緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第四十六章・『深淵の者』 さて、どっちに転がるかしらねぇ (配点:邂逅戦)~

 突然の襲撃者。

 異様な雰囲気を放つ黒の少女を前に誰もが動けないでいた。

━━どういう事だ!?

 あまりに似ていた。

 顔つき、骨格、全てが比那名居天子と酷似しており髪や瞳の色以外では判別できないほどだ。

姉妹、肉親。様々な説が頭の中で浮かんだがそのどれもが違うという事を天子の態度が示していた。

 これからどう動くべきか?

ロイド・バニングスはそう考えていると天子が冷や汗を掻きながら呟いた。

「ら、裸族だわ……」

「ええ……裸族ですわね」

「裸族か」

「おおゥ、裸族って多いんだなァ……」

「え、そこ!?」

 思わずツッコミを入れてしまう。

普通もっと違う所に注目するだろ!?

見た目とか、彼女の正体とか!!

だがエステルやヨシュアも。

「ヨシュア、裸族だわ!」

「ああ、裸族だね……」

と反応しているのでどうやらそっちに反応するのが正解らしい。え、本当に?

 そんな此方の様子を黒の少女は楽しげに見ているとトーリの所で視線が止まる。

そして眉を顰めると。

「え? パクリ?」

「いやいやいや! こっちが先だかんな!!」

「おやおや、トーリ様。またキャラ被りですか? ふ、雑魚が。

あ、ちなみにキャラデザ被りという事で天子様も減点です」

「こ、この女! 最近ぬるいと思っていたら急にセメント度を上げやがったな!!」

「はあ!? いきなり私を巻き込まないでよ!!

というか、あんた!! 何なのよ! その姿!!」

━━な、なんだかなあ。

 これ、もっとシリアスな場面なんじゃないか?

━━いや、ふざけているように見えるだけか……。

 よく見れば天子も第五特務も、皆が何時でも動けるように構えている。

 どんな時でも自分たちのペースを崩さないのは良い事……なのか?

「よっと」

 黒の少女が動いた。

 天井の破片から飛び降り、床に着地する。

それから一度その場で回り、楽しそうに目を細めると自分の胸に手を置いた。

「私の名前は驪竜。貴方達が怪魔と呼ぶ子たちのリーダー。そして何もかもを壊して穢す存在」

「な!?」

 あまりに自然に自分の正体を明かす為、驚愕の声が出た。

 この子が怪魔のリーダー!?

つまり古の竜達を滅ぼし、“終末”をもたらす存在!?

 そんな此方の驚きを気に留めず、驪竜は自分の髪を手串で梳くと天子と目を合わせる。

「へえ?」

 直後、消えた。

━━しまった……!!

 自分の横を通過する黒い影。

あまりにも突然で素早い動作だったため反応できなかった。

 驪竜はあっという間に天子の前まで来ると両手で天子の頬に触れ、彼女の顔を固定する。

「お久しぶりね」

「な」

 “に”と続けようとしたのだろうが、言葉を放つことが出来なかった。

「!?」

「は?」

「え?」

「はい?」

「ほう?」

 驪竜と天子の顔が接触していた。

いや、顔というか、もっと限定的で、その、なんというか、はっきり言うと唇。

 接吻していた。

 驪竜は楽しそうに。

対する天子は目を見開いたまま硬直。

「……これは、予想外だ」

 思わず口に出す。

 というか予想できるか!!

 まったく脈絡が無かった。あまりにも唐突な接吻。

しかも同性だぞ!?

「ふふ」

 驪竜が顔を離し、目を細める。

「可愛らしい反応。貴女、綺麗ね」

「な、な、な、な……!!」

 天子は顔を真っ赤にして戦慄いている。

「私ね、綺麗な物が好きなの」

「おっとこれはホライゾン、完全に反応が遅れました。

天子様新キャラをさっそく攻略、しかもコピペキャラとは……やりますね」

「そ、総領娘様。まさかそっちの気が……」

「ち、ちが……」

 驪竜が微笑んだ。

だが今までの笑みとは違い。それは背筋の凍る……。

━━不味い!!

 危険だ。

 彼女の放つ気によってその場の雰囲気は一転し、鳥肌の立つものとなる。

「私、綺麗な物が好きよ。でも、その綺麗な物を汚すのがもっと好きなの……!!」

 驪竜が右手を掲げ、空間から何かを取り出し、振り下ろす。

「く!!」

 急ぎ間に入ろうと駆けるが間に合わない!!

