緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十九章・『剛毅の騎士』 鉄壁の盾 剛毅の矛 (配点:矛盾)~

 静まり返った広場の中、誰もが固唾を飲んで様子を窺っていた。

 広場の東西に存在する敵。

 一つは西側に佇む巨体・アイオーンγ。

もう一つは紅蒼二色の侍型軽武神だ。

 アイオーンγの肩に乗る岡崎夢見は眼下の敵を見下ろす。

「なるほど……。遊撃士に特務支援課、そして鍵の担い手。随分と豪華な顔ぶれね」

 それに対し愉快そうに頷いたのはマリアベルだ。

彼女は屋根の上に座り、余裕そうにする。

「実践テストにはちょうどいいんではないですの?」

「ま、そうね」

 「さて」と言うとアイオーンγが一歩前に出る。

「私の実験データになるのは誰かしら?」

 敵は構える。

 皆、慎重に互いに連携を取りながら防衛体制を取っていく。

そんな中一人、前に出る存在が居た。

━━……へえ?

 少女だ。

 紫の髪を持ち、大鎌を手に持つ幼い少女。

たしか彼女は……。

「執行者No.ⅩⅤ、<<殲滅天使>>。データサンプルとしては良い素材ね」

 レンに続き遊撃士の二人も前に出る。

どうやらこの三人が私とγの相手という事らしい。

「ちゆり、計測開始。一部始終を録りなさい」

『人間相手かあ……。なんか速攻で終わっちゃう気がするんですけど?』

 「どうかしらね?」と呟くと表示枠を消し、γに戦闘態勢の指示を出す。

 紅き巨体が駆動音と地響きを鳴らし、構えるとレンが訊いて来た。

「ところでお姉さん、その子の色は?」

「……私の趣味だけど、何か?」

 「いいえ。ただ……」とレンは笑みを浮かべる。

酷く、冷たい笑みだ。

彼女は大鎌を構えると目を細め、此方を見上げる。

「その形、その色、とても不愉快だわ。一片も残さず、徹底的に“殲滅”してあげる!!」

 直後、少女が消えた。

それと共にγが後ろへ跳躍し、巨大な腕を振るうと腕にレンが着地する。

彼女はそのまま駆けあがり此方を狙うが、即座に導力銃を引き抜くと射撃を放つ。

「……っ!!」

 レンは銃弾を弾くと横へ逃れ、飛び降りた。

それを黒髪の遊撃士が受け止め、茶髪の遊撃士の方が左足に打撃を叩き込む。

 金属が振動する音を聞きながら、γに指示を出す。

「γ! 冷徹に、そして正確に敵を蹂躙しなさい!!」

 鋼鉄の巨人が叫びをあげる。

遊撃士達も体勢を立て直し此方に向かってくる。

こうして両者の激突が開始された。

 

***

 

