緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第十六章・『里見の守護者たち』 わん わんわんわん わおーん! (八犬士)~

 里見・義康は曳馬後方の森林に着陸し一息入れると手に握っていた服を来た全裸を見る。

『なんだ? 服着てるのか?』

「一番最初に言う事それかよ!? つーか、冬だと流石に全裸は厳しいぜ」

 “確かに”と思った直後、“いや、なんで全裸前提で話しているんだ?”と苦笑する。

『……懐かしいな』

「ん?」

『いや、こうやって話すのが懐かしいと思ってな。里見に戻ってから周りが普通すぎて驚愕したぞ』

 朝起きて外に全裸が居なかったり、エロゲトークしている奴らが居なかったり、守銭奴が平然と詐欺してなかったり、その事に違和感感じている自分が居たりで……。

━━だいぶ毒されていたんだなあ……。

 里見に戻った後は色々大変だった。

まず武蔵の外道汚染が抜けるまで大変で、時茂になんか粘着されたり、それから里見家を今度こそ守るために奔走したりで……。

━━あいつにも見せてやりたかったな……。

「んで? 俺はいつまでこうしてりゃいいんだ?」

『ああ、一応人質って事になってるからな。暫くは大人しくしてもらうぞ?』

 そう言うと武神の手の中で馬鹿が「りょーかい」と頷く、脱力する。

 その様子に少し笑うと遠くの空に浮かぶ曳馬を見る。

━━さて、誰が来るかな?

 副長かその補佐か、いや、この男を攫ったのだから来るとしたら……。

『……来たか』

 森の中から狼の遠吠えが聞こえた。

 己の縄張りを荒らされ、怒る狼の遠吠えだ。

「おおう、こりゃネイトの奴、結構怒ってるぞ?」

『ふ、その位でなくては……』

 直後、森の奥より飛来する物体があった。

 樹木だ。

 強引に引き抜かれ、射出された樹木が此方の胴体を狙って投げつけられた。

『…………!!』

 それに対して腰の太刀を引き抜き、樹木に対して垂直に叩き付ける。

乾いた破裂音と共に樹木は二つに分かれ、機体の両横を通過して後方の地面に激突する。

『来い!!』

「Jud!! 第五特務、ネイト・ミトツダイラ! 参りますわよ!!」

 樹木が放たれてきた方向から銀狼が現れ、二本の銀鎖を叩き付けてきた。

 

***

 

 ミトツダイラは敵が後ろへずれることによって此方が両側から叩き込むように放った銀鎖を避けたことを視認した。

 此方の狙いは敵が攻撃を避ける為、後方へ跳躍するか上空に逃れようとする所を追撃し、次の攻撃を叩き込む事であったが敵は此方の狙いを理解し、後ろへ体をずらしながら太刀を横へ薙ぐ。

太刀の剣先が狙うのは此方ではない。

此方の前方の地面を剣先で叩き割り、眼前に土砂が舞い上がった。

━━危険ですわ……!!

 咄嗟に横に跳躍すれば土砂の奥から鋼の刃が一直線に現れ、先ほどまで自分が居た場所を穿った。

 横で大地が砕け、木々が粉々に鳴るのを見ながら直ぐに敵の側面を駆け抜ける。

 途中、武神の手の中に居た王が「ネイトー、頑張れよー」と呑気に言うので思わず笑みを浮かべ「Jud!!」と答える。

 そのまま敵の背後に回ると近くの木の陰に隠れた。

━━さて、どうしますの? ネイト?

 敵は神格武装級の武神。

 搭乗者もかなりの腕前。

 対して此方は生身で、武神との交戦経験が少ない。

 まず目標を決める。

己の第一目標は王の奪還だ。

 王は今敵の左手の中におり、時折「あ、だめ、そこ、股間が!」と体をくねらせているがとりあえず大丈夫そうで安心する。

━━我が王を奪還するにも、攻撃するにも、近づく必要がありますわね……。

 敵の得物は武神用の太刀。

 得物の間合いは此方の銀鎖と同じぐらいだが敵には一つ弱点がある。

それは接近された時の対応が限られるという事だ。

 銀鎖なら接近されても途中で曲げて対応したり、格闘戦に持ち込んだりできるが武神用の太刀ではその巨大さ故、至近距離で振るう事が出来ない。

━━まずは一手。行きますわよ!

