緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第四十四章・『古き世の待ち人』 さて、語ろうかね? (配点:碧天)~

 振り下ろされた鋏を避けると二代は敵の右側面に移動した。

そして胴と腕の関節に蜻蛉スペアを叩き込むと割打を放つ。

 だが。

━━またで御座るか!!

 敵が凄まじい速度で横に跳躍し、あっという間に割打の範囲から逃れる。

 この蠍型怪魔、見た目に反して非常に俊敏だ。

六本の足を利用した跳躍で自由自在に移動し、攻撃と回避を行う。

 自分の攻撃を避け、次に敵が向かったのは。

「誾殿!!」

 遠方で砲撃を行おうとしていた誾だ。

 敵は誾の眼前に着地すると尾の針を一直線に放つ。

 一撃目は身を逸らして避ける。

だが続けて放たれた二撃目は左腕の義腕を僅かに掠り、バランスが崩れる。

そして三撃目は誾の胴を狙い……。

「!!」

 宗茂が飛び込んだ。

 誾を抱え一気に敵から距離を離すと誾を地面に下ろす。

━━流石は宗茂殿で御座る!!

 宗茂は敵を挟んで誾とは反対側に居た。

だがあっという間に彼女の許に向かい助けたのだ。

 宗茂を追って怪魔が動こうとするが横から忍者が飛びつき、背中に乗った。

 忍者は短刀を甲殻の間に刺し、引っ掛けるとしがみ付く。

「今で御座る!!」

 背中に張り付いた忍者に敵が気を取られている内に“銀”が鎖を敵の足に巻き付けた。

 ついに敵の動きが止まった!!

 “翔翼”を展開し敵の懐に飛び込むと蜻蛉スペアの刃に敵の右腕関節を映す。

「結べ! 蜻蛉スペア!!」

 右腕が割断され、宙に舞う。

「ァアア!!」

 怪魔は苦悶の声を上げると体を暴れさせ、鎖を払っていく。

「畳み掛けるぞ!!」

 “銀”が大剣を構え突撃し、それに皆で続く。

このまま一気に勝負を着ける。

 蜻蛉スペアを構え敵を狙った瞬間、煙を上げ敵が爆ぜた。

「!?」

 此方に向かって飛んでくる甲を避ける為蜻蛉スぺアを伸ばし、石突きで地面を打つ。

そしてその勢いで上へ逃れる。

 飛んできた甲を飛び越えると地面に着地し、敵の方を窺う。

「……これは!!」

 煙の中から現れた姿。

 胴は棒のように細くなり、脚は更に細長く、そして爪はより鋭く尖っていた。

 結晶だ。

 敵の姿は全身が結晶で出来ており、透き通って輝いている。

棒状の胴の先端には人面があり、此方を睨み付けていた。

━━また随分と面妖な……。

 先ほどまではまだ生物的な姿をしていたが今目の前に居る敵は異形だ。

 兎も角一旦様子を……。

そう思った瞬間、敵が消えた。

先ほどよりも更に速く。

 最早目で追う事すら難しい速度で敵は皆の真ん中に飛び込むと尾を水平に伸ばし、横に回転した。

 速い!!

 咄嗟に後ろへ跳躍したが尾が此方の胴を掠り、肌が割ける。

宗茂や忍者、“銀”は同様に跳躍で回避を行い、誾は“十字砲火”の一つを盾にして離れた。

 そのまま誾は残った十字砲火で砕かれた方を穿ち、敵を爆発に巻き込む。

 だが寸前の所で避けたらしく、爆炎の中から結晶の異形が飛び出し遺跡の入り口前に着地する。

「これからが本番という事で御座るか」

 仲間たちと視線を交わし、改めて敵と相対した。

 

***

 

「壁が破壊されたぞ!!」

 壁の上でよじ登って来た敵の撃退中にその叫びを聞いた。

 乗り込もうとしていたクーガ型の怪魔を蹴り飛ばし、壁の向うへと落とすと急ぎ状況を把握する。

ここから右方、二百メートル程離れた壁がドラゴン型の体当たりを喰らい、砕けて大きな穴が出来ているのが見える。

━━乗り込まれたか!!

