犯罪者をぶちのめし、凶悪なモンスターをぶち転がし、ゼタ先生に人間大砲の砲弾にされる日々。
だいぶ久しぶりに健全なマスターとして活動していると自負している。というか俺が健全に活動していた期間って・・・
まぁ、海賊船団の面子にも慣れて来てフレンドも増えた。
特にリアル大学生らしき海賊少女のフレンズは最高やなって・・・俺のフレンドリストが潤ったのを感じる。
さっぱりとしていて人好きする性格といい、どことなくジーエンに似ている気がする。そして童顔だ。
何というか、本当に大学生なのか・・・?というぐらい人が出来たぐう聖クランマスターだ。クランメンバーからの人望も厚い。
そして、本人は超級職になっていないからーとか言っているが、何気にハイスペックなマスターだ。
というかクランマスターを務めている時点でその能力は保証されている様なものなのだが。
距離の取り方が極めて自然で、酒飲んでたらいつの間にかフレンドになっていた始末である。俺も何が起きたのか全くわからない・・・
この国は何かと善良な人格者が多い。更に頭の回転の方も、常に環境が変動する海で鍛えられているのか平均的に高いと言える。
俺からしたら居心地は良いが、本業をするにはやり難い国だ。治安維持側にも幾つか知り合いが出来てしまったからというのもある。
まぁ、端的に言ってしまえばグランバロアに情が移ったという事なのだろう。
ただ、借金の返済が異常に厳しいのが唯一の難点である・・・
長く滞在する予定は、本来なかったんだがな・・・
重りを抱えて母なる海へと飛び込む。
そして俺の日課は始まる。
・・・・・
海水の流れに押されてフヨフヨと震えるメタルチックなボディー。
俺はソレを熱が籠った目で見つめる。
メタルスライム。
それはモンスター界隈における一つの象徴だ。
硬く、素早く、そしてーーー経験値を多く落とす。
デンドロ世界におけるメタルスライムは希少種であり、経験値を目当てにモンスター・ティアン種族を問わず狙われる宿命を抱えている。
しかしながらこのメタルスライム。
保有している耐性は【ダメージを三分の一にする】などという生易しいものではなく、【液状生命体】の【物理無効】とメタル系の【炎熱無効】、【雷電無効】を保有している為、物理攻撃しか持たない存在を容易く葬るスペックを持っている。
更に◯ラクエ世界のスライムよりも完全に液体なので、攻撃がよりエグいことになっている。もはや上位互換だ。
別物とも言う。
故に、デンドロのメタルスライムとは初心者殺しだ。
窒息、押し潰し、切断、殴打etc・・・質量×速さの方程式から繰り出されるクリティカルは初心者が誰しも通る洗礼。
そんなメタルスライムに有効な手段は固定ダメージ、あるいは耐性外の攻撃・・・要は物理、炎熱、雷電をメイン火力にしている人はメタル狩りから完全に弾かれる。
単純にお荷物にしかならないからだ。
メタル狩りは攻撃を受け止めるタンクか、狩りの効率を上げるヒーラーなどの、サポート系が活躍する場でもある。
まぁ、とは言え深海で活動出来る様なタンクやヒーラーなどそうそう居ないだろうが。
俺はズニュッと濃厚な怨念の塊をメタルなスライムに押し付ける。
強力な【呪縛】の発生。更に《ブラッド・アレスト》や他の怨念系スキルでガチガチに固めて捕獲。【呪詛】で呪怨系状態異常を補強する。
そしてガーディアン形態のカーソンが体内に抵抗出来ないメタルスライムを収めていった。
今のカーソンのガーディアン形態のアバターは消化器官は無く、水槽の様な体内構造になっている。それは深海から水上まで運搬する為の形状だ。
俺は新しい商売を始めていた。
安全かつ楽にレベルを上げる事が出来るという、レベル上げが面倒なデンドロのニーズに答えた形だ。
深海でも活動出来るカーソンと俺が海底に棲息するメタルスライムを捕獲して、売り捌く事で強いモンスターの素材を売却するよりも高い利益を叩き出している。
この商売は間に挟まる仲介人が居ない為、丸々利益が俺の懐に入るというメリットがある。
というか俺達以外にこの捕獲作業が出来ないからこそ、この商売は成り立っているのだが。
深海魚が異常な水圧の中で生存出来る理由は、海水と体内の圧力が同じになっているからだ。
潜水艦がゴテゴテせざるを得ない理由は、そこにある。人間の体内が深海と同じ圧力の状態で活動する事が出来ないという”当然“に阻まれているのだ。
俺達の場合はアンデッドの呼吸を必要としない特性と《星の救世》で深海魚と同じ様にアバターを調整した事で、深海の環境に適応している。
まぁ、詳しい原理はググれ。
因みに水分の含有率が影響している様で、蒟蒻と豆腐は深海でも潰れないらしい。
要は今の状態は水死体という訳だ。
