広場を駆ける姿があった。
宗茂と先代だ。
二人は駆けながら互いの位置を交互に入れ替えており、姿が交差するたびに激突の音が響く。
━━的確です!!
そう宗茂は感じた。
この女性は先ほどから的確に此方の攻撃を弾いている。
最初の頃は此方が押す形での交差であったがそれが徐々に対等に、そして気が付けば攻撃している筈の此方が圧迫されている。
━━最初の数回は此方の動きを読むためですか……!!
この女性、かなり手馴れている。
まずは防御に徹して相手の動きを見る。
それから徐々に自分が差し込めるタイミングで攻撃を繰り出し、いつの間にかに戦いの主導権を握る。
自分よりも強い者と戦ってきた者の動きだ。
━━ならば方針を変えます!!
こちらもヒット&ウェイで敵の様子を窺っていた。
それを急激に止め……踏み込んだ。
交差の瞬間、いつもなら下がる瞬間に加速術式を使用し更に踏み込む。
「!!」
突如の事に先代は僅かに驚くが直ぐに冷静になり此方が連続して突き出した攻撃を拳で弾いて行く。
だが全ては弾ききれないと判断すると彼女は大きく足を振り上げた。
「『筋力強化・剛』!!」
踵が振り下ろされ、大地を抉る。
砕かれた岩盤は捲り上がり、岩の礫が周囲に舞い散った。
それを後方への咄嗟の跳躍で逃れると一息吐く。
「一つ質問しても?」
「何かしら?」
「貴女のその戦い方、どこかの流派を習った訳ではなく、我流ですね?
一体どれ程の修羅場を?」
そう訊くと先代は苦笑した。
「そんなに凄い事でもないわよ。必要なことをただやってたらこうなっただけ。
それに私よりもあの子の方が凄いし」
「あの子……今代の博麗の巫女ですね」
「ええ、修行をサボっているせいで今は私よりも弱いけど、あの子、本気を出したら歴代最強、天才よ」
そう言うと己の事のように彼女は嬉しそうな表情を浮かべる。
━━見守る者と先を行く者、ですね。
己の後継者を得るという事は武人にとって非常に喜ばしい事だ。
いつか自分も、一線を引き後継者育成を行う日が来るのだろうか?
そう思いながら手に持つ瓶貫を構える。
この敵の武器は己の拳、つまり自分の瓶貫の能力は使えず純粋な戦闘技術の差が勝敗を分ける。
━━だからこそ、遣り甲斐があります!!
先代がゆっくりと動き始めるのに合わせてこちらも動く。
お互いに直線距離を保ち円を描くように動く。
そして三週ほどしたところで突如、先代が足を振り上げた。
「『筋力強化・剛』!!」
足の裏を大地に叩き付け、砕き、岩石をこちらに向かって射出する。
それに対して此方がする事は……。
「行きます!!」
駆けた。
向かってくる岩石に対して加速術式を展開し飛び込む。
一つ目の岩石はスライディングで抜け、直ぐに体を起き上がらせると跳躍。
二つ目の岩に着地し、再度跳躍すると先ほどの先代の叩き付けで浮遊している岩石を伝い先代に迫った。
「…………器用な奴!!」
五つ目の岩石に足を掛けると同時に先代が構えるが、右足で岩石の端を蹴り、石礫を彼女に放つ。
「!!」
先代は即座にそれを避けるがその隙に跳躍し、彼女の背後に着地した。
━━貰いました!!
振り返り瓶貫で敵を薙ぎ払おうとし敵の居る方を向いた瞬間、驚愕した。
━━これは……どういうことですか……!!