 そう頷くと同時に木の陰から飛び出した。

 

***

 

━━どう来る!?

 武蔵の騎士が木の陰から飛び出すのを見て義康は即座に身構えた。

 敵の狙いは此方への肉薄だろう。

この狭い森林の中では“義”は上手く動けない。

下手に後方に跳躍すれば木にぶつかり減速する可能性があるし、何よりも着地の隙を狙われる可能性がある。

 上空に逃れるという手もある。

 これも飛翔の隙を狙われるだろうがまだ回避しやすく、飛んでしまえば向うは何か投擲する以外攻撃の手段が無くなる。

━━いや、これは無しだな……。

 今回は正式な相対戦。

 関東各家が見ている中、逃げ回って勝ちましたなんて事をしたら里見の名に泥を塗る。

それに正面切って戦いたいと思う。

 相手は武蔵の特務。

それも王の側近である騎士だ。

彼女を相手に今の己がどこまでやれるか試してみたい。

 騎士が肩二本の銀鎖を両横に放つ。

そして己の両側にあった樹木に銀鎖を巻き付けると大きく踏み込み、引き抜く。

「行きますのよ!!」

 そのまま引き抜いた樹木で此方の前方の地面を薙ぎ払うと土砂を巻き上げ、視界が遮られる。

━━めくらましのつもりか?

 先ほど此方が使った手だが……。

 太刀を横へ薙ぎ、風圧で土砂を全て払う。

『武神の力を甘く見てもらっては困るぞ!!』

「ええ! 甘く見てなどいませんわ!!」

 薙ぎ払った太刀が突如止められた。

 何事かと見れば太刀に二本の銀鎖が巻き付けられており、腕が引っ張られる。

━━土砂の中に新たに二本の銀鎖をひそませていたのか……!!

 銀狼は樹木を掴んでいた肩二本の銀鎖を収納すると跳躍した。

「私を引っ張りなさい! 銀鎖!!」

 

***

 

━━距離を詰めますわ!!

 敵の太刀を利用し、一気に敵との距離を詰める。

詰めた後は敵の装甲に張り付き、王を救出する。

そのつもりだった。

だが……。

「…………!!」

 敵が太刀を手放したのだ。

そして更に王を持っている左手で石突きを穿ち、太刀が此方に向かって放たれる。

「銀鎖! 二本解除!!」

 腰の二本を外し、此方を狙う剣先に対して体を水平にする。

「貧乳回避!!」

 胸前を掠める太刀を見ながら笑みを浮かべ。

「どうですの! 天子!! これが本当の貧乳回避ですわ!!」

『あ!? 喧嘩売ってる!?』

 兎も角難は逃れた。

 このままの勢いで敵に接近……そう考えていると眼前に蒼の装甲が迫った。

「…………!!」

 敵は太刀を殴打した直後に体当たりを行ったのだ。

 此方は空中。

敵の体当たりを逃れることは出来ず━━━━激突した。

全身に強烈な衝撃を受け、後方へ吹き飛び、墜落した。

 

***

 

「この振動と音! 人狼のネーちゃん、派手にやってるなァ!!」

 駆けるアマテラスの頭の上でイッスンがそう言うとアマテラスが頷く。

 相手は元武蔵の仲間だという。

「で、どうすんだ? アマ公? 介入するのか?」

 アマテラスは答えない。

━━そうだよなァ。難しい問題だぜ。

 相対戦のルールは知っている。

自分たちが行った所で何もできないだろうが、何もしないのが嫌だというのがアマ公だ。

「ま、人狼のネーちゃんがやばそうだったらオイラ達が颯爽と登場と言う事で……」

 突如、アマテラスが止まった。

 突然のブレーキに体が前に吹っ飛び、近くの藪に落ちる。

「おい! アマ公! 突然止まるんじゃねェ!!」

 藪から慌てて飛び出すとアマテラスの様子が妙な事に気が付いた。

 アマテラスは全身の毛を逆立て唸り声をあげている。

これはつまり……。

「敵かァ!!」

 直ぐにアマテラスの頭に飛び乗り身構える。

 後ろの藪が動いた。

 それに続き周囲の藪も動き始め、動きは円を描きながら徐々に近づいてくる。

━━囲まれた! 敵は複数かァ!?

