緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第十章・『修理場の決断者』 俺のしたい事 それは (配点:決断)~

 武蔵野艦橋の屋上に一人の少女が仰向けで寝ていた。

 姫海道はたてだ。

 彼女は携帯電話を暫く操作すると小さくため息を吐き、電話を折り畳む。

「“葵・喜美のダイエット講座”、“東宮の隠し子!? 謎の幽霊少女に迫る!!”、“エロゲ密輸で乱闘騒ぎ! 犯人は総長兼生徒会長!?”……はあ」

━━どれも普通すぎるわよねー。

 いや、普通じゃないんだが武蔵では普通なのだ。

この程度の記事じゃ新聞が売れるわけはなく、私の懐事情はどんどん悪くなっていく。

 ふと首を動かし右の方を見れば白い犬が丸まって寝ており、その犬の頭の上には小さなコロポックルが昼寝をしていた。

━━神様に頼めば売れるのかしらねー。

 でもこの神様いまいちご利益なさそうなんだよなー。

天照大神なのに。

 やっぱりコツコツと地味にやっていくしかないか。

「文がやたらと新聞勧誘してた理由が分かったわ」

 売れるには努力が必要。

幻想郷で引きこもって新聞を書いていた頃の私には分からなかった事だ。

「よっと」

 起き上がり背筋を伸ばし武蔵野艦橋の屋上から見える風景に癒されていると上空を一隻の飛空艇が通過した。

 黄色い船体を持つ飛空艇の横には大きなエンブレムが描かれており、確かあれは……。

「ZCF?」

 そういえば今日関東からZCFの社員が武蔵の視察に来ると聞いた。

━━これは記事になるかも!!

 そう思うと立ち上がり、背中の翼を大きく広げた。

「……ん、んん? はたてのネーちゃん、どっか行くのかァ」

「ええ、ちょっと行ってくる」

 駆け出し艦橋の端まで行くと跳躍した、

そして青空に黒い翼を羽ばたかせ、飛空艇を追いかけるのであった。

 

***

 

