緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十八章・『神の巨兵』 それは鋼鉄の神 (配点:神機)~

商店街を強化猟兵の一隊が進軍していた。

 先ほどまで中継拠点の設置を行っていたが中央広場に敵が現れ、味方が苦戦していると聞き救援に向かう事になった。

 先頭を走る兵士が止まる。

それに合わせ、後方の兵士たちも一斉に立ち止まり武器を構える。

 前方、交差点の辺りに多くの看板や木材が積み重ねられておりその背後には民間人と思われる人々が武器を構えていた。

「来やがったな!! 悪党どもめ!!」

 大柄な男が怒鳴る。

「ここは、俺達の町だ! これ以上好き放題するってなら小田原商工会が相手になってやらあ!!」

 「そうだそうだ!」と男たちが啖呵を切り、武器を構える。

 その様子に先頭の猟兵が首を横に振り、口元に笑みを浮かべた。

「愚かな奴らだ」

 男が手を上げると後ろの兵士たちが一斉に重火器の狙いを定め、商工会の男たちが「うお!」と身を引く。

「撃て」

 指示と共に銃声音が連続した。

 自動小銃と対戦車ミサイルが一斉に放たれ、バリケードを砕こうとするが……。

「!!」

 弾かれた。

 銃弾は弾かれ、弾頭は空中で爆発する。

 爆発の黒煙の中から一人の男が現れた。

 商人服を身に纏った男。

男は「ふむ」と背後の商人たちを見ると頷く。

「いい気概だ! 商人たるもの、こうでなくてはな!!」

「あ、あんたは?」

 大柄な男の言葉に若い商人は頷く。

「武蔵アリアダスト教導院会計、シロジロ・ベルトーニ!」

━━冷面か……!!

 武蔵の会計。

その噂は聞いている。

以前の戦いでは<<赤の戦鬼>>を退けたというほどの実力者だ。

「……警戒しろ」

 部下たちに指示を出すとシロジロが此方にため息を吐く。

「それにしても……不甲斐ないぞ! 貴様ら!!」

「何!?」

「やるなら徹底してやれ! この辺を更地にすれば私が土地を買い占めた上で復興支援と称して儲けられたというのに!!」

 「お、お前どっちの味方だあ!!」という背後からのツッコミにシロジロは「そんな事は分かりきっている!」と返す。

「私は、私の味方だ! 安心しろ! 貴様らの事などどうでもいい!!」

 あんまりな言葉に敵味方共に言葉を失っているとシロジロは「さて」と担いでいた袋を地面に置く。

「<<身喰らう蛇>>、これ以上貴様らに暴れられるとどうやら私が損をしそうだ。

故に私は貴様らと敵対する!」

 袋の紐を解き、金貨を取り出す。

「さて、金の使い時だ!!」

 直後、指弾を放ち一人を貫くのであった。

 

***

 

「ふうむ、思ったより手古摺っているね」

 <<方舟>>の艦橋で戦況図を眺めていたノバルティスがそう呟く。

 最初は此方が優勢であったが思いのほか敵の抵抗が激しい。

何より気がかりなのが……。

「中央広場の敵が厄介だねえ」

 報告によれば中央広場にはかつて<<白面>>を打ち破った遊撃士達、あの特務支援課、そして例の少女が居るという。

 徳川に居る例の少女や遊撃士はともかく、特務支援課が小田原に居るのは想定外だ。

━━彼女たちに何かできるとは思わないが……。

 念には念だ。

 降下した岡崎夢見に中央広場に向かうよう指示を出すと、今度はβの状況を見る。

「此方はそろそろ接敵か」

「博士」

「何かね? もうすぐいい所なのだがね」

「後続の部隊が到着しました」

 通神士の言葉に正面を見れば後続の飛空艇と共に白銀の巨大艦が此方に向かってきていた。

━━さて、これで此方の優勢は確定かね。

「北東の方角より北条艦隊が接近! まもなく交戦範囲内に入ります」

「ほほう? 北条の哨戒艦隊かね?」

『博士、敵艦隊は此方に任せてください。点検を兼ねて敵艦隊を撃破します』

 表示枠に映った“白の巫女”の言葉に嬉しそうに目を細めると椅子に座る。

「おお! 楽しみだ! 早くその船の力、見せてくれたまえ!!」

 『ご満足いただけますよ』と“白の少女”が笑うと表示枠が閉じられる。

 前方の大型表示枠に映された映像では白の巨大艦が旋回を始め、装甲の各所を展開させ始めていた。

 

***

 

「敵、巨大艦旋回! 此方に向かってきます!!」

 クラーケン級戦闘艦“川越”の艦長は敵の巨大艦が此方に迫って来るのを見た。

 白銀の装甲を持ち、青い流体の光を身に纏った船。

あのような船は見たことが無い。

━━結社の新型艦か?