 突入してきたドラゴン型は半竜が体当たりをし、更に倒れたところに不転百足の顎剣を何発も受けて絶命したが後続が次々と壁の内側に入って来る。

 敵をあそこで食い止めなければ全滅する。

「ここを任せるぞ!! アネラス、ついて来い」

「任された!!」

「了解!!」

 同じく壁の上に居たオリビエが此方に頷き、アネラスが戦っていた敵を切り捨てると此方に向かってくる。

 穴の開いた個所まで駆けると下を確認する。

 下では穴から入って来る敵を押しとどめようと兵士たちが戦っており、自分から見てちょうど真下には白の塊が出来ている。

「一気に行くぞ!!」

「はい! って、え? 一気に?」

 一回深呼吸すると駆け出す。

 そして跳躍を行うと敵群の真上に出た。

 空中で大剣を構え、己の闘気を放ち身に纏う。

そのまま落下の加速力と己の闘気を合わせ、大剣を真下の敵に叩き付けた。

「ドラゴン、ダァァァァァイブッ!!」

 直後、オーラの爆発が生じた。

 爆発は敵の群れを呑み込み、吹き飛ばして行く。

白い怪物たちは千切れ、砕け、地面や壁に叩き付けられる。

その爆心地でまだ動ける敵に大剣を叩き付けると大きく息を吐いた。

「こ、これが遊撃士」

 兵士の一人がそう呟き、徐々にどよめいていく。

どよめきは徐々に称賛の声へ、称賛の声は最終的に鬨の声となった。

そんな兵士たちを見渡すと頷き、拳を天に突き上げた。

 

***

 

━━これが、正遊撃士の実力。

 たった一人で怪魔の群れを薙ぎ払ってしまった。

 アガットが「俺に続け!!」と大声を上げると兵士たちが「応!!」と答える。

「彼は自分の役割をよく分かっているね」

 隣にシェイクスピアが立ち、穴を塞ぎに向かったアガットたちを見る。

「大きな力、多くを語らず行動で示す。そういった存在は古来から幾つもの戦場で劣勢を覆してきた。彼はそういった“英雄”の役割を演じるのにはぴったりな人材だ。

その事を彼自身理解しているからああやって役を演じている」

 役を演じるというのは簡単な事ではない。

 その場の空気を読み、最善の行動を積み重ねなければいけないからだ。

それが出来るというのは彼が多くの修羅場を潜り抜けて来たという事だろう。

「さて、浅間・智。仲間を信じて守るという役割を演じる君はこれからどう動く?」

「私は……」

 トーリ君たちと音信不通になってから戦闘に集中できずにいた。

━━駄目ですね。私。

 向うにはミトや天子たちが居る。

 中途半端な事をしては各地で奮戦している友たちに顔向けできない。

「私にしか出来ない事をします。各員の通神チェック、術式の配布、対空迎撃。やる事はたくさんあります」

「そうだね。それがいい」

 そう言うとシェイクスピアは穴の方へ向かいだす。

「僕の演劇空間で敵を押しとどめる。その間に穴を塞いでくれ」

「Tes!!」

━━気を使わせちゃいましたか……?

 心ここにあらずだった自分を気にかけてくれたのだろうか?

「しっかりしなきゃ」

両頬を軽く叩き、気持ちを入れ替える。

まずは戦闘状況の確認。

東門ではオリビエさんとランディさんが敵の迎撃を行っている。

南門は現在敵の攻撃が薄い為北条の兵士だけで防衛。

北門は回り込んできた敵を迎撃するためにシロジロ・ハイディ両名が待機。

一番危険な状況のここはアガット・アネラス・シェイクスピアが居る。

最後に外部ではウルキアガと成実が高機動戦闘で敵を攻撃し数を減らしている。

「で、喜美ですけど」

 振り返れば砦内で一番高い建物の屋上に喜美が居た。

彼女は此方に手を振り、空を指さす。

「あそこなら全方位の援護が出来ますね」

 空からの攻撃が不安だが喜美が護衛に付いてくれるなら安全だろう。

そう判断すると一度崩落富士の方を向き、それから喜美の待つ建物の方に駆けだした。

 

***

 

