緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

14 / 63
~第九章・『紅白の決着者』 武極める者達 友交わす者達 (配点:巫女)~

 霧雨魔理沙は主を追尾した機殻箒のハンドルを掴み、興国寺城を一周するように低空飛行を行うと冷や汗を掻いた。

「やべえ……殺傷モードのままだった……」

 

***

 

・恋 色:『えーっと……?』

・金マル:『あーっと……?』

・● 画:『うーん?』

・○べ屋:『とりあえず?』

・銀 狼:『事故ですのよぉ━━━━!?』

・天人様:『あー、魔理沙ついにやっちゃったかあー。いつかやると思ってたんだよねー』

・図書館:『いなくなってみると……寂しいものね……』

・人形師:『ええ、もの凄くあっさり死んだけど』

・あさま:『み、皆さん、目が泳いでますよ!? お、落ち着いてください、ただレーザーが当たってじゅわあってじゅわあって蒸発しただけです!

あ! これ駄目ですね!! 骨まで消えてますよ!!』

・約全員:『ほんと、何時もお前が一番酷いよ!!』

 

***

 

━━やっべえ……、まじでどうしよう……。

 この場合誰の責任になるんだ?

えーと、試練を課してきたのは北条で攻撃してきたのは霊夢だから、うん、私は悪くないな!! 良かった!!

 しかし霊夢がじゅわあって蒸発したとなると今後の博麗神社はどうなるんだ?

というか私、紫に殺されるんじゃあ……。

 そう不安に思っていると突如自分の上方が歪んだ。

それを見て咄嗟に……。

「あぶね!!」

 機殻箒を垂直に立てると底部に強烈な衝撃を受け、縦回転しながら落下してゆく。

それをすぐに立て直すと先ほど自分が居た場所を見る。

「まったく、油断したわ」

 霊夢だ。

 先ほどまでとまったく変わらない姿の彼女は「やれやれ」と首を横に振ると強気な笑みを浮かべる。

「残念だったわね、魔理沙。可哀想なあんたの為に当たってやってもよかったんだけど、やっぱり癪だから避けたわ」

「……お、おう、むしろ避けてくれてありがたいというか何というか」

 「は?」と首を傾げる霊夢に苦笑すると上昇を行い、彼女と同じ高度に移動する。

「亜空穴か」

 そう呟くと霊夢は頷く。

 博麗霊夢は神道術式以外にも空間移動術式が使える。

先ほど自分のナロースパークを避けたのは亜空穴という技であり、空間に穴を開けその中に入る事によって簡単な空間移動が可能である。

 霊夢の空間移動能力は紫ほどではないがかなり厄介なものであり、自分みたいな火力で押していくタイプにとっては非常に脅威だ。

「それじゃあ、魔理沙? 今度はこっちから行くわよ!!」

 霊夢が構えると同時に彼女の背後から色とりどりの流体弾が現れ、展開される。

「夢想封印!!」

 その言葉と共に無数の流体弾が一斉に襲い掛かって来るのであった。

 

***

 

 激突した立花・宗茂と博麗先代は互いに吹き飛ぶと空中で体勢を立て直し、地面に着地した。

 それから先代は苦笑すると自分の胸を右腕で持ち上げる。

「大きいのは普段邪魔だけど、こういう時に衝撃吸収してくれて助かるわね」

 

***

 

・貧従士:『く、くそ……! あ、くそなんて言っちゃだめですよね! じゃあ、ちくしょう!!』

・ベ ル:『今のは、胸で押したから、えっと?』

・賢 姉:『巨乳防御よぉ━━!! 見たぁ!? ミトツダイラ、アデーレ、あれが模範的な巨乳防御よぉ━━!!

バインって、ボインって!! ほら、ミトツダイラも一緒にボインって!!

浅間も同じ巫女として負けてられないわよ!! こうやって腰を捻って、谷間を強調してぇ、はい、バインっ!!』

・銀 狼:『喧嘩売ってますのねぇ━━━━!!』

・あさま:『というかこっちに振らないでください!!』

 

***

 

 曳馬の艦橋で相対戦の様子を見ていた侍女式自動人形がぼそりと呟いた。

「キチガ━━いえ、なんでもありません」

 慌てて仕事に戻る部下を見て“曳馬”は首を傾げた。

━━もしかしてあれを見て何とも思わなくなった私は異常なのでしょうか?

