緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十七章・『鋼の隊士』 ぶちのめして差し上げますわ! (配点:騎士)~

「……変ですね」

 空港に続く大通りで立花・宗茂はそう呟くと空を見上げる。

「既に武器は射出されたとの事ですが……」

 投下地点に来てから少し経ったが空から武器が降ってくる様子がない。

ちゃんと“曳馬”に指示した地点に居るはず。

なら何故振ってこないのか……。

「……本多・二代。貴女、ちゃんと座標を送りましたか?」

「Jud.、 “曳馬”殿が制作した地図でxが197でyが259で御座ろう。

拙者、ちゃんと“曳馬”殿に『(259,197)で投下をお願いするで御座る』と送ったで御座るよ?」

「………………は?」

 一度深呼吸をする。

 それからゆっくりと、この馬鹿女と視線を合わせ訊きかえす。

「もう一度、ゆっくりと、送った指示を言ってください」

「Jud.、 だからx197,y259で(259,197)で御座ろう?」

 眩暈がした。

 思わず仰け反り、宗茂に「おっと」と背中を支えられる。

━━私が……馬鹿でした!!

 この程度の事も出来ないとは!?

いや、この女に重要な事を任せた自分の失策!

「本多・二代……x197,y259なら(197,259)と送るのが正解です!!」

「おお、成程! 流石は誾殿で御座るなあ!」

 思わず振り返り、宗茂の方を向く。

「宗茂様! 宗茂様! 不覚にも褒められ少し嬉しさを感じてしまいました! 私は安い女なのでしょうか!?」

「私は素直な誾さんも好きですよ」

 そう笑顔で言われ、取りあえず落ち着きを取り戻す。

「ともかく、武器を回収しにいかなければいけませんね。場所は……遠いですね」

 「馬鹿のせいで」とため息を吐くと同時に後方に何かが落下した。

 直ぐに振り返り、構えると浮遊式の大型戦闘人形が存在しており、腹部の装甲が開くと流体砲撃が放たれた。

 三人は一斉に散ると砲撃を避け、格納用の二律空間から二本の剣を取り出す。

「宗茂様! 本多・二代!!」

 二人に剣を投げ渡すと“十字砲火”を呼び出し、砲撃を叩き込む。

それに合わせて宗茂と二代が戦闘人形の背後に回り込む。

 敵の関節部に攻撃を叩き込もうとした瞬間、巨体が突如消えた。

「!!」

 二代と宗茂は即座に跳躍し、元の場所に戻ると遠くの方に戦闘人形が現れる。

「空間移動……ですか。<<結社>>の技術力、かなりの物ですね」

 敵は両腕を突き出し、砲撃の準備を行っており、三人は顔を見合わせると頷く。

「どんなからくりがあろうと、物体であるなら壊せる筈で御座る!」

「不本意ですが意見が一致しました!」

「では、副長、誾さん! 行きますよ!!」

 再び“十字砲火”を放つと同時に二代と宗茂が突撃を開始した。

 

***

 