 品川にある飛空艇デッキに三人の人物が居た。

エステルとヨシュア、そして三科・大だ。

 三人は降りてくる黄色い飛空艇を見上げながら搭乗橋近くの手すりに寄り掛かっている。

「それにしてもZCFからの技術者って誰かしらね?」

 そうエステルが首を傾げるとヨシュアは顎に指を添え、「うん」と頷く。

「今日は視察と言う事だからあまり重役の人は来ないだろうね」

「ティータとかどうかしら?」

「はは、そうだと嬉しいけど、彼女は今ラッセル博士と一緒に働いて忙しいはずだから可能性は低いかもね」

 ラッセル一族は現在のZCFの中核を担っている存在であり関東連合の技術開発に大きく貢献し、最近では関東中央の開拓や津軽の調査に協力していると聞く。

「あの一家なら喜んで遺跡の中に入っていきそうよね」

 そう苦笑するとヨシュアも自分と同じ表情をする。

「ま、誰が来るにしても武蔵機関部の、武蔵に携わる先輩としてなめられないようにしないとね」

 腕を組んで立っている大が頷き、飛空艇に搭乗橋が架けられたのを確認した。

そして強気な笑みを浮かべると搭乗橋の前に仁王立つ。

「さあ、ZCFの技術者! この三科・大が相手だ!」

━━なにと戦う気なのかしらねえ……。

 何故かZCFの技術者にライバル意識を持っている大を見ながらエステルはそう思った。

どうも技術者という生き物は妙なところに拘ったり争ったりする。

だがそういったライバル意識があるからこそ技術者は更なる知識を探求し、科学技術は発達する。

━━そこら辺は武芸者と一緒ね。

 私たちのような戦闘職も常に力をつけ続け、他者と対抗し、戦い方を研究することで更に力を伸ばす。

結局のところ根本は同じなのだ。

 自分しか見ていないものは必ず挫折し、更に悪ければ破滅する。

 私もよく父に言われたものだ。

“常に広い視野を持て”と。

遊撃士になりたてのころはその言葉の意味がよく分かっていなかったが今なら分かる。

そう、いろいろな出会いと別れを経験した今なら。

「……それにしても、遅いわね」

 飛空艇が着陸してからすでに五分以上が経過している。

であるのに飛空艇からは一人も降りてこず、その事にヨシュアと顔を合わせる。

「何か、あったのかな?」

 歩き出すヨシュアに続き残りの二人も搭乗橋を渡り、飛空艇の甲板に乗る。

 甲板の上には数人の自動人形がおり、彼女たちは甲板の掃除や船の点検を行っている。

━━流石は北条・印度。飛空艇の乗組員も全部自動人形なのね。

 ともかく話しかけてみよう。

そう思い、近くで甲板の手摺を拭いている自動人形に声をかける。

「あの、すみません」

 掃除を止め、自動人形が振り返る。

「私たち遊撃士協会の者でZCFの技術者を迎えに来たんですけど……」

「ああ、それでしたら……」

 自動人形が指さす先、艦内へと続く扉が開き中から慌ただしい音と共に少女の声が聞こえてきた。

「はわわわわ! す、すみませんー!!」

 聞き覚えのある声、それを聞き思わず目を丸くする。

「ま、まさか」

「ああ、本当に彼女らしい」

 扉の中から少女が飛び出してきた。

 ゴーグル付の帽子を被った小柄な金髪少女は自分と同じくらいのトランクを引っ張り甲板に飛び出る。

飛び出たのは良かったのだがトランクが扉に引っ掛かった。

「え、あ!?」

 トランクに体を急静止させられたことにより足が縺れ、体が宙に浮く。

そして実に綺麗なフォームで甲板にダイブすると……転んだ。

「ちょ! ちょっと! 大丈夫!? ティータ!!」

 慌てて近寄ると小柄な少女は起き上がり顔を赤くしながら苦笑する。

「い、いたたた。はい、ちょっと慌てすぎました。エステルお姉ちゃん…………え?」

 少女は此方の顔を見るとその目を点にし……。

「エステルお姉ちゃん!? それにヨシュアお兄ちゃんも!?」

「やあ、久しぶり」

 ヨシュアと二人で彼女を立ち上がらせると少女━━ティータ・ラッセルは飛びつくように此方に抱き付いてくる。

「会いたかったです!!」

「ふふ、そうね。こっち来てから全然会えなかったからね」

 暫く三人で話していると大が「あのぉ」と手をあげた。

「感動の再開に水を差すみたいで悪いんだけど、その子がもしかして……?」

 そう訊くとティータが慌てて此方から離れ、丁寧なお辞儀をする。

「ZCF本社から参りましたティータ・ラッセルです。本日はよろしくお願いします!」

 そして眩い笑顔を浮かべるのであった。

 

***

 

 ティータを迎えた一行は品川の修復地点まで徒歩で移動を行い。

先頭にエステルたちゼムリア組三人が、その後ろの大が居た。

「でも驚いたわ。本当にティータが来るなんて」

「はい、本当ならおじいちゃんが来る筈だったんですけど今やっているプロジェクトが忙しくておじいちゃん来れなかったんです。

それで私が代理で来ました」

「大きなプロジェクトなのかい?」

「詳しくはまだ言えないんですけど津軽凍土に関連したものです」

 盛り上がる三人を見ながら三科・大は一人どうするかを考えていた。

 ZCF、不変世界でもトップクラスの技術屋集団から技術師が来ると聞いてそれなりの対抗心を持っていた。

 さあ、来いZCF。武蔵技術屋の底力、見せてやる!

そういう意気込みでいたというのに来たのは自分と同じくらいか、もしかしたら自分よりも幼い少女。

━━しかもラッセル一族ときた!