 敵の武装は不明。

だがこのままというわけにはいかない。

「全艦! 敵との距離を保ちつつ攻撃! 流体砲、実体砲、どちらも使用し攻撃を浴びせ続けろ!!」

「Testament!!」

 指示を受けた八隻の艦が鶴翼に広がっていき、敵艦を包囲する。

 敵は依然として沈黙。

その事に気味の悪さを感じながらも号令を出した。

「一斉射撃!!」

 小田原の空を幾つもの流体の光が横切った。

無数の砲撃は一直線に敵艦に向かい、そして…………逸れた。

「なんだと!?」

 障壁によって受け止められたのではない。

 敵の直前で砲撃は曲がり、逸れて行く。

━━これは……怪魔の……!!

 実態弾もすべて逸らされ、宙で爆発する。

 即座に砲撃続行の指示を出し、更に機鳳隊による近接戦闘を指示する。

「敵に動きあり! これは……高密度の流体です!!」

 前方、白の巨大艦の周辺に青い光の塊が幾つも浮かび、輝きは徐々に大きくなっていく。

━━来るか!!

「全艦! 防御態勢!! 前方に障壁を集中させろ!!」

 直後光が放たれた。

 だが光が向かった先は此方ではない。

光は垂直に打ち上げられ、そして……消えた。

 

***

 

 一瞬であった。

 光は空中で消え、次の瞬間八隻の船全てが光の柱に貫かれた。

 流体の柱は突如艦隊の上方に現れ、航空艦を襲った。

 艦橋を抉られた船たちはその身を二つに降りながら爆発し、大地に落ちてゆく。

さらにその後方から機鳳隊が来るが白の巨大艦から再び流体砲撃が放たれ、一瞬ですべてが貫かれた。

 僅か数秒で北条の哨戒艦隊は沈黙した。

 

***

 

 “白の巫女”は北条艦隊が壊滅するのを見るとゆっくりと息を吐き、胸に手を当てる。

「作戦は第二フェーズに移行しました。団長、後はお任せします」

『うむ、我が兵を一人貸そう。存分に働くがよい』

 無人のアーシャの艦橋には中央広場の様子が映し出されており、そこに居る青髪の少女に釘付けになる。

━━比那名居……天子。

 緋想の剣の担い手。

 救世の鍵。

 何故、自分ではないのか……。

複雑な心境に拳を強く握りしめ、首を横に振る。

━━今は、己の責務にのみ集中すべき時です。

 踵を返し、白いマントを靡かせる。

「さあ、行きましょう。我らの真の目的地へ」

 

***

 