「フフ、あちらも始まったようですわね。ではそろそろこちらも……」

 マリアベルが指を鳴らすと蒼と紅の軽武神が動き始める。

 それに対して一同は身構えるとアイコンタクトを行った。

━━敵は二体、とりあえずロイドたちと私たちでそれぞれ一体ずつね……。

 ロイドは頷き、蒼の軽武神と相対する。

 それに続き此方も衣玖と点蔵、そして宗矩が武器を構え、紅の軽武神と相対した。

 メアリは合流したラッセル博士とティータの護衛の為に下がらせ、黒い柱を囲むように徳川の兵士たちが陣取る。

━━さて、どうするか……。

 見たところ一般的な陸戦型軽武神に見える。

得物は蒼の軽武神が馬上槍、そして紅の軽武神は二対の太刀だ。

「……行くわよ」

 衣玖達が頷くと同時に駆け出す。

 紅の軽武神もそれに応じて動き出すが、前方に雷が落ち、動きを一瞬止める。

 落雷によって舞い上がる土煙の中から点蔵が現れると敵は太刀を横に薙ぐ。

それを咄嗟に身を屈めて避け、潜り抜けると敵の眼前で跳躍した。

そして敵が忍者を一瞬追った隙に飛び込んだ。

 狙うは敵の関節部。

 駆動の為、最も装甲の薄い部分を狙い突撃を仕掛ける。

 機殻剣を突き出し、敵の右足付け根の関節を狙うが敵は両腕を大きく開くと上体を旋回させ回転切りを放ってくる。

「妙な技を……!!」

 咄嗟の判断で剣を突き出した体をそのまま前に倒し、倒れるように地面に伏せる。

 地面が顔に激突し、衝撃と痛みを感じるが直ぐに這い上がり、敵の足元をすり抜ける。

敵は此方を追いかけようと振り向き始めるが、その瞬間に大きな金の鎚を手に持った宗矩が敵の頭上から襲い掛かった。

「ハンターチャンス!!」

 大鎚が敵の頭部を砕く、そう見えた直後眩い光が発せられた。

「!?」

 宗矩の体が大きく吹き飛び、地面を転がるが衣玖が彼を受け止める。

「今のは!?」

「……な、何か壁のようなもので防がれました!」

 衣玖は宗矩を直ぐに立ち上がらせると羽衣を筒状に変形させ、雷撃を放つ。

しかし雷撃は敵に直撃する瞬間に弾かれ、消失した。

━━障壁!?

 その疑問に答えたのは屋根の上で寛いでいるマリアベルだ。

彼女は楽しそうに目を細めながら此方を見下ろし、口を開く。

「ふふ、リアクティブアーマー。対導力戦車用の防衛装置。並大抵の攻撃は無効化できますわ」

 マリベルが手を上げると軽武神達が前進を始める。

「この二機を相手にどう戦うのか……見せてもらいますわよ!!」

 直後、紅蒼の軽武神が突撃を開始した。

 

***

 

 金属の砕ける音が響いていた。

 音は連続して響き、その度に空気が振動する。

 音の震源地は一人と一機からだ。

ハルバートを持った女騎士が青の機動殻の懐に飛び込み、攻撃を浴びせ続ける。

━━こ、これはいけませんよお!?

 防御力には自信があった。

 とりあえず敵の攻撃を防ぎ、隙を見て戦線離脱。

そうしようと思っていたが敵は此方の予想を遥かに超える馬鹿力だ。

 ハルバートが振るわれ此方の胴を穿つ。

それにより腹部の装甲が更に砕け、そろそろ損傷度が危険域に入る。

 このままでは押し切られると判断すると反撃の為、槍を突き出すが敵は体をずらしながら避け、更に踏み込んでくる。

そしてハルバードを縦に持つと突き上げ、先端で此方の首を貫こうとする。

それを咄嗟に顔を逸らし避けるが顔の右半面が砕け、視覚素子が大きく乱れる。

 後ろへふらつく体を制御し、何とか立て直すと乱れた視覚素子越しに敵を見て構えなおした。

━━本当に、これはいけませんよ……。

 やはり死亡フラグを立てたのが不味かったのだろうか?

いや待て、あれは何となくその場のノリで言っただけだ。

ノリで殺されたらたまったものではない。

 今はとにかくこの状況を切り抜けなければ。

「なるほど……噂通りの鉄壁だ」

『噂……ですか?』

 アイネスは頷く。

「武蔵に居るという鉄壁の従士。仲間の為に体を張り、自らの犠牲を厭わず攻守ともに参加する従士。

━━見事だ」

『……あの、それ物凄く歪曲して伝わってますよね? 事実はもっと悲惨というか……』

 ハンマーとかハンマーとかハンマーとか。

 自ら体を張っているというか、張らされているのが事実だ。

━━まあ自分、それに慣れ始めてますけどねー……。

「さて」と言うとアイネスは武器を腰のあたりで構える。

「剛毅の矛と鉄壁の盾の戦い、どうやら矛の方が優勢のようだが……どうする、従士よ?」

 どうするもこうするも、自分に採れる道は限られている。

『よし……覚悟決めました』

 そう言うと同時に奔獣を跪かせた。

 

***

 