 ラッセル博士の論文は自分も何度も読んだ。

 論理的な中に大胆なアイディアを入れる人物であり、同じ技術者として尊敬できる人物だ。

 だが……。

━━は、初印象って大事だなぁ。

 憧れのラッセル一族の一人が目の前にいるといのに最初の一連のあれで何とも言えない気持ちに。

「あ、あの!」

 突然声を掛けられ足を止めるとティータがこちらに振り返っていた。

「ん、な、何?」

「武蔵のデータはこっちでもう貰っていて大体の構造は理解しているんですけど、現場の人間として何か補足したりすることはありますか?」

 まったく別の事を考えていたため思わず慌てるが、すぐに冷静になり「こほん」と一回咳をする。

「武蔵は今まで何度も改修を受けているせいで結構内部構造が継ぎ接ぎなんだよね。

特に不変世界(こっち)に来てからはIZUMOや有明に寄港してないからかなり中身はごちゃごちゃになっているかな」

 「なるほど」と表示枠にメモ書きをしていくティータを見て先ほどまでの考えを否定する。

そう、彼女は技術者だ。

こちらの話を真剣に聞き、メモ書きには言われたことと自分の考えの両方を記載する。

━━ボクも負けてられないなあ……。

 そう思っていると左側から地摺朱雀が資材を担ぎながら歩いてくる。

「ん、大。そのちっこいのがZCFの技術者さね?」

「Jud!! ティータ・ラッセルだよ!」

 「ラッセル」と直政は僅かに目を丸くすると頷く。

「ちゃんと案内するんだよ!」

「分かってるってー!」

 遠のいていく地摺朱雀に手を振るとティータが口を開けて固まっていたことに気が付いた。

「どしたの?」

「い、今のが本物の地摺朱雀ですよね!!」

 目を輝かせ詰め寄ってくるティータに思わず一歩引くと頷く。

「わわわ! おじいちゃんに自慢しなきゃ!! 本物の四聖武神・地摺朱雀を見れたって!!」

 こう喜ばれると悪い気はしない。

左手を腰に手を当て鼻の下を指で擦るとはしゃいでいるティータに話しかける。

「武神なんて見慣れてんじゃないの?」

「確かに普通の武神は見慣れてますけどあれは特別です!」

 「特別?」と聞き返すとティータは大きく頷く。

「神格武装級の重武神、その中でも地摺朱雀は特別です!

既製品のボディを持つほかの武神と違って地摺朱雀は継ぎ接ぎの、手造りの武神です。

だからこそ様々な可能性を持ち、その形態を変化させることが出来る存在だと私は思っています!!」

 そう道中で演説するティータを何事かと人々が遠巻きに見るが彼女は気にせず言葉を続ける。

それを聞きながら自分は……。

━━やばい……。

 思わずティータに詰め寄り、冷静さを取り戻した彼女はやや不安げな表情で此方を見る。

「キミ……」

「あ、あの……す、すみません。勝手なことを……」

 不安がる彼女の両手をがっちりと掴むと笑みを浮かべた。

「お友達から始めよう!!」

 

***

 

「へえ、珍しいこともあるんさね」

 運んでいた資材を置き振り返れば道のど真ん中で何やら大とティータが意気投合していた。

 やはり同い年ぐらいの友人が欲しかったということか。

むさ苦しい機関部でいつも機械いじりばっかりをしているよりああやって同年代の友人と息抜きで話せるのは良いことだろう。

「そして珍しいことといえば……」

 自分から見て右の方にある資材置き場にノリキが居た。

 彼は積み立てられた資材に寄りかかりながら立っており、空を見上げてぼうっとしている。

「……やれやれ」

 地摺朱雀を跪かせ肩から腕を伝って地面に降りると咥えている煙管を一回吹かした。

「キャラじゃないんだけどねえ」

 

***

 

「おい、ノリキ」

 そう声を掛けるとノリキは此方の方を向き「直政か」と資材に寄りかかるのをやめた。

「あんたがそうしてぼーっとしてるなんて珍しいさね。北条の事かい?」

「…………まあ、そうだな」

 ノリキにとって北条は故郷だ。

 先ほど正純から通神があり、徳川は関東に向かうことになった。

 その事で思うことがあるのだろう。

━━ま、他人が口出ししていい話じゃないわな。

 故郷の事、家族の事になれば部外者が簡単に口出しするべきではない。

だが。

「あたしが言えた義理じゃないが、悩むぐらいなら行動したらどうだい?」

 彼の隣に立ち煙管を吹かす。

「どうするか悩んでいて、それで取り返しがつかなくなって後悔するよりは、がむしゃらに動いて、馬鹿やってそれで決着つけた方がいろいろと納得がつくだろうさ」

 大事なものというのは一瞬で失われる。

その事を自分は知っているし、自分たちのトップも経験している。

だからこそ武蔵は後悔をさせないという方針で動いているのだ。

横目でノリキを見ると彼は暫く俯き、自分の拳を見ているとやがて顔を上げて手を空に翳した。

「そう、だな。がむしゃらに、馬鹿に……か」

 