「……なによ、あれ?」

 中央広場から空を見上げ、天子は思わずそう呟いた。

 あの白い巨大艦。

 あれが突如現れ、北条の艦隊を瞬く間に壊滅させてしまった。

「先ほどの砲撃……空間移動、でしょうか? 発射後に強力な空間変異を探知しました」

「砲撃後、流体エネルギーを別の空間に移動させ、転移させる。あの船はあらゆる方向、距離に攻撃が可能……ということですね」

 険しい表情を浮かべるティータにティオが頷く。

「おいおい、ちょっとインチキ過ぎねえか?」

「だが、敵はやってみせた。<<結社>>の新兵器か?」

 「いや」と言ったのはヨシュアだ。

 皆と同じように険しい表情を浮かべた彼は首を横に振る。

「確かに<<結社>>の技術力は凄まじいが、あれは度を越している。ゼムリアにも神州にもない技術……」

ヨシュアの言葉に目を丸くし、「それってまさか!?」と驚愕の声を上げると正面の家屋の屋根に女が降り立った。

「その通りですわ。あれはこの世界の物、遥か昔に滅んだ竜達の遺産」

「お前は……!!」

 金の縦ロールヘアーを持ち、黒い衣服を身に纏った女性は此方を見下ろし、笑みを浮かべる。

「フフ、<<身喰らう蛇>>が第三柱、マリアベル・クロイス。お久しぶりですわね、特務支援課の皆さん」

「ベル……」と悲痛な表情を浮かべるエリィにマリアベルは眉を下げると二律空間から流体刃の大鎌を取り出す。

「マリアベル・クロイス! この世界の物とはどういう事だ! お前たちは何を知っている!?」

 ロイドの言葉にマリアベルは口元に笑みを浮かべると「おバカさんですわね」と嘲笑う。

「そんな事、敵に教えるわけありませんわ。それにしても……」

 魔女は目を細める。

「相変わらず厄介な連中ですわ。貴方たちをこのままにしておくと色々と支障が出そうなので、ちょっと足止めさせてもらいますわね」

 マリアベルが手を翳すと上空から二つの影が降下してきた。

 紅と蒼。

二つの機械武者が降り立ち、武器を構える。

「あら、また邪魔が来てしまったようですわね?」

 マリアベルが指差す先。

北側の大通りから徳川の兵たちと老人が向かって来、ティータが老人に手を振る。

「お爺ちゃん!!」

「おお! ティータ、無事だったか! そして……こいつは<<結社>>の自動人形か!!」

 徳川の兵士たちがラッセル博士を守りながら柱の近くに布陣すると天子が笑みを浮かべる。

「どうやらピンチなのはそっちみたいね!」

「ええ、困りましたわ。寄ってたかって虫のように。これは纏めて踏み潰すしかありませんわね。ねえ? 夢見?」

「弱い者いじめして悦に浸る趣味は無いわ」

 第三者の声の直後、巨大なものが背後に着地した。

 周囲の建物が衝撃で倒壊し、凄まじい風が吹き荒れる。

━━これは……!?

 巨人が佇んでいた。

 真紅の装甲を持ち、もはや武神というよりも動く城塞。

巨大な手足を持つ重装甲の武神が大地に降り立ち、その方の上で赤毛に赤い衣服を身に纏った少女が乗っている。

「アイオーン……γ……!!」

 レンが己の武器を強く握りしめ、巨大な敵を睨み付ける。

それを赤毛の少女が見下ろし名乗りを上げた。

「<<結社>>の協力者。岡崎夢見。悪いけど邪魔者にはここで消えてもらうわ」

 

***

 

「!!」

 里見・義康は振り下ろされた拳を避け、刀を自動人形の腰に叩き込む。

そしてそのまま力を込めると、敵を両断した。

 地面に倒れた自動人形を見下ろすと「くそ!」と悪態を付く。

━━完全にしてやられた!

 敵の第二陣の到着によって戦況はいよいよ此方が不利となった。

 梅組の連絡によると<<結社>>のアイオーンγが中央広場に現れたらしく、このままでは天子たちが危険だ。

どうにかせねば。

だが……。

「“義”は空港か……」

 ここからだとまだ距離がある。

 空港方面には敵の部隊が展開しており、強引に突破する以外道がない。

 ━━やるしかないか……。

 それなりに白兵戦も出来るが基本は武神乗り。

そうとう厳しい行軍となるだろう。

覚悟を決め、走り出そうとした瞬間正面に白い犬が着地した。

「お? 里見のネーちゃんか?」

 犬の頭の上で小人が跳ね、走り出そうとした足を止める。

「確かアマテラスにイッスン……だったか?」

「さっきまで変な絡繰り人形共を倒しててなァ。そっち、どっか向かってんのかァ?」

「空港に向かうつもりだったのだが……」

 アマテラスが空港の方角を向き、警戒の唸り声を上げる。

「敵が沢山いるって事かァ……」

 イッスンに頷く。

 するとイッスンとアマテラスは顔を見合わせ暫く何やら話しているとアマテラスが此方に近づく。

「どうし……」

 直後、視界が一転した。

━━何だ!?

 体が宙に浮き、一回転をするとアマテラスの背中に座らされる。

 突然の事に目を丸くしているとアマテラスが歩き出し始める。

「お、おい?」

「ああ、済まねェなァ。驚かせちまって。空港までオイラとアマ公が送るぜ!

アマ公の足ならあっと言う間だァ!!」

「……助かる!」

 それにしても、と思う。

 先ほど体を宙に浮かされた事。

油断していたとはいえ完全に動きが見えなかった。

流石は天照大神というところか……。

「それじゃァ! 行くぜェ!!」

 アマテラスの背中にしがみ付くように体を伏せると同時に視界が加速した。

 アマテラスは凄まじい速度で道を駆け抜け、跳躍を行うと屋根に着地する。

そしてそのまま屋根伝いに空港へと向かった。

 そんな此方の上空を機鳳の様な機体が通過する。

あのような物、関東連合では見たことがない。

つまりあれは……。

「敵の新手……アイオーンか!!」

 敵の狙いは恐らく空港。

恐らくそこに停泊中の艦隊だ。

「急いでくれ!」

 此方の言葉にアマテラスは頷き、速度を上げる。

そして大きく跳躍すると空港へ向かう道路に着地し、敵の包囲を突破し始めるのであった。

 

***

 

 小田原城前の橋は緊張に包まれていた。

 橋の前には機動殻を身に纏った十人ほどの兵士たちがおりその後方には長銃を装備した三十人ほどの兵士が居る。

彼らは皆、慎重に武器を構え冷や汗を掻いている。

━━なんて威圧感だ……!!

