緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第三十九章・『崩落の地』 これからが本番だ (配点:激戦区)~

 

/////////////

 

私たちが己の自我を持ち、はっきりと言葉を話せるようになると大人たちから“責務”について教わった。

 大人たちは口を揃えて言う。

 

 我らは選ばれ者。

 

 我らは大樹の守護者。

 

 我らは世界を管理し、安定させるもの。

 

 私たちは特別だった。

世界で初めて生まれた双子。

 他の大人たちを遥かに超えるであろう力を持った子供たち。

 故にその力を世界の為に使い、尽力しなくてはならない。

 その話を“黒”は退屈そうに聞いていた。

彼女は自分に課された責務と期待を嫌がり、大人たち対して反発していた。

 だけど私は嬉しかった。

 世界の安寧という大事に関われ、期待されている。

その事に嬉しさを感じ、その重大さに身を引き締めた。

 

 そして私たちが母から“頂”の名を貰ったその日、私は妹に関する深刻な問題を知った。

 

 今思えばそれが終わりの始まりだったのかもしれない。

 

4

 

/////////////

 

 空が光った。

 紅い明かりと共に大気が振動し、黒煙を身に纏った巨大な物体が地上に落ちる。

 航空艦だ。

 艦の中央を抉られた航空艦が砕けながら大地に激突する。

 富士の上空は激戦区と化していた。

 空を埋め尽くす怪魔の群れ、それを激激する関東連合の艦隊、そしてそこに介入し攪乱を行う<<結社>>の飛空艇。

富士一帯では三つ巴の戦闘が展開されておりありとあらゆる場所から戦闘の音が生じている。

 怪魔の襲撃を受けた富士の防衛隊は奮戦したものの圧倒的な戦力差を前に後退を余儀なくされ、関東連合の艦隊は崩落富士の南側に展開している。

また地上部隊は最初の襲撃で分断され、既にいくつかの駐屯所は陥落している状況だ。

そんな崩落富士の近くで<<結社>>の飛空艇が次々と降下を行っていた。

一隻の飛空艇が着地をするとアリアンロードとその部下たちが甲板から地面に降りる。

飛空艇の降下地点には多くの強化猟兵達が斃れており、戦闘人形の残骸も各所に散らばっている。

負傷者は降下してきた飛空艇に運ばれ<<方舟>>に送られることになっている。

 そんな様子を見ていると強化猟兵の一人が眼前で跪いた。

「LZ(ランディングゾーン)は無事確保!!

しかしLZの確保部隊の被害は深刻です!!」

「よく務めを果たしました。

無事な者は後続部隊と共にこの地を死守。

先遣隊はどうなりました?」

「遺跡の入り口確保に向かった部隊との通神は途絶。恐らくは……」

 怪魔の勢いは凄まじい。

さらにあれがいる。

 上空を見上げると目に入る巨大な影。

 あのようなものが来ているなら“彼女”も来ているのだろう。

━━場合によっては鱗とここで決着を着ける可能性もありますね。

「私とエンネアは此処を死守します。アイネスは部隊を率い遺跡入口までの進軍路を確保。

そしてデュバリィ、貴女は巫女殿の護衛として共に遺跡深部に向かいなさい」

「「了解!!」」

 鉄機隊が動き始めるのと同時にLZの東側で動きがあった。

 ドラゴン型の怪魔を先頭とした大規模な軍団が迫ってきているのだ。

 武器を構える部下たちの戦闘に立つと槍を掲げる。

「総員、構えなさい!! これより我らは死地に入ります!!」

 その宣言から数秒後、<<結社>>の部隊と怪魔の群れが激突した。

 

***

 