「あとちょっと!!」

 劇場から中央広場に向かっていた天子たちは途中で曳馬から射出された武器を回収し、中央広場の目前まで迫っていた。

「前方、反応多数です!」

 ティオの言葉に全員が構えると道を抜け、広場に出る。

 中央広場の中心には巨大な黒い柱が突き刺さっており、その周囲に無数の戦闘人形が待機している。

「結構な量だぜ!」

「ああ! だがやるぞ!!」

 此方を察知した戦闘人形達は一斉に動き始め、此方に向かってくる。

 丸い胴に四足の戦闘人形が背中のミサイルポッドからミサイルを一斉に放つ。

「ダークマター!!」

 ティオがアーツを放つと敵の中心に重力場が出来、敵集団が引き寄せられる。

さらに此方に向かって来たミサイルも敵のもとに戻り、連続した爆発が生じる。

 その爆発の中から次の敵が現れた。

 騎士型の戦闘人形達であり敵は盾を構えながら向かってくる。

「止まらずに行くわよ!!」

「ああ!」

 エリィが走りながら銃撃を放ち、それにより戦闘人形の動きが一瞬止まる。

 そこに飛び込んだ。

 天子は跳躍を行うと戦闘人形の頭上に着地し、首関節に機殻剣を突き刺す。

 それに残りの戦闘人形が気を取られるとランディがほぼ体当たりに近い状態で一体の敵にハルバードを叩き込む。

「ロイド!」

「分かった!!」

 倒れた戦闘人形を飛び越え、敵集団の背後にロイドが回り込むと両腕を伸ばし、体を回転させる。

 トンファーは敵の腰関節を次々と砕いて行き、四体ほどの敵が倒れる。

 残り二体の敵が距離を離そうとするが……。

「逃しませんよ!」

 落雷が叩き込まれた。

 一機が落雷により内部から爆発し、もう一体は右腕が破砕する。

 そこへ少年が飛び込み……。

「ハンターチャンス!」

 少年は金鎚を敵に叩き込み、戦闘人形が四散しながら宙に飛ぶ。

「総領娘様!」

 衣玖が此方に駆けつけ、彼女と視線を交わすと頷き合う。

「ナイスタイミングよ。衣玖。そして……」

「柳生・宗矩です」

 少年━━宗矩は金の鎚を構えながら周囲を警戒する。

「次、来たみたいです!」

 宗矩が指差す先、南側の通りから自動人形と強化猟兵の集団が向かってくる。

「かなりの量だな!」

「此方は七人ですか……」

「いや、十三人で御座るよ!」

 向かってくる敵が横から強襲された。

 敵の中心に点蔵とヨシュアが飛び込み、それにエステルが続き、彼女は棍を全力で振り回し敵を薙ぎ払う。

「ロイド、あれって……!」

「ああ、エステルたちだ!!」

「こりゃあ、ありがたい援軍だぜ!」

 「あら? 知り合い」と天子が尋ねるとロイドが「昔、一緒に戦ったんだ」と頷く。

 そう話しているうちにエステルたちは敵の集団を制圧し、此方に向かってくる。

「みんな、久しぶりね!」

「君たちも小田原に来ていたんだね」

「ああ、アルカンシェルの付き添いでね。そっちは徳川と?」

 ロイドとエステルが握手を交わすと天子が「はい、注目!」と手を上げる。

「久しぶりの再会を喜ぶのもいいけど、まずはこの状況を乗り越えましょう!」

「そうですね。もうすぐお爺ちゃんが来るはずだからそれまで……」

『ハーハッハッハ! そうはさせるか!!』

 男の声と共にプロペラを上部に付けた航空兵器が現れる。

兵器は前面にコックピットを持ち、下部には多くの武装が装備されている。

「ねえ……ヨシュア。この声、もしかして……」

「ああ……たぶんそうだと思う……」

 エステルとヨシュアはため息を吐きながら航空兵器を見上げる。

「ギルバート・スタイン!! あんたまだ<<結社>>に居たのね!!」

 

***

 

 航空兵器のコックピットの中で青髪の男が笑みを浮かべ、己の髪を掻き上げる。

「フフ、そうこのギルバート・スタインが来たからにはお前たちの命運は風前の灯だ!!

そう! この! ギルバート・スタインが来たからにはな!!」

「…………エステル、友人は選んだ方が良いわよ?」

 天子が半目でエステルの方を見るとエステルは「あ、あははは」と苦笑する。

「というか、また随分と濃い御仁が来たで御座るなあ……」

「き、きみ! そこの見るからに幸薄そうな君!! 今、僕の事を濃いと言ったか!!」

「失礼で御座るな!!」と点蔵が怒鳴るがギルバートは聞いていない。

彼は何故か涙を流しながら空を見上げ、エリィが「な、なんで泣いてるの……?」と苦笑する。

「ああ、思えばこの七年間苦労の連続だった!

変な城に閉じ込められたかと思えば不変世界に飛ばされ、それからずーーーーーっと<<結社>>で細々と生活してたんだ!!

もう正直、僕の存在なんか皆忘れているんじゃないかとしんぱいだったが、そうか、濃いか……ふ、ふふ」

━━うわ、気持ちわる!?

 ぶつぶつと独り言を言い始めたギルバートにドン引きしているとヨシュアが真顔で「うん、なんか前より色々酷くなっているね」と言い、エステルが頷く。

「さ、さて! 話を戻そう!! この僕と! このペイルアバッシュⅡがあればお前たちのような間抜けでうすのろの遊撃士など敵ではない!!」

「あ、あんですってーー!! 誰がうすのろよ!!」

「ハハ! 弱い犬ほど良く吠えるという奴だ!

このペイルアバッシュⅡは装甲を更に強化し、並大抵の重火器なら容易く弾く!!

さらに人間を一瞬で粉々に出来る機銃に、武神の装甲さえ砕ける対地ミサイル!!

それだけじゃないぞお! なんと対空戦闘用に誘導ミサイルまで装備してるんだ!!