 神殿内部では依然として激戦が繰り広げられていた。

 刃と刃がぶつかり合う音。

ほの暗い神殿を照らす幾つもの火花。

 七人が動けば一人は躱す。

 一人が動けば七人は互いを援護し合う。

それを何度も繰り返し、入り乱れて戦っていた。

 刃が来る。

 白い鋼の刃が眼前に迫るとヨシュアは右手の剣で刃を弾こうとした。

だが右手の剣は空振る。

 先ほどまで刃のあった場所には何もなく、代わりに斜め下から槍が突き出されてきた。

「!!」

 左足を一歩下げ槍の先端から距離を少しでも離すと左手の剣を振るう。

 今度は敵の武器を捉えたらしく左手に伝わる強い衝撃と共に火花が散った。

 そこへエステルが入る。

 弾くのと同時に相棒が踏み込み、棍を高速で連続して突き出す。

 一撃、二撃、三撃……十を超えたあたりで敵は弾き切れないと判断し棍を左手で受けて後ろへ跳躍した。

「上手く軽減された!!」

 エステルの言葉に頷く。

敵は攻撃を受ける直前に後方へ跳躍し、ダメージを軽減した。

だがそれでもエステルの一撃で結構なダメージが入ったはずだが……。

「……ヨシュア。あの子、腕が機械かも」

「自動人形って事かい?」

「分からない。でもその可能性はある」

 敵に対して感じていた違和感。

 あまりにも早すぎる反応速度。

片手で巨大な武器を楽々と振るう姿。

それ以外の驚異的な身体能力。

 彼女が自動人形ならある程度納得がいく。

 だが。

━━きっとそれだけじゃない。

 何かまだ秘密がある筈だ。

 時折消える攻撃、あたらない此方の攻撃。

まるで化かされているかのような気分だ。

 化かされている?

 妙な引っ掛かりを感じているとロイド達が横を通過し敵に向かっていった。

「ヨシュア! 私たちも!!」

「あ、ああ!!」

 なんだろうか。この感じ。

あと少しで何かに気が付けそうな、そんな気がする。

 だが足を止めているわけにはいかない。

 仲間たちは今も敵と激戦を繰り広げている。

自分も直ぐに参加しなくては。

 そう思うと双剣を構えなおし、エステルと頷き合うと正面から来たロイド達を迎撃している敵の側面に回り込み始めた。

 

***

 

「っは!」

「!!」

 剣が振るわれ、空気を斬る。

 ノリキという青年は此方の斬撃を1つ1つ冷静に避け、カウンターを狙って来ていた。

「っ!!」

 敵の右拳が顔面に迫る。

 体の軸を左にずらし、避けるとそのまま盾を前に突き出し敵を吹き飛ばそうとする。

 それに対してノリキは腰を落とし、横へ跳躍することによって避けた。

━━やりますわね!!

 冷静な判断だ。

 一回一回の攻防で自分に出来る最適な行動を行っている。

 敵が狙うのはカウンター。

 攻撃射程は此方の方が長い為相手は迂闊に飛び込めず、此方の攻撃を待ってからカウンターを狙ってきている。

「ならば!!」

 カウンターを狙う隙すらあたえない!!

 高速の連続攻撃。

上、右、左、下……あらゆる方向から斬撃を放ち、繋いでいく。

 敵が一歩下がる。

 逃がしませんわ!!

 此方も同じ距離だけ前に出て射程内に敵を収める。

 一閃。

 ノリキの左肩が裂けた。

 一閃。

 今度は右太ももだ。

 一閃。

次に頬が。

ノリキは此方の攻撃によって徐々に傷を増やしていき、息も荒げていく。

 全てを避けようとしても小さな傷は徐々に増えていき、やがては体力が尽きるだろう。

 一閃。

 今度は左腰から右肩にかけての斬撃。

刃は甲高い風を斬る音と共にノリキに迫り。

「!!」

 弾かれた。

 ノリキは此方の刃を殴打し、弾く。

 続けますわ!!

 次はより早く。

目では追えない速度で斬撃を放ち……。

「また!!」

 弾かれた。

 一撃、二撃、三撃。

敵は全ての斬撃に対して打撃を放ち、弾いて行く。

「前に」

 ノリキが刃を迎撃しながら喋る。

「戦った奴がこんな事をしていた。力を抜き、腕を撓らせることで速度を得る。更に敵の攻撃を先読みすれば……」

 穿たれた。

 先ほどまでとは違い、剣の柄を狙った打撃。

それを喰らい、刃が弾かれ吹き飛ばされる。

「どこかで侮っていたな。攻撃が単調になっていたぞ!!」

 ノリキが踏み込んでくる。

 左腕を腰から上に目掛けて伸ばし、此方の胸部を抉るように放ってくる。

 だが。

━━この程度……!!

 左手に持つ盾を落とし、そのまま左腕で胸をガードする。

 敵の拳が左腕に当たり、鈍い音と共に激痛が走る。

「これが……」

 どうしましたっていいますの!!

 踏み堪えると右手を伸ばし、ノリキの左肩を拳で穿つ。

 衝撃でお互いの体が離れると荒く、息を吐き出した。

「私が格闘戦出来ないと思ったら大間違いですわよ!!」

━━とは言ったものの……。

 左腕は折れてはいないがダメージで反応が鈍い。

 敵は左肩が脱臼したらしく、右腕で左肩を掴むと思いっきり押し込んだ。

「その……ようだ!!」

 互いに左手が万全でなくなった。

「ノリキ、と言いましたわね。お見事ですわ。故に……」

 後方へ跳躍し、落ちていた剣を拾う。

「我が奥義をお見せしますわ!!」

 今日で二度目。

 小田原の時に負ったダメージのせいで全力は出せないが……。

━━このまま長期戦になる方が危険ですわ!!