「なによ……あれ……」

 曳馬の甲板から見える光景に誰もが言葉を失っていた。

 富士一帯の空には埋め尽くすような怪魔の群れ、それと交戦する<<結社>>の部隊、そしてそれらを抑え込もうとする関東連合の艦隊。

そんな中でもそれは異常であった。

 龍だ。

 半分に崩落した富士に巻き付くように滞空している大龍。

白い皮膚に結晶状の翼を幾つも体から生やした龍は辺りを威圧するかのように存在している。

『全長約9000m、敵をリヴァイアサン型怪魔と命名します』

「怪魔というのは異常な存在だと理解して御座ったが、あれは此方の想像を遥かに超える出鱈目っぷりで御座るな」

 二代の言葉に誰もが頷いた。

 武蔵に匹敵、いやそれ以上の体躯を持つ怪魔など今まで見たことがない。

 そう天子が思っていると表示枠が開き、北条綱成が映る。

『現地の報告では結界崩壊後にまず小型の怪魔が現れ、その後あの巨大な怪魔が現れたらしい。

そしてさらに驚愕なのがあの怪魔の内部から小型の怪魔が出現してるらしい』

「内部って……」

 エステルが驚愕するのはもっともだ。

あの馬鹿デカい怪魔の体内から更に別の怪魔が現れているというのだ。

「奴らの空母……みたいなものかしらね?」

 アリスはそう言うと綱成の方を見る。

「あの弩級怪魔は攻撃してこないのかしら?」

『突如現れた後、一直線に崩落富士に向かい此方の艦隊の一部と<<結社>>の飛空艇を引き潰して行ったらしい。

その後はあのまま沈黙だ。

既に防衛隊が砲撃を行ったが例の空間歪曲で逸らされたとの事だ』

 クラーケン型怪魔が所有する空間歪曲能力はあのリヴァイアサン型にも備わっているようだ。

「色々と驚くことが起きているがまずは状況の把握をしよう」

 そうネシンバラは言うと皆の注目を集める。

「まず現在の戦況だ。

この三つ巴の戦いで最も有利なのが怪魔だ。

奴らは圧倒的な数で関東連合と<<結社>>を襲い、特に防衛隊には深刻な被害が出ている」

 彼は崩落富士の地図を出すと地図は三色に分けられていた。

 一つ目は崩落富士を中心に北部と中央に広がる黄色。

 二つ目は東部側から崩落富士の麓に向かって勢力を伸ばしている赤色。

そして最後は南部周辺と富士の各所に存在している青色だ。

「敵の総数は三万以上、現在も増えているという。

間もなく援軍が到着するがそれでやっと互角と言った所だろうが僕たちにそれを待っている猶予はない。

やはり当初のプラン通り敵陣を突破して遺跡に向かうべきだろう」

「例の空間歪曲はどうする気? 敵陣を突破するにはクラーケン型を倒さなきゃいけないのよ?」

 そうナルゼが訊くと曳馬が答えた。

『その事に関して一つ案があります』

 その言葉に全員は顔を見合わせるのであった。

 

***

 

 曳馬と関東連合の艦隊が防衛隊の艦隊と合流すると横一列に広がり始めた。

 中型の艦を前衛に大型の艦はその後方に配置し最後列には機鳳空母、そして艦と艦の間には小型の艦が配置される。

艦隊の中央には旗艦である玉縄が存在しており、その直ぐ後方に曳馬が待機している。

 対して怪魔の群れは艦隊の前方に集結しておりクラーケン型怪魔を前面に出していた。

━━陣形を理解しておる。やはり指導者がいるか……。

 怪魔が陣形を組む事は殆どない。

だがこの怪魔どもは此方に対する備えをしており反撃に出る機会を窺っているように見える。

「全艦、砲撃の準備が完了しました」

 部下の報告に頷くと手を掲げる。

「全艦、一斉砲撃!!」

 手を振り下ろし号令を掛けるのと同時に艦隊が一斉砲撃を放った。

 百を超える流体の光が空を切り裂き、敵に迫る。

だが砲撃は敵の眼前まで迫ると逸れ、所々で逸れた砲撃同士が激突し爆発と共に流体の光が飛び散る。

━━やはり通用せんか……。

「敵ワイバーン型及び、ドラゴンフライ型接近!! 数、三千!!」

「機鳳隊出撃!! 対空機銃、敵を近づけるな!!」

 待機していた機鳳隊が出撃し怪魔の迎撃を開始し、更に対空砲火によって接近を阻む。

 だがその直後、艦隊の前方から数百の流体砲撃が放たれる。

 即座に障壁を展開するが数隻の小型艦が障壁を貫かれ、直撃を受けた。

 その光景に眉を顰めていると“曳馬”からの通神が入った。

『綱成様、計測の結果やはり敵は体表より100メートルの地点で空間歪曲を引き起こしております。

ですが全ての個体が空間歪曲を引き起こしている訳ではなく、最前列にいる大型のクラーケン型のみがこの事象を発生させています』

「測定班! 大型クラーケンの数は!」

「およそ百体! 通常型はその後方で三百体以上を確認しています!!」

━━やれなくはないか……。

 大型さえ倒せれば互角の戦いに持ち込める。

「機鳳隊は敵大型クラーケンに対して近接戦闘を挑め!!」

「……艦隊の護衛が出来なくなりますが?」

「あの大型クラーケンを倒せなければ敵に損害を与える事すら出来ん!!