居なかったのだ。
先ほどまで背後に居た先代が消えており、攻撃が一瞬躊躇われる。
そして次の瞬間、腹部に強烈な衝撃を受け後方に吹き飛んだ。
***
相対戦が開始されると魔理沙はすぐに身構えたが霊夢は気だるそうにしたままで大きな欠伸をした。
「おいおい……やる気なさすぎだろう」
「……実際面倒なだけだしね。そもそもあいつ一人で十分だと思うんだけど……」
そう霊夢が指差した先では西国無双と先代が派手に戦っており時折先代が放つ岩石が近くの屋台に直撃し北条の兵士たちが焼きそばを持ったまま慌てて逃げている。
「さっきも言ったが、私は結構楽しみにしてたんだがなあ」
「さっきも言ったけど、私は別に楽しみにしてない」
━━あー、こりゃ面倒な時の霊夢だぜ……。
霊夢はいつもそうだ。
異変が起きても最初のころはやる気がなく、自分に害が出始めると動き出す。
そして動き出したらあっという間に異変を解決してしまうので誰も文句を言えない。
本気をだせば大抵の事は出来てしまうというのに……。
「あー! つまらないなあー!!」
頭の後ろで手を組み、わざとらしく大声を上げる。
「せっかくあの、博麗の巫女様と戦えると思ったのに臆病風に吹かれてんだもんなー!」
霊夢の眉が僅かに反応する。
「安い挑発ね」
「おいおい! もしかして仕事は先代に任せてサボってたら弱くなっちゃったんじゃないかー?」
霊夢は反応しない。
だから口元に笑みを浮かべ挑発を続ける。
「だよなー! 私にぼろ負けしたら、恥ずかしいもんなあー!!」
無表情だった霊夢の顔が徐々に苛立ちに変わっていくのを見て、あともうひと押しだと判断する。
「あれ? おい、霊夢?」
「…………何よ?」
思いっきり笑みを浮かべて、霊夢の腹を指さし
「太ったんじゃないか? お前?」
と言った。
直後、靴底が迫った。
「おっと!!」
咄嗟に顔を引き、後方へ跳躍すると霊夢が眉を逆立て、舌打ちする。
「いいわ! その挑発に乗って上げる!!」
「へ! ようやくやる気になったかよ!!
来い!! “霧雨(シュプリュー・レーゲン)”!!」
手を翳すと格納用の二律空間から黒の機殻箒が現れた。
箒は上空を一回旋回すると主の手の中に降り、魔理沙は箒を掴むと懐からミニ八卦炉を取り出し、箒の後部、砲身に設置する。
「へえ? あんた機殻箒なんて持ってたんだ?」
「ああ、物好きの眼鏡が作ってくれてな」
「霖之助さんね。こんな物も作れるれるなんてね」
霊夢は少し感心したように言うと祓串を取り出し構える。
「それじゃあ、久しぶりに弾幕勝負と行きましょうか!!」
「へ!! 行くぜ!!」
霊夢が一気に上昇し、それを追うように機殻箒に跨り飛翔した。
***
━━今のは……。
叩き付けられ、砕けた屋台の板の感触を背中で感じながら立花・宗茂は先ほどの事を思い出す。
あの時、確かに敵の背後に回り込んだ。
振り返るまでは一秒も無く敵が移動することは不可能。
だが敵は消えていたのだ。
━━例の消える技ですね。
先月、ノリキと先代が相対戦を行った時に彼女が使った技だ。
結局、あの時は技の正体が分からなかったが……。
砕けた屋台に背凭れている体を起こし、立ち上がると武器を構えなおした。
あの一瞬で敵が術式を使ったとは思えない。
そもそもこの技は確か相対している敵以外には見えているはず。
となると、恐らく体術の一種。
問題はそれがどういう体術なのかなのだが……。
━━仕掛けてみないと分かりませんね。
そう判断すると加速術式を展開する。
まずは愚直に真っ直ぐ突撃してみる。
加速術式を再度展開し、一気に踏み込むと瓶貫の先端が敵に当たりそうになった瞬間に敵が消えた。
━━またですか!!
