剣と魔法とふぇぶもんズ   作:はんぺんmk.2セカンド

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剣と魔法とふぇぶもんズ

 操霊術師の実苗かこ

 拳闘士の笑羽良はり

 神官の心導しるべ

 三人の冒険者は町から半日ほどの森の中にいた、一党が受けた依頼は斗和キセキが以前受けた遺跡探索依頼で討ち漏らした蛮族の掃討。依頼主である先輩冒険者から一党は依頼に関するいくつかの情報を受け取っていた。

 

笑羽良「しるべちゃん、キセキ先輩の言ってたボガードってやつ

知ってる?」

 

心導「知ってる、蛮族らしい蛮族だけど前に戦ったゴブリンやレッドキャップとは比べ物にならないぐらい強いって話だよ」

 

実苗「でも、しるべちゃんとはりちゃんのほうが強いでしょ絶対」

 

笑羽良「実苗ちゃん嬉しいこと言ってくれんじゃんよー」

 

実苗「ゴブリンやレッドキャップより強いって言ってたけど私たちだってちょー強かったじゃん、それに人型なら首とか目玉とか殴ったら絶対弱いでしょ?」

 

心導「急に怖いこと言うね…」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 しばらく話しながら歩くと一党は森の中に立つ遺跡らしき建造物を見つけた。

一党が今まさに遺跡に足を踏み入れんとしたその時。

 

実苗「二人とも!後ろ!」

 

 二度目故の慣れか彼女たちは各々の武器を構え襲撃者たちに先手を取ることに成功した。

 

心導「ウルフ三匹!」

 

 言うが早いかメイスを振りかぶり神官が先頭の獣に殴り掛かった。獣は素早い身のこなしでそれを躱したが。

 

笑羽良「正面がら空き!」

 

 哀れにも体を躱した先で待っていたのは拳闘士の鋭い拳の三連撃、それを真面に食らったウルフは吹き飛び、動かなくなった。

しかし、飢えに突き動かされた獣は仲間の死に動ずることなく襲い掛かる。

 

笑羽良「痛い!」

 

ついに獣の牙がよけ損ねた拳闘士の腕に食い込む。

 

実苗「はりちゃん大丈夫!?」

 

心導「このっ!」

 

 拳闘士の腕を嚙み千切らんとする獣を神官のメイスが打ち据える

 

笑羽良「ありがとしるべちゃんっ…!

かこちゃん回復お願いできる?」

 

実苗「わかった!任せて『アースヒール』」

 

 操霊術師が呪文を唱えれば拳闘士の腕に付いた傷はかすり傷程度に癒えていった。

 

 神官の一撃を受けてふらつく獣にお返しとばかりに打ち込まれた拳の連撃は初撃こそ狙いを外したが一撃、二撃と命中し確実に獣の命を奪った。

 

もはや戦いの趨勢は決まり、残る一匹の獣は最後の一撃をいなされ叩きのめされた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

心導「はりちゃん、傷大丈夫?」

 

笑羽良「うん、もう大丈夫だよ、一時はどうなることかと思ったけどかこちゃんが使ってくれたアースヒールのおかげだね」

 

実苗「まだ傷が残ってるなら救命草使ってもいいけど」

 

笑羽良「大丈夫、全快とはいかないけど今使っても無駄遣いになっちゃうから。それより遺跡の扉を調べよう、すでに先輩が通ったとこだろうから罠はないだろうけど、遺跡だし何があってもおかしくない」

 

実苗「分かったじゃあはりちゃん扉調べて、実苗は周り調べるから」

 

 

笑羽良「扉には特に仕掛けもなさそうだしこのまま入ってもよさそうだね」

 

実苗「扉はいいけどなんかでかめの足跡がない?」

 

心導「依頼で話された討ち漏らし以外の蛮族がいるかもしれない、二人とも気を抜かずにね」

 