 何とか直撃だけは防げないか、そう考えた瞬間、正面の土埃の中から飛び出す姿があった。

 “白の巫女”だ。

 彼女は両刃槍を突き出し、天子目掛けて振り下ろされた何かを受け止めた。

 

***

 

 眼前でぶつかり、押し合う刃を見ながら天子は僅かな間硬直した。

 そして何が起きたのかを理解すると。

「!!」

 後方へ跳躍し、驪竜から距離を離す。

「あら、残念」

 驪竜はそう言うと取り出した武器を前に突き出し、それと共に落下してきた天井の破片上へ跳躍する。

 そんな彼女と入れ替わるように“白の巫女”が先ほどまで黒の少女が立っていた場所に立ち、仮面越しに驪竜を睨み付ける。

「…………」

「ふふ」

 白と黒が睨み合う。

 そんな二人の後ろで天子は自分を落ち着かせるために大きく息を吸った。

 さっきの、“白の巫女”が私を守ったのか?

そもそもなんだ、あいつは!!

 どうして私と同じ姿をしている!!

「……衣玖」

「はい」

「お父様、不倫とかしてないわよね?」

「……その、総領事様は真面目な方なので」

 まあ、そうか。

 あの堅物が浮気とかするとは思えない。

じゃああいつは一体……。

 ふと仲間たちを見れば梅組のメンバーが固まり、一転に集中していた。

その視線を追うと驪竜が手に持っている武器に辿り着く。

「武器?」

 確かに変な武器だ。

 まるで人骨のような形をしており、白と黒の二色で構成された大剣のような武器だ。

でもなんで皆驚いているんだ?

そう思うとミトツダイラが口を開いた。

「た、大罪武装……!!」

「それって確かホライゾンの……」

「Jud.、 ホライゾンの父が何をとち狂ったか人の感情を勝手に武器にしたあれです。

そしてあれは……」

 ホライゾンの言葉に続き、正純が唾を呑み込む。

「“悲嘆の怠惰”!!」

「なァ、あれ、そんなヤベェのかァ?」

「個人携帯できる戦術兵器のようなものですわ」

 その言葉にロイドやエステル達が息を呑んだ。

 そんなものをこの閉鎖空間で使われたら一溜りもない。

だが。

「あれ? でも前に大罪武装って基本使えなくて“悲嘆の怠惰”はその筆頭って言ってなかったっけ?」

 

***

 

「む、宗茂様! 突然膝を着かれてどうしたのですか!?

え? こうしなければいけない気がした?」

 

***

 

「Jud.、 そうなのですが、まああれを集めるのがホライゾンたちの目的ですので」

 ホライゾンがそう言っていると正純が前に出る。

「何故大罪武装を持っている!! そしてお前は何故比那名居と同じ姿をしている!!」

 そうだ。なんか微妙に脱線していたがそれを訊かなければ。

 正純の言葉に驪竜は喉を鳴らして笑うと悲嘆の怠惰の刃を指でなぞる。

「だって、私が回収したんだもの」

「……なに?」

「貴方達がこっちに来るときに危険そうなものは私が回収するか封印したの。

この力は今の私にとっては危険だからね」

 驪竜は正純たちを指さす。

「神州。全てをやり直す為、歴史再現を行う世界。ノヴゴロド戦から二日後、境界の崩壊に巻き込まれる」

 次にアマテラスを。

「古代大和。神々や妖怪がまだ多く存在し、人と共生する世界。天照大神がタカマガハラに旅立った直後、境界の崩壊に巻き込まれる」

 今度はエステル達を。

「ゴーファイっ……じゃなかった、ゼムリア。<<大崩壊>>により古代文明が滅んだ後、再興した世界。<<碧の大樹>>消滅後、境界の崩落に巻き込まれる。そして」

 驪竜が私を指さした。

「幻想郷。外の世界で生きていくことが難しくなった妖怪たちが逃げ込んだ理想郷。緋想の剣により楔が破壊された直後、崩壊。ふふ、貴方が最後の楔を壊し、私に形を与えてくれたのよ」

「…………!!」

 フラッシュバックが起こった。

 薄暗い洞窟。砕けた漆黒の柱。呆然と立つ自分。驚愕の表情を浮かべる八雲紫。ゆっくりと立ち上がる黒い少女の影。

 忘れていた記憶が断片的に思い出され、頭を金槌で叩かれたかのような衝撃を受ける。

「そ、総領娘様!?」

 ふらつく体を衣玖に受け止められると冷や汗を掻く。

━━なに、今の……?