***

 

・労働者:『今後の予定をもう一度教えてくれ』

・副会長:『ん? ああ、詳しくは後で話すがさっそく明日は伊豆半島に向かう。

そこで次の試練、つまり相対戦を行う。

そして明後日には小田原に向かい。四日目に最後の相対戦を行う予定だ』

・労働者:『そうか……じゃあ、俺は少し別行動をとるが、葵、構わないか?』

・俺  :『お? 別にいいけど何すんだ?』

・労働者:『諏訪神社本社に向かう。そこで俺の術式の向上をやる』

・俺  :『なるほどなー、どんくらいで帰ってこれそうなんだ?』

・○べ屋:『いまパパッと計算してみたけど往復で一日。術式の向上作業とかにまる一日かかるとすると二日ぐらいかなー』

・あさま:『そうですね。術式の更新をするとなると一日は掛かると思いますので、だいたいその位だと思います』

・魚雷娘:『あの、ところで諏訪って甲斐連合の領土ですよね? あの国とはつい最近まで敵対してましたけど大丈夫なのでしょうか?』

・○べ屋:『その点は大丈夫だと思うわ。こっちでもちょうど余った武器とか諏訪に売りたいし、商船に同行すれば攻撃されたり捕まったりはしないはずよ』

・労働者:『すまないな。皆、俺が間に合わないようだったら追いていってくれ。これは俺の我儘だからな』

・俺  :『なあ、ノリキ。おめえは好きにやれ。そして、ちゃんと追いついて来いよ?』

 

***

 

 隣のノリキが笑った。

 今の馬鹿は戻ってこいとも、待ってるとも言わなかった。

ただ一言、追いついて来いと。

それはつまり彼はノリキを部下やただの同級生として扱ったのではなく、同じ道を対等に歩む仲間であると示したのだ。

━━普段馬鹿やってるくせにこういった気遣いはすらっとできるんさね。

 だからこそ外道どもを纏められるという事だろう。

「Jud.、 直ぐに追いつく」

 表示枠に頷き、ノリキは此方を向く。

「すまんな、直政」

「あー、いいって。感謝されるほどの事はしてないさ」

 少々気恥ずかしかったのでぶっきらぼうに言うとノリキが小さく笑う。

「さて、サボっていた分を取り戻さないとな」

 そう言い彼は近くの鉄パイプを数本拾い担いで大通りに向かっていった。

その背中を見送りながら。

「故郷があるってのは良い事さね」

そう笑みを浮かべるのであった。

 

***

 

 浅間神社の境内に戦いの音が鳴り響いていた。

 一つは狼が地面を蹴る鈍い音、もう一つは軽くステップするような天人の足音だ。

 青髪の天人が攻める。

姿勢を低くし、加速をつけた突撃。

向かってくる得物に対して狼が取った行動は横への跳躍だ。

 突撃してくる天人の右方に回り込むと今度は狼が牙を剝く。

━━回避は難しい、だったら……!!

 天子は強引に体を捻り、狼と相対すると踏み込んだ。

古来より獣に噛みつかれたときは腕を引くよりも押し込んだ方が良い。

ネイトと正面衝突をすれば結構な痛手を受けるだろうが天人の体なら耐えられるだろうし、敵を攻撃できるまたとないチャンスとなる。

 肉を絶たせて……!!

 手に持つ機殻剣を高速で突き出し、狼を狙うが敵は突如体を水平にした。

━━読まれてた……!?

 流石にこれを喰らってくれるほど甘くは無かったか!

ここは攻撃を受けるのを覚悟で体当たりを……。

そう思考した瞬間、銀狼の腕が伸びてくる。

「!!」

 彼女は此方の襟を右手で掴み、左手は腰の布を。

そして大きく踏み込むと……視界が一転した。

━━…………は?

