緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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序章

 暗い巨大な石室に一人の少女が居た。

 少女は白いインナースーツの上に白いマントを羽織り、白く長い髪を持っており彼女は壁に描かれている巨大な大樹を見上げていた。

 壁画は長い年月を経て各所が削れ、掠れている。

「不変の理想郷」

 少女は呟く。

「そこは争いも無く美しい自然が広がる理想郷。極光の下、多くの竜達が住まう土地」

 彼女は壁画を指でなぞる。

「全ては安定し、世界は永久に続くと思われていた」

 「だが」と彼女は拳を握り、眉を顰める。

「私たちは驕った。己を完全と思い、穢れから目を逸らし、そして大禍が生まれた。

世界は地獄と化し、極光は潰え、私たちは生き残った」

 そう、だから生き残った私たちはやり遂げなければいけない。この間違った世界で。

 それが生き残った私たちの責務。

だから……。

 少女は左手に持つ仮面を装着する。

「━━始めましょう、“破界計画”を」

 紅き六つの目が闇の中で輝いた。

 

 

~序章・『一月の両得者』 えーっと、空を見上げて、心落ち着かせれば…… (配点:えろえろ)~

 

 なだらかな丘が広がっていた。

 遠くには山が見えており、その反対の方向には海が広がっているのが見える。

 一月の空は何処までも澄み渡っており雲ひとつ無い。

そんな長閑な雰囲気は突如崩れた。

 砲撃だ。

 青空を十を超える流体の砲撃が切り、山の方角にある城に迫る。

 砲撃は城の遥か上空で障壁によって受け止められ、流体の光が冬空に爆ぜた。

 砲撃が来た先、南の海側には多数の航空艦が存在しており徐々に城を包囲して行く。

 そんな艦隊の後方に他艦に比べ大きな船が存在した。

 白と黒を基調とし、船体には十字架のマークが刻まれている。

その船の甲板に一人の女性が立っていた。

 黒のインナースーツを身に纏い、眼鏡を掛けた彼女は表示枠に映る戦場図を見ながら時折「うーん」と唸っている。

『竹中様、部隊の配備、完了いたしました』

 部下からの報告を受け竹中と呼ばれた女性は頷く。

「はい、ではこのまま砲撃を続けてください。向こうはそう長く持たないはずですが……」

『何か、不安要素でも?』

「いえ、そう言うわけでは……!!」

 突如、竹中・半兵衛は口を押さえ慌てて艦の左舷に向かい走り出す。

そして手すりから身を乗り出すと。

「えろえろえろ」

 吐いた。

『た、退避―っ!!』

 地上部隊が慌てて二つに別れ走り出すのを見ると半兵衛は「すみませんねー」と頭を下げる。

「あーこれ、今日食べたラーメン全部出ちゃいましたねー」

『……まだ治りませんか? その体質』

「Tes.、 この七年間私なりに頑張ってみたんですけどねー。なかなか……。

で、不安要素の話でしたっけ?」

『はい、何か思うところがあるようでしたので』

 表示枠に映っている女子生徒に頷くと前方の城を見る。

「いや、ちょっと別所さんの士気が高いかなーって思いまして。

こっちはコレだけの兵力で囲んでいるのに全く動揺したり士気が下がったりしてないのはどうしてかなーと」

『播磨人は鉄血と聞きますが?』

「あー、それで、って事も有るかも知れませんねー。まー、取り合えず此方は向こうの動きを見ながら臨機応変に行きましょう」

『Tes.』と女子生徒が消えると半兵衛は暫く思案顔になる。

どうにも引っかかる。

別所家は少数、対して此方は大軍。

支城も全て陥落し、絶望的な戦況だというのに彼らは何故降伏しないのか?

━━……援軍、ですかね?

だが何処から?

六護式仏蘭西は今出雲・クロスベルに部隊を展開しているし、仮に来るとしても別所家と六護式仏蘭西の間には宇喜多家がある。

 宇喜多家は現在中立を保っており六護式仏蘭西にもM.H.R.R.にも与さない。

「うーん、なんか嫌な予感するなあ」

 宇喜多家当主宇喜多直家は統合事変後中国地方でいち早く勢力を取り戻し国を安定させた。

 統合争乱時も荒れる中国地方で上手く立ち回り、周辺諸国を飲み込み勢力を拡大。

聖連誕生後は即座に聖連に付くという柔軟さを見せた。

 今回も自分からは動かず様子を見ているようだ。

『武神隊、準備できたけど何処に向かう?』

 表示枠に小柄な少女が映る。

「……武神隊は西に向かってください」

『西? 中央じゃなくて?』

「Tes.、 ほら、西の方、山に宇喜多家が布陣しているじゃないですか。どうもきな臭いんでそっちの警戒をお願いします」

『了解』と少女が頷いた瞬間、城の西側に回っていた航空艦が突如横から流体砲撃を喰らい炎上した。

『宇喜多?』

「いえ……違います。これは、ちょっとやばいですね」

 警報が鳴り響く甲板から塊が見えた。

塊は無数の竜の群れであり竜たちは炎上した航空艦に向かって再び一斉に竜砲を放ち航空艦は貫かれ爆沈した。

 西側の艦に向かって突撃する群竜を見て半兵衛は僅かに冷や汗を掻いた。

「━━“群竜”ベルンハルト!! そう来ちゃいますか!!」

 直後三度目の砲撃が放たれ、二隻目の航空艦が砕かれた。

 