 何処から来る?

そう警戒していると動きが止まった。

そして暫くの静寂の後、前方の藪から一匹の犬が現れた。

「こ、こいつはァ!!」

 犬が吠え、七つの声が返る。

此方を囲むように新たに七つの姿が現れた。

 

***

 

 現れたのは八匹の犬。

 犬種も皆違う犬達であったが全員が首にスカーフのようなものを巻き付けている。

「八犬士の連中かァ!!」

 そう言うと赤い体毛の犬が一歩前に出る。

「オレたち、里見の守護者としてお前と戦う」

 赤い犬━━仁狗の言葉に他の犬士達も頷き、包囲を狭めてきた。

「悪く思うな。オレたちもオレの事情がある。今は力と力で語り合おう」

 葵色のスカーフを付けた犬━━忠狗の言葉と共に更に犬士達は近づいてくる。

━━やるっきゃねえかッ!!

「アマ公!!」

 アマテラスが突撃した。

 前方の仁狗に対して体当たりを行い、仁狗がそれを横への跳躍で逃れる。

それと共に他の犬士達が一斉に動いた。

 そのまま走り出すアマテラスを挟み込むように三匹ずつが両横に移動し、背後に忠狗が付く。

「油断するんじゃねェぞ! アマ公! 今のオメエは力を失っているんだからな!!」

「承知している」と言うようにアマテラスは一回吠えると背中に勾玉を召喚した。

そして急停止し空中で宙返りを行うと犬士達の背後に着地する。

「散れ!!」

 即座に勾玉から流体弾を連射するが仁狗の号令により、犬士達が一斉に散った。

━━出来るぜ! こいつら!!

 流石に訓練しているだけあって連携に隙が無い。

散った犬士達が再び円陣を組み此方を囲む。

そして、来た。

 左右から二匹。

 アマテラスは右側の敵の迎撃の為、動くが右の敵がいきなり後退した。

それと共に前後の二匹が動く。

「誘導かァ!!」

 “分かっている”と言うようにアマテラスは吠えると背中に浮かぶ幾つもの勾玉を接続していき鞭にする。

そして周囲を薙ぎ払うと三匹は逃れたが後方から突撃していた桃色の体毛を持つ智狗が逃げ遅れる。

 胴に勾玉の鞭を喰らい智狗が吹き飛ぶが白毛に緑の斑模様の礼狗が受け止める。

 そこを狙った。

 アマテラスは背中の武器を剣に変え、突撃を行う。

そして智狗、礼狗の二体を纏めて剣で叩き潰そうとするが右斜め方向から岩石が放たれ、それを剣で砕く。

 岩の陰から現れたのはボクサー犬の信狗だ。

 アマテラスは信狗の頭突きを喰らい吹き飛ぶと空中で受け身をとり、近くの岩場に着地する。

「アマ公! 囲まれたままじゃ不味ぜェ!!」

 筆を取り出し、空中に“三”の字を書くとアマテラスを覆うように竜巻が生じる。

 竜巻から逃れる為、犬士達が散らばった隙にまだ体勢を立て直していない智狗と礼狗の方向に駆け跳躍を行い二匹を飛び越えるとそのまま逃走する。

「ともかく一回、立て直すぜ!!」

 

***

 

 アマテラスは犬士達を振り切ったのを確認すると近くの地面から突き出た岩の陰に隠れる。

「さて、どうすっかなァ……」

 岩の裏で座ったアマテラスの頭で胡坐を掻きながらそう首を傾げるとアマテラスが小さく吠える。

「あ? 何とかなるって? オメエはいつもお気楽だなァ」

━━まあ、アマ公に作戦とかは期待できないか……。ここはオイラの頑張りどころだな。

 まず現状此方が圧倒的に不利だ。

 此方は一人と一匹。

対して敵は八匹。

 先ほどのように数の暴力で攻められればさすがのアマ公でも辛い。

 各個撃破するにしてもああ連携されてはそれも難しい。

━━いや、待てよ……?