 あれは何時、何処の記憶だ?

 何か、何か私は大事な事を忘れているんじゃ……。

急に不安になり、思わず自分の体を抱きしめる。

するとトーリが隣に立ち、頭に手を乗せた。

「分かんねーことをあんまり深く考えんなよ? ここには俺達が居る。

なんかあったら俺達を頼ればいい」

「…………」

 彼の言うとおりだ。

 あの記憶が何なのかは分からない。だがそれを考えるのは今必要ではない。

 不安感が消えると頷き、それから手に乗っているトーリの手を払う。

そして強気な笑みで「気安く触らないでくださる?」と言うとトーリも「おお、悪い悪い」と笑みを浮かべた。

 それから彼は皆の前に出て驪竜と向かい合う。

「あー、驪竜っつったっけ? 悪いけどそれ返してくれねーか。

それ、俺の大切な奴の大事な物だからさ」

「いやよ」

 驪竜は頬を膨らませ、“悲嘆の怠惰”を抱きかかえる。

「これはもう私の物だわ。それにさっきも言ったけど、これを貴方達に使われて私の邪魔をされたら面倒よ」

 次に前に出たのは正純だ。

「……怪魔の頭領、驪竜。お前に問う! お前たちの目的は何だ!!」

「そんなの」

 驪竜が嘲笑う。

「そんなの決まっているじゃない。そこの白い奴の望みを滅茶苦茶にしてやるのと、この世界、いいえ、私が見つけた世界を全部穢してやる事よ!!」

「交渉は無理か?」

「無理よ」

 正純がトーリを見るとトーリは頷く。

「んじゃ、しょうがねえ。おめえがどうしても全部台無しにしたいってんだったら、俺達は抗うぜ」

 直後“白の巫女”達が動き、徳川側も動き始めた。

 

***

 

「デュバリィ!! 挟み込みます!!」

「分かりましたわ!!」

 剣の担い手たちが話している間に動いていたデュバリィと共に敵に向かって突撃する。

「気が付いてないとでも思ってたのかしら!!」

 挟撃を受けた驪竜が狙ったのはデュバリィの方だ。

 振り返ると同時に跳躍を行い、“悲嘆の怠惰”を振るうとデュバリィに叩き付ける。

「!!」

 デュバリィが“悲嘆の怠惰”を盾で受けるとそのまま彼女の肩を左手で掴み、此方に向かって投げ飛ばしてくる。

「無視して結構ですわ!!」

 彼女の言葉に従い、飛んできた彼女を受け止めずに無視した。

 まだ空中に居る驪竜に槍を叩き込むが、槍は“悲嘆の怠惰”によって弾かれた。

「!!」

 弾かれた勢いで体を回転させ、そのまま次の攻撃へ。

その際に自分の技を使い。

「おっと!!」

 一撃目の刃が消え、二撃目が敵に迫るが相手は予測していたらしく悠々と避ける。

そのまま三撃目を叩きこもうとするが。

刃が減速した。

「く!!」

 刃が減速したため動きが止まり、その隙を突いて敵が武器を突き出してきた。

 このままでは避けられない。

そう判断すると槍から手を離し、体の正面で爆発術式を発動させた。

 正面から爆発の衝撃を受け、吹き飛ぶと地面に叩き付けられる。

「ふふ」

 着地した驪竜が此方に向かってくる。

 立ち上がり急ぎ槍を回収しようとするが敵が一気に加速し、眼前に迫った。

━━最低限の損傷で済ませます!!

 振り下ろされた“悲嘆の怠惰”をもともとダメージのあった左腕で受けようとすると、銀色の鎖が自分と驪竜の間に叩き付けられる。

「ちぃ!!」

 驪竜が後方へ跳躍する。

それと共に眼前に剣の担い手が飛び込んだ。

「私たちの事を忘れてもらっちゃ困るわ!!」

 

***

 

 ミトツダイラはまずヨシュアが動き出したのを見た。

 天子に気を取られていた敵の隙を突き、黒髪の遊撃士は一気に距離を詰める。

━━やはり、彼……。

 以前から思っていた事だが彼の動きは忍びの者に近い。

 攪乱、奇襲を得意とし一撃離脱戦法をとる。

 自分の様な正面から行くタイプとは真逆の存在だ。

━━頼もしいですわね!!