どうだ!! 凄いだろう!!」

「え、あ、うん」

 思わず頷いてしまった。

「搭乗者はともかく、あの機体は危険そうです」

 ティオの言葉に全員が頷くと航空兵器がミサイルのハッチを開く。

━━来るわね!!

 此方で対空戦闘が出来るのは衣玖とエリィとティオ。

残りもアーツや術式で援護は出来るが……。

「さあ! 降参するなら今の内だぞ!! そうだな、土下座すれば今までの事、全部水に流しても……」

 直後、ミサイルポッドを何かが貫いた。

「………………は?」

 ミサイルポッドの中心に空いた穴。

そこから漏れる煙と火花、それが徐々に大きくなり……爆発した。

 爆発は近くの武装にも飛び火し、航空兵器の下部が次々と砕けていく。

そして爆発がコックピットにまで届きそうになった瞬間機体の緊急脱出装置が作動し、ギルバートが空高く飛んでいく。

「またこんな扱いかああああああああああああ!!」

 ギルバートはあっという間に見えなくなり、航空兵器は大きく爆発すると近くの家屋に墜落する。

『あ、すみません。なんか狙いやすいのがいたからつい撃ち落としちゃいました!』

「GJ!!」

 表示枠の浅間に親指を立てるとレンが「彼、何しに来たのかしら……」と呟く。

「まあ、なんだ。前座が終わったところで、本命が来たみたいだぜ!!」

 南と西の通りから敵の集団が向かってくるのが見え、皆で顔を見合わせる。

「ラッセル博士が来るまで持ち堪えるわよ! 全員で柱を囲むように並んで!

メアリはティータの護衛! 足の速い忍者とヨシュアは遊撃!!」

 全員が一斉に動き始め、武器を構える。

「さあ! 押し返すわよ!!」

「「Jud!!」」

「「了解!!」」

 エリィが銃撃を敵に叩き込むのと同時に中央広場で天子たちと敵の大軍の交戦が開始された。

 

***

 

━━今の狙撃……。

 櫓から中央広場を監視していたエンネアは先ほどの狙撃をしっかりと見ていた。

 放たれたのは矢。

 矢は正確に航空兵器のミサイルポッドを打ち抜き、撃破している。

「噂の狙撃巫女ね」

 矢の軌道からして放たれた場所は劇場地区。

中央広場からだと結構な距離がある。

━━面白いわ。

 弓でこれだけの狙撃が出来る人物が敵に居る。

その事に笑みを浮かべると手に持つ弓を構えた。

「まずは挨拶ね」

 そう言うとエンネアは矢を放った。

 

***

 

 巫女服に着替えた浅間・智は足元に刺さっている矢を見下ろしていた。

 この矢は先ほどの狙撃後、直ぐに飛んできたものでちょうど此方のつま先近くに着弾した。

この矢が意味する事は……。

━━挑戦状、という事ですか……。

 恐らく敵は達人級の狙撃手。

 それが此方に挑戦状を叩き付けてきたのだ。

「━━喜美」

「ええ、いってらっしゃい」

 振り返ると喜美が目を細めて立っている。

「フフ、“どうして分かったの?”って表情してるわね。あんたの考えてる事ぐらい直ぐに分かるわよ。

何年一緒だったと思ってるの?」

「まあ、そうですよねえ。

━━敵は達人です。相対すればどうなるかは分かりません。だから……」

 喜美が此方の唇に指を押し当て、言葉を遮る。

「違うでしょ? 言う言葉が」

 喜美は微笑むと此方の両肩に手を乗せた。

「未来の事をちゃんと考えて動くのはいい女の条件よ?

でもね、未来を見て、そして前を向き続けることが大切。

もし、今何かネガティブな事考えてるならこの勝負に乗るのは止めなさい。

そしてやるんだったら……」

「“絶対に生きて勝つ”ですね?」

 喜美は頷く。

「分かってるじゃない。いい、あんたに何かあるってことは愚弟もヤバいって事だから。

ちゃんと無事に帰って来て、そして愚弟に褒められたり甘えたりしなさい。

あんたにその権利はあるんだからね」

「う」

 頬が一気に熱くなり、慌てて顔を逸らす。

「もう、喜美! からかわないでください!!」

━━まったく! そんな事言われたら、頑張るしかないじゃないですか!!

 まだ残る頬の熱さを感じながら矢を地面から引き抜き、弓を構える。

「浅間神社は罪なき民に危害を加える<<身喰らう蛇>>を邪悪と判断し、その力を行使します!

これは先ほどの挑戦状の返答です!!

