緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第三十五章・『中央の盛り返し手』 反撃と真意 (配点:中央広場)~

 振り下ろされた馬上槍をトンファーで受け流すとそのまま滑り込むように敵の眼前に迫った。

そして二回連続の打撃を叩き込むが障壁に弾かれダメージを与えることが出来ない。

━━……またか!!

 即座に後ろへ跳躍し、それを敵が追撃しようとするとランディが横に回り込みショックハルバードを叩き込む事によって阻止する。

ランディが叩き込んだ攻撃は腰の装甲を歪め、それを見たランディが「お?」と目を丸めた後此方の横に付いた。

「今のは効いたみたいだな」

 それに頷いたのはティオだ。

「ロイドさんの攻撃の後にリアクティブアーマーが解除されていました。

今は再び展開されていますけど……」

━━やっぱりそうか……。

 先ほどから何度かこんな事があった。

何れも攻撃を長時間連続して当てた後の事であり、その度に少しずつ損傷を与えている。

「もしかしたら長時間はあのアーマーを展開できないのかもしれない。だとすると……」

 一つ策が出来た。

 だがこの策を使うにはこの場に居る全員の協力が必要だ。

「ロイド、ここは私たちに任せて! しっかり時間を稼いでみせるわ!」

 エリィの言葉に力強く頷くと駆け出す。

まずはもう一機の軽武神と戦っている天子たちと協力する。

そして彼女たちと協力できれば徳川の兵士たちとも連携が出来るはずだ。

 時間は無い。

 反撃の為に、今は仲間を信じて駆けるのみだ。

 

***

 

 敵に飛び込まれ両側から刀の刃

が迫って来るのを見ると天子は叫んだ。

「衣玖!!」

「はい!!」

 後方に居た衣玖が羽衣を伸ばし、此方の足首に巻き付ける。

そしてそのまま引っ張られると顔面から突っ伏した。

「へぶぅ!?」

 敵は攻撃を外したと認識すると倒れた此方の頭を踏みつぶそうと右足を大きく上げた。

「させません!!」

 衣玖は私の頭を踏みつぶさせまいと引き寄せる。

「あばばばばばばば!?」

 勢いよく引き摺られ色々と酷い思いをした。

それを見ていた後輩が「す、すげえ! これが先輩たちの連携!」と驚愕の表情を浮かべ、その横で忍者が「天子殿、大分扱いが酷くなってきたで御座るな」とかほざいているのでこれが終わったらシバく。

 とりあえず立ち上がり土埃の着いた服を手で払う。

 あのシールド、中々に厄介だ。

展開されるとほとんどの攻撃が無効化されダメージが与えられない。

━━対導力戦車用って言ったわよね?

 つまり戦車の砲撃に耐えられる強度があるという事だ。

そうなると戦車の砲撃以上、例えば航空艦の流体砲撃や浅間の狙撃級の破壊力があればリアクティブアーマーを貫けるかもしれない。

「……緋想の剣を浅間に預けっぱなしなのが痛いわね」

 緋想の剣があれば“全人類の緋想天”でこいつを吹き飛ばせたかもしれない。

 緋想の剣は確か今、浅間に封印されて曳馬の格納庫に保管されている筈だ。

━━封印解いたりしてたら間に合わないわね。

 じゃあとりあえず……。

「忍者、ありったけの爆砕術式抱えて特攻」

「酷い人権無視で御座るな!?」

 「え? 点蔵様に人権……いえ、何でもありません」と目を逸らした衣玖に絶句したので肩を叩き、「ドンマイ」と励ました。笑顔で。

「まあ冗談はさておき、どうしましょうかね?」

 何か一つでも突破口があればよいのだが……。

 そう思っているとロイドが此方に駆けつけて来た。

「あら? どうしたの?」

 敵を警戒しながらそう訊くとロイドは頷き、口を開いた。

「一つ、頼みがある」

 

***

 

 中央広場に落下した柱の前にはラッセル博士とその孫のティータ、そして護衛のメアリが居た。

さらのその周りには円陣を組んだ徳川の兵士たちがおり、先ほど何か天子から指示を受けたらしく陣形の変更を行っている。

 メアリはその様子を見ながら少し前に柱の外壁を外し、内部に入っていた機械に接続し操作を行っているラッセル博士に訊ねる。

「どうですか?」

「うーむ、接続はどうにか上手く行ったが予想通り大量のプロテクトが掛けられておる」

 彼はそう眉間に皺を寄せると表示枠の操作を行い、一部の操作は孫娘に任せる。

「それはこの柱の解除は無理という事でしょうか?」

「いや? できるぞ? わしを誰だと思っておる?

