親友以上恋人未満   作:しゅとるむ

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第二話 被告人碇シンジ

「あの……皆揃って、どうしたの。怖い顔して……」

 

 シンジがクラスメートで委員長の洞木ヒカリから呼び出されて、駅前の某有名ハンバーガーチェーンに行ってみると、男子二名、女子二名に出迎えられた。トウジ、ケンスケ、ヒカリ、マユミの四名だった。みな、シンジへの視線は冷たい。

 

 ヒカリが切り出した。

 

「自分の胸に手を当てて考えてみて。この山岸さんが見たって言うのよ」

 

 マユミが頭を下げた。

 

「山岸マユミです。みんな私のこと覚えていないかも知れないけど、クラスメートです」

「いや、ちゃんと覚えてるから……」

とシンジは影の薄い眼鏡の女子生徒に慌ててフォローする。黒髪の長い少女は、転校生だからからか、まだクラスに馴染めていないのを気にしてる様子だった。

 

「そやな。センセなら覚えてるやろな」

「とっとと大人の階段を登っている裏切り者だからな。周囲の女の情報把握には怠りないさ」

とトウジ、ケンスケの態度はにべもない。

 

「話が見えないよ……山岸さんが何を見たっていうの」

 マユミはかなり言いにくそうにしてたが、

「山岸さん、勇気を出して」

「とっとと、コイツに引導を渡してやったらええ」

と促され、重い口を開いた。

 

「あの、私、見たんです。駅前のホテル街で、碇君と惣流さんがホテルに入るところを……」

「えっ……」

 

 シンジはあっという間に顔面蒼白になる。

「その反応、どうやら事実無根という訳では無いようだな」

とケンスケは追い詰める。

「不潔よっ、碇クン!」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!あれは……僕は嫌だって言ったのに、アスカが無理やり……」

「女の子のせいにするの!碇クン、男らしくないっ!アスカを泣かせたら許さないんだから!」

「そやでシンジ。男はこういう時、潔さが肝心や。スパーっと男らしく認めんかい」

 

 周囲に責め立てられて、シンジは観念したようにうなだれた。

 

「毎週、アスカとホテルに行ってるのは事実だよ……」

「つまりは、週末ごとに彼女とヤりまくっている、という事だな。そこの所をぜひ詳しく……微に入り、細を穿ってだな……」

「相田クンは黙ってて。詳しく説明しなくてもいいわ。アスカとのこと、真剣なんでしょうね……」

「いや、僕が、というより、アスカが、別に恋人じゃない、とか言うんだ」

「はぁ?恋人じゃないって……でも」

ヒカリは困惑を隠せない。

「うん……僕とアスカは恋人じゃない。幼なじみで親友だって言うんだ。だから僕もそう思ってたんだけど……」

シンジは俯く。

 

「僕は、アスカの中では将来結婚する相手らしいんだ。だからホテルのは、予行練習だって言ってた、結婚生活の」

 

 恋人でもないのに結婚するというのが、どうもヒカリには解せないが、それはひとまず置いて、シンジに話を促す。

 

「い、碇クンの気持ちはどうなの?」

「僕は、アスカとは仲良しだし、話も合うし、子供の頃はきょうだいみたいに育ってきたし、最近はキレイになったな、って思うし、別にそういう関係になってもいいと思ったんだけど」

「どこまでも受け身やなあ……」

「ごめん」

「ワシに謝ってどないすんねん」

「で、どうしてこういう事になったんだよ、結局」

ケンスケに促され、

「二人で部屋に居るときにアスカに押し倒されて、そういう仲になった……」

と恥ずかしそうにシンジは告白した。

「カーッ、抵抗せんかったんかい」

「だって、嫌じゃなかったから……」

「ああ、アスカ!碇クンがどこまでも受け身だから、女の子の方から恥ずかしい思いをしてまで、自分から……。碇クン、やっぱり最低じゃない!」

「ごめん……」

「責任を取って、ちゃんと改めて告白とかしたんでしょうね」

「いやしようとすると、アスカがそういう話は聞きたくないって言うから」

「ど、どうして」

「好きとか嫌いとかそういう関係じゃない。生まれたときからアンタと結婚すると思ってた。アタシはたとえアンタがアタシの事を嫌いでも、一緒になるって」

「……」

四人は返す言葉もなく、沈黙している。

 

「あと、そういう関係になってから告白されても嬉しくないって言われた」

「なんや急に、結構ヘヴィーな展開の話になってきたで。こんなんワシら聞いてええんか」

「そうだな、俺たちもう帰った方が……」

「ダメよ!皆で碇クンをきちんと更生させましょう!アスカが歪んじゃったのは、どう考えても碇クンのせいだわ!聞けば聞くほど、ひどいじゃない」

「でもこいつがマトモになるんかい。どこまでも受け身やで。もう惣流の好きにさせたらええんやないか」

「ぼ、僕だってちゃんと考えてるよ。告白は嫌がられるから、その……キスは僕からって思ってるし……」

 

 その言葉に周囲の時が止まった。

 

「え、碇クン、アスカとまだキスしたことないの?」

「キス、まだなんか、シンジ」

「キス、まだなのか、碇」

「キス、まだなんですか、碇クン」

「……そういう天丼はいいよ。うん、まだアスカとキスしたことない」

「そやかて、お前惣流とはヤりまくりちゃうんか」

「そうだけど……でもキスはしたことない」

 シンジはなぜか、少しふてくされているようだった。

 

 シンジを取り囲む四人がすっくと立ち上がった。

 

「碇クン、ちゃんと自分からアスカにキスして貰うわよ、絶対にね」

「ワシらが、そのためのお膳立ては考えてやるさかい」

「ふふっ、腕がなるな。実は、俺はラブコメの脚本にチャレンジした事もあってな」

「微力ながら、私も目撃者としての責任を最後まで全うします」

 

 めいめいが好き勝手な事を言い、高い目線から座ったままのシンジに圧をかけてくる。

 

「えっえっえっ……」

 

 四人を代わる代わる見て、シンジはこれから自分がどんな事をさせられるのだろうと、ただただ不安になるばかりだった。

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