど情報とは漏れるもの。出来るだけ露出は避けていきたい。

 

漏れ出た情報から製造工場にたどり着かれては本末転倒だ。

 

今回ノーラは留守番だ。師の教えを我が物にする時間が必要な時期。教えられるだけでは発展はない。長い間、自分一人で創意工夫させる必要があった。

 

レジェンダリアではアクシデントサークルや変態的なマスターなど何が起こるかわからない。流石に未開の地でノーラを庇い切れるとは思えないので今回は行幸というべきか。

 

留守番中の監督者不在に関しては問題ない。

 

〈蜃気楼〉の伝手で信用できる相手に預けるし、

 

【上位契約書】でガチガチに拘束してあるのでサボりも脱走も出来ないようにしてある。

 

これでなんの心置きもなくレジェンダリアに出向できるというものだ。

 

少しばかりカルディナの滞在期間が短いと思ったが、利益を出すので有れば些末な事。

 

俺はレジェンダリア行きの砂上船の予約をして、アクシデントサークル対策アイテムを買いに出かけた。

 

俺の後ろではグルグル巻きの簀巻きにされた弟子が黒服達によって出荷されていた。

 

「むごっ!むごごごっっ!むぐぐぅ!」

 

芋虫のようになった弟子が何やら叫びながら俵のように担がれて運ばれる。

 

【契約書】のサイン時に抵抗しようとしていたので俺が拘束しておいたのだ。全く、無駄だと言うのに。

 

拘束しても一向にサインしようとしないので、指を切って血判をクッキリと押させた。これでも【契約書】は履行されるので問題ない。

 

【契約書】は契約書と銘打たれたアイテムだが、その強制力は法的な物ではなく法則的だ。

 

これが意味するのは法秩序の産物では無い為普通に悪用されるという事。無理矢理サインさせても判定的にはOKなのだ。

 

・・・・・

 

レジェンダリアの森林はリアルの森林とはまた違った香りがする。それは群生する樹木の違いであり、自然法則が根本から違っていると言う事だ。

 

一見普通の樹木でも、これはデンドロのレジェンダリアに順応しているデンドロ固有の品種。リアルには魔力やリソースなんて不思議エナジーは存在しないのだから。

 

レジェンダリアが輸出している樹木から抽出した香り高い香水の原材料にも魔力が含まれている。勿論魔力が籠った香水はただ匂いのする液体ではない。

 

デンドロの香水は効果が持続する消耗品であり、鎮痛効果や治癒力促進など医療目的で使用される事もある。

 

過去には精神高揚や無痛化など戦争における兵力の運用に転用される事もあったが、その悉くが製造と使用を禁止されている。

 

特に“三強時代”で使用された【狂躁香】と呼ばれる香水は不当に所持しただけで死刑相当だ。

 

これは香り付けでも医療品でも戦争の道具でも無く、大量虐殺の手段でしか無い故に。

 

・・・・・

 

レジェンダリアの大自然の空気を肺いっぱいに吸い込むと、体が内側から洗浄されたかのような清涼さを感じる。

 

嗚呼。思ったより過ごしやすい国だったのか?と思っていたのは遠い過去の話。

 

俺は人外萌えのレジェンダリアンを地道に探そうとしていただけなのに。

 

ホイホイと変態どもの集まりに参加したら実は犯罪組織の会合だった件。何でだよ。

 

人外萌えだのうちの妹が可愛いだの言っていた奴に声を掛けて指定された場所に行ったら、どう見てもカタギの人物ではなさそうな片目が無い隻眼の長命種が待ち構えていた俺の気持ちが分かるか?

 

なんの奇跡かバレずに潜り込んでしまい、集団テロの計画をバッチリ確保してしまった。

 

俺は咄嗟に【可逆性変身薬】でふん縛った見張りと入れ替わる事で敵陣真っ只中での露見を回避したが違和感で既に疑われたと考えて良い。

 

脱走の機をログアウトの時間まで探るが、如何にも勘が良さそうな頭脳派に探りを入れられた。《真偽判定》も使われていただろう。

 

尋問されるまでが早すぎる。流石に急拵えの演技では無理があったか。

 

ジッと全体を視線で探られながら勘がいい奴が口を開いた。 今ここで始末するか・・・?