まあ、ちょーっと時間が掛かるかもしれんが……」

 ラッセル博士によるとこの柱のプロテクトには規則性が無く、取りあえず詰め込めるだ詰め込んだ感じになっているという。

 その為簡単に解除できるものもあれば、非常に難解な物も存在している。

「これを改造した奴は物凄く性格悪いのう!!」

「改造……ですか? 製造では無くて?」

 その質問に答えたのはティータだ。

 彼女は柱に触れると「技術が違いすぎるんです」と言う。

「この柱の材質、製造技術は私たちには理解不能レベルの物です。対してその内部に取り付けられた機械は私たちの技術よりも高度の物ですが、技術の延長線上にある物です」

「うむ。恐らくだがこの柱はわしらの知らぬ第三者の物。

それを<<結社>>が譲り受け、改造したのじゃろう。

柱はあらゆる障壁を無効化する杭、その内部にウィルスをばら撒く機械を入れたのじゃ。

だから、内部の機械を弄れれば状況を変えられるんじゃが……」

 だが時間がかかる。

 武蔵の通神では何か所かで敵を退け、限定的に有利になったと言うが敵に奪われた自動人形達が居る限り勝ちは見えない。

 そう考えていると兵士たちの間からエステル達がやってきた。

「エステルお姉ちゃん!!」

 エステルはティータに頷きを返し、表示枠を開くと何かのデータを見せた。

「これ! その柱の停止方法だって!!」

「なんと!? 一体どこでそんなものを?」

 ラッセル博士の驚愕にレンは「ふふ、ネゴシエーションよ」と笑いティータの横に立った。

「使う時は一応気を付けてね。罠かもしれないし」

 ラッセル博士は渡されたデータを「ふむふむ」と眺め、柱の方に向かった。

「これはプロテクトの一斉解除キーと機械の操作方法のデータじゃ。

これを使えば乗っ取られた自動人形達を解放できるかもしれん!」

 その言葉に皆は顔を見合わせ頷き、柱に向かった。

 

***

 

「あら、負けてしまいましたの?」

 建物の屋根の上で岡崎夢美とγが負けた事を知った。

更に見逃される代わりに“封龍柱”の停止キーを渡したとか……。

━━大失態ですわねー。

 まあ今更柱を止められたところで此方の計画に支障は無い。

万事順調。

 我々にとって大切なのは次の段階だ。

 恐らく“白の巫女”が事を成すと同時に奴らが動く。

その時もせいぜい関東連合や徳川には役に立ってもらおう。

「あら?」

 中央広場の方に視線を戻せば二機の軽武神と相対するように徳川の兵士たちが集結していた。

彼らは全員長銃や対導力戦車用の火器を構えており、その背後で先ほどまで軽武神と相対していた特務支援課たちが待機している。

━━……まさか。

 予感は的中した。

 徳川の兵士たちが一斉に射撃を開始し、二機の軽武神に弾幕を浴びせる。

 即座にリアクティブアーマーを展開し防ぐが徳川の兵士たちは射撃を止めない。

「見抜かれましたわね」

 軽武神もやられっぱなしではない。

 敵の攻撃を止めようと動き始めるが、弾幕の間を天人とその従者が抜け接近戦で足止めを行う。

━━あの弾幕の中を動けますの!?

 背後から常に銃弾が飛んできているというのに二人は冷静に軽武神の足止めを行っている。

弾幕の中で戦うのは彼女たちの得意分野か……。

 そうしている間に二機の軽武神異常が現れ始めた。

 少しずつ銃弾を防げなくなって来ており、装甲に銃弾が当たり弾ける音がここまで響いて聞こえる。

 これがあの二機の弱点だ。

 リアクティブアーマー展開には莫大なエネルギーが必要だ。

その為長時間の展開が出来ず回避不可能な攻撃を防ぐときだけに展開し温存、攻撃時には充電を行う。

だがこのように回避不可能な攻撃を長時間受け続ければリアクティブアーマーを展開し続けなければ行けなく、いつかはエネルギーが尽きる。

「仕方ありませんわね……」

 武器を構え、一歩前に出る。

 このままでは押し切られる。

その前にあの面倒な射撃部隊を片付け……。

「!!」

 身を屈めた。

 その動作の僅か後に頭上を何か巨大な物が通過し、風を切る音が響く。

━━いつの間に……!!

