「おい速水ー、ちょっと見てくれないか?」
「いいですよ」
「サンキューな」
開発室に二人の男の声が響く。
自分のトリガーをもう一人の男に見せているのは米屋陽介。A級7位三輪隊所属のアタッカーだ。最近使い始めた槍型弧月のチューニングを頼みに来たようだ。
「どうでしたか?槍型は」
「もうちょっと柄が長いほうが使いやすいな」
「分かりました。じゃあちょっと待っててくださいね。今変えますから」
「いつも悪いなー」
米屋のトリガーの微調整をしている男の名は
「最近個人ランク戦に顔見せねぇじゃねえか。これ終わったらいっちょバトらねぇ?」
「遠慮しときます。まだまだ槍型は試作段階で改良がいりますし、他にやりたいこともあるので」
「そうかー、まあ残念だけど仕方ねぇな。じゃあまた今度手が空いたらやろうな。」
「そうですね。・・・できましたよ。こんな感じでどうでしょう?」
チューニングが終わったトリガーが米屋の元へ返される。
「うん、悪くねぇな」
「また何か気になるところがあったら言ってください。すぐ直しますから」
「おう!ありがとなー」
そう言うと米屋はロビーの方へ帰っていった
米屋が帰るのを見送ったあと、男はすぐに自分の研究に取り掛かる。男が現在研究しているのは、弾トリガーの射程向上について。元々は防衛隊員として活動していた彼だが、現在ではほとんどの時間をトリオン研究に当てている。実際槍型弧月の開発やレイガストの開発に携わったりと、一定の成果を残し、やりがいも感じているので不満はないが、一応防衛隊員という肩書を持つ以上思うところが無いわけではない。
「個人ランク戦か・・・。確かに最近は研究ばかりでやってなかったな...」
防衛隊員らしい活動といえば週に1〜2回の防衛シフトのみ。もういっそのこと、正式にエンジニアになろうかなと真剣に考えているくらいだ。
「秀!!話があるんだけど!!」
男ばかりの研究室に、甲高い声が響く。その声の主は、男がよく知っている人物だ。
「天音、その話はもういいって...。あともうちょっと静かに」
「あんたが良くてもこっちは良くないの!ちょっと来なさいって!」
「分かったよ...。今行くからちょっと待ってて」
男は研究を手早く切り上げて声の主の方へ向かう。声の主の名は
「ここならいいかしらね」
二人はロビーにある机に座ると早速話し始める。
「どうせまたあの話でしょ?オペレーターやるから隊を作れっていう」
「あら、わかってるじゃない。わかってるならさっさと隊を作りなさいよ」
「何度も言ってるように、僕は隊を作る気なんてない」
そう、彼女がこの話をするのは今回が初めてではない。小さい頃から、男は彼女のわがままに振り回されてきた。ある時は急に海に行きたいと言い出し、その日の予定をキャンセルして海へ。おかげで好きな作家のサイン会に行くことができなかった。その作家のサインぐらいパパに頼んだら取り寄せられるわよ、そういって海に連れ出された。数日後、彼女が本当にサインを持ってきたときは心底驚いたものだ。
海に行くくらいならまだいいが、今度は隊を作れだ。なるべく研究に時間を割きたい男にとって、隊を結成することはできる限り避けたい。何度もそう言ってはいるが、彼女に諦める様子は全くない。
「そう言うと思って、今回は秘密兵器を仕入れてきたわ。」
「秘密兵器?」
すると、彼女はおもむろに一枚の紙を取り出した。
書いてる内にどんどん膨れ上がったので4話に分けます。計画性ぜろえもんです...。