 いや、そんな事はないはずだ。

私は完璧です、ええ、完璧だという事にします。

それにしても……。

「これで勝算が出てきましたね」

 

***

 

「さて、私の技を見事見破ったみたいだけどどうやったのかしら?」

 そう訊くと西国無双は「Jud.」と頷いた。

「貴女の技の正体は自身を敵からずらす事です。

貴女は此方の呼吸、目の動き、鼓動、それら全てから己の全てをずらす事によって認知の外へ行く。そうですね?」

「その通り。でもずらすと言っても大きくずらすわけじゃないわ。

そうね、大体一秒ほどかしら?

ほとんど誤差と言える範囲をずらし、敵が此方を捉えられなくする」

 そう敵は此方を捉えられないはずなのだ。

だが此方を捉えられたという事は……。

「己の呼吸テンポを変えたのね」

「Jud.、 この技を見破るヒントなったのは先月の相対戦の時です。

ノリキさんが貴女の攻撃を喰らった後、技を見破れたのは攻撃を受け意識が朦朧としたことにより呼吸のタイミングや視線の動きが変わったからです」

 やれやれ、弱点というのは意外なところから見つけられる。

あの時、ノリキ少年に技を使わなければ見破られなかったという事か……。

━━いえ、“なければ”なんてのは言い訳ね。

 自分は未熟であり、この男に技を見破られた。ただそれだけだ。

それに。

━━技が見破られたからといって、まだ負けたわけじゃない。

「続き、行くわよ?」

 拳を構え、踏み込みの姿勢をとると西国無双も構える。

 蹴った。

 地面を蹴り、勢いをつけると敵に突撃する。

更に先ほどの技を使い認知の外へ逃れようとするが……。

「……!!」

 西国無双は此方の攻撃を正確に弾いた。

 今までなら即座に身を引き、距離を取るが。

━━畳み掛ける!!

 守勢に回ってはいけないと本能が警告していた。

 敵が呼吸のタイミングを変えてくるならこちらもそれに合わせて……。

「これは……!!」

 タイミングをずらせなかった。

いや、ずらす事が出来ないと言った方が正確だ。

━━戦闘中に、呼吸リズムを変えているというの!?

 宗茂が踏み込んでくる。

呼吸のリズムは長く五秒間に二回。

それを此方が避けると今度は呼吸のリズムが三拍子になっている。

そう、変えているのだ。

 五秒ごとに呼吸のリズムを変え、こちらがずらせないようにしている。

━━戦闘中にそんな芸当が出来るなんて!!

 改めてこの敵の凄さを実感する。

そしてこんな敵と戦える自分の幸運さも。

「っは!!」

 最早小細工など不要。

己の拳に全てを籠め、敵を粉砕する。

 敵の得物は槍。

 対して自分は拳。

中・遠距離戦は圧倒的に敵の方が有利であり、此方が優勢に立つには無理やりにでも接近するしかない。

 跳躍する。

 体を低くした低空飛行。

 相手の懐に飛び込む此方の動きに対して敵は高速で槍を突き出すが。

━━槍は曲がらないものね!!

 槍の攻撃はある程度読みやすい。

 広範囲を攻撃する場合は横へ薙ぐがこれは隙が大きい。

同じく縦振りも刀に比べて時間がかかる。

 故に咄嗟の迎撃手段としては突きが一番良いが……。

━━軌道さえ読めれば……!!

 槍が放たれる瞬間、槍の先端の向きを見る。

そしてそこから一直線に伸びるラインを想定すれば。

「!!」

 敵の槍が此方の左胸を貫こうとした瞬間に体を逸らした。

 空振った刃は巫女服を引き裂き、黒のインナースーツが露わになる。

そして刃が脇下を抜けた事を確認すると左腋で槍の柄を挟み固定する。

 これで敵の体は止まった。

この隙を突き攻撃を、そう思った瞬間、腋に挟んでいた槍の圧力が消える。

 手を放していたのだ。

 西国無双は槍を固定された瞬間に柄から手を離し、体を捻っていた。

そしてそのまま回転の力をつけ此方の顔面めがけ回し蹴りが来る。

「ちぃ!!」

 咄嗟に顔を引き、蹴りを避けるがそのせいで左腋で固定していた槍が落ちる。

 蹴りを外した敵は既に次の動きに映っており彼は右足を上げるとそのまま縦方向への蹴りを、体を一回転させサマーソルトキックを放つ。

━━まだ……避けれる!!