伊達家の武神隊にも救援要請を出せ!!」

 それから“曳馬”の方を見る。

「敵の一部に穴を開ける。そこからは貴艦に任せる」

『御武運を』と閉じられる表示枠に向かって「そちらも」と言うと前方、艦橋越しに敵群を睨み付ける。

「関東連合の戦い方! 見せつけてくれよう!!」

 

***

 

 指示を受けた機鳳隊は中央に集結し突撃を開始した。

 五機一組、それが十二組で編隊飛行を行う。

 機鳳隊が突撃を行うため怪魔の群れが艦隊に群がるのを見て一人が悔しそうに声を上げる。

『奴ら、艦隊に好き勝手群がりやがって!!』

『気を取られるな!! 俺たちの任務は敵に穴を開ける事だ!!』

 『『Tes!!』』と一斉に声を出すと前方で小型怪魔が集結していた。

集結している怪魔は数え切れず、まるで雲の塊のようになっている。

『おいおい、あの中に突っ込むのかよ?』

『良かったなぁ!! あんだけいればどんな下手な弾でも当たるぞ!!』

『うるせー!! ありゃいつもわざと外しているんだよ!!』

『さて、行くぞ!!』

『『Tes!!』』

 機鳳隊が一斉に光臨弾を放ち、怪魔の群れを穿つと敵も突撃を開始した。

 敵の先頭に居るのが蜻蛉状の体に巨大な鎌腕と槍のように尖らせた頭部を持つドラゴンフライ型であり、彼らは攻撃の直撃を受け融解しながらもその突撃の速度を更に速める。

『散開!!』

 隊長機の指示と共に機鳳隊が左右に分かれ、敵を中央に通す形になるが群れの側面から飛び出してくる物が居た。

 ワイバーン型だ。

 蛇状の胴から生えた大きな翼を羽ばたかせ左右に分かれた機鳳隊を襲撃する。

 それに対しても機鳳隊は機体を傾けたり、減速や加速を行うなどして回避を行うが数機が捉えられる。

 機鳳の上部に飛びついたワイバーン型は足に装備されている巨大な鉤爪で装甲を砕き、抉ってゆく。

 それでも諦めず何機かは敵を振り落したが三機が胴を貫かれるのと同時に自爆した。

『…………くそ!!』

 無傷で突破できるとは思っていなかったが目の前で戦友が戦死するのを見ると怒りが湧き上がってくる。

『その怒りを敵にぶつけてやれ。それが俺たちの使命だ』

 一人の言葉に全員が沈黙で肯定を返す。

 敵の群れを突破し、前方に大型クラーケンが迫っていた。

 クラーケンの体表にある無数の瞳が機鳳隊を捉えると、瞳から流体の砲撃が放たれる。

再び散開し砲撃を抜けるが四機が直撃を受け爆散した。

『全機!! 攻撃開始!!』

 隊長機の指示と共に機鳳隊が前方に居た四匹の大型クラーケンに襲い掛かる。

 敵の体表に光臨弾を次々と当て、融解させていくが敵を倒すには至らない。

━━やはり一度の攻撃では無理か!!

 相手は戦艦サイズの怪魔だ。

 機鳳の攻撃では直ぐに倒せない。

『全機、旋回!! 第二次攻撃を……』

『それには及ばん。此方に任せてもらう!』

 男の通神と共に前線に飛び込む幾つもの姿があった。

蒼の鋼を持つ巨大武者。

六機の武神が敵に襲い掛かかるのを見た。

『伊達家の武神隊か!!』

 

***

 

