これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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深淵なるスープ皿

深海は意外と美味なる物が多い。

 

ダイオウグソクムシに似た魔蟲は甲殻類の旨味成分を豊富に含んでおり、深海魚の身は水っぽいが鍋料理にしても美味しい。例をあげるとすればあんこう鍋が代表例だ。

 

中には殆ど水で構成されたスライムの様な怪魚もいるが、未知を探究する試食会は飽きが来ない。

 

そして今。

 

俺はカーソンに深海ウミガメのスープを出されていた。

 

・・・このスープの具材、人肉だったりしないよな?

 

ちらっとカーソンの表情を観察し、アンデッドの嗅覚で血の匂いを識別しようとしたが、カーソンは微笑むだけで血の匂いが消されている。

 

それらは別段不自然な様子は無い。料理人は無臭の香水を好む。

 

それは香水の強い香りが料理の香りを邪魔してしまう時があるからだ。プライベートはともかく、調理、提供時は無臭の状態が望ましい。

 

故に解体で付着した血の匂いを消すのは不自然な事ではなく、意識の表れと捉える事も出来る。

 

しかし俺が警戒している点は其処では無い。

 

“俺は深海ウミガメを見た覚えがない”

 

このスープの具材はカーソンが狩ってきたと言うナニカであり、調理前の姿を見ていない。

 

試食会にはそういう時もある。しかし、ウミガメのスープの話が頭の中にチラつく。

 

遭難した集団が人肉をウミガメのスープと仲間に偽り、食して生き延びた話。

 

食材を詐称するにはややリスキーな料理だ。カーソンのブラックジョークなのかもしれない。

 

そもそも深海に亀がいるとは思えないから別の食材の可能性はある。カメノテとか。

 

しかしカーソンにはカニバリズムの前科がある。

 

人食嗜食の料理人。カーソンには肉料理全般を禁止するべきだったかと検討するが、遅すぎた。

 

疑わしき料理Xは目の前に鎮座している。ウミガメ?の肉がスープの中に沈んでいた。デンドロの世界はリアルの常識で測る事は難しい。

 

イチゴの味がするリンゴの様な果実等の例を見て分かる様に見た目で判別する事は困難である為、人肉とウミガメ肉の判別は不可能だ。

 

既に食欲は減衰し、顔色も蒼くなりつつある。

 

というか何故カーソンはさっきから訂正しようとしない?

 

読心で人肉疑惑は伝わっている筈だ。俺の《真偽判定》を警戒しているのか?

 

怪しい点は多い。人肉疑惑。否定しないカーソン。ウミガメのスープ。

 

疑えば疑う程謎は深くなって、底が見えなくなっていく。

 

出された料理を冷めさせるのは俺が許せない。料理人のポリシーがある。

 

AGIで体感速度を引き伸ばそうと、その瞬間は避けられない。

 

ーーー直接確認するしかない。

 

しかし、確認には勇気を要する。

 

食べる側と食べられる側・・・カーソンから滲み出る捕食者のオーラ、天性の人喰いの気配だ。本能的な恐怖を感じる。

 

お前は◯リコ?

 

残念ながら俺はグルメ細胞なる生物兵器は持っていない。

 

というかカーソンがグルメ細胞の怪物じゃねーかなと思う。耐性以下のものは何でも食えるしな。その気になれば金属も食える。

 

人間は人間を食べられる様には出来ていない。共喰いを忌避する仕組みがある。

 

毒物や腐食など害を及ぼす物を苦味や酸味など味覚上の不快感で識別する様に。生理的な忌避を感じる様に出来ている筈だった。

 

その条理にカーソンは囚われてはくれなかった様だ。強靭過ぎる。

 

【鑑定士】のジョブに就いていればという後悔が過ぎる。事前に予防出来た事態だった筈だ。俺はその努力を怠った。

 

過去の俺の因果が最悪の結果を手繰り寄せたか。

 

俺は目を閉じた。

 

瞼の裏に、俺の体を喰らうカーソンの姿が走馬灯の様に流れた。

 

切腹するが如く腹を括る。恐怖を乗り越える覚悟。

 

基より食す他選択は無い。散る時は潔く散るとしよう。

 

俺はウーパールーパー君の【テレパシーカフス】に試食会に招待する旨を送った。

 

旅は道連れ 世は情け。

 

どんな時も一人にはしないよ。俺達は友達だから。

 

だから、友よ。

 

一緒に逝こう。

 

『試食会か?今は暇だから問題ないぞ。』

 

「深海ウミガメのスープ?素潜りで獲ったの?マジか。今度誘ってくれよ。」

 

・・・・・

 

いざ実食。

 

スプーンでスープを掬い、口に含む。

 

形容し難き風味が口内に広がり、グニャリと肉が独特の反発を生む。

 

着ぐるみの口から解読不能の言語が漏れ出た。

 

「「・・・繝翫ル繧ウ繝ャ。」」

 

【SAN値チェック】

 

コロコロコロ・・・と二つの正六面体が転がる音が鳴る。

 

遠くで白く、細長い何かが揺れている光景を見た気がした。

 

・・・・・

 

俺は机に伏せて寝ていた。

 

記憶があやふやだ。頭の中に靄がかかっている。

 

何か冒涜的な体験をした気がしたが、カーソンに聞いても知らないと言うので気にしない事にした。悪夢だったのかも知れない。

 

ところで・・・隣で伏せている男は誰だ?

 

俺の記憶だと見覚えが無いが・・・

 

「・・・・・。」

 

「気にするな。ただの死体じゃ。」

 

ただの死体とは?

 

カーソンが男の足を引き摺って何処かに連れて行った。

 

カーソンが帰ってきた時には男の姿は無くなっていた。

 

男の行方は、カーソンしか知らない。

 

マスターだったようだからログアウトしたのかも知れない。

 

ーーー命は廻り周って原初の海へと還る。

 

鯉が跳ねる音が聞こえた。

 

subtitle 「カーソンの特製ウミガメスープ」

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

「ワシのスープは美味かったか?」

子供の教育方針はどれにする?

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  • 子供の為だけの揺籠()で育てる
  • 放任主義。子供は勝手に育つ
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