即座に右足で地面を蹴り、背後への跳躍。
そして自分の前身を槍で庇う様にすると槍の柄に強烈な衝撃を受けた。
その衝撃を利用して更に後方へ、広場の端まで逃れると中央に拳を突き出した先代が立っていた。
***
「おい、今のは……」
「……Jud.、 恐らくあの技です」
組み立て式の椅子に座り、焼きそばを食べていた本多・正純と立花・誾は顔を見合わせた。
岡崎城の時にノリキが使われた技。
あの時はギリギリのところで技を抜け勝てたが……。
「同じように……とは行きませんね。前回は博麗先代に“遊び”がありましたが、今回はそれがありません。
技を使った後の攻撃に彼女は加速術式を使用しています」
一瞬で距離を詰めたのはそれが理由か……。
「……キツイか?」
周りの北条勢に聞かれないように誾に訊くと彼女は小首を傾げ、焼きそばを啜る。
「ご安心を副会長。宗茂様なら大丈夫ですよ」
そう微笑み湯呑に口をつける彼女に“流石は西国無双の妻だ”と感心する。
この状況でも彼女は夫の事を信じ、まったく不安に感じていない。
━━私ももっと堂々としてないとな……。
焼きそばをもう一口食べると上空が派手に輝いた。
何事かとそちらを見てみると霊夢と魔理沙が空中で戦っており両者は派手な技を撃ち合い、まるで派手な劇を見ているかのようだ。
「どうやらお互いに非殺傷系の術式を放っているようですね」
先ほどから先代と霊夢の情報を記録している浅間・智がそう言う。
「彼女たちが居た世界、幻想郷で行われていたという“弾幕ごっこ”を相対戦として行っているんだと思います」
「あれが……“弾幕ごっこ”か」
天子から聞いていたが実際に見てみると……。
「……派手だなあ」
霊夢が放つのは紅白二つの色を交えた流体のお札であり、それに対して魔理沙は光る星のような流体弾を放っている。
両者は攻撃をギリギリのところで避けており、時折わざと近づいてさえいる。
「確か、より綺麗に、芸術的に避けられるといいんだったか?」
“弾幕ごっこ”……つまり“スペルカードルール”は幻想郷で発生した異変や紛争を平和的に解決するルールであり“スポーツ感覚に近い決闘”ある。
このルールのおかげである一定以上の実力があれば人間と妖怪が対等に戦えることができ、またその派手な戦い方から観客にも好まれるという良くできたルールだ。
━━私たちの世界の相対戦を更に平和にした感じだな。
この世界の戦争で行われることは滅多にないが、有翼系種族や魔女たちの間ではひそかに流行っているという事をマルゴットから聞いた。
「……しかし、博麗霊夢は何で飛んでいるんだ?」
その言葉に浅間は首を傾げ、苦笑した。
「本当に方法は分かりません。飛行術式を使っているわけでもなく、ああいう風に飛んでいるとなると本人の生まれながらの資質としか……」
「ああいう風に飛べたら楽しいだろうなあ……」
うちの魔女たちとはまた違った有翼系種族に近い浮遊。
それができたら楽しいだろうなと思っているとひときわ派手に空が輝いた。
「どうやら魔理沙が仕掛けるようですね」
焼きそばの追加注文をした誾の言葉を訊き、魔理沙の方を見れば紅白が放つ弾幕に向かって白黒が突撃を開始していた。
***
━━相変わらず凄いな!!
霊夢の弾幕を避けながらそう魔理沙は思った。
まるで巨大な渦巻きのようであった。
無数の流体で出来た紅白の札が渦巻き、近づくものを呑み込もうとしている。
更に時折……。
「おっと!!」
機殻箒に跨った状態で顔を右に逸らし、突如飛来した針を避ける。
霊夢が使う封魔針だ。
それを流体札の裏に隠し、こうやって隙を見て放ってくる。
まさに棘のある花だ。
美しさに惹かれ不用意に近づけば刺される。
「おっと……褒めてる場合じゃないな」
正純たちと約束した以上自分は霊夢を倒さなければいけない。
正直言って弾幕ごっこに持ち込めて良かった。
彼女と本気の戦いをしたら悔しいが勝てる可能性は低い。
「どうしたの!! 魔理沙!! 随分と慎重じゃない!!」
弾幕の中心でそうこちらに言う霊夢に強気の笑みを送ると大きく旋回し、近くの櫓の裏に回る。