━━……ほう。

 眼前で敵が膝を着き、機動殻背部のハッチを開くのを見た。

 中から眼鏡を掛けた小柄な少女が現れると、彼女は機動殻が持っていた槍を手に取る。

「それが最善か?」

「……Jud.、 動きの遅い機動殻ではどうやっても押し切られます」

「故に鎧を脱ぎ捨てるか」

 敵は頷く。

 戦意を失わず、落ち着ている。

 良い覚悟だ。

そう思った。

 騎士と共に戦う従士にとって必要なのは主への忠誠心と覚悟。

この少女はどちらも備えているように見える。

「だが手加減はしないぞ」

 「Jud.」と頷くと少女は槍を構える。

「従士アデーレ・バルフェット! 改めて、参ります!!」

 直後、加速した。

 槍を構えた突撃。

敵は一直線に此方に迫り、槍を突き出してくる。

━━速いな……!!

 加速術式を使いながらの全力疾走。

大きな槍を構えたその姿はまるで騎兵の突撃の様だ。

だが……。

 敵の槍が此方に当たる瞬間に横へ跳躍、そして即座に蹴りを放つと敵の横腹を穿った。

 無防備な状態で横からの攻撃を受けた従士は地面を吹き飛び、10mほどの地点に落下する。

「大した突撃だ。だが騎馬突撃はその性質上見破られやすい。必殺の時以外は無暗に出すな」

 「J、Jud.」とゆっくりと立ち上がる従士に合わせてハルバートを構える。

従士も一度大きく深呼吸をすると槍を構えた。

 そのまま互いに睨み合い、一分ほど経つと従士が突撃してくる。

 今度は此方の間合いに入る前に方向転換、右に回り込んできたので相手を正面に捉えるように体を動かし警戒を続ける。

 そして体の向きが180度移動したと同時に踏み込んで来た。

 槍を突き出してくる相手に対してハルバートを横に薙ぎ、迎撃しようとするが敵は咄嗟にスライディングを行い此方の攻撃を下に潜り抜ける。

此方も蹴りで相手を止めようとするが、従士は槍を自分の横に置き蹴りを防ぐと背後に回り込む。

 敵が此方に攻撃を行う前に肘を引き、ハルバートの石突きを後ろへ突き出し敵の槍の先端に激突させる。

 内側から衝撃を受けた槍は大きく逸れ、それにつられて従士の体も大きくよろめいた。

 その隙に腰のあたりでハルバートを固定したまま体を回転させ薙ぎ払いを行うが従士も何とか体勢を立て直し、槍を縦にして受け止め、滑るように押される。

━━防いだか……!!

 従士は一歩下がると間合いを取り槍を突き出す。

此方もハルバートを突き出し互いの武器を激突させ合うと、弾き合う。

「!!」

 互いの位置を入れ替えるように攻撃を繰り返し合い、二十を超えたあたりで此方が優勢になる。

━━そろそろ決めるか……。

 あえて一瞬だけ腕を下げ隙を作り敵の頭を無防備に晒すと従士がそこを狙い槍を振り下ろす。

それをハルバートの柄で受け止めると踏み込み、敵の腹に膝蹴りを入れた。

 苦悶の表情を浮かべる従士はなんとか耐え、身を守りながら距離を取る。

「一つ訊こう。……降伏する気は?」

「あ、ありません!!」

 大粒の汗を掻きながら強く頷く従士に頷きを返すとハルバートを大きく振り上げる。

「……では行くぞ。<<地裂斬>>!!」

 ハルバートを振り下ろし、大地に衝撃波を叩き込み一直線に敵にぶつけた。

 

***

 

 判断は咄嗟であった。

 何か不味いと思い、身を守る事に決める。

その為に槍を地面に突き刺しその裏に隠れると凄まじい衝撃を受けた。

 体が吹き飛び、視界が何度も回転し自分が今どこにいるのかも分からない。

突然生じた衝撃と痛み、そして木が砕ける音が響いたときには大の字に倒れていた。

意識が朦朧とし、自分の状況がいまいち把握できない。

━━あ……ちょっと真剣に危険かもです……。

 全身からの激しい痛み。

特に左腕は痛みすら感じなく動かすことが出来ない。

ゆっくりと目を動かし、腕がちゃんとある事を確認すると僅かに安堵の息を吐く。

━━でも、たぶん折れてますよね……。

 さてどうしよう。

満身創痍だ。

格上を相手によく頑張ったのでは無いだろうか?