実苗・笑羽良「分かった」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 遺跡に踏み入った彼女たちを迎え入れたのはまっすぐ伸びる廊下だった。

 

心導「所々崩落してるけど貰った情報どおり入れる扉は二つあるね、右に一つ、左に一つ、それと扉はないけど左に一部屋、先輩の話だと突き当りを左に曲がったとこにも一部屋あるんだっけ。」

 

笑羽良「探索済みの部屋は手前の部屋と突き当りを曲がったとこだったね。」

 

実苗「一先ず探索済みの扉のない部屋に入ろっか。」

 

 

 一党が部屋に入るとその部屋の扉がこじ開けられた形跡があり、部屋は荒れ果てた様子だった。

 

笑羽良「先輩から"扉壊しちゃった"なんて聞いてたけどあの人こんなことできるぐらい強かったのか。」

 

心導「中が荒れてるのは戦闘があったからって話だね」

 

実苗「あ、この棚鍵かかってる、はりちゃん鍵開けられたよね、あけられない?」

 

笑羽良「オッケーちょっと待ってて」

 

 拳闘士が斥候としての働きをこなすため鍵開けの道具を取り出し、棚の鍵と格闘するとしばらくして硬質な音を立て鍵が開いた。

 

笑羽良「できた!」

 

心導「おー、さすがはりちゃん、中身は何かな」

 

実苗「これは救命草と魔香草の束だね」

 

笑羽良「よかったよかった何も入ってなかったらがっかりだったし。」

 

心導「じゃあ次に探索する部屋はどこにする?」

 

実苗「うーん、入口から見て右の扉にしよ」

 

笑羽良「分かった」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

笑羽良「何かいる、五人ぐらいは居そう」

 

 扉の前で拳闘士が聞き耳を立てると扉の向こうからは言い争いのような粗暴な声が聞こえた。

 

実苗「ここは後に回したほうがいいかも」

 

心導「そっか、じゃあ反対の扉もみてみようか」

 

 廊下を挟んだ反対にある扉を一党は調べだす。

 

実苗「何かいる様子はないね」

 

笑羽良「でもこの扉鍵がかかってるから一仕事しなきゃだ」

 

 

 懐からスカウトツールを取り出し、拳闘士は扉の解錠を試みた

 

笑羽良「あ、あれ?あとちょっとだと思ったんだけどなうまくいかないや」

 

心導「あんまり蛮族のいる部屋の近くに長居したくないし後回しにしよっか、奥の部屋調べてないからさ。」

 

笑羽良「うーん、じゃあそうしよう、奥の部屋に鍵とかあるかもだし。」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

実苗「ここにも何かいる様子はないね」

 

 遺跡の最奥の扉に聞き耳を立てていた操霊術師が言うと拳闘士も同調する。

 

笑羽良「扉も罠どころか鍵もかかってないや」

 

 神官が先頭に立ち、部屋に入ると中は埃こそ目立つものの整然とした部屋だった。

 

 

 しばらく一党は部屋の探索を行い部屋に仕掛けられていた罠を見つけた。

 

心導「罠は見つかったけど役に立ちそうなものはなかったね」

 

笑羽良「見つかった罠も『机の裏のボタンを押すと部屋の入口に槍が突き立つ罠』かぁ」

 

実苗「もう面倒だし蛮族のいる部屋に突っ込んで殲滅しちゃわない?」

 

 

心導「...そうだね!」

 

笑羽良「それこそあいつらがいなければ扉蹴破ってもいいしね」

 

笑羽良「少し扉を調べてなにもなさそうだったら私が扉あけるから、そのタイミングでかこちゃん、スパークをお願い」

 

実苗「オッケー」

 

心導「突入は私から行くから後から入ってきて」

 

笑羽良「分かった、じゃあ行こう」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

実苗「まだいるね」

 

笑羽良「よし、罠もないし鍵もない」

 