 ああいうタイプは一対一でも手強いが、集団戦だと更に輝く。

 仲間に合わせて動き、奇襲と援護が出来るのだ。

 敵は背後に現れたヨシュアを迎撃しようと上体を捻るが、遅い。

既にヨシュアは双剣を振るい、一撃は“悲嘆の怠惰”で払ったが二撃目が右太ももを裂いた。

そしてヨシュアはそのまま“悲嘆の怠惰”に押し飛ばされるのを利用して距離を離す。

 そこへエステルが入った。

 渾身の横薙ぎを敵に叩き付け、驪竜の体がくの字に折れ曲がりながら吹き飛ぶ。

「ロイド!!」

「俺の番だな!!」

 連携は続く。

 吹き飛び、天井の破片に叩き付けられた驪竜に追撃を加え、連続の打撃を相手に叩き込む。

そして最後に一発、一番強力なのを腹に叩き込むと相手との距離を離した。

「エリィ!!」

「ええ! 出し惜しみはしないわ!!」

 エリィが手を掲げると敵の頭上に雷が現れ、収束して行く。

そして雷は徐々に形を変え、巨大な槍となった。

「ラグナドリオン!!」

 巨大な雷の槍が敵に叩き付けられ、凄まじい閃光と共に爆発が生じる。

━━これが最上級のアーツですの!?

 凄まじい破壊力だ。

 威力的には大体2浅間くらいだろうか?

 そう思っていると天子が微妙な表情を浮かべていた。

「どうしましたの?」

「いや、なんか同じ顔の奴がこうボコボコにされるのを見ているとどうも……」

「あー……」

 確かに。

 私だったら母がボコボコにされているのを見ているようなものだろうか?

いや、でもあの母がボコボコにされている光景が思い浮かばないなあ。

どちらかというと攻撃喰らいまくったあと「あら? 御終いですの?」とケロッといい、そっから母無双が始まる。

そんな感じだ。

「それにしても、動く前に終わっちゃったかしら?」

 自分と天子、それからアマテラスがまだ控えていたがゼムリア組がヒャッハーしてくれたので出る幕が無かった。

あれだけの攻撃を受けて無傷だとは思わないが……。

「倒れてもいませんわよね!!」

 爆心地に驪竜が居た。

 驪竜は両膝を着き、“悲嘆の怠惰”を杖にしており、左腕は肩から下が欠損していた。

さらに右腕も所々が焼け落ち、白い骨が見え、顔に至っては半分が潰れている。

そんな状態で驪竜は立ち上がろうとしていた。

「あの状態でまだ動けるなんて……」

 エステルが信じられないという様に呟く。

「だったら止めを刺すだけよ!!」

 天子が動き出し、アマテラスと自分も続く。

 この敵は何かおかしい。

妙な事をする前に片付けるべきだろう。

 天子がつま先で地面を蹴り、加速した。

そして緋想の剣で敵の頭を切り落とそうとする。

その瞬間、驚愕した。

「天子!!」

 右腕が……治っている!?

 驪竜は顔を上げ、笑みを浮かべると天子に“悲嘆の怠惰”の刃を向けた。

「結べ、“悲嘆の怠惰”」

━━間に合いませんわ!!

 自分では間に合わない。

そう理解し、血の気が引く。

このままでは天子がそぎ落とされる。

「アマ公!!」

 アマテラスが行った。

 アマテラスは姿勢を低くし、更に加速すると天子に斜め後ろから体当たりをする。

激突された天子はアマテラスと共に吹き飛び、地面に転がり、獲物を逃した“悲嘆の怠惰”は通常駆動を停止させる。

 その様子にほっと胸を撫で下ろしていると驪竜が立ち上がった。

「あーあ、惜しいなあ」

「なん……ですの……!?」

 再生していた。

 いや、再生では無い。まるで巻き戻しているかのように驪竜の体が修復され、元通りになってゆく。

 完全に再生されると驪竜は一度左肩を大きく回し、笑みを浮かべた。

「“悲嘆の怠惰”の通常駆動。結構使い勝手がいいのよね」

 そしてそんな敵の様子を見てホライゾンが拳を握りしめ、冷や汗を掻きながら言った。

「あの宗茂砲、味方の時は使えないくせに敵に回ると急に強くなるとは!!

本当に色々と残念な武器だと判断します!!」

 

***

 

「む、宗茂様!? 膝を着きながら敵の攻撃を避けるとは!! 流石ですね!!」

 

***

 

「い、たた……」

 アマテラスにぶつかられた背中を擦りながら立ち上がると自分が無傷であることを確認する。

「助かったわ」

 隣にいるアマテラスの背中を撫で、感謝の言葉を述べると敵と相対する。

 さきほどのあれは一体なんだ?

