緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第四十七章・『古代の兵器』 僕にいい考えがあるよ!! (配点:トロイメライ)~

 魔理沙は大きく旋回すると高度を上げ、戦場を俯瞰する。

 そして中規模のドラゴンフライ型怪魔の群れを見つけると一気に降下し、マジックミサイルを叩き込んだ。

 マジックミサイルは数体の敵を貫くと群れの中心に到着し、爆発する。

 爆発の熱と衝撃により敵が吹き飛ぶと手近な奴から機殻箒の両側面に取り付けられた流体レーザー砲で焼き切ってゆく。

━━これが姉小路の時にあればなあ……。

 あの時は碌に戦う事が出来なかった。

仲間たちに守られ、気が付けば魔女隊は自分だけになっていた。

 もっと自分がしっかりしていれば……。

「魔理沙、一人でひたってんじゃないわよ!」

 ナルゼが此方の横に付き、共にドラゴンフライ型怪魔を撃ち落としていく。

「戦闘中に昔のこと思い出すとか、後悔するとか、それただの死亡フラグよ。

同人製作と同じ。まずはやる事をちゃんとやりきる。中途半端すると締め切りに間に合わなくなってデスマーチよ」

 ナルゼは敵に目掛けて線を引くと此方を横目で見ながら笑みを浮かべる。

それに笑みを返すと頷く。

「まったくだ。余計な事考えずにあいつらぶっ飛ばすぜ!!」

 マルゴットが横から敵を強襲した。

 それに合わせて自分とナルゼも降下の速度を速め、敵の群れの中に突入すると三人の魔女は戦場を掻き乱し、次々と敵を撃墜していった。

 

***

 

 曳馬艦内をティータは走っていた。

 トロイメライの迎撃の為に一度は外に出たがミュラーたちが陣地の外で敵を迎撃し始めた為、自分はその間に武器の回収を行うことにした。

 曳馬の艦尾倉庫にはZCFで開発した新型の対武神用装備があり、あれならば敵を倒すことが可能な筈だ。

「わわ!!」

 船体が揺れた。

 頭上から何かが激突する音と、衝撃が生じ、通路の壁が軋む。

「上は大丈夫でしょうか……」

 甲板上ではもう一機のトロイメライと仲間たちが交戦している。

あちらも無事だといいが……。

 そう思いながら駆けていると倉庫区の扉が見える。

 急ぎノブを回し、開けようとするが。

「お、重いー!!」

 船体が軋んでいるせいか扉が非常に重い。

何度か引いてみるがほとんど動かない。

━━ど、どうしよう!?

 ここは諦めて別の入り口から行った方がいいだろうか?

だが確かそっちの扉は最短経路が天井の崩落で通れなくなっており大回りする必要があったはずだ。

『そちらにだれかいるのですか?』

 扉の向こう側から声を掛けられ慌てて応える。

「は、はい! 倉庫に入りたいんですけど扉が動かなくて!!」

『なるほど。では此方からも押してみます。二人で扉を動かしてみましょう』

「はい!!」

 向こう側に人が居てよかった!!

優しい声の女性だが一体誰だろうか?

 ノブをしっかりと掴み、腰を落とすと「準備完了です!!」と伝える。

『では同時に、一で。三、二、一!!』

 ノブを思いっきり引っ張ると扉が少しずつ動き始める。

「あ、あとちょっと!!」

 既に扉は半分開いた。

 全力を振り絞り、一気に引くと扉が急に開く。

「わ!?」

 扉が開いた際に手を離してしまったため、尻餅を着くと「大丈夫ですか!?」と金髪の女性が現れた。

━━はわわ、綺麗な人です……。

 美しい金色の髪。

 透き通った青い瞳。

まるでどこかの王女様のようだ。

 王女様は此方に手を差し伸べると「立てますか?」と訊いてくる。

それに頷き、手を取ると立ち上がった。

「えと、私、ティータ・ラッセルです。手伝ってくれて、ありがとう御座いました」

「いえいえ。私はメアリです」

 そういうとメアリは微笑み。それを見たティータは確信した。

━━王女様です!!