 背後に誰かが居る。

 身を屈めた状態で鎌の石突きを後ろへ突き出し、敵がそれを体を捻って避けたのを視認するとそのまま回転する。

 流体の刃を展開し、敵を切り裂こうとするが敵は跳躍を行って此方の頭上を飛び越えた。

━━この動き!!

 回転切りが避けられたことを理解するとそのまま前に駆け出し敵から距離を離す。

 その判断は正しかったらしく先ほどまで自分が居た場所を爪付きの鉄の篭手が空振った。

「“銀”!! リーシャ・マオですわね!!」

 相対するのは黒衣の人物。

顔には仮面を被り、素性を隠したリーシャが静かな闘気を身に纏わせ構えている。

「マリアベル・クロイス、相手をしてもらうぞ」

━━厄介な……!!

 伝説の暗殺者“銀”。

それを相手にして他の事などしていられない。

━━ある程度交戦したらさっさと撤退した方がいいですわね……。

 あの二機の軽武神も暫くの間は時間を稼いでくれる筈だ。

 そう判断すると内心を隠すように余裕の笑みを浮かべ、鎌を構えた。

「ええ、遊んであげますわ━━━━望み通りに、ね!!」

 踏み込み鎌を振るうとリーシャも大剣を振るう。

両者の武器が激突し、戦闘が開始された。

 

***

 

━━リーシャ!?

 向う側の屋根の上でマリアベルと交戦を開始したリーシャに思わず目を丸くした。

「はは、結局揃っちまったな」

 そう笑うランディに釣られて皆も笑う。

救援に駆けつけて来てくれたリーシャに内心で感謝しながら前方を見る。

 前方では徳川の兵士たちが射撃を続けており、そのさらに前では天子たちが軽武神の足止めを行っている。

「いいか!! 絶対に貧乳様に当てるんじゃねーぞ!!」

「大丈夫です!! 当てませんし、面積狭いんで当たりません!!」

「衣玖さん! 避けるたびに胸が揺れて、俺はぁ、俺はぁ!?」

「小隊長!! 隣の奴が鼻血出して倒れました!!」

 なんだか賑やかな徳川の兵士たちにエリィが苦笑を浮かべて「なに、これ?」と言う。

更にその横でティオが「成程……面積が狭ければそれだけ戦闘で有利……。いや、でもそうなるとあの永江衣玖という人が避けれているのは……」と思案顔で何やら呟いていた。

━━き、緊張感ないなあ。

 このような状況でもふざけたり冗談を言えたりするのは互いを信頼しているからだろうか?

「さて、そろそろだと思うから準備しておくか」

 ランディの言葉に皆頷き、それぞれの武器の点検を行う。

そうしている内に天子が敵の懐に飛び込み、斬撃を叩き込んだ。

 

***

 

「入った!!」

 敵の腰関節に深く、確かな手ごたえを感じた。

 敵のリアクティブアーマーが完全に消失したと判断すると振り返り叫ぶ。

「交代!! 後輩、あんたの出番よ……う、うおおおおおおおおおおおおう!?」

 そう言った瞬間に衣玖が羽衣を此方の胴に巻き付け引き寄せる。

急激に引き寄せらた体は宙に浮き、円弧を描きながら上昇していく。

 上空から地上の様子を見てみれば忍者が攪乱の為に突撃し、それに紅い軽武神が気を取られた隙に金のハンマーを持った後輩が飛びかかる。

 彼は空中でハンマーを振り上げ、「ハンターチャンス!!」と叫び、敵の頭部を叩き潰す。

 その隣でも銀髪巨乳と青髪貧乳の援護を受けた警察官と赤毛が蒼の軽武神の懐に飛び込み、まず赤毛が敵の足を薙ぎ、バランスを崩した敵の腰に警察官が連続して打撃を叩き込んだ。

そして数十発目で敵の関節が砕け、くの字に折れ曲がって倒れた。

━━勝った!!

 あのへんてこなアーマーさえ無ければこんなものんよ!

 そう思っていると最高高度に到達する。

 さて。

 さて、最高高度に到達したのなら次に起きることは落下だ。

 地上では敵が倒れた事に気を取られた衣玖。

私の事を完全に忘れているその他。

つまりどうなるかというと……。

━━あ、落下ね。これきっと痛いわ!!