 鬼庭・綱元は視覚素子越しにクラーケン型の瞳が此方を捉えたのを確認した。

 いくつもの流体が放たれるが避けるのは一つ、自分に直撃する物だけでいい。

 敵の体表に向かって突撃をしながら体を逸らすと眼前を流体砲撃に通過させる。

敵の攻撃を流した。ならば次は此方の番だ。

 槍を構え突き出すと先ほど機鳳隊が光臨弾を当てた傷口を抉る。

 そして大きな穴を作ると左手で腰に装着していた長銃を取り外し、敵の傷口に突っ込んだ。

『内から崩れろ!!』

 引き金を引き、連射を行うと怪魔が苦悶の咆哮を上げる。

 他の箇所でも敵に張り付いた部下たちが体内に弾丸を叩き込んでおり、ちょうど球切れを起こすのと同時にクラーケンが落下を始めた。

 傷口から銃を引き抜き、体表を蹴ると離脱する。

 死亡したクラーケンは流体に分解されながら落下して行き、大地に激突した。

他の三匹も同様に落下を開始し、消滅していくのを見届けると振り返る。

『狐よ! 穴は開けたぞ!!』

『では抉ってやろうかえ?』

 砲撃が来た。

 遥か後方、関東連合艦隊の後方に待機してた山形城から砲撃が放たれ大型クラーケンの背後に隠れていた通常型のクラーケンを貫いていく。

 それに続き艦隊による集中砲撃が始まると十を超えるクラーケンが砲撃の雨の中に消えていった。

 戦場に巨大な穴が出来るのと同時に艦隊から一隻の航空艦が飛び出す。

 曳馬だ。

 葵色の特務艦は一直線に穴に飛び込み此方の横を通過していく。

そのまま敵陣を突破し遠くなっていく艦影に一瞥すると綱元は槍を構える。

『希望は通した!! 我々はここで敵を食い止めるぞ!!』

 『『Tes!!』』と部下たちが答えるのと同時に伊達の武神隊は関東連合の機鳳隊共に他のクラーケンへの攻撃を開始した。

 

***

 

 曳馬が敵陣を突破し機鳳隊と武神隊が敵の航空戦力を削ぎ始めると多くの輸送艦が着地を開始した。

 輸送艦からは関東連合の兵士と自動人形たちが現れ、即座に陣形を組み始める。

 その先頭に立っていたのが先代だ。

「まずは最寄りの拠点に向かう!!

そこを司令部として各拠点の援護、奪取を行うぞ!!」

 部下にそう指示を出すと一人の兵士が彼女に駆け寄る。

「……どうやら遺跡前は全滅。中央もほぼ陥落した模様です」

「中央で残っているのは?」

「遺跡への中継基地です。あそこは他の拠点に比べて設備が整っていたため持ち堪えたようです。

中継基地では援軍が到着し、今も奮戦しています」

 「援軍?」と首を傾げると兵士は頷く。

「遊撃士が居るそうです」

 「なるほど」と頷く。

 確か小田原に派遣される予定だった遊撃士が先行していたはずだ。

彼らが敵を突破して中継基地に辿り着いたのだろう。

 彼らは怪魔との戦いに関してプロフェッショナルだ。

━━なら暫くは大丈夫でしょう……なんて言ってられないわね。

 崩落富士上空に存在しているリヴァイアサン型怪魔、東部にいる<<結社>>の戦力。

どれも未知数で非常に脅威的だ。

「事は一刻を争うわ! 全軍、迅速に動く事!!

━━━━奴らを叩きのめすわよ!!」

 先代の号令と共に鬨の声が上がり、関東連合の地上軍が前進を開始した。

 

***

 

 敵陣を突破した曳馬は一直線に遺跡入口へ向かっていた。

 艦の後方には三人の魔女が随行し、甲板には射撃戦が可能な人員が配備されている。

甲板の中心にいたのが足元に魔方陣を展開したパチュリー・ノーレッジと巨大な鉄の砲を持ったティオ・プラトーだ。

「あと、何分くらいかしら?」

 左舷側に居たエリィの言葉に携行型の大砲を担いだティータが答える。

「この速度なら十分ほどでたどり着けると思いますが……」

 警報が鳴り響く。

それに“十字砲火”を両側に浮かべた誾が“やれやれ”といった風に首を横に振る。

「まあ何かしら問題は起きると思っていました」

『“曳馬”より皆様へ。本艦右舷上方、雲の中より多数の敵が出現。

クラーケン型1、ワイバーン型300、ドラゴンフライ型200と判断します。

更に後方から反転した一部の怪魔が接近。

そちらはドラゴンフライ型60です』

『あー、此方魔女隊。後ろのはこっちで対処するね!!

そっちはよろしく!!』

 三人の魔女が反転すると後方から迫る敵群に切り込む。

 それと共に右舷側の雲の中から敵の大群が降下してきていた。

「やれやれ、多いね。これは普通に相手をしていたら骨が折れそうだ」

 そうオリビエが茶化すとパチュリーが口元に笑みを浮かべる。

「その為の私でしょう?」

 パチュリーは敵の方を向き、手を上げる。

「今のうちに言っておくけど、貴方たち目を瞑っておきなさい。

失明しても責任取らないわよ?」

 「え?」と一部を除いて皆が首を傾げた瞬間に詠唱を始める。

 既に発動させる為の術式は組み、展開してある。

あとはその発動キーを詠み、その名を呼べば発動する。

「本物の魔法というのを教えてあげる。

燃え尽きろ!!