相手は副長級、それに結構持ち堪えた。

 このまま息を潜めて隠れてればたすか……。

「……らしく……ないですよね」

 自分たちの王は言っていた。

どんな時にも前向きで、後悔をしない選択をしようと。

そう、敵は自分にとっての“不可能”だ。

だが王は言った。

“不可能”は全て押し付けろと、その代わりに“可能”の力を持って行けと。

 だったら!!

「……前を向いて……立ち上がって!!」

 上体を起こし、床に落ちているひび割れた眼鏡を拾う。

そして眼鏡を掛けると力強く頷く。

「よし!!」

 立ち上がると近くに落ちていた槍を右手で拾う。

 状況は最悪。

 全身には傷と疲労。

さらに左手が動かない。

対して敵は無傷な上、まだ力に余力はあるのだろう。

例えそうでも今は戦う時だ!

 大きく踏み出し、崩れた壁から家屋の外に出る。

 通りにはアイネスが待ち受けており、彼女は口元に笑みを浮かべるとゆっくりとハルバートを構えた。

 まずは周囲の状況確認。

 通りは広めで直線状。

 敵は北側、崩れた橋を背にしておりすぐ近くには背中のハッチを開いたままの“奔獣”がある。

 厄介なのは先ほどの技だ。

 先ほどの技はどうやら一直線に放つ衝撃波。

この戦場では避け辛く非常に危険だ。

━━やっぱり近接戦闘ですよね……。

 敵に大技を使わせないように戦う。

 だが近接戦闘でつい先ほど圧倒されたばかりだ。

どうこの強敵と相対するべきか……。

「もしかしたら……」

 この策なら上手く行くかもしれない。

いや、この策しかない。

ならやるだけだ。

 そう決めると右手に力を込め、相手を見据え、ゆっくりと息を吸った。

 

***

 

 アイネスはらしくもなくこの戦いに私情を持ち込んでいた。

 この未熟な従士がどこまで見せてくれるのか。

圧倒的な力の差を前に決して折れない心。

それは本人の資質か、仲間への想いか、またはその両方か?

出来る事ならこの従士の壁として、どこまで伸びるかを見届けたいがそれは叶わない。

 少々時間を取られ過ぎた。

 本来ならこのまま小田原城近くまで進軍し、劇場地区辺りを拠点に陣を構える予定であったが報告によると劇場地区で敵の激しい抵抗を受け苦戦している。

さらに中央に“鍵の少女”が現れた。

 中央次第では予定が大きく狂う可能性がある。

故に。

「次で終わらせてもらう」

従士は片手で槍を構える。

恐らく先ほどの攻撃で左腕を負傷したのだろう。

 だが手加減はしない。

 手加減などすればこの戦いを汚す事になる。

 従士は右足を大きく踏み出す。

━━来るか!!

 駆けた。

 一直線に、敵を狙った騎馬突撃。

 此方もそれを受け止めようと構えるが……。

「!!」

 槍が投げられた。

 従士は助走をつけながら体を大きく捻り、槍を投げる。

━━投げ槍か!!

 勝負を捨てたか!?

 飛来する槍を弾く間に従士は機動殻の方に向かっていくのが見えた。

━━狙いは機動殻か!!

 愚かな! ここに来て鎧に頼るか!!

ならば此方も鎧が起動した瞬間に<<地裂斬>>を叩き込み、鎧ごと相手を砕くのみ。

 そう判断し、ハルバートを振り上げると従士が機動殻の後ろに隠れた。

そして暫くすると再び機動殻の後ろから飛び出し、此方に向かってくる。

「それもフェイントと言う事か!! だが甘い!! <<地裂斬>>!!」

 ハルバートを振り下ろし一直線に衝撃波を放つと従士は横に跳ね、近くの家屋の扉に体当たりするように飛び込む。

 戸を砕き、家屋の中に従士が飛び込むのを見ると直ぐに二発目の準備をする。

 その瞬間、機動殻が飛んだ。

「なに!?」

 機動殻は垂直に飛ぶと空中で静止し、落下を始める。

狙いは此方の頭上。

 後方への跳躍で避けると眼前に機動殻が着地し、衝撃と共に土埃を舞い上げた。

━━奇襲を兼ねた目潰し!! ならば敵の狙いは……!!

