あるルーキーたちの軌跡   作:ふーの

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第一章ラストです


何はともあれ

―――10月

 

とうとうB級ランク戦開幕まであと一日となった。この数カ月間、僕たちは必死に努力してきた。玉狛第一の面々との修行、戦略や勝ちパターンの模索、トリガーセットの見直しなど、ボーダーに入ってから一番忙しい数カ月だったかもしれない。

 

その甲斐あってか、みんな見違えるほど強くなったと思う。......ただ何か漠然とした不安を感じるのも事実だ。なんというか、とても初歩的な何かを見落としているかのような、そんな不安だ。

明日への期待に胸を膨らませる反面、ちょっとしたもやもやを抱えながら校門をくぐる。

 

六頴館高等学校、警戒区域の東南東に位置し、三門市に二つ存在するらボーダーと提携を結んでいる学校の一つだ。僕はそこに通っている。

 

進路選択のとき、もう一つのボーダー提携校である「三門市立第一高等学校」と、この学校のどちらに行くか迷ってた僕に「お前は頭がいいんだから学費のことは気にせずこっちに行ったらどうだ」と言ってくれた天音の父には感謝している。あれで娘に甘すぎるという悪癖さえ無かったらなぁ...。ちょっと前に見た天音の部屋にはマジでびっくりしたからね...。扉を開けたら、ゲオかな?ってなるぐらいゲームが山積みだった...。あれ総額いくらなんだろうね?・・・・怖くなってきたからこのことを考えるのはやめよう...

 

「おはよう」

 

「おはよう」

 

教室のドアを開けて席につくと、すでに登校してきていた古寺に挨拶をする。六頴館は成績によってクラスを分ける。僕が通っているのは1ーAだ。ちなみに1−Cには風間隊の歌川と菊地原がいる。学校では、比較的この二人と過ごすことが多いように思う。菊地原なんかは初めてあったときは、何だこいつ...と思ったが話してみると思ってたよりいいやつで、今では特に仲の良い友達の一人だ。

 

「二人ともおはよう」

 

「おはよう」

 

「おはよう」

 

もう一人の1ーA在籍のボーダー隊員である染井華が登校してきたので挨拶する。ボーダー隊員だからということもあるのだろうか?僕たち三人は近くの席になることが多い気がする。

二人とも比較的静かなタイプだが、同じボーダー隊員ということで仲は悪くない。たまに本の貸し借りなどをしたりもする。この二人のおすすめの本は、読むとなんというか視野が広がる感じがしていい。

 

それにこの二人には恩がある。まず古寺だが、古寺は僕が狙撃用トリガーの扱いを学びたいと言ったときに、わざわざ教えてくれたばかりか、彼の師匠である奈良坂先輩を紹介してくれた。

古寺と、古寺が紹介してくれた奈良坂先輩のおかげで狙撃力を実戦で使えるレベルまで上げることができた、と言っても過言ではないだろう。

 

染井はテスト前に勉強を見てくれる。1-Aに所属してることもあって殆どのところはわかるのだが、帰ってから研究と訓練しかしてないせいで所々わからない問題があるのだ......。忙しいテスト前に教えてくれる染井には本当に感謝している。

 

毎回、普段から真面目に勉強しなきゃな〜と思うのだが、あのかわいいトリガーたちを見ると研究する手を止められない......。2徹目の夜にレイガストが話しかけてきたときは、雷蔵さんが強制的に休ませてくれたしね...。ほんとにいい加減にしとかないと......。自分への戒めを胸に刻みつけていると1時間目の始まりのチャイムが鳴る。とりあえず授業に集中しないとな......