 先ほどの事を思い出す。

 先ほどの交戦の時、智狗だけが動きが悪かった。

智狗が攻撃を受けたことによって礼狗がフォローに動かざるおえなくなり、一瞬だけ連携が崩れた。

━━狙い目かもしれねェ……。

 どうにかして智狗を倒せればそこからあの連携を崩し勝利できるかもしれない。

「……なあ、アマ公」

 そう呟いた瞬間、アマテラスが岩場の陰から飛び出し直後岩場が砕ける。

「なに!?」

 そして現れるのは駆けだしたアマテラスを追う八匹の姿だ。

━━なんでここに居る事がばれた!?

 完全に撒いていたし匂いは風の力で散らしておいた。

だというのに敵は直ぐにこの場所を見つけた。

「どういう事だか変わらねェがやるしかねェ!!」

 再びアマテラス達と犬士達の戦闘が開始されたのであった。

 

***

 

 曳馬の右舷装甲。

葵色の装甲を駆ける二つの影があった。

 一人は赤いマフラーを身に纏った青年だ。

 彼は装甲を駆けながら短刀を構え、敵に迫る。

 もう一人は小柄な老人だ。

 彼は迫る敵から距離をとりつつ苦無を投げつけた。

 それを避けながら点蔵は内心で舌打つ。

━━嫌味な老人で御座るなあ!!

 敵は此方の踏み込みの間合いを完全に把握していた。

 常に此方の間合いの僅かに外側を保ち、悠々と逃れ続ける。

━━遊ばれているで御座るな……。

 その事に怒りはない。

それよりも同じ忍びとして相手への敬意が強まる。

「未熟なのは百も承知! 故に全力で参るで御座る!!」

「ほほ! 来い!!」

 踏み込みと同時に苦無を投げ、敵の退路を塞ごうとする。

「読んどるよ!!」

 だが敵も苦無を投げた。

 互いの苦無が空中激突する。

「読まれることを読んでいるで御座る!!」

 激突した苦無。

そのうち此方が投げた苦無が爆ぜた。

 両者の間に爆発が生じ、爆風によって小太郎の着地のタイミングがずれる。

 そこを狙った。

 爆発の中に躊躇なく飛び込むと突き抜け、短刀をまだ空中にいる小太郎に対して突き出した。

「なんの!!」

 小太郎は空中で強引に体を捻ると突き出された短刀と此方の腕を避け、両手で掴む。

そして此方の腕を使い、逆上がりを行うと上方の装甲に着地した。

「先の先の手を使うのは結構! だが敵がさらにその先を狙っているかもしれない事を忘れるんじゃないよ」

 小太郎が指差す先。

 先ほど彼が着地しようとしてた場所に苦無が突き刺さっていた。

━━いかん!!

 判断は一瞬であった。

 突き刺さっている苦無を蹴り飛ばすと同時に後方へ跳躍。

そして体を丸めて守ると蹴り飛ばされた苦無が爆発した。

 衝撃を全身に喰らい、吹き飛びながら落下をすると直ぐに腕を伸ばし、近くの装甲の隙間を掴んだ。

━━危なかったで御座る……!!

 咄嗟に苦無を蹴り飛ばさなかったら爆死していただろうし、装甲の隙間を掴めなければそのまま落下死をするところであった。

 頭上。

 小太郎が装甲を駆け降りながら此方に向かってくる。

 それを見ながらタイミングを計り、ぶら下がっている腕に力を入れると体を引き上げた。

そして引き上げの際に装甲を両足で蹴り、跳躍する。

 両手を伸ばし降下して来た小太郎の両肩を掴むとそのまま更に跳躍。

彼の背後の装甲に着地した。

 直ぐに振り返り、武器を構えると思わず驚愕の声を上げた。

「…………これは!!」

 視線の先、笑みを浮かべ構える老人の姿は八つ。

 八人となった小太郎はゆっくりと構え、口元を吊り上げる。

「影分身。忍者の基礎にして奥義。ほれ、ちょっと行ってみるかのう?」

 中央の一人が駆けだした瞬間、残り七つの分身たちも一斉に動き始め襲い掛かってきた。

 

***

 