 

「お前は味方か?どうも様子がおかしいようだな。」

 

・・・俺が裏社会に(一応)属している人間で良かった。

 

直球にお前が味方かと問われたが、俺らは敵にも味方にもなり得る関係である事を考えると味方と言えなくも無い。

 

この組織も【可逆性変身薬】の顧客のようなので味方と言えば味方だ。犯行計画に加担しているわけだからな。

 

そして俺のような人間には《真偽判定》は意味がないと自負している。俺は聖人君子では無いが信用を重視している。真剣に問われたら『嘘』は吐かない。

 

味方だ。と答えたら変な顔をして去っていった。予想が明らかに外れたからなのかもしれない。

 

俺の演技も捨てたものじゃなかったらしい。彼が感じていたのは違和感だけのようだ。

 

俺は乾いた唇を舌で潤した。柄にも無く緊張していたか。

 

さぁ裏切ろう。こいつらの為にもな。

 

今までは心から味方だったがいつまでも味方である必要はないと俺は思っている。なぜなら獅子は崖から子を落とすと言う。

 

いつまでも味方なんて甘えた関係よりも、敢えて心を鬼にして敵対することでテロリストらの為になるだろう。

 

だから俺からのサプライズプレゼントを用意しよう。

 

俺は《瞬間装備》で【ぷれいどっぐ】を装着して人気の無いところで穴を掘り始めた。

 

ある程度地中で空間が出来たらカーソンと融合して掘るスピードを更に上げた。

 

大きな穴を掘らなければならない。とても大きくて建物ごと沈み込む大穴を。

 

臭いものは蓋をして埋め立てるに限る。

 

いくら人離れしたステータスを持っていようと生き埋めは回避できまい。

 

ところで俺の【ぷれいどっぐ】の特異性を覚えているだろうか。

 

【暗闘潜犬 プレイドッグ】のUBMとしての特性は不完全なステルスに追跡の無効化だ。

 

不完全なステルスとは、光学的に観測できてしまう為《殺気感知》や《危機察知》を欺けても襲撃を察知されてしまう。

 

だが、逆に言えば《殺気感知》や《危機察知》は完全に欺けていたのだ。

 

さらに奴の音は聞こえない。掘る音も聞こえない。伝わる振動がない。

 

奴の戦闘の最適解は端的に言って落とし穴にあった。

 

大きな落とし穴で対応する動きを見て敵の力量を測り、仕留めるか逃走するか判断してしまえば良かったのだ。奴にとって逃走は容易いのだから。

 

そして本犬よりも能力を上手く使った結果がこちらです。

 

建物が大きな落とし穴に落ちていく。奇妙なことに悲鳴は聞こえても物音が一切発生せず、暗い闇の中で建物ごとテロリストは纏めて墜落死した。

 

メインジョブの【大死霊】のレベルが上がった。やはりティアンは経験値が多い。

 

俺が起こした現象は《暗躍毛皮》のスニーキング仕様で一切の音も無くなる。

 

そこいらの草を踏んでも、建物の下で大きな穴を掘りまくっていても、俺が掘った落とし穴に建物が落ちても。

 

着ぐるみを着ている間は手榴弾を起爆させても音がしないだろう。

 

俺は音も無くその大穴を何もなかったかのように埋め立てる。

 

テロリストの拠点はどこでもありそうな空き地に整地された。誰も地下にテロリストの死体があるとは思うまい。消音《デッドリー・ミキサー》で怨念も死体も処理してあるからな。

 

俺は【売地】と書かれた看板を跡地にさくっと刺した。完璧だ。

 

俺は全てを無かったことにして目的のレジェンダリアン探しを続けた。

 

【人化薬】を開発する為にはどうしても性癖を拗らせたレジェンダリアンが必要なんだ・・・!

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

【狂躁香】。理性を永遠に失って暴力的衝動だけが残ったバーサーカーを量産する戦略兵器。共に“三強時代”に生み出された【石と金は等価】の同期。

 

軍役の【高位調香師】が開発した戦争の負の遺産であり、首都全体で【狂躁薬】を拡散する犯行計画は目的の変態を探す通りすがりのプレーリードッグによって、文字通りレジェンダリアの闇の中(地下)に葬られる。

 

とても強力な兵器だけど過去最大の出落ちを喰らった。

子供の教育方針はどれにする?

  • 蠱毒にぶち込む
  • 普通の子供のように育てる
  • 子供の為だけの揺籠()で育てる
  • 放任主義。子供は勝手に育つ
  • 帝王に愛など要らぬ!!
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