「こっちには色々背負ってるもんあるからな!!」
そう言い返すと霊夢は「へえ」と感心の声を出す。
「あんた、少し変わった?」
「へ、私は現在進行形で成長中だぜ! もたもたしてるとお前を追い越しちまうからな!!」
「上等!!」
霊夢が大型の陰陽玉を作り出し、叩き付けてくる。
それを見て櫓の裏から飛び出すと陰陽玉の直撃を受けた櫓は木製の柱を曲げ、乾いた破裂音と共に砕けた。
「ばっかやろー!! それこの前修理したばっかりなんだぞー!!」
地上から聞こえてくる叫びを無視して霊夢は自分を中心に旋回している此方を目で追った。
━━そろそろ仕掛けるかな……。
ウォーミングアップは十分にした。
相手の弾幕をぎりぎりのところで避けて演出もしたし決着を付けに行くとしよう。
そう思うと同時に機殻箒のハンドルを引き、一気に反転。
上方に居る霊夢に対して突撃を始めた。
それと共に二律空間からマジックミサイルを展開して発射。
六本のミサイルは霊夢を狙うが、彼女は即座に自分の周囲に障壁を展開しミサイルを受け止めた。
「この程度かしら!?」
「まだまだ!!」
ハンドル下のスイッチ。
風見幽香との戦いの後、霖之助に無理を言ってつけてもらった機能を使う。
スイッチを押すと機殻箒の後部側面の装甲が展開し、小さな爆発音と共に黄色い煙が周囲を覆った。
***
「煙幕!?」
突如展開され、魔理沙を覆った煙に驚くとすぐに煙との距離を離す。
こんな目眩ましまで装備されているとは……だが!
「使うの早かったんじゃない!?」
煙の中から連続した射撃が来るがそれを空中で一回転することで避けると身構える。
これは魔理沙のミスだ。
煙幕を使うのはもっと接近してから、少なくとも此方を煙で覆える位置で使うべきだった。
これでは魔理沙が見えなくなっただけで冷静に対処すれば簡単に迎撃可能だ。
━━来る!!
煙を割き、黒の機殻箒が来る。
それをこちらの大技の一つ“夢想封印”で迎撃しようとするが、直ぐにある事に気が付いた。
「……魔理沙がいない!?」
機殻箒は主を乗せていなかった。
一直線にこちらに突撃し、それを体を逸らして避けると後方で旋回を始める。
主の居ない機殻箒、先ほどの煙幕。
それはつまり……。
「しまった!!」
煙幕の下方から魔理沙が現れる。
地面に背を向け、落下する彼女は笑みを浮かべて手に持つミニ八卦炉をこちらに向ける。
「へ!! 油断したな!! 喰らえ━━ナロースパーク!!」
閃光が放たれ、流体の光は霊夢に直撃した。
***
戦いは一方的なものになっていた。
先代が攻め、宗茂が防ぐ。
先ほどからそれが続き、先代が放つ拳を宗茂は槍で受け距離を取る。
先代が優勢。
だが内心で冷や汗を掻いているのはむしろ彼女の方である。
━━ここまで的確に……!!
敵はこちらの姿が完全に見えていないはず。
それなのに未だに一撃も有効打を入れられないのは……。
━━予測されているのね!!
この立花・宗茂という男はこちらの動きを予想して先読みで動き、攻撃を防いでいる。
更に防いだ後、技の効果が切れた直後にカウンターを叩き込むようになっており槍の先端がこちらの顔を狙ってくる。
「!!」
それをあえて踏み込み敵に密着することで避けると体当たりを行う。
「おっと!!」
体当たりを喰らった宗茂は即座に体勢を立て直し、武器を構える。
「上手くいかないものですね」
「…………」
笑みを浮かべる敵に答えない。
━━これが……西国無双……。
西国無双の実力がこれ程ならば彼を打ち破った武蔵の副長は一体どれだけの傑物なのか……。
「嬉しいわね」
小さく呟き、笑みを浮かべる。
人間は強くなれる。
その証と戦えるのだ。
故に。
「本気の本気で」
油断はしない。
何故なら一瞬の隙が命取りになるから。
攻撃を防がれたと驚愕はしない。
何故ならこの敵はそれぐらいをやってのけるのが普通だから。
相対する敵は己よりも強く、自分は試練を与える者であると同時に挑戦者。
━━この出会いに感謝を……!!