 先行偵察に向かっていた双嬢は曳馬が強襲されたことを知ると直ぐに反転した。

 そして曳馬の右舷装甲に垂直に立ち、戦っている忍者達を見るとナルゼがため息を吐く。

「何平然と重力無視してんのよ。あいつら……」

「まあ、忍者だからねー」

 苦笑するマルゴットに同じ表情を返すと「それにしても」と言う。

「点蔵、苦戦してるみたいじゃない?」

 右舷装甲では八つに分かれた小太郎に点蔵が圧倒されている状態であり、正直ヤバいんじゃないかと思う。

「あれ、虚像じゃないね」

「そうね……実像分身を同時に八つか。厄介ね」

 虚像分身と実像分身の最大の違いは攻撃できるか否かである。

 虚像分身はあくまで己の虚像を映す幻影。

攪乱に使えても攻撃には使えない。

 対して実像分身は実体を持つため攪乱も攻撃も可能だ。

「どうするの? マルゴット?」

 これは相対戦であるため、始まってしまえば介入が出来ない。

横を飛ぶマルゴットにこれからの事を訊くと彼女は「んー」と眉を顰める。

「森に降りたミトっつぁん達も心配だし、テンゾーも心配だし……」

『森の方は私が行くさね』

 表示枠が開き直政が映ると彼女は頷き『あんたらは空中警戒を頼むよ』と言う。

 曳馬後方を飛ぶ輸送艦の後部ハッチが開かれるのを見ながら「やっぱり里見の武神が気になる?」と訊くと直政は頷く。

『“義”にも興味がある。だけど本命はまた別の奴さね』

「別の奴?」

『里見から“義”が来てるなら“信”が来てる可能性がある。そいつには個人的に用事があってね』

 直政の言葉にマルゴットと顔を見合わせ頷くと「じゃあ、こっちは任せなさい」と笑みを送り表示枠を閉じる。

それから苦戦している点蔵の事を見、呟いた。

「点蔵、負けたらパシリ百年分よ」

 

***

 

「地摺朱雀! 出るよ!!」

 輸送艦の後部ハッチから飛び出すと飛翔器を展開させ、輸送艦の周囲を一回旋回する。

それからミトツダイラと里見・義康が交戦している方を見ると飛翔を始めた。

 取りあえず近くの森に着地し、それから二人の相対戦の様子を見ていよう。

そう思っていると反対側の森の方角から妙な光の反射がある事に気が付いた。

 あの光かた、何かレンズのようなものが反射して……。

「……!! 避けろ地摺朱雀!!」

 直後、銃声音と共に地摺朱雀の右側スカート部が砕けた。

 

***

 

『ああ! もう!』

 輸送艦から飛び出した朱の武神━━地摺朱雀が此方の狙撃を避けた事に時茂が舌打った。

 “信”が装備しているのは新型の武神用狙撃銃。

そのテストとして持ち出し使ってみたが……。

━━私には向いてないわ。

 もともと私は散弾派だ。

 狙撃銃も扱ったことはあるが得意というわけではない。

━━これで此方の位置は知られたわね。

 地摺朱雀が装備しているのは三征西班牙製雄型武神の飛翔器だ。

あれの加速力ならあっという間に距離を詰められる。

 腰のマウント部に狙撃銃を収納すると飛翔器を展開させ、上昇を始める。

『一応、警告はしたわよ』

 そしてその場を急速に離脱した。

 

***

 

 紫の武神が森から飛び出し、撤退していくのを直政は視認した。

「里見の“信”かい……」

 注目するのは武神本体ではなくその背中についている飛翔器だ。

 あれは朱雀の飛翔器のパーツデータを流用したもの。

今回の相対戦で出てくれば色々とこの朱雀について知れるかも思ったが……。

「警告ってことだろうね……」

 今の狙撃は警告だ。

 “義”の戦いの邪魔をするなと。

そして“信”は今回は裏方。

相対戦をする気はないという事だ。

 その事に僅かばかりの残念を感じると“信”が飛翔していった方角を見る。

「いつかどこかで、ちゃんと相手をしてもらうよ」

 そう呟き、反転してミトツダイラ達の方に向かうのであった。




伊豆相対戦その1。新たな試練が開始される!
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