 

***

 

 ティータは倉庫区に入ると僅かに息を呑んだ。

 倉庫区には多くの負傷兵が運ばれており、自動人形たちが治療にあたっている。

中には重傷を負った者もいるらしく、自動人形が数人がかりで応急処置を行っている。

「私も治療をしていたのですが負傷者の数が多く……」

 今のところ死人は出ていないが、今後は分からない。

━━こんな所を敵に襲われたら一溜りもありません……。

 何としてでもトロイメライを撃破し、打開策を考えなければ。

 倉庫区の右舷側に来ると武器を収納したコンテナを探す。

確かここらへんにあったはずだが……。

「あ……」

 あった。

 だが……。

「下敷きに……」

 コンテナの上に棚や資材が積み重なっており取り出すことが出来ない。

「これですか?」

 メアリに頷くと彼女は一番外側にある資材を掴む。

「一つ一つ、どかして行きましょう」

「でも二人じゃ全部は……」

 そう言うとメアリは此方の後ろを指さす。

 なんだろうと思い振り返れば負傷した兵士たちが立っていた。

「どかすんだったら手伝うぜ?」

「外で戦っているのに何もしないなんて嫌だからな」

「そうね。この位はやらないと後で隊長に叱られるわ」

 徳川の兵士たちが次々と集まり始め、気が付けば自分が中心となっていた。

「えっと、あっと……」

 こういう時は、こういう時はぁ!!

「皆さん、よろしくお願いします!!」

 頭を下げ、感謝の言葉を述べると兵士たちが笑みを浮かべた。

「「Jud!!」」

 

***

 

 “曳馬”は敵の側面に回り込みながら機関銃による射撃を叩き込み続けていた。

 銃弾は全て敵の装甲に弾かれてしまい大したダメージを与えられていないが。

「銃弾は確かな希望となり、敵を打ち砕いた!!」

 ネシンバラの幾重言葉と組み合わせることによって直撃した銃弾が爆発し、敵を押してゆく。

 敵は腕を振るいネシンバラを叩き潰そうとするがそれよりも早くはたてが突風を叩き込んだ。

「文ほどじゃないけど、私だって風を使えるのよ!!」

 そう言うと手に持っていた扇を何度も払い、敵に突風を何度もぶつけて行く。

 更にそこへティオとパチュリーによる魔術攻撃が叩き込まれ敵の装甲が徐々に歪み、砕け始めていった。

━━これ、いけるんじゃないの!?

 敵は巨大だが動きが妙に鈍く、対処がしやすい。

 この調子で攻撃を続ければ勝てるのではないだろうか?

そう思っていると敵がパチュリーを正面に捉え、動きを止めた。

「なんかヤバいかも!!」

 嫌な予感は的中した。

 敵の腹部装甲が展開され、砲台のような物が現れる。

そして砲口に光が灯った瞬間。

「!!」

 流体砲撃が放たれた。

 一直線に放たれた砲撃に対してパチュリーは水球の結界を張るが砲撃と結界が激突した時に生じた爆発によって吹き飛ぶ。

 そこへ敵は二度目の砲撃を放とうとしていた。

━━連射できるの!?

 なんとかして敵の砲撃を止めなければ。

だがどうする!?

 そう考えていると何かがトロイメライの足に付着した。

 人形だ。

 爆弾を抱えた人形が右足にしがみ付き、爆発した。

 衝撃を受けた敵は体が大きく揺れ、パチュリーを狙っていた砲撃が空中に向かって放たれた。

「うわ、あっぶっな!!」

 横を通過する砲撃を見ると冷や汗を掻く。

「紫もやし!! さっさと起きなさい!!」

「分かってるわよ!!」

 アリスの言葉にパチュリーは返すと立ち上がる。

 その間にもう一度敵を包囲するがトロイメライも体勢を立て直していた。

 

***

 