***

 

 遠くで竜の群れに襲われ航空艦が次々と墜ちて行くのを宇喜多直家は陣中から見た。

「ほっほーう、墜ちる墜ちる。面白いぐらい墜ちるなあ!」

 突然の奇襲に羽柴の艦隊は慌てふためいており、陣形が崩れ始める。

「それにしても六護式仏蘭西め、人の領土を勝手に通るとはいい度胸だ」

「……は? 許可されてなかったので?」

 隣りに居た部下が目を点にすると頷き、大笑いする。

「方便だ方便! 六護式仏蘭西は“勝手”に我が領土を通過し、我が軍も被害を受けた。

━━だから、来るぞお!!」

 竜たちの一部が反転し、此方に向かって竜砲が放たれた。

 竜砲は陣の近くに直撃し、その辺りから悲鳴が上がる。

 慌てふためく兵士達を笑いながら茶を飲むと部下が慌てて此方を見る。

「な、なぜ、先に教えてくださらなかったのですか!?」

「馬鹿者がー。教えれば防ごうとするであろう? 防いでしまっては方便にならん」

 口を大きく開けて固まる部下に苦笑すると前方を見る。

「ほれ、どうする“群竜”? 囲まれ始めたぞ?」

 混乱していた羽柴艦隊はあっと言う間に体勢を立て直し“群竜”を包囲しようとしている。

━━なかなか良く訓練されている。

 あの状態から僅かな時間で混乱を治めた。

兵は良く訓練されているし、指揮官も良い。

流石は羽柴。

「だが、覇王の国は甘くないぞ?」

 影が走った。

 三つの巨大な影が頭上を通過し、“群竜”の背後に回りこもうとしている艦隊に向かう。

 その巨大な姿に目を細めると直家は笑みを浮かべた。

「ほう! 重武神を飛ばしおったか!!」

 

***

 

 青空を三機の重武神が飛行していた。

 手に西洋槍を持ち、白銀にマントを付けた騎士型武神は背中の飛翔器を展開させながら敵艦隊からの迎撃砲撃を掻い潜って行く。

『目標まであと八百メートル!!』

 先頭を飛翔する武神がそう告げると残りの二機は頷く。

『……七年待ったな』

『ああ、マクデブルクから七年。俺たちはこの時を待ち続けてきた』

『Tes.、 行くぞ。今日は羽柴に対する挨拶だ。だから刻み付けてやれ! 奴等が何を敵に回したのかを!!』

 流体砲撃が来る。

 武神隊はそれを避けると直ぐに隊列を戻す。

『━━Vive La XIV!』

『『━━Vive La XIV!!』』

『━━Vive La Anne!』

『『━━Vive La Anne!!』』

『━━Vive La Mouri!』

『『━━Vive La Mouri!!』』

『━━Vive La Hexagone Francaise!』

『『━━Vive La Hexagone Francaise!!』』

『『Assaut!!』』

武神が砲火を潜り抜け、航空艦に迫りそして西洋槍を振るい艦橋を叩き潰した。

 

***

 

 “群竜”の背後に回りこんでいた航空艦を三機の六護式仏蘭西の武神隊が強襲し、撃沈させるのを半兵衛は旗艦の甲板から見た。

━━陸専用の重武神を飛ばせれるようにしましたか!!

 となると近くにあの武神を発進はせた武神空母の存在している可能性がある。

そして空母が居るならその護衛艦隊も。

━━最初から此方を叩くつもりだったんですねー。

 出雲・クロスベルに展開していた一万の軍勢は囮。

本隊はM.H.R.R.(こちら)狙いであったか。

『玄武を出す?』

 表示枠に映った小柄な少女の言葉に首を横に振る。

「いえ、撤退します。一回体勢を立て直しましょう」

『いいの? 三機なら何とかなるけど』

「Tes.、 ハイリスクハイリターンは私の方針ですけど今の状況ではハイリスクローリターンですからねー」

 艦隊に撤退指示を出すと部隊が一斉に撤退準備を始める。

 三機の武神と“群竜”は撤退する部隊を追撃しようとするが、艦隊による飽和砲撃によって喰い止められ、追撃を止める。

 その様子を甲板から見ながら半兵衛はやれやれと首を横に振る。

「これはちょっと忙しくなりそうですねえ」

 そう呟き、城に向かって降下してゆく六護式仏蘭西の部隊を見るのであった。

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