日符『ロイヤルフレア』!!」

 

***

 

 まず敵の中心に巨大な魔方陣が展開された。

 紅く輝く魔方陣は敵の群れを呑みこむように広がると障壁を展開する。

この障壁は敵を逃さないようにするためのものでは無い。

 これから起きる事象の被害を最低限に抑えるためだ。

 外側の魔方陣が固定されるのと同時に再び中心で小さな魔方陣が浮かび上がった。

そしてそれから数秒して光が生じる。

 小さな、だが凄まじい光は一気に拡大し敵を飲み込む。

 その直後爆発音と衝撃、そして凄まじい熱が発生する。

 赤が広がった。

 あらゆるものを焼き尽くし、溶かす熱の塊。

 巨大な太陽が召喚されていた。

 

***

 

━━最高位の精霊魔法!?

 熱風を肌に受けながらティオが眼前の光景に驚愕した。

 魔術による擬似太陽。

そんなものを媒介なしにこの魔女は発動させたのだ。

「呆けてない! 来るわよ!!」

 大量の汗を額に浮かべた魔女の言葉にはっとし空を見れば太陽の熱を逃れた一部の敵が迫っていた。

 それに対して魔術砲を向けると構える。

「エーテルバスター、チャージ完了!! 行きます!!」

 砲撃を放った。

 迫る敵群の先頭に流体の砲撃を当て、焼き払う。

そのまま砲を動かし、先頭から最後尾まで薙ぎ払うと太陽から逃げ延びた敵の大半が消滅した。

 残りの、100にも満たない敵を甲板にいる仲間が迎撃し次々撃ち落とし始める。

 そして最後の一匹を船首に居た浅間神社の巫女が打ち抜くとパチュリーが尻餅をつく。

「だ、大丈夫ですか!?」

 慌てて駆けよれば彼女は酷く疲労した様子で笑みを浮かべる。

「ええ、この程度で倒れはしないわ。

……まあ、当分大技は無理でしょうけど」

「念のため検査をします」

 浅間神社の巫女がそういうと「大袈裟ね。でも頼むわ」とパチュリーが頷く。

 それにしても今のは凄かった。

「魔女というのは貧弱な種族だけど、事前に入念な準備をして要塞化すれば遥かに格上の敵に対しても戦えるわ」

 いつの間にかに横に立っていたアリスが言葉を続ける。

「パチュリー・ノーレッジは精霊魔法のプロフェッショナル。

精霊たちの力を借りて術式を展開しておけば大規模な魔法を瞬時に使えるわ。

ただ己の内燃排気を大量に消費するのと、彼女自身がもともと病弱なことがあるからそうそう使えるものでは無いけれど」

「アリスさんも……同じようなことを可能なんですか?」

「私は……」と言葉に詰まるとアリスは少し困ったような笑みを浮かべる。

「罠を張るのは得意よ。でも、そうね。今の私には彼女のような戦術レベルの魔法は使用できないわ」

 “今の私”と言う所が引っ掛かったが本人が話したくなさそうなので聞かないことにする。

「兎も角、これで一難去り……」

『“曳馬”より皆様へ!! 敵、リヴァイアサン型に反応あり!!

大規模な空間歪曲を探知しました!!』

 

***

 

 大龍が動いた。

 項垂れていた巨大な頭部を上げ、六つの赤く光る眼で迫る葵色の船を捉える。

「…………」

 大気を振動させる低い吐息と共に巨大な咢を開く。

 喉の骨格が変形し、直線状になると口から飛び出した。

まるで巨大な大砲のような喉骨から六つの魔方陣のようなものが浮かび上がると広がり、展開を始める。

 漆黒の魔方陣が六重に展開され、空に巨大な壁のように出来上がると喉骨前の空間が歪んだ。

 空が歪み、溶け、暗黒に変化する。

 そして一際大きな咆哮と共に歪みが放たれた。

 

 富士の青空を漆黒の闇が切り裂いた。

 




第一部クライマックス、崩落富士の戦いがついに始まりました!!
三つ巴の戦いを天子たちはどう制するのか!?
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