「今の方針は非効率的だと判断します」

 “曳馬”は此方の横に立つとそう言った。

「敵の装甲は非常に強固であり、現状あの装甲を破壊できるのはパチュリー様やティオ様の魔術やアーツだけだと判断します」

「だがそれにも問題がある。あの装甲を破壊するには高位の魔術やアーツである必要がある。だけどそれを発動させるには時間が掛かり、その間二人は動けない」

 残りの四人では敵の動きを止めることは出来ない。

 何か別の手があれば……。

「そう、例えば内側から破壊するとか……」

「そう言う事なら!!」

「吾輩たちの出番であるな!!」

「その声は!?」

 艦橋側に二人の人物が立っていた。

 一人は裸に蝙蝠の翼を生やした男。

もう一人はピンク色のスライムだ。

それを見たティオは固まり、驚愕の声を上げる。

「あ、新しい変態!! 変態が増えました!?」

 うん、そう思うよね。普通。

「イトケン君にネンジ君!!」

━━居たんだ!!

 いや、曳馬に乗船していたのは知っていたがどこで何をしているのかは把握していなかった。

というか今までどこに?

「いやあ、墜落の衝撃でネンジ君が天井に叩き付けられて潰れちゃってたんだよ。

身体の一部がダクトに入ったらしくてそれの回収をしてたんだ!」

「うむ、危うく一ミリほど体が縮むところであったな!」

「ちなみにハッサン君は負傷者搬送の手伝いをしてるよ!!」

 説明有難う。

 あと、ほんと、一体どうなっているんだこのゲル状学友……。

ん? ゲル状? ついでにガス状?

「そうか!!」

 突破口が見つかり眼鏡を人差し指と中指で押し上げると、口元に笑みを浮かべる。

「僕にいい考えがある!!」

 

***

 

 書記の作戦を訊くと皆は一斉に動き始めた。

まず仕掛けたのは上空に居たはたてだ。

彼女は敵に突風をぶつけるとわざとらしく前方を飛ぶ。

それに敵が気を取られると。

「凍りなさい!!」

「行きます!!」

 パチュリーとティオが魔術とアーツを放った。

 トロイメライの両足が凍結していき、甲板に固定されると書記が次の指示を出す。

「マーガトロイド君!!」

「巻き付きなさい!!」

 人形を操る流体糸同士を巻きつけ合い、四本の太い縄にする。

それを敵の背後から伸ばし、巻き付けると人形達と共に引っ張り始めた。

「く!!」

 重い!!

 敵は凄まじい力で暴れる為、自分と人形達では動かす事すら出来ない。

だが。

「お手伝いします」

 艦内から自動人形達が現れた。

 彼女たちは縄を掴むと全力で引き、敵を仰け反らせてゆく。

更に“曳馬”以外の四人も加わり縄を引くと、敵が正面に居る“曳馬”に対して腹を向けるように仰け反った。

「そんなに……もたないわよ!!」

「僅かな時間で十分です!!」

 “曳馬”が敵の腹部、流体砲を格納するハッチに向かって機関銃による射撃を叩き込み続けた。

銃弾は寸分狂わず同じ個所を穿ち続け、ハッチが徐々に歪んでゆく。

「!!」

 銃撃が止まった。

 機関銃が銃弾を撃ち尽くしてしまったのだ。

“曳馬”は直ぐに機関銃を投げ捨てると格納用の二律空間から三丁の長銃を取り出す。

 一撃目。

装甲が大きく軋んだ。

 銃を投げ捨て二丁目を手に取り、二撃目を放つ。

ハッチが砕けだ。だがまだ十分ではない。

 再び銃を投げ捨て、三丁目。最後の銃弾を放つ。

 銃弾はハッチを砕き、装甲が甲板に落ちたのが見えた。

「今だ!!」

 書記の指示共にスライムを持ったインキュバスが正面から突撃した。

しかし。

「氷が割られます!!」

 トロイメライは足を固定していた氷を強引に割ると流体糸を引き千切り、インキュバスに腕を叩き付ける。

「おおっと!! あとは頼んだよ!! ネンジ君!!」

 潰される直前にインキュバスはスライムを敵に投げつけ、スライムが腹部のハッチの中に入った。

 それから少しするとトロイメライが止まり。

『おお? これはどっちに行けばいいのであるか?』

『ふむ、このパイプを辿ってみるか』

『む?』

 皆が沈黙し、様子を見守る。

『……とりあえず、この一番太いパイプを切ってみるか』

 直後、トロイメライが爆発した。

 