実苗「はりちゃん、しるべちゃん、突入前にエンチャントウェポンとプロテクションかけるね」

 

実苗「『エンチャントウェポン』『エンチャントウェポン』『プロテクション』『プロテクション』」

 

心導「ありがと、私も神に祈っておくかな、どうかこの身に幸運のあらんことを『ラック』」

 

笑羽良「お、忘れてた、ありがとかこちゃん」

 

 

 

心導「じゃあはりちゃん、扉あけるのよろしく」

 

笑羽良「うん、かこちゃん、準備できた?」

 

実苗「全然オッケー」

 

 

笑羽良「...3 2 1 0!」

 

実苗「『スパーク』!」

 

 操霊術師の放った稲妻は部屋の中で睨み合っていた蛮族の一群を過たず焼いた、だが、運悪く彼女の放った稲妻は蛮族たちに致命傷を与えることなく消え去った。

 

 

実苗「まずい、うまくいかなかった。

レッドキャップ一体、ゴブリン二体、それにボガードが二体居る!片方は無傷!こいつたぶん遺跡の入口の新しい足跡の持ち主だ」

 

 そして、誰より先に室内を視界に収めた操霊術師は手負いのボガードに加え無傷のボガードを視認した。

 

心導「なら!『バニッシュ』!」

 

 神官が部屋に飛び込み、魂に穢れを持つものを恐慌状態に陥れる神聖魔法を放つ。

 

心導(しまった、手ごたえがない!)

 

 効くはずのない不出来な魔法はしかし、蛮族どもの抵抗を穿ち彼らの精神に恐怖を与えるに至った。

 

心導「あれ?うまくいった、運がよかったみたい」

 

笑羽良「じゃあ、いくよ!」

 

 拳闘士が躍り出て手近な位置にいたゴブリンの息の根を止める、奇襲を受けた蛮族は驚きと恐怖に顔を歪ませながらも冒険者の一党に襲い掛かった。

 

 ボガードが二体がかりで拳闘士に錆の浮いた武器を振りかざすも素早い身のこなしに翻弄され、かすりもしない。レッドキャップとゴブリンは神官へ襲い掛かり、ゴブリンの持つボロボロの武器が神官の身を捉え手傷を負わせた。

 

心導「痛、とりあえずボガードから叩くよ、はりちゃん」

 

笑羽良「オッケー」

 

 囲まれながらも順調に敵に手傷を負わせる神官と拳闘士だったが徐々に手傷を負ってゆく神官に蛮族の攻撃の矛先が向いた。

 

笑羽良「ま、待て!」

 

心導「大丈夫、けど、かこちゃん!」

 

実苗「回復は任せて」

 

 総勢四体の蛮族が神官に襲い掛かる、一撃、二撃と身を躱す、しかし、ついに躱しきれずその体に攻撃を受ける。

 

心導「うぐ…」

 

追撃を命からがら躱し、けれども神官はいつ倒れても

おかしくないほどの傷をその身に負っていた。

 

実苗「まずい! 『アースヒール』!」

 

心導「う、『キュアウーンズ』…」

 

笑羽良「くそぉ!くらえ!」

 

操霊術師と神官が回復の呪文を唱え、拳闘士のこぶしが傷を負ったボガードの身に突き刺さり命を奪った。

残った蛮族はゴブリン、レッドキャップ、ボガードの三体、傷を負ったボガードを仕留め、しかし未だに蛮族の闘志が失われることなく、神官と拳闘士に襲い掛かる。

 

 拳闘士は危うげなく身を躱す、しかし神官の身のこなしは精彩を欠きゴブリンの武器を躱しきれずその身に受ける。

 

実苗「『アースヒール』」

 

だが、操霊術師が回復の魔法を唱え、神官の身に

再び活力が宿り始める。

 

笑羽良「これ以上はかこちゃんの魔法も限界だ、

そろそろ倒れろ!」

 

