「これは?」
「これはね、ボーダー上層部からもらってきたの。」
「は!?上層部から!?」
そういって彼女の方を見ると少し胸を張っているように見える。得意げな様子でこう続けた。
「パパにお願いして作ってもらったの。わざわざあんたのためにもらってきたんだから、感謝しなさいよ。」
まさかここまでするとは...。もう彼女とは10年以上の付き合いだがその行動力を甘く見ていたことを痛感する。彼女の父ははとある有名企業の社長である。厄介なことに一人娘の天音を溺愛しており彼女のためなら法に触れること以外は何でも、いや法に触れることもやってしまいかねない親バカっぷりだ。
数ヶ月前天音がボーダー受験を決めたのと同時にボーダーへの資金提供を初め、一瞬でボーダー有数のスポンサー企業となったのにはさすがに引いた。そんな彼女の父直々の頼みならボーダー上層部も簡単に断ることはできない。しかも彼女の父が介入した以上こちらとしても無碍にはできなくなってしまった。
男と彼女は親同士が知り合いであり、彼女の父には男の両親が彼を残して海外に行って以来数年間家に住まわせてもらい生活の面倒を見てもらっている。男がボーダーに入りたいと言った事を快く許してくれたのも彼だ。
彼女の父は男にとって第二の父も同然の大恩人なのだ。大恩人の頼みを断るのは男としても忍びないことだ。
「めちゃくちゃするなぁ...。で、なんて書いてるの?」
「要点をまとめて言うと、もしあんたが作った隊がA級に上がったら研究に使うお金とか材料を優遇するってところかしら。」
「ほんとに!?」
「ほんとよほんと 私が今まで嘘ついたことあった?」
いくらでもあるだろ...。男はその言葉をぐっと飲み込んだ。研究費と材料の優遇、これを聞いて喜ばない研究者はいない。トリオンというのは貴重な資源でありボーダーという組織の特殊性もあって個人の研究に使える予算や材料はそこまで多くない。男にとってそのメリットは研究の時間が短くなるというデメリットを補って余りあるものだった。さらなる研究のために贅沢は言っていられない...。男は覚悟を決めた。
「わかったよ、そこまでされたらさすがに断れない。作るよ部隊」
「やった!パパにお願いした甲斐があったわ!」
「それより隊を作るのはいいけど隊員の当てはあるの?」
「それなら心配しないで、一人心当たりがあるわ。・・・そろそろ来る頃よ」
二人のもとに一つの足音が近づいてくる。
「やあ、どうやら話はまとまったようだね」
時間軸としては
この話が7月
速水隊がB級ランク戦に参加するのが10月〜12月
そして1月からワールドトリガー本編に繋がります。
玉狛第二が参加したランク戦は2月〜4月なので1シーズン前の話です