***

 

 爆発は内部から生じたもので、小さな爆発が連鎖して徐々に大きなものとなってゆく。

そして最後に一度、大きくトロイメライが震えると大爆発が起きた。

 装甲が内側からの衝撃により吹き飛ばされ、宙に舞う。

 赤い炎と黒煙に敵は包まれ、そして沈黙した。

「や、やったの?」

 はたてがそう呟く。

「ですが……イトケンさんと、ネンジさんが」

 ティオは哀しそうに顔を伏せる。

だが。

「いやあ、僕なら大丈夫!!」

「へ!?」

 いつの間にかに無傷のイトケンが立っていた。

彼はティオに笑顔を向けると無事であること証明するように体を動かす。

「僕はガス状になれるからね! あの程度、何ともないさ!!

ちなみにネンジ君は」

 イトケンが指差す先、炎と黒煙を背後に湯気だったスライムが此方に向かって堂々と歩いて来ていた。

 それを見て皆が安堵の息を吐く。

━━さて、これでこっちは片付いた。

 あとは……。

「そっちは頼んだよ。バルフェット君たち」

 曳馬から離れた位置でもう一機の敵と交戦している仲間たちの方を見た。

 

***

 

「え!? あっち終わっちゃったみたいですよ!!」

「本当ですか!? 速いなあ……」

 アデーレと妖夢は全速力で駆けながらそう言葉を交わした。

そして。

「おっと!!」

 トロイメライが腕を振り下ろすと二人は敵の両側面に回り込む。

 妖夢は右膝関節を、アデーレは左膝関節を穿つが刃が弾かれ、上体が逸れる。

そのまま敵の反撃が来る前に敵の背後に移動するとアデーレと合流した。

「いやあ、硬いですねえ」

「私たち、どちらかというと速度重視ですからね……」

 いや、アデーレさんは防御重視か?

まあ兎も角小田原で負傷した二名は今の所敵の気を引く囮役として働いている。

 敵に直接的なダメージを与えるのは……。

「カラミティエッジ!!」

「ふん!!」

 アーツを主体に戦っているレンと物理的にダメージを通しているミュラーだ。

 ミュラーさんの剣、まともに受けたら並の武器なら武器ごと叩き斬られますね。

自分の楼観剣なら折られないだろうがその場合叩き潰されそうだ。

「力だけでは無くその力を振るうための技量もある。

今度、剣の道についてお話を訊いてみたいですね」

 ミュラーが敵の右腕に剣を叩き込んだ。

 装甲に亀裂が入るが腕を破壊するには至らず、そのまま押し返される。

━━やはり決定力不足ですか!!

 ダメージは通っているが敵を倒すには至らない。

 敵が突如振り返ると腹部から砲台を展開させ、横に流体砲撃を放つ。

「うわ!!」

 横なぎの砲撃に対して自分とアデーレは伏せるように避け、そのまま前に進む。

そして砲撃が止むのと同時に駆け出した。

 アデーレがスライディングで敵の下を潜り、自分は跳躍で敵の頭上に乗る。

敵の頭上でもう一度跳躍するとミュラー達が居るところに着地し、振り返った。

「あのトロイメライ、やっぱりどこか壊れているみたいね。前に戦ったのよりは弱いわ」

「ああ、だがそれでも十分脅威だ」

 敵の動きに合わせてもう一度仕掛けよう。

そう判断した瞬間、通神が入った。

『みなさん!! 敵を陣地の前までおびき出してください!! やってみたいことがあります!!』

 ティータの言葉にその場にいた全員が顔を見合わせた。

 

***

 