 緩やかに落下が始まる。

 未だに誰も気が付いていない。

 どうやっても落下は免れないだろう。

 よし、諦めよう。

こうやって、目を瞑って、出来るだけ衝撃を吸収できるように身を丸めれば……。

「ぎゃん!?」

 激突した。

 

***

 

・魚雷娘:『……………………あ』

・ホラ子:『衣玖様、実は天子様の事を亡き者にしたいんじゃ……』

・魚雷娘:『い、いえ!? 今のは……事故です!! 武蔵ではよくある事です!!』

・ウキー:『微妙に言い返せないのがアレであるな』

・未熟者:『それにしても見事なハンマー軌道だったね……』

・副会長:『なんだ、お前生きていたのか』

・未熟者:『生きてるよ!! 勝手に死んだことにするなよ!! 今回影薄かったけど!!』

・煙草女:『ハンマーで思い出したけどアデーレはどうしたんさね』

・● 画:『アデーレなら回収したわよ。結構怪我してるけど命に別状はないわ』

・俺  :『今回、武蔵の中じゃアデーレと浅間はMVPだからな。あとで何か褒めたり、称えたり、祀ったりしないとな!!』

・賢姉様:『武蔵貧乳神と巨乳神の誕生ね!! 二人並べて乳比べしている像にしましょう!!』

・あさま:『いやいやいや!? 何言ってるんですか!! そんなことしたら貧乳像の方に負荷か掛かって壊れやすくなりますよ!?』

・約全員:『そっちかよ!!』

・不退転:『というか、誰もあの天人の事心配しないのね』

・約全員:『…………あ!!』

 

***

 

「向うは終わったようだな」

 広場の戦いは終結した。

 その事に眼前の敵は「そのようですわね」と首を横に振り、苦笑する。

 あとはこの敵を倒すだけだ。

━━ロイドさんたちも合流すれば……。

 <<結社>>の幹部を倒し、捕縛できれば敵の企みを暴けるかもしれない。

 そう思っていると敵の表情が苦笑から冷たい笑みに変わった。

「でも、勝った時にこそ気を引き締めなければいけませんわよ?」

「どういう……」

━━まさか、何か奥の手が!?

 一瞬中央広場に気を取られた瞬間にマリアベルがマントの裏から閃光弾が落ちる。

「!!」

「御機嫌よう。エリィにもそう伝えてくださいな」

 辺りを閃光が覆い、目を閉じてやり過ごす。

そして次に目蓋を開けた時にはマリアベルの姿は無かった。

━━逃がした!! いや、それよりも……!!

「いけない!! 皆さん! 気を付けてください!!」

 

***

 

 二機の軽武神が機能を停止したのを確認すると柳生・宗矩はほっと息を吐いた。

 これで中央広場の敵を退けた。

今回の戦い、自分にとっては実りの多いものであった。

 前線で戦う先輩たちの戦いを見れ、改めて自分の未熟を知る。

 向うではなんか墜落した先輩を皆で介抱しており、此方に気が付いた衣玖が此方に笑みを浮かべて手を振って来る。

「!!」

 慌てて視線を逸らし、頬を掻くとそちらに向かい始めた。

 まあ、なんだ。

今度はもう少し恰好の良い所を見せよう。

そう思いながら歩いていると背後で破砕音が響いた。

「え?」

 宙に舞う二機の軽武神の装甲。

 軽武神の中から現れる二体の自動人形。

━━中に居やがったのか!?

 二体の敵は一直線に此方に向かってくる。

 急ぎ振り返るが間に合わない。

 敵の手には短刀が握られており、此方の胸を突き刺そうとしている。

 避けれない。

 そう判断した瞬間に背後から飛び出した姿があった。

 忍者だ。

彼は「させぬで御座る!」と叫ぶと手に持っている短刀を敵の一体に投げつけ首を砕く。

だがその隙にもう一体にタックルを喰らい、馬乗りにされた。

 

***

 

「点蔵様!!」

 点蔵が押し倒され、敵の凶刃が振り上げられる。

 最愛の人が死ぬ。

「駄目です!!」

 その光景に鼓動が跳ね上がると考えるよりも先に王賜剣一型を振っていた。

 

***

 

敵に馬乗りされる忍者。

それを見て王賜剣一型を振るメアリ。

その様子に危険を感じると天子は起き上がるのを止めて地面に伏した。

「みんな!! 伏せなさい!!」

全員が一斉に伏せた瞬間、頭上を巨大な流体の刃が通過した。

刃は轟音と共に全ての物を薙ぎ払い、一瞬で消える。

慎重に起き上がった先、見えたのは上半身が消失した自動人形と更地となった前方の区画であった。

「こ、これが王賜剣一型の威力!?」

話には聞いていたが滅茶苦茶だ。

というかこれ……どうすんの?