 こちらも渾身の踏み込みを行い、後ろへ跳躍することによって避ける。

そして後方の地面に着地すると同時に前傾姿勢になり、拳を構えた。

 敵は今武器を所持していない。

ならば攻撃するなら今が絶好の好機。

 そう判断し突撃をする。

狙うは一撃必殺。

残りの力を全て拳に籠め敵の心臓を狙う。

 敵の着地に合わせ拳を放ち……。

「……!!」

 一閃。

銀の光が通った。

 全てがスローモーションに。

 銀の光は首元のインナースーツを裂き、赤の輝きが宙に散る。

「負けたわ……」

 西国無双との距離は僅か二メートル。

そこで決着がついた。

 そう負けたのだ。私が。

 首の横に突きつけられるのは瓶貫の刃。

 刃はインナースーツを裂き、首の皮膚を軽く裂いている。

 首に刃を突きつけられた状態、完全に自分の負けである。

「最後のキック。あれは私を狙ったのではなくて槍を回収するためだったのね?」

「Jud.、 瓶貫の柄を足に引っ掛けることにより空中で回収しました」

 簡単に言っているがとんでもない芸当だ。

━━まったく、まだまだ私も未熟ね。

 井の中の蛙と言う奴だ。

世界には色々な強者が居る。

自分なんてそんな連中の足元に及ばないかもしれない。

「いい経験になったわ。負けると言うのは結構気分のいいものね」

「ええ、私も以前同じ事を思いました」

 彼を負かした本多・二代。

ますます興味が出てきた。

何時か手合わせを願おう。そう、それが出来る内に。

「━━私の、負けよ」

「Jud.、 私の勝ちです」

 両者は構えを解き笑みを浮かべた瞬間、“みし”と言う何かが引き千切れる音が聞こえる。

「ん?」

 よく見れば首の右側のインナースーツ。

首を一周して支えていた生地が反対側の生地が千切れた事により伸びきっており、そして━━弾けた。

「……あ」

 西国無双は笑みのまま直ぐに顔を逸らし、そして周りの兵士たちが一斉に。

「よぉぉぉぉぉしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 歓声を上げた。

 

***

 

・あさま:『はい! 今即座に男子禁制の閲覧禁止処置をしましたぁ━━!!』

・銀 狼:『ナイス! ナイスですのよ!! 智!!』

・ホラ子:『大きいと思っていましたが、あれは浅間様クラスですね。巫女というのは巨乳がデフォなのでしょうか?』

・貧従士:『そうですねえ、浅間さんはズドン巫女で先代さんはグシャア巫女ですからねえ……』

・あさま:『か、関係ないですよ!? それ!? それに胸のサイズだったらほら今代巫女は小っちゃくて、良かったですねえアデーレ』

・貧従士:『く……嫌な切り替えししてきましたね!!』

・あさま:『あ、それから今北条側にさっきの見て喜んだ男子勢のコカーンに雷落とす罰を申請しましたが…………あ、通りましたね。じゃあ、やります』

 

***

 

 一斉にのけ反り股間を押さえて倒れる兵士たちに苦笑すると先代は右腕で露わになった胸を隠し苦笑した。

「まったく、私なんかのどこがいいんだか」

 そう言うと後ろから毛布を掛けられる。

 振り返れば西国無双がおり、彼は「先ほどはすみません」と頭を下げると眉を下げた。

「麗しい女性がそういう事を言うべきではありませんよ」

「あら? 口説いているのかしら?」

「いえ、私は誾さん一筋ですから」

 「おおう」と武蔵勢が座っている席が盛り上がるのを横目で見ると小さく笑う。

「ふふ、いい妻を持ったのね。ちょっと羨ましいわ」

 巫女である自分にはそんな出会いがなかった為、男性に恋するという感覚がよく分からない。

それにあの時の自分には……。

 空中で弾幕ごっこを行っている霊夢たちを見ると目を細める。

最初は面倒くさそうな態度をしていた霊夢だが始まってみると実に良い笑顔を浮かべている。

ああいう霊夢を見るのは初めてだ。

━━いい友人を持ったのね。

 その事に心から喜びと安心を得る。

「さてこれでこの試練を超えられるかはあの二人次第だけど霧雨の娘さんにうちの霊夢が倒せるかしら」

「ええ、倒せますよ。彼女はやるといったらやる人物です」

 即答する宗茂にちょっと目を丸くするとすぐに口元に笑みが浮かぶ。

「そうね。きっとそうなのでしょうね。

でも霊夢もやる子よ」

 紅白と白黒の友人対決。

さてどちらが勝つのか。非常に楽しみだ。

 そう思いながら毛布を被り直し空を見上げるのであった。

 