 顔には出さないようにしているがかなり消耗している。

 長期戦になれば此方の体力が先に尽きるだろう。

 故に短期決戦を挑む。

「行きますわよ!! プリズム……」

 

***

 

「さて、どうするのですか?」

 トーリ達が入口まで撤退するとホライゾンがそう訊ねてきた。

「ノリキが敵を食い止めているが、歩いて近づくのは危険だな……」

 今度は反対側から行くという手があるが、それをするには巫女と天子たちの戦いの近くを通らなければいけない。

かといってこのまま待つのもなぁ……。

「なあ、なあ、セージュン」

「何だ、馬鹿? 今考え事中だ。ほら、小田原で買った飴やるからあっち行ってろ」

「『激辛! 本場! インドカレー飴』……。いやいや、そうじゃなくてよ! 上から行けるんじゃね?」

「は? 上?」

 馬鹿は手を上に上げて弧を描き始める。

上って、まさか……。

「飛ぶ気か!?」

「Jud.、 ほらネイトの銀鎖みたいに衣玖さんの羽衣で俺を巻いてポイって」

「で、できるのか?」

「えっと、多分できます。ただミトツダイラ様の様にコントロールは上手くできないと思うので……」

「あー、まあ、ボケ術式あるからある程度は大丈夫だと思うぜ」

 そういえばホライゾンとかに吹っ飛ばされてもいつも無傷だよなあ……。

「ボケ術式が発動する条件とかあるのでしょうか?」

「……ギャグっぽければ大丈夫じゃね?」

 衣玖が苦笑したまま固まった。

「ご安心ください。ツッコみ担当のホライゾンがいますので、上手くギャグ化させてみせましょう」

 親指を上げて頷くホライゾンに“本当に大丈夫かなあ”と思ったが衣玖もやる気になったみたいなので口を出さないでおく事にした。

 

***

 

 やると決めたからには直ぐに行動を開始した。

 まず場所移動。

概念核を正面に捉えるように神殿の入り口まで移動した。

 次に衣玖がトーリの腰辺りに羽衣を巻きつけはじめるが……。

━━これはいけませんねえ……。

 なんか非常にシリアスっぽい。

 衣玖が緊張の表情を浮かべぎこちなく動いているため、巻きつけられているトーリが「や、やっぱやめね?」とか腑抜けたこと言い始めた。

 ぶっちゃけその場のノリでスッと投げ、バッと飛び、グシャアと落ちれば良いのだが衣玖が少々真面目すぎる。

━━ここはツッコみ担当のホライゾンが!!

 でもどうしようか?

 なんとかこの無駄にシリアスな雰囲気をギャグに変える方法。

「ミトツダイラ様。トーリ様をギャグっぽくぶん投げるにはどうすれば良いのでしょうか?」

「はい!? 何してますの!? あなたたち!?」

 敵の攻撃を避けながらミトツダイラが器用に此方を見る。

「いえ、ちょっとした作戦で。それでどんな感じが良いのでしょうか」

「……いつも通りにっ!! その場の! 勢いでっいいんじゃないんですのっと!!」

 忙しそうなミトツダイラに「ありがとう御座います」とお辞儀をすると振り返る。

「梅組の日常風景的にトーリ様をほうむ……投げればいいそうです。あ」

 衣玖がスイングを開始していた。

 羽衣に巻かれたトーリは遠心力で加速していきだんだん目で追えなくなってくる。

━━これはいけません!!

 ギャグっぽいのにギャグじゃない!!

 衣玖様、表情が怖いです。トーリ様を投げる飛ばすというよりも投げ殺す顔になっています!!

 何とかしなければ!!

 だがどうやって!?