 

***

 

・○べ屋:『ナイスよ! メアリ!! あんたのお蔭で邪魔な店を更地に出来たわ!!

よし! 今から強引に土地を買い占めるぞー!!』

・約全員:『開口一番最低だな! お前!!』

・煙草女:『というか小田原に一番被害与えたの、メアリさね』

・あさま:『だ、大丈夫です! そっちの方の民間人と友軍は全員避難し終えているのでボッと消えたのは居住区と敵軍だけです!!

いやあ、良かったですねえ!!』

・ホラ子:『などと言っておりますが北条から絶賛苦情が来てます。家康様に』

・蜻蛉切:『ふむ? メアリ殿の王賜剣一型は確か燃料切れだったのでは御座らんか?』

・あさま:『えっと、多分ですけどメアリが点蔵君助けようと必死になった結果、自身の内燃排気を変換して使用したんだと思います。これ、名づけるとしたら……』

・賢姉様:『TS2H(点蔵様スキスキホームラン)よぉーーーー!! 愛のパゥワァーね!!』

 

***

 

「お爺ちゃん……町が!!」

 真顔で前方の惨状を指さす孫娘から視線を逸らす。

「ワシ、知らんしー。見てないしー」

━━というか、なんという火力じゃ!!

 個人携帯可能な兵器でこの火力!!

 流石は神格武装と言った所か……。

 まあ、町の事は偉い奴に任せる。

 エステル達が手に入れた解除キーのお蔭でプロテクトは全て解除できた。

後は停止信号を送るだけなのだが、そのキーを押さないでいた。

「やはりのぅ……」

「え、どうしたの?」と訊いてくるエステルに幾つも開いていた表示枠のうちの一つを見せる。

「素直に解除キーを教えたのがどうにも引っ掛かってな、ちょいと調べてみたんだが案の定罠だ」

「罠?」と眉を顰める孫娘に頷くと腕を組む。

「ハッキングを停止した瞬間にある命令が発動するようになっておる。それは汚染された全自動人形の自壊命令じゃ。

そんな事をしたら“今”は何とかなっても後々大変な事になるじゃろうな」

 関東連合が主力としている自動人形を失えば戦力を大幅に低下させ、小田原の守りが手薄になる事になる。

 そうなれば間違いなく隣国が動くだろう。

「じゃあ、どうするんですか?」

「少し時間が掛かるが、まずはこのプログラムを止める。なに、プロテクトを外すよりも楽じゃよ。

それで、もう一つ変な事があってな……」

 そう言うと別の表示枠を見せる。

「小田原と外部の通神が遮断された後、一つだけ送られ続けている救援通神がある」

「え!? それっておかしくない!? <<結社>>は小田原を孤立させたかったんでしょう!?」

 エステルの言葉通りだ。

 <<結社>>は小田原を攻撃するために増援を断ち、自動人形を奪った。

それなのに救援通神が送られているとなると……。

「……博士、通神の送信先は?」

 険しい表情をしているヨシュアに頷く。

「━━上野国、博麗神社だ」

 

***

 

「霊夢様! 第一陣は間もなく小田原に到着、第二陣も三十分後に到着します!

第三陣は先ほど出陣しました!!」

 女性陰陽術師からの伝令を受けた霊夢は「分かったわ」と頷き、表示枠を見る。

 表示枠には小田原からの救援通神が映されており、先ほどからずっと同じ文が流れている。

 今博麗神社で慌ただしく動いている陰陽術師や巫女たちはもともと先代の部下であるが彼女が不在のため臨時で自分が指揮を執っている。

━━面倒ね……!!

 人に指示するのは苦手だ。

 面倒なことは全て先代に任せていたため救援通神を受けてから部隊を派遣まで時間が掛かった。

 長野家にも連絡をしており、彼らの艦隊が少し前に出航した。

「でも変ね……」

 小田原外の他の部隊とも連絡を取り合ったところ救援通神が送られてきたのはうちだけだ。

 しかもこの通神、一方的なもので此方から通神することが出来ない。

━━冷静に考えてみると怪しすぎるわ……。<<結社>>の目的は何?