***

 

━━あっちは決着がついたか……。

 地上の戦いは宗茂が勝利したらしく、それはつまり私が徳川の行く末を背負った事になる。

━━いい感じだぜ。

 大きな責任と重圧。

だが凡人の自分にとってこれは喜ばしいことだ。

何故なら……。

「是が非でも勝たなきゃいけなくなったからな!」

 余裕を消し、全力全開でこの勝負に臨む。

そうでなくてはあいつに勝てない。

 追尾してくる流体弾を急降下し地面に激突する直前で機殻箒の先端を上に向け急上昇する事によって地面に激突させる。

 更に流体弾の爆発の衝撃波を利用して更に加速力をつけた。

 上昇する先、自分の敵である霊夢は地上の方に気を取られており眉を顰めて舌打ちする。

「あの馬鹿……なに負けてんのよ!」

「余所見は危ないぜ!!」

 機殻箒の先端から銅貨弾を非殺傷モードで射出し狙うが霊夢は空中で横に回転しながら銃弾を避けると手に持つ札を投げつけてくる。

━━一枚?

 嫌な予感がし急降下を行うと札が巨大化しまるで城の天井のように迫って来た。

「そりゃあ、別の奴の技だろ!!」

「は? 私が使ったらこれは今日から私オリジナルの技よ!!」

 

***

 

・ぐーや:『……永琳、博麗神社と長野家、それから関東連合自体にも苦情送っといて』

・薬剤師:『すでに送っております、姫様』

・ぐーや:『流石ね』

 

***

 

━━くそ、広すぎる!!

 札の面積が大きすぎ今の加速力では逃れきれない。

 どうにかしてもっと加速しなければ……。

だが機殻箒は現在最大出力で飛ばしており、これより加速を得る方法など……。

「……やってみるか」

 “霧雨”を使っての初めての技で上手くいく確証は無いがこのまま押しつぶされるよりはましだ。

一か八かでやるしかない!!

 そう思うと同時に機殻箒の後方、砲口部の装甲を展開し黄金色のミニ八卦炉が露出する。

そして加速に使っている流体燃料以外をミニ八卦炉に回すと…………砲撃した。

 機殻箒の後方から巨大な流体砲撃が放たれ後方にあった興国寺城の城壁を吹き飛ばす。

それと共に凄まじい衝撃を後方から受け加速した。

 視界に映るもの全てが一気に後ろに消えてゆき、そして巨大札の範囲から逃れるとハンドルを強く引き、機殻箒を垂直に立て爆走した。

 全身にかかる重力加速に歯を食いしばり笑みを浮かべると叫んだ。

「ドラゴン━━メテオ━━!!」

 

***

 

 興国寺城の内壁にぽっかりと空いた大穴を見て正純は僅かに冷や汗を浮かべた。

「あの……早雲公、壁は……」

「はっは、構わんよ。壊れたのなら直せばいいだけだ」

 そう笑う早雲を自動人形たちが一瞬睨み付けたような気がするが、うん、気のせいだろう。

「副会長、決着がつきますよ」

「え!?」

 慌てて二人の相対戦に視線を戻した時、空中で両者の戦いの決着がついていた。

 

***

 

━━なんて速さよ!!

 見誤った。

 普段の魔理沙の速さを前提として攻撃をした為、避けられるとは思っていなかった。

 不味い。急上昇してくる敵に対して出来ることは少ない。

あの技は急上昇してから下方に向けて砲撃する魔理沙の大技だ。

使わせるわけにはいかない。

━━間に合う!? いえ、間に合わせる!!