と言っても原型が分からないほどぶくぶくに膨れてはいない(重要)。
グロいのは俺も嫌いなので、自分の姿には最低限の拘りはある。◯イオハザードの成れの果ての姿に成りたいと思ったことは無い。
深海に棲息するダイオウグソクムシのモンスターを踏み潰しながらメタルスライムを捕獲。
ついでにグランバロアから依頼された深海のサンプルも採取する。
その傍では【グデアメール】がメタルスライム狩りをしていた。こちらは捕獲ではなく討伐だ。
《殺戮戦禍》の有効活用は経験値効率が良いメタルスライム狩りが最適だ。
殺害数を抑えつつ、経験値を多く獲ることが出来る。
特に【メタルスライム】の上位種【メタルスライムキング】の討伐が最も望ましい。
深海という外敵が少ない環境で進化した個体は、同族を率いる様になる。
王位の戴冠。
その時、危機意識が低かった【メタルスライム】の群れ全体が危険に過敏な反応を示す様に成り、徹底的に個を排した統率行動を始める。
更に仲間内の共喰いによって【ハイエンド】個体も発生する様になる。そいつらは親衛隊・・・王を守る盾、或いは剣だ。
それぞれ別の進化を遂げて、自滅を躊躇わない特攻を仕掛けたり、幅広い警戒網を張り巡らせ、魔法を反射する体を獲得する。
その進化に自らの保存意識は存在しない。王さえが生き残れば、群れを新生させる事が出来るからだ。
群れ全体が一つの生き物になり、個々が全体を生かす機能になる。王でさえ機能の一つだ。
しかし、何処にも例外はある。
異端の王。異常な個人主義。王以外は全て踏み台でしか無い。
異端に率いられた群れは、比喩抜きで文字通り一つの生き物になる。
【メタルスライム・スレイブズ】
歪に膨れ上がった液体金属が夥しい金属糸を放出し、触れたもの全てを切断する。
海藻の様に揺蕩う斬糸の群生地。
それを【グデアメール】がRTAの様な動きで回避して呪われた魔剣で根本からバッサリと裁断した。
本体から切り離された金属糸は、ボロボロになって崩壊していく。
流れる様に死地を突っ切った【グデアメール】は、城塞の如き液体金属の壁を破断。
《物理無効》を愛剣の呪いで切り捨て、コロニーを動かしている王の殺害を企てる。
しかし敵方も無抵抗では無い。
王の勅命を受けて、膨大な液体金属が流動し【グデアメール】を圧殺せんと包み込む。
超音速で狭まる壁に対し、【グデアメール】は巨大なパイルバンカーを静かに構えた・・・
一瞬の緊迫。
その瞬間を目撃していた俺は、海底で拾ってきた伊勢海老っぽいモンスターをバリバリと齧る。
美味。
膨大な液体金属が内側から発生した凶悪なベクトルによって全身を震わせーーー爆散した。
銀色の欠片が放射線状に四散する。一体化しようとする欠片もあれば死んだ様に沈静化した欠片など、反応はまちまちになった。
統率者の指揮が失われて、個々がバラバラに行動し始めている。
まだ討伐は完了していない。
勝算が薄いと見たコアになっていたメタルスライムが四散する欠片に擬態し、遠くまで逃れようとしたーーーが。
むんずと擬態した王が掴まれた。
目の前にはダイオウグソクムシに似たモンスターをガリガリと齧る【死霊王】。
ダンゴムシな見た目だが、甲殻類の味がする。
プルプルと震え始めた王に俺はニコリと親愛を表現した。
体全体を使って、大きく振り被る。
翼を広げた鷲の如し投球フォーム。
「play ball.」
『◾️◾️◾️◾️ォ』
【グデアメール】が愛剣を油断無く構えて、俺に向けて予告ホームランを宣言した。
ははは、生意気な奴め。
人外の力を掛けられたボール()が、ギチギチと鳴る。
【死霊王】の指から、銀色の魔弾が放たれた。
海水の抵抗をものともせず、銀色の軌跡を輝かせて飛翔する魔弾を見据えて、【グデアメール】は愛剣を振るう。
空振りを恐れぬ強振。
接触。
銀色の軌跡と真紅の軌道が重なり合う。
ーーー破滅的な轟音が深海に鳴り響いた。
これはとある夢のVRMMOの物語。
ボール(経験値)は友達。
子供の教育方針はどれにする?
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蠱毒にぶち込む
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普通の子供のように育てる
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子供の為だけの揺籠()で育てる
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放任主義。子供は勝手に育つ
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帝王に愛など要らぬ!!