「あ」

 “これだ!”と思うのと同時に声に出した。

「これ、衣玖様の羽衣にトーリ様のチンーコ押し付けられてますよね。この勢いですと形が残るのではないでしょうか?」

「は!?」

 衣玖がハッとした表情で此方を見て、羽衣を掴んでいた手の力が緩んだ。

そのまま緩みは羽衣へと伝わり、トーリの拘束が解け……。

「たーーーーまやあああああああ!!」

 すっ飛んで行った。

「外れたぞ!!」

 トーリが飛んで行ったのは正面の概念核ではなくその右方。

 ノリキとデュバリィが戦っている方向だ。

 全裸が顔面から地面に落ちた。

 そこから一バウンドし今度は尻から落下。

二バウンド目で加速力は最高になり、空中で再び百八十度回転。

そして向かう先は……。

「衣玖様、ナイスです。これ、どうあがいてもギャグになります」

 デュバリィであった。

 

***

 

「キャリ……」

 奥義を放とうとした瞬間視界に飛び込んでくる姿があった。

 全裸だ。

 全裸が飛来し、バウンドしながら此方に向かってくる。

「へ?」

 “なんですの!?”とも言えない。

完璧な不意打ち。奥義を放とうとしていた為、避ける動作が出来ず。

「ふぎゃ!?」

 激突した。

 一瞬見えたゴッドモザイク。

次に見えた肌色。

 何が起きたのか分からないまま全裸と共に吹っ飛んだ。

 

***

 

「…………」

「…………」

 神殿は静寂に包まれた。

 戦いの手を止め、誰もが一か所に集中していた。

 騎士が仰向けに倒れている。

 全裸と激突した彼女は概念核近くまで吹っ飛び、そのまま動かなくなった。

 騎士は仰向け。

その上には全裸が馬乗りになっており、彼の尻は騎士の顔面に乗っている。

「あひん」

 全裸がなんか身悶えた。

 それと共に騎士が一度痙攣する。

そんな惨状を見て“巫女”が一言口にした。

「ひきますね」

 全裸は尻を騎士の顔面に乗せたまま辺りを見渡すと冷や汗を浮かばせながら頷き、そっと四つん這いで騎士から離れていく。

 このまま逃げようとしているのだろうか?

だが。

「…………」

 騎士がゆっくりと起き上がった。

 彼女はふら付きながら四つん這いの全裸を追うと彼の両足を掴む。

「き」

「き?」

「きええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 ぶん回した。

 騎士はこの世に絶望したかのような表情とやけくその笑みの両方を浮かべながら涙を流し全裸をジャイアントスイングしていく。

そして速度が最大に達した瞬間、投げ飛ばした。

 そんな一連の様子を見て一言。

「ナイスだと判断します」

 衣玖にサムズアップするが彼女は吹っ飛んだ全裸の事よりも自分の羽衣の事を気に掛け、「か、形がついてませんよね!?」と羽衣の確認している。

 さてどうしようか?

 騎士はあまりのショックに暴れている。

 天子たちは戦いの手を止めてしまい、敵味方交えて顔を見合わせている。

 皆が次にどうすべきか悩んでいると正純が「お、おい!!」と正面を指さした。

「どうかしましたか?」

 正純の指さす先を見れば全裸が概念核に逆さまに抱きついていた。

どうやら吹っ飛んだ先に偶然概念核があったらしく、激突するように抱きついたようだ。

「……しまった!!」

 “白の巫女”がそう声を上げ、慌てて動こうとした瞬間、低い、老人の声が神殿内に鳴り響く。

<<接触ヲ確認。対象ヲ“待チ人”ト断定。人格再現ヲ開始スル>>

 直後、眩い光によって辺りが包まれた。

 

***

 

 青白い光に包まれ、目を閉じると体が急に動かなくなった。

「な!?」

 慌てて目を開ければ黒色が広がっていた。

 何もない黒の空間。

 床も、壁も、天井もなく。まるで宙に浮いているかのような感覚。

 頭以外の体は動かなく、慌てて辺りを見渡せば同様に動けなくなった仲間たちが居た。

「これは一体なに!?」

「わ、分かりませんわ!」

 光が生じた。

 正面、距離的に概念核があったと思われる箇所に流体の光が集まっていき形を作っていく。

 最初は大きな円形だ。

 円は少しずつ崩れていき、巨大な光の獅子のようになる。

そして獅子が再び崩れると光は収束して人型となっていった。

━━人?

 手に持つ緋想の剣から鼓動のような振動を感じたような気がした。

 光の人型は徐々にその姿をハッキリとさせて行き、やがて背の高い老人の姿になる。

 長く伸びた白髪。

それと同じくらい長い髭。

 老人は緑色の法衣を身に纏い、此方に微笑んだ。

「ようこそ、小さき者たちよ。我れは“碧天”の名を頂くもの。八大竜王の一人、大樹の守護者にして傲慢なる咎人」

 老人は虚空に腰掛け、顎鬚を撫でる。

「さあ、語ろう。我に残された時間は少ない。言葉を選べ。汝ら我に何を問う?」

 そう言うと八大竜王“碧天の頂”は手を差し伸べるのであった。

 




神殿内部での戦いの続き。そしてついにトーリ達は概念核と接触するが……?
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