 得物か!!

 槍が落下した方向を向けば土煙の中、従士の衣服が見える。

見事な機転だ!

 最初の槍投げで此方の隙を作り、機動殻の操作、その後わざと飛び出すことによって注意を逸らし機動殻による奇襲と目潰し。

そして最後に落下した得物を回収しての攻撃。

 よくそこまで機転をきかせた。

だが、あと一歩が足りない!!

「これで……終わりだ!!」

 ハルバートを突き出し、敵の中央を穿つ。

 先端は従士の衣服を引き裂き、そして金属音が鳴り響く。

「…………!!」

 違う!

 これは従士ではない!!

 衝撃で晴れる土煙の中見えたのは大地に突き刺さる槍とそれに被せられた従士の上着。

「デコイか!!」

 ならば敵は……!!

 急ぎ振り返ったそこには青の機動殻が拳を握りしめ、突き出していた。

 凄まじい衝撃と鈍い音が鳴り響き、顔面を殴打された体は大きく吹き飛んだ。

 

***

 

 土煙が完全に晴れると戦場は静寂に包まれていた。

 拳を突き出す機動殻、遥か遠くで倒れる女騎士。

青の機動殻は片膝を着き、中からは荒い息遣いが聞こえてくる。

 機動殻の中でアデーレは鈍い汗を掻きながら眉を顰める。

『とど……かなかった……!!』

 確かに敵の頭を穿った。

機動殻による全力の打撃。

鬼だろうが耐えられないであろう攻撃を確かに叩き込んだ。

だが、これは届いてない。

 攻撃を当てる直前、妙な手応えを感じたのだ。

 それが正解だというように霞む視界の先で、騎士がゆっくりと起き上がる。

「……見事だ。まさかここまで押し込まれるとは」

 騎士もダメージがあるらしくハルバートを杖にするように立ち、荒い息を整えている。

『最後のは……』

「我が秘術、<<秩序の盾>>。三度のみ敵の攻撃を防ぐ」

 負けた。

 そう分かり、悔しさに項垂れる。

「従士よ。更に精進しろ。この先、再びどこかで相見えるだろう。その時が決着の時だ」

 疲労と痛みで意識が遠のいて行く。

だがまだ意識を失っては駄目だ。

自分はこの敵にちゃんと応えなくてはいけない。

『Jud!! いずれまた!!』

「ああ、楽しみにしている」

 何故か笑みが浮かぶ。

 きっとこの人とはまたどこかで戦う。

今回は負けた。

だが次はきっと……。

 そう思いながらアイネスの笑みを見て意識が途絶え、深い眠りに落ちるのであった。

 

***

 

 敵が気を失ったのを確認するとアイネスは大きく息を吐いた。

 騎士として従士の前で無様を晒さないようにしたが、かなり足腰にきている。

最後の一撃。

あれは本当に危なかった。

 咄嗟の発動であったため技の効果は不完全であり、相当のダメージを受けている。

 このまま戦う事は可能だが万全でない状態で劇場地区に居る敵と相対するべきではないだろう。

「アデーレ・バルフェットと言ったか……」

 将来有望な従士。

 騎士として彼女と共に戦場を駆けてみたいものだが……。

「戯言、か」

 次に会う時、きっと彼女は強くなっているだろう。

その時に勝利するのはどちらか、実に楽しみだ。

 そう笑みを浮かべながら踵を返し、撤退を始める。

 騎士は去り、戦場には青の機動殻が片膝を着き佇む。

 

 小田原東部の戦いは指揮官であるアイネスが負傷・撤退したことにより膠着状態に陥るのであった。




アデーレvsアイネス戦の終了。次回は<<魔弓>>さん!
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