 拳闘士のこぶしが致命の威力を持ってボガードに突き刺さり、戦いの趨勢が決まった。

 活力を取り戻した神官と、この部屋での戦いにおいて傷を負うこともなかった拳闘士、

 ついに戦いの趨勢が決まり、満身創痍のボガードと有象無象の蛮族はこの二人にかなうことなく、蹴散らされた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

心導「勝ててよかったー」

 

笑羽良「いやーほんとだよ」

 

実苗「しるべちゃんが倒れかけたときはどうなることかと思っちゃったよ」

 

心導「とりあえず、あいつらから戦利品でもいただいて、そのあとまだ探索できてない部屋を探索しよう。」

 

笑羽良「じゃあ部屋の探索はしとくからかこちゃん、しるべちゃんに救命草使ってあげて」

 

実苗「分かった!」

 

心導「あー、そうだねお願い、かこちゃん」

 

 

 

 

笑羽良「よし、こんなもんでしょ、あいつらの持ってた武器が大体270ガメルぐらい、あいつらのため込んでたお金が700ガメル、3点分の魔晶石が三つ」

*食事一食分 軽食:3 ランチ:8 ディナー:15ガメル

 

実苗「おー結構いい感じだね」

 

心導「やったねぇ」

 

笑羽良「じゃあ鍵開け再挑戦だ!」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

笑羽良「開いた!」

 

拳闘士が鍵開けに成功し、開けた扉の先には円卓、そしてその上に大量の金貨が鎮座していた。

 

実苗「やった!え?やば!金貨が山積みになってる!」

 

心導「こんだけあったらなんでもとは言わないけどいろいろ買えるかも」

 

実苗「おっしゃー!いただきー!」

 

操霊術師が円卓の上の金貨に手を伸ばすと金貨は浮かび上がり冒険者たちに炎を吐き出した。

 

笑羽良「かこちゃん!」

 

金貨の吐き出した炎が操霊術師とそれをかばった拳闘士を包み込む。

 

心導「クリーピングコインだ!二体もいる!」

 

笑羽良「おらぁ!」

 

実苗「こんにゃろぉ!」

 

 拳闘士のこぶしと脚が金貨の化け物を吹き飛ばし操霊術師が振り下ろした杖が美しい曲線を描き化け物を叩く。拳闘士が吹き飛ばした化け物は二度と動くことはなかったが操霊術師が杖で叩いた化け物は手傷一つ負っていなかった。

 

心導「ちょっとかこちゃん!後ろに下がってて!『キュアウーンズ』!」

 

 神官の警告も虚しく再び操霊術師の身は炎に包まれた。

 

実苗「アッツ!ンアァァァァ!」

 

笑羽良「もういっちょ!」

 

 再び拳闘士の肉体が躍動し、炎を吐き出した直後の化け物を吹き飛ばした。

 

 戦いが終わり、操霊術師が満身創痍の体を引きずりながらも吹き飛んだ金貨を拾い集めたが無事な金貨は100ガメル程度だった。

 

実苗「ぐぎぐぐぐ」

 

心導「あー、この部屋特に何もないみたいだし、やることも終わったんだしもう帰ろっか」

 

笑羽良「そうだね、ほら、かこちゃん帰ったらなんか美味しいもの食べよ」

 

実苗「うぅ、もう帰る」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

斗和「なるほどそれでそんなにボロボロだったのね」

 

 先輩冒険者の視線の先では革鎧を派手に焦がした操霊術師、それほどでもないが装備の端々が焦げた拳闘士、金属の鎧に凹みを作った神官。

 

斗和「けど成長したんじゃない?欲を張って不意打ちに引っかかる、仲間をかばって傷を受ける、致命傷一歩手前の傷を負う。そんだけの波乱万丈に加えて全員無事、とくれば初心者の冒険としては十点満点じゃん。」

 

実苗「えへへ、それほどでも」

 

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