 高速で術式陣を組み障壁を展開した。

 これはただの障壁では無い。

対象と衝突後、対象を遅延させる結界だ。

普通の障壁ではあの突撃を止められないため、即席で新たな術式を作り放つ。

 暗い紫色の障壁は此方の眼前で魔理沙の機殻箒に当たり加速が止まる。

「間に合った!!」

 緩やかに上昇する魔理沙に対し攻撃用の術式を展開しようとした瞬間、魔理沙が立った。

「!!」

 ほぼ垂直の機殻箒の装甲に足を掛け、よじ登ってくる。

そして先端に立つと跳躍を行い此方に掴みかかってくる。

「こ、この、離しなさいよ!」

 慌てて魔理沙を引き剥がそうとするが彼女は此方の両肩を掴み離さない。

「なあ霊夢」

「あ! 何よ!!」

 空中で転がりあいながら叫ぶ。

「仲のいい奴同士が一緒に死ぬことを何て言う?」

「は……? そりゃ心中でしょう?」

 此方の答えに魔理沙は「うんうん」と頷く。

「じゃあ、無理やり心中することは?」

「……普通に無理心中……って!? まさか!!」

 笑みを浮かべる彼女の腕にはいつの間にか彼女の使うマジックボムが抱えられており。

「これがほんとの喰らいボム!! なんちゃって!」

「はあ!? 冗談じゃ━━!?」

 その瞬間、爆発音と共に閃光が二人を呑み込んだ。

 

***

 

 光の爆発の中から魔理沙と霊夢が頭から墜落していくのを見て、浅間が……。

「きゃあ、ぐちゃぐちゃあ!!」

「どーして、微妙に嬉しそうなんだあー!!」

 いや!? ツッコミを入れている場合じゃない!!

 直ぐに救助しなければ!!

 そう思った瞬間、落下する二人を空中で受け止める姿があった。

宗茂と先代だ。

 二人はそれぞれ魔理沙と霊夢を受け止めると着地し、地面に寝かせる。

 それから宗茂と先代は気絶している二人の状態を確かめ……、此方を振り返り頷いた。

「はあ」

 取りあえず無事なようでほっと胸を撫で下ろすと直ぐに姿勢を正し、早雲と向かい合う。

「早雲公、この相対戦」

「うむ、貴公らの勝ちだ」

 そう頷くと彼は立ち上がり、それに続いて此方も皆起立した。

 その事にその場の全員が気が付き、早雲に注目する。

「徳川・長野、両チームとも見事な奮戦であった!! この勝負━━━━徳川の勝利である!!」

 その宣言に北条の兵士たちは最初どう反応するか悩んだが、やがて皆拍手を始め、拍手は歓声へと変わってゆく。

 それに早雲は満足そうに眼を細めると大きく手を振り上げた。

「これにて━━興国寺城相対戦を終了する!!」

 

***

 

 戦いの終わりを告げる宣言を聞きながら先代は小さくため息を吐いた。

自分は広場の端で毛布を頭から被りながら気を失っている霊夢に膝枕をしており、彼女の前髪を指でかき分けると霊夢の目が開く。

「あら、目が覚めた?」

「……あんた、なんて格好してるのよ」

 ゆっくりと起き上がる霊夢に苦笑すると「巫女服を新調しないとね」と言う。

「あー、悔しい。こんなんで負けるとか」

「それにしては嬉しそうじゃない?」

「え、笑ってた? 私?」

 そう目を丸くした霊夢に頷くと彼女は口元を指で触り、大きくため息を吐いた。

「柄にもなくはしゃいでたみたいね」

 向う側、武蔵側でも魔理沙が目を覚ましたらしくワイワイとやっている。

それを少し寂しそうに霊夢が見ていたので彼女の頭の上に手を乗せる。

「向うに行ってもいいのよ?」

 そう言うと暫く彼女は沈黙し、首を横に振る。

「私が居なくなったらあんた、寂しくて泣いちゃうでしょう?」

「……ふふ。そうかもね」

 空を見上げ、青空を鳥の群れが飛んでいるのを見ながら手を翳す。

「私たちもまだまだ未熟」

 霊夢が立ち上がり、こちらに手を差し伸べる。

「ええ、だから進むわよ。勿論あんたも一緒に」

 微笑む霊夢に笑顔を返し、その手をしっかりと握り返す。

「そうね進みましょう。今度は違えないように」

 手を引かれ立ち上がる。

そして二人で並び皆のもとに歩き出すのであった。

 




興国寺相対戦その2。魔理沙と霊夢の相対は後にもう一回予定しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。