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。いくつになってもこのチャイムは大好きだ....。ちなみに一番好きなのは金曜日の午後に聞くチャイム。

 

授業が終わると弁当を持って1−Cに向かう。昼ごはんは古寺と食べたり一人で食べたりもするが、基本1−Cで風間隊の二人と食べる。

ちなみにこの弁当は自分で作ったものだ。玉狛では基本レイジさんが全員分の弁当を作って持たせてくれるが、いつも頼りきりでは申し訳ないので週に1〜2日は僕がみんなの分の弁当を作っている。

 

元々凝り性なこともあって、最近は少しづつ料理にハマっていっている。あの食材たちを見ると研究者魂が働いちゃってね...。それに研究と料理って微妙に似てるんだよね。今日の卵焼きは焦げずにきれいな黄色に巻けた自信作だ。

 

校舎がそこそこ広いせいで同じ階にあるくせに絶妙に遠い1ーCのドアを開ける。

「よう速水」

「遅かったね...」

「ごめんごめん、ちょっと授業が長引いちゃって...」

 

すでに昼ごはんを机に出していた歌川と菊地原に軽く謝りつつ僕も席に座る。

二人が食べるものは決まっていて歌川は僕と同じで家から持ってきた弁当、菊地原はパンだ。

「明日からランク戦始まるな」

「そうだね...」

「そういえば影浦隊がB級に降格するんだっけ?」

「そうらしいね、まさか二宮隊に続いて影浦隊もなんてね...」

 

影浦隊がBに落ちるという話を聞いたのは大体一カ月前、何でも影浦先輩が根付さんをぶん殴ったらしい。影浦先輩らしいというかなんというか...。影浦先輩も根付さんも決して悪い人では無いのだが、態度や物言いのせいで誤解されてしまうことも少なくない。多分その当たりのすれ違いが原因だろうな...。・・・まあ理由はいい。問題なのは、A級部隊の影浦隊が実力不足でもなんでもなく、暴力沙汰が原因で降格したことだ。

元A級4位の二宮隊だけでも相当しんどいのに、A級8位の影浦隊まで相手にしないといけないとなると、相当な苦戦を強いられるだろう。

 

「今期のB級ランク戦は荒れそうだね...」

「そういえば速水」

「何?」

「京極先輩とチーム組んでランク戦出るって噂は本当なのか?」

 

 

・・・・・・・・・・・は!!??

なんで知ってるんだ!?僕たちの隊がランク戦に出るのは当日までわからないはずだろ!?しかも噂になってるって......

 

「・・・・・・・・・・・なんで知ってるの....?」

「・・・動揺しすぎ、心臓の音すごいよ」

「そりゃあこれまで秘密にしてたことが実はバレてましたなんてことが分かったらそうなるでしょ!」

「いつ行っても個人ランク戦にいる京極先輩と、いつ行っても本部研究室にいるお前がここ数ヶ月本部に姿を見せてないからな。もしかしたら隊を組んでてそれを隠すために来てないのかも?って正隊員の間で噂になってたんだ。」

 

 

・・・・・・しまった!!隠すことばかり考えててそのことを一切考慮してなかった!!我ながらなんて初歩的なミスを....もやもやの正体はこれだったのか.....。これじゃあ疑われて当然だよ....。バレない程度に顔出しとけばよかった....。

「....その様子だと噂は本当みたいだな」

「うんそうだよ....やっちまった〜」

「君のことだから当日まで隠しておきたかったんだろうけど、残念だったね...」

「それほんとに思ってるのか菊地原...」

 

――――――同時刻 星輪女学院

 

那須「そういえば京極ちゃん今度のランク戦に出るの?」

小南&京極&天音「!!!???」

 

――――――同時刻 三門第四中学校

黒江「京極先輩と速水先輩と一緒にチーム組んだらしいね」

桜「!!!???」

 

――――――同時刻 三門大学

諏訪「そういえば知ってるか?今度京極と速水がチーム組んでランク戦に出るらしいぜ」

レイジ「!?」

雷蔵「当たり前だろ」

レイジ「!!??」

風間「知っているに決まっているだろう」

レイジ「!!!???」

 

 

 

 

 

その夜、玉狛支部では大反省会が開かれたという.......




次回、B級ランク戦編始動

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