嬉しさと感謝の念を拳に込めて敵を粉砕する。
駆けた。
技を駆使し、今までで一番鋭い攻撃を放つ。
そして両者の姿は重なった。
***
━━防ぎましたか!?
下から、内角を抉るような強烈な攻撃を槍で受け止め立花・宗茂は自分が敵の攻撃を防いだことを理解した。
敵の姿は見えなく、気配も感じない。
だが“攻撃が来ると感じた”直前に、彼女の気が今までと違う事に気が付く。
あれはそう、確実に、必ず殺す必殺の気。
そう感じると同時に動いた。
敵が必殺を狙うなら攻撃は急所、心の臓を狙ってくる。
正面からは来ない。
何故ならば正面の攻撃は容易く防げるから。
ならば上方、いや、これは拳を放つ速度が下がるため必殺なりえない。
故に下方から。
腕を振り上げるように、内角を抉り心臓を突き上げる。
その予感は当たった。
拳は下から放たれ、瓶貫の柄でそれを受け止めるが体が宙に浮く。
さらに……。
━━武器がもちませんか……!!
柄から伝わる衝撃は今にも瓶貫を砕こうとしている。
このまま攻撃を受けることは出来ない。受けることが出来ないのならば……。
「流します!!」
下から突き上げられたようになっている体を逸らし、槍もそれに合わせる。
そして敵の拳を柄の表面を滑らせるように受け流すと先代の背後に着地した。
即座に反転。
足を大地に叩き付けるように踏み込み、体を大きく捻る。
そして回転力を加え瓶貫を横に薙ぎ払うが、槍は敵の胴を殴打する前に止まった。
「…………」
足だ。
草履の底が見えた。
先代は左足を後ろに蹴り上げ、瓶貫の刃を草履の底で受け止めた。
「ふっ」
軽い吐息と共に先代が跳躍し空中で回し蹴りを放つ。
それを頭を下げ避けると後ろへ逃れる。
両者の距離は五十メートル。
互いに構え、動きを止める。
━━我流でここまで極めますか!
彼女は先ほど今代の巫女の方が才があると謙遜したが、彼女もまた天才だ。
研ぎ澄まされたセンス。抜群の判断能力。
間違いなく彼女は戦いの達人だ。
そんな彼女を相手に“技が分からないまま”では絶対に勝てない。
まず彼女の技事態を考えてみる。
敵は攻撃の前に必ずある技を使っている。
それは視覚遮断の一種であるらしく、相手の視界から消える。
更に気配や音まで消すため完全に敵を認識できず非常に厄介だ。
だが一つこの技には妙な点がある。それは……。
━━己が相対している者以外からは見えている。
姿を消す術式や技を使うなら周りの人間からも見えなくなるはずだ。
だがこの攻撃はあくまで敵が此方の認知から消える。
これではまるで此方が世界からずれてしまっているかのようだ。
「ずれている?」
そこで気が付く。
そうずれているのだ。ずれさせているのだ。
━━そう言う事ですか……!!
ようやく理解できた。この妙な状況、技の正体を。
確証はない。もしかしたら違うかもしれない。
だが。
「このまま後手に回るよりは……!!」
ゆっくりと息を吐き、構える。
対して先代も拳を構え踏み込みの準備を。
「次で破ります」
そう言うと先代は口元に笑みを浮かべ「楽しみだわ」と答える。
両者十秒ほど睨み合うと先代が動いた。
━━来ますね!!
消えた。
再び認知の外へ、“こちらからずれた”。
ならば自分が彼女に出すべき答えは……。
━━これです!!
鈍い音がした。
強烈な衝撃と共に瓶貫が大きく弾かれる。
だが弾かれたのは槍だけではない。
突き出された拳が白の袖を靡かせながら大きく弾かれる。
そして驚愕の表情を浮かべた先代の姿がはっきりと見えた。
「これが私の答えです!!」
そう叫ぶと同時に更に踏み込み先代も突撃を続行する。
そして両者は正面から激突し、吹き飛ぶのであった。
興国寺相対戦その1。北条の撲殺巫女対西国無双、そして東方の主人公対決です。