 博麗神社だけに送られた通神。

 救援の為、部隊を派遣する神社。

そしてそれはつまりここの守りが手薄になるという事であり……。

「……そうか!! まずい! まんまと嵌められたわ!! 直ぐに第三陣を戻して!!

敵の狙いは最初から博麗神社(ここ)よ!!」

 そう指示を出した瞬間、頭上から拍手が響いた。

「あはは、思ったよりも頭の回転が早いね! お姉さん!」

 道化師だ。

 緑の髪に赤のスーツを身に纏った少年が浮かんでいた。

「あんたは……!!」

「ふふ、お久しぶりだね。去年の夏以来だっけ?」

「………………誰だっけ!?」

 空中でずっこけた道化師を見て真剣に悩む。

 いや、待て、<<結社>>の人間だという事は分かる。

“問題は面識あったっけ?”という事であり……。

「まあ、どうでもいいわ!! 重要なのはあんたが敵ってことで、ここで潰すってこと!!」

 そう言うと同時に陰陽術師たちが敵を取り囲む。

「一人でのこのこと来るなんていい度胸ね!!」

「はは、怖いなあ。怖いからちょっとズルしちゃおう」

 道化師が手を掲げ、それに合わせて全員が身構える。

「これはちょっと、シャレにならないかな?」

 道化師が指を鳴らした瞬間、世界が割れた。

 青空がガラスのように砕け、割れ目から歪んだ空間が見える。

そしてそこから巨大なものが現れた。

 杭だ。

 白い杭。

 大地を貫く、巨大な杭が現れ一直線に落下してきた。

「全員! 散開!!」

 指示と同時にその場にいた全員が散開する。

 杭は大地に突き刺さり、境内を衝撃波と共に境内を砕いた。

だがそれだけでは終わらない。

 杭が突き刺さった所を中心に白色が広がり始めた。

━━なんなの!?

「ひ、ひぃ!?」

 柱の近くにいた巫女の足が広がる白に触れた瞬間、彼女の足が白色に変化していった。

 つま先から膝へ。

膝から腰へ白色は伸びていき、恐怖の表情を浮かべていた彼女はそのまま石のように固まってしまった。

━━石化!?

 いや、違う!!

 この色、この雰囲気……これは……。

「塩!? いけない!! 逃げなさい!!」

 だが遅かった。

 塩は境内に一瞬で広がり、その場に居たものが次々と飲み込まれていく。

 塩になってしまった人々は砕け、風に乗って散っていく。

━━こんな事が……!?

 一瞬で神社が壊滅した。

 自分も避けきれず膝までが塩化を初めており、もう助かるまい。

 だが妙な違和感を感じた。

 人間は塩化した瞬間に砕けているというのに地面や建物は白色になっただけだ。

あの攻撃が広範囲を塩に変えるものなら地面や建物も砂のように崩れ落ちなければいけない。

「そ、そうか!! これは……!!」

 即座に印を組み、目を閉じると膝から下に感覚が戻る。

 そして目を開けると元の光景が戻っていた。

 境内には杭は刺さっておらず、自分の足も、他の人々も無事だ。

だが誰もが恐怖に震えており、何人かは気絶してしまっている。

幻術、それも最高位の物だ。

「凄いね!! お姉さん!! あれを喰らって無事でいられるなんて!!」

 拍手をする道化師を一度見て、それから足元で気を失っている巫女見る。

命に別状は無いみたいだが、腹の底から湧き上がってくるものがある。

「……あんた、覚悟できてるんでしょうね?」

「おや、怒ったかい? だったら少し相手を……」

「カンパネルラ」

 静かな声だ。

 整い過ぎて違和感すら感じる声であった

「おやおや、巫女殿。何か御用かな?」

「貴方には貴方の仕事があるでしょう」

 境内の階段を上って少女が現れた。

 白だ。

 髪から服装まで白の少女だ。

━━こいつ……何よ……?

 異常だ。

 何が異常なのかそれすら分からないぐらい異常な存在が居た。

こいつは生きているのか?

いや、そもそも生物なのか?

 本能が危険を察知し、思わず鳥肌が立つ。

 紅き六つの目を持つ仮面の少女は此方の全てを見透かすように見る。

「邪魔者の排除は私がやりましょう」

 そう静かに頷いた瞬間、両側に刃を付けた槍を取り出し踏み込んできた。

 




<<結社>>の真の目的が判明! 次回はアリアンロードと先代たちの戦い!!
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