 回転する視界の中、何が起きたのか理解する前に背中から地面に叩き付けられた。

 

***

 

「と、言うわけで反省会ですのよ」

 神社の境内でネイトと天子は向かい合って座っていた。

「まず天子、貴女の全体的な動きですけれども……上達してますわね」

 その言葉に天子は嬉しそうな表情を浮かべる。

「でも、さっきの訓練で天子、貴女は攻撃を外して致命的な隙を晒しましたわ。

さてなんで外したのか、その理由は?」

「ミトツダイラの胸が小さかったから」

 とりあえず小突いた。

「それは貴女も同じでしょうに」

「こ、これでもアデーレよりはあるわよ!?」

 

***

 

・貧従士:『あれれえー? なんかいきなり基準値にされてますよ!? 自分!!』

・● 画:『というかそれ本当? 本当ならいろいろと描き直さなきゃいけないんだけど』

・俺  :『あー、確かにアデーレよりもあるぜ? 天子の胸』

・十ZO:『……ん? 何故トーリ殿がその事を?』

・賢 姉:『ああ、それね。この前どうやったらオッパイが大きくなるのか私に聞いてきたから寸法測ってる最中に愚弟が覗いてたけどあえて教えなかったわ!

面白そうだから!!』

・天人様:『う、うわああああああああああああ!?』

・銀 狼:『━━━━我が王?』

・あさま:『━━━━トーリ君?』

・俺  :『ま、待て!? あれは事故だ!?

ネーちゃんが天子の乳揉んでるからこれは覗かなきゃって思ってスタンバってただけだ!!』

・ホラ子:『などと意味不明な事を言っていたためとりあえず頭から地面に埋めておきました。

おっと、落雷がトーリ様のお菊の門に。いやあ、晴天なのに雷とは面妖な』

 

***

 

 顔を真っ赤にして俯いている天子の肩をそっと叩くと。

「まあ、ともかく良かったですわね?」

「何がだ!?」

 「まあまあ」と彼女を宥めると話を戻す。

「天子、貴女には一つ悪い癖がありますわ。

それは攻撃を受けるのを前提で動いているところがある、と言う事ですわ」

 天子は今まで天人の体の頑丈さを全面に押し出した戦法を多くとってきた。

その代表的なものが“無念無想の境地”だ。

自身の内燃排気を使い痛覚遮断を行う事によって強引な戦闘を可能とする。

 確かに有効的で強力な技だが痛覚がないからと言ってダメージを受けてないというわけではなく、むしろ痛覚が無い事が己を窮地に追いやることもある。

「柴田・勝家や八雲紫、いわゆる達人級との戦いでは被弾することがそのまま死につながる事になりますわ」

「……つまり、避けるのを重視した方がいいって事?」

 天子の質問に首を横に振る。

「避けるでは防戦一方になってしまいますわ。

よって、天子が会得すべき技は一つ。それは“流す”ですわ」

 「いいですの?」と言葉を続ける。

「“防ぐ”でもなく“避ける”でもない、“流す”。

つまりそれは敵の攻撃を利用して反撃を即座に行うという事。

先ほどの私が使った巴投げのように突進してきた敵の攻撃をそのまま利用し自分の攻撃へと繋げる。

そうすれば必要最低限の動きで反撃を行えますわ」

 と偉そうなことを言っているが自分だってまだま上手く実践できていない。

━━“流す”と言えば二代ですわね。

 本多・二代は戦いの中でごく自然に“流し”を行い、戦場を支配している。

 本人に自覚がないというのが凄いですわよね……。

だからこその副長。

だが王の騎士として自分だって負けてられない。

「さて」

 そう立ち上がると天子も立ち上がる。

そして互いに再び距離を保つと構えた。

「…………えっと」

「?」

 何か言いたげな天子に首を傾げると彼女は小恥ずかしそうに笑みを浮かべた。

「あのさ、あんたのことミトって呼んでもいいかしら?」

「? いいですけど、突然どうしましたの?」

「ほら、出会ってもう七年になるし、結構というかかなりあんたとは組んでるじゃない?

だからもうちょっとこう……あー、友好的というか、その」

 言葉を濁す天子に笑うと頷く。

「そう言う事でしたら」

 此方の返答に天子は破顔すると武器を構える。

「それじゃあ、ミト! 行くわよ!!」

「Jud.、 相手しますわ!!」

 昼の境内で再び両者は激突する。

 二人の訓練はそれから一時間ほど、浅間が昼飯を持ってくるまで続くのであった。

 




ノリキ強化イベントその1。原作でもやったあれです。
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