「だから、アタシはシンジとは、単なる幼なじみで親友なんだって。好きだの恋人だのとか、そういうのじゃないの」
惣流アスカはそう言って、肩をすくめる。
「でも、こないだマユミが二人がホテルに入るの見たって…」
アスカの親友である霧島マナは際どい会話の内容に周囲を伺い、声を低める。某有名ハンバーガーチェーンで、二人の女子校生がする会話としては、かなり穏当でない内容だった。
「確かに入ったけど、それは毎週の恒例行事みたいなものよ」
「毎週の恒例行事……?」
アスカの説明はマナには完全に理解不能だった。そもそも、行事じゃないでしょ……
「アタシはアイツの大親友だけど、一応女と男なわけじゃない?だからお互いに性欲解消用に利用してるだけよ。それにアイツ嫌がってたもん。だから、ぜったいに恋人じゃないわよ」
「せ、せいよく解消……でもシンジ君は嫌がってるって?」
それの何処が、お互いに利用なのよ!
「ま、アイツも人並みに性欲はあるんだろうけど。あんまりそういうの好きじゃないみたい。いい加減慣れてくれないと将来の結婚生活上、アタシが困るんだけど」
「し、親友なんでしょ?恋人じゃなくて」
「もちろんそうよ」
「それなのに将来、結婚するつもりなの?」
「だって幼なじみだし、いつも一緒にいるからそれが一番好都合じゃない。家も実家が隣なら経済的だしね。結婚すればいつでもセックスも出来るし、親友ってのは一番仲良しの友達なんだから、結婚してもいいはずよね?」
「……それってやっぱり、アスカはシンジ君のこと好きなんじゃないの?」
「親友として好きだけど、男として好きなわけじゃないって。というかそもそも男に興味ないしね」
「セックスはするのに……」
「性欲は人並みにあるからね」
「人並み、かなあ?……」
少なくともマナは毎週男の子とセックスしたいとまでは思わない。まだ、
「で、シンジ君は乗り気じゃないのに、付き合ってくれてるの……」
「まあホテルの前で大騒ぎしてると、恥ずかしいのか、根負けするのか、とりあえず中に入ろうという流れになるし、入ってしまえば、後は無理矢理だけどね」
「まさかアスカ、男の子を押し倒してるの……うひゃぁ」
「アイツひ弱だし、多分そういうのが好きなのよ。口では嫌がってるけどね」
「多分、それ違うよ、アスカ……」
霧島マナはシンジのことを好きだった時期もあるが、始終周りをアスカが固めているので、諦めたのだった。だからシンジにはどうしても思い入れてしまう。
「そうかしら?まあ毎回終わった後に恨めしそうな顔して、アタシを見上げてくるけど。いっちょ前に男子のプライドが傷付いたのかも知れないわね。男ってなぜか女より上だ、偉いんだと思い込んでて、だから、セックスではアタシが上になって、思い知らせてやるのよ」
「シンジくんはそんな事思ってないと思うし、その……えっち……で女の子が上になるのと男女平等は関係ないような気がするんだけど。せめてシンジくんに優しくしてあげて……」
「してるわよ。シンジには、あんたとあたしは幼なじみで親友なんだから毎週のセックスぐらい付き合いなさい、結婚したら毎晩するのよ、だからこれもアンタがアタシとの新婚生活で失敗しないための練習なの。アタシって優しいわね~って言ってるの」
ツッコミどころしかないじゃない!
「親友ってセックスとか、結婚するのかなぁ……」
「うちはするのよ。うちはうち、よそはよそよ」
それから、アスカは腕時計を見ると、
「あっ、もうこんな時間。シンジを呼び出して、週末のデートの相談しなくちゃ。じゃあ、また来週ね!」
アスカは、慌ただしく去っていった。
マナはポツンと一人、ハンバーガー屋に取り残される。
「デートしてんじゃん……」