義眼・木葉! 会いました!!」

 宣言と共に挑戦状を叩きかえした。

 

***

 

 劇場の中から海野・六郎は浅間神社の巫女が離れていくのを見ていた。

━━さて、どうしたもんか……。

 アルカンシェルの演劇を見に来たら大事件に巻き込まれてしまった。

連絡したところ筧と望月も無事なようで、今は経過を見守ろうという事になった。

「しかしちょうどいいっちゃ、いいのかもねえ」

 噂の<<結社>>と徳川・関東連合。

その両者の戦力を測る事が出来る。

 外を見ると遠くの方から武蔵の騎士が仲間を抱きかかえて此方に向かってくる。

そしてその背後には敵も存在しており、このままでは劇場で戦闘になるだろう。

 既に劇場に集まっている警察官たちが構えているが……。

━━無理だろうねえ……。

 強化猟兵を相手に警察官が戦えるはずがない。

時間稼ぎをするのがやっとだろう。

「……あー。このまま見殺しにするのも寝覚めが悪いだろうし」

 海野はため息を吐く。

「まったく、だから“要らず”なんだろうねえ!」

 そう言うと彼女は鉄扇を取り出し、正面玄関に向かうのであった。

 

***

 

「南西部の制圧、ほぼ完了しました」

 部下からの報告を聞き、デュバリィは頷く。

「北西は?」

「苦戦しております。北西部は市民会館を中心に演劇結界が張られており、足止めを喰らっています。

突破は可能だと思いますが……」

「時間は掛けられませんわ」

━━厄介ですわね……。

 自分たちの任務は主であるアリアンロードの為に小田原城壁に張り付く事だ。

 敵に防衛準備の時間を与えないためにも迅速に動く必要がある。

それに既にエンネアとアイネスの部隊は持ち場についたという。

鉄機隊筆頭としてこのままでは示しがつかない。

━━敵は八大竜王の一人、トマス・シェイクスピア。そして武蔵や遊撃士も加わっている可能性があるとなると力押しは危険ですわね。

「一部を会館にいる敵を包囲するために残し、残りは迂回します」

「進軍ルートはいかがしますか?」

「それは敵に訊きましょう」

 近くに自動人形が歩いており、それに声を掛ける。

「貴女! 会館から離れながら小田原城に向かえる道を教えなさいな」

 自動人形は答えない。

 ただ此方に背を見せ、立ち止まっている。

「ちょっと! 聞いてますの!?」

 強めに言っても自動人形は動かず、苛立ちから眉を顰める。

先ほどまで歩いて居たのだから壊れているというわけではないだろう。

「…………ます」

 くぐもった声に首を傾げ、近づくと自動人形が俯きながら振り返る。

「道ならば……知っております」

「ならば早く教えなさい」

「まあ……道と言っても……地獄への道だがなああああああああああああ!!」

 鉄の四閃が放たれた。

 咄嗟に身を引き、避けると自動人形が距離を詰めてくる。

━━これは……!!

 自動人形の胴には四本の腕が備え付けられており、その四つの腕から高速で斬撃が放たれる。

突きの二連を避け、上方からの振り下ろしは盾で受け止める。

そして最後の切り上げはあえて踏み込み、敵の手首に斬撃を叩き込む。

断たれた手は宙を舞い、地に落ちる。

 それと同時に両者は後方へ跳躍し、距離を取る。

「奇襲とは卑怯ですわ!!」

「はあああああああああああ!? お前ばかですかああああああああああ!?

先に奇襲して来たのはそっちだしいいいいいい!!」

━━た、確かに!?

 い、いや。相手のペースに呑まれるな!

 ここは冷静に、そして優雅に……。

「やああああああああい!! 卑怯者おおおおおお!! ひっきょっうっもっのおおおおお!!

べろべろばああああああ!!」

「ぶっ飛ばしますわよ!!」

「デ、デュバリィ様!?」

「す、すみませんわ。私とした事が……」

━━囲まれてますわね……。

 恐らく風魔衆。

 此方を完全に包囲している。

 そしてこの男、確か北条の……。

「北条・氏照ですわね」

 氏照は答えない。

ただ武器を構え、一歩前に出るだけ。

言葉は不要という事だろう。

「相手にとって不足無し。参りますわよ!」

 宣言と共に駆け、互いの武器が激突する。

それと共に物陰に隠れていた風魔の忍び達が飛び出し、一気に乱戦となるのであった。




中央広場に到着する天子たち。そしてデュバリィ、苦難の始まり。
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