 橋前には敵が存在していた。

 敵はたった一人。

だがまるで数万の大軍と相対しているかのような威圧感。

━━これが……<<鋼の聖女>>!!

「私を前にして一歩も引かないその闘志。見事です」

 鋼の女騎士が一歩前に出る。

それに合わせて後ろに下がりたくなるが何とかこらえた。

「ですが、無意味です。下がりなさい、無駄な血を流す必要はないでしょう」

『なめてくれるなよ! ここは俺達にとって大切な場所! 一歩たりとも引く気は無い!!』

 そう啖呵を切ると騎士は「……そうですね」と頷く。

「先ほどの言葉、謝罪しましょう。見事です、北条の兵士よ。そして━━来なさい。

貴方方の信念と責務、受けましょう」

 勝ち目は薄い。

 いや、無いと断言してもいいだろう。

だが……。

 騎士が動いた。

 それと共に機動殻隊が一斉に突撃を開始する。

 重装甲の盾を前面に押し出しながらの突撃。

数と重量で敵を押しつぶす戦法をとる。

 対して敵はゆっくりと槍を構え、突き出した。

『!?』

 装甲が砕けた。

 槍が盾を貫き、機動殻の頭部を砕く。

 機動殻の一つが倒れると同時に後方の部隊に指示を出す。

『一斉射撃!! 機動殻隊は敵を囲むぞ!!』

『『Tes!!』』

 後方より銃弾が一斉に放たれ、機動殻隊が敵の退路を塞ぐように囲んだ瞬間嵐が吹き荒れた。

 銃弾は全て大地に叩き落され、機動殻隊が一斉に宙を舞う。

『ばか……な……!?』

 何が起きた!?

 ほんの一瞬であった。

一瞬の間に機動殻が粉々に砕かれ、部隊が宙を舞う。

 地面に激突する直後に見たのは後方部隊が敵になぎ倒されている攻撃であった。

 

***

 

 沈黙した橋の上でアリアンロードはゆっくりと息を吐いた。

 橋の上には北条の兵士たちが横倒れており、動く者は一人も居ない。

「さて、次は貴女ということでしょうか? 博麗先代」

「あら、覚えていてくれたのね」

 小田原城の正門が開き、巫女服を身に纏った女性が現れる。

 彼女は倒れている兵士の首に指を押し当てると安堵の息を吐く。

「全員気絶してるだけ……安心すると同時に嫌になるわね。あの状況で手加減できるなんて」

「……無用な流血は望みません」

「町を襲撃しておいて良く言うわ」

 否定はしない。

 自分たちの行動で罪のない市民が犠牲になっているのは確かだ。

「さて」と先代は立ち上がると此方を睨み付ける。

「悪いけどここから先には行かせないわ」

「無論、ただで通れるとは思っていません」

 先代が頷くと同時に彼女の背後に幾つもの物体が降り立った。

 武神だ。

 二体の陸戦型重武神に四体の軽武神、そして八人の自動人形。

「……システムに接続していない機体ですか」

『Tes!! 全て、私が遠隔操作しているものです!』

 走狗が先代の肩に乗り、武神たちが構える。

「汚い━━なんて言わないでよ? これでも貴女を止めるのに足りないと思っているのだから」

「持てる力は全て使う、当然の事だと思っていますよ」

 槍を構える。

 敵は北条・氏直の走狗、小太郎。

そして副長級の実力を持つ博麗先代。

「今一度名乗りましょう。

蛇の使徒が第七柱。

<<鋼>>のアリアンロード」

「関東連合長野家博麗神社所属。

先代巫女、博麗先代」

 互いに視線を交わし一歩前に出る。

「いざ━━━━尋常に」

「「勝負!!」」

 両者が激突し、小田原城正門前で死闘が開始された。




アイオーン襲来。そしてアリアンロードと先代の戦いが始まる。
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