 敵はあれだけの攻撃を受けて、何事もなかったかのように再生した。

あの超再生が敵の能力か?

━━いや、たぶん違うわ。

 あれは彼女の能力の一部なんじゃないか?

 “白の巫女”が敵に攻撃したとき、動きが急に遅くなった時があった。

あれも敵の能力だとするなら……。

「遅滞、巻き戻し、そして最初に迫ってきたときの加速……まさか!!」

 戦術リンクを通じてミトツダイラにも伝わったらしく、彼女も頷く。

「ええ、恐らくあの敵の能力は“時”に関係するものですわ!!」

「あはは、御名答!! まあ、あれだけヒントあげてれば誰でも分かるわよねえ」

 驪竜はゆっくりと跳躍すると一気に祭壇の方まで移動した。

そして次の瞬間には元の位置に戻っている。

「私の概念は“時を歪ませること”。加速も、遅滞も、再生も、お手の物よ」

 驚愕した。

 彼女が概念を操ることも驚いたがそれよりも自分の能力を簡単に明かしたことに驚いた。

「あら、“そんな簡単に明かしていいものなのか?”って顔しているわね。ええ、いいのよ?

だってそれを知った所で貴方たちにはどうしようもないもの」

「言ってくれるな!!」

 ロイドやエステルたちが集合し、敵と向かい合う。

 確かに彼女の能力は脅威的だ。

だがここに居る全員が一丸となれば突破口を開けるはずだ!

 そんなこちらに敵は呆れたような表情を浮かべると首を横に振る。

「いやねえ、そういう暑苦しいのは。友情とか努力とか、それを信じて戦えば勝てると思っているんでしょう?

私、そういうの大っ嫌いなの。無茶苦茶にしてやりたくなるわ。だから……」

 驪竜が“悲嘆の怠惰”を持ち替え、柄の先端をこちらに向ける。

それを見てミトツダイラが皆に警告を飛ばした。

「超過駆動を使う気ですわ!!」

 こんな狭いところで超過駆動を使われたらたまらない。

 先手を打とうと動いた瞬間、デュバリィが敵の懐に飛び込んだ。

「私の存在を忘れていましたわね!!」

 デュバリィが剣を振い、“悲嘆の怠惰”を持っていた右腕が落ちる。

即座に右腕が巻き戻されるがデュバリィはつま先で“悲嘆の怠惰”を蹴り飛ばし、遠くへ飛ばす。

「お前!!」

 驪竜が眉を顰めて左拳を放つ。

それを盾で受けるとデュバリィは敵との距離を離した。

━━今だ!!

 敵は武器を無くし、隙が出来た。

 そこを突くべく突撃を開始する。

敵の隙を見逃さなかったのは自分だけじゃない。

“白の巫女”も槍を構えて敵に突撃する。

 お互い、ほぼ同時に武器を振った瞬間に気が付いた。

 驪竜が笑っている。

「!!」

 驪竜は空間から新たな武器を取りだした。

 巨大な戦斧だ。

 漆黒の斧を掴み、その刃で巫女の槍と此方の剣を受け止める。

「これは……まさか、概念武装!?」

 巫女が驚愕の声を上げる。

その直後、互いの武器がぶつかった所から凄まじい力の放出が始まった。

「あは、あはは、あはははははははははは!!

貴女も、剣の担い手も本当に馬鹿ねえ!! 私が概念核を回収しに来ただけだと思っていたの!?

面白いぐらい上手く行っちゃったわ!!」

「何が起きて……」

 動けなかった。

 緋想の剣を握った手は柄と一体したかのようになり、体は硬直する。

 三つの刃の間には黒い穴のようなものが空き、突風が体の正面に叩きつけられる。

「極天の力を交えた最大出力の概念を三つも同時、しかもこんな不安定な場所でぶつけたらどうなるかは分かるわよねえ!!

さあ、砕けるわよ!! 概念が! 境界が!! 全部壊してあげる!!」

 驪竜が笑った直後、三つの声が重なった。

 

 

・━━時は歪む。

 

・━━虚構は現実となる。

 

・━━全ては/世界は/剣に収束する。

 

 

 そして閃光が生じ、何かが砕けた。

 




驪竜(りりょう)との出会い。そしてついに物語の鍵が揃う。
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