 曳馬周辺の陣地では徳川の兵士たちが準備を整えていた。

 一列目には術式盾を構えた兵士たちが、その後ろに銃を構えた兵士たちがおり、その間に野戦砲が置かれている。

「よーし、準備完了だ!!」

「この野戦砲、ようやく撃てるわね!」

「今回俺達近接部隊は待機かあ……」

 兵士たちの士気は高く、皆自身にあふれた表情をしていた。

「見えたぞ!!」

 望遠術式を使っていた兵士の声に皆が改めて武器の点検をする。

「俺達の仕事はあくまで敵の動きを止める事だからな!!」

「「Jud!!」」

「近づいて来たぞ!! 全員、構え!!」

 兵士たちは長銃を一斉に構え、野戦砲は近づいてくる白い巨体を狙う。

「よーし、もう少し引きつけて、引きつけて……」

 誘導役をやっていた従士が此方に気が付き、手を振りだす。

「いやいや! 手を振らなくていいから!! 早くどけ!!」

 その場を纏めていた男が従士に横へ逃げろとジェスチャーをするが従士は何を勘違いしたのか親指を上げて謎のドヤ顔をし始めた。

「ちげーよ!! なんでだよ!!」

「なあ、もう撃っていいか!?」

「か、かなり近くなってきたぞ!!」

 リーダー格の男が必死にジェスチャーをするとようやく伝わったらしく、従士が苦笑しながら頭を此方に下げ、横へ跳んだ。

それを見ると同時に。

「ぶちかませ!!」

 銃撃が一斉に行われ、更に砲撃も開始される。

 正面から一斉射撃を喰らった敵は足を止め、その場で防御の体勢を取り始めた。

「止まった!!」

「お嬢ちゃん! 出番だぜ!!」

 兵士たちが二つに割れ、そこからガトリング砲を持ったティータが現れた。

 

***

 

「とと!!」

 重い物を持ったまま飛び出したので思わずバランスが崩れる。

後ろへ仰け反ってしまうと後頭部に何か柔らかいもの接触した。

「クッション!?」

「お支えします」

 メアリだ。

 メアリは此方の両肩に手を乗せ、後ろから支えてくれる。

 そんな彼女に笑顔と共に頷きを返すとガトリング砲で動きを止めている敵を狙う。

「対武神用武装カノンインパルスⅢ!! テストもしていませんが……!!」

 引き金を引くとリング状の銃身が回転し始める。

そして回転が最高速度に達すると。

「うわ!!」

 銃撃が開始された。

 銃撃の衝撃は凄まじく、銃身が上下に大きくブレる。

それを必死で押さえながら敵に攻撃を叩き込み続けた。

━━い、威力は凄いけど、扱い辛いです!! これ!!

 前に使っていたのよりも銃弾が大きくなっており、破壊力が増した。

だがその分銃その物の重量が増え、銃撃の反動も凄まじいものになっている。

携帯武器としてはまだまだ改善点が多い。

 装甲が宙に舞った。

 体の正面を守っていた右腕が砕け、破片や装甲が宙に散る。

次に敵の左腕が砕けると敵はまだ残っていた飛翔器を展開させ、強引に動き射撃範囲から逃れようとした。

「逃がさないわ!!」

 レンが敵を吸引するアーツ、ダークマターを使い敵の動きを防ぐ。

それでも止められるのは一瞬だ。

だが。

━━通します!!

「覚悟してください!! やああああああああああああ!!」

 銃身が赤熱し、薬莢が滝の様に排出される。

 そして最後の一発を放つと同時に敵の前面装甲が完全に砕けた。

だが内部を露出させたものの破壊は出来ていない。

「通らなかった……!?」

「いや、十分だ!!」

 ミュラーが敵の正面に飛び込んだ。

そして渾身の振り下ろしを敵の内部に叩き込むと、白い巨体が一度痙攣したかのように揺れ、そして崩れるように倒れた。

 少しの間、その場にいた全員が様子を窺うと先ほど兵士たちを指示していた男が拳を突き上げる。

「よっしゃああああああああああ」

 歓声はあっという間に全員に広がり、その中で壊れたガトリング砲を地面に置くと脱力しながら座り込んだ。

「はぁ……」

「お疲れ様です」

 メアリも此方の隣に座り、微笑む。

 前を見ればレンたちが此方に戻って来ており、彼女たちに満面の笑みで手を振った。

 

***

 

━━向うも無事に終わりましたか……。

 地上の様子を甲板から窺っていたティオはそっと胸を撫で下ろす。

これで敵を全て撃退した。

特に負傷者を出さずにやれたのは幸いだ。

━━でも、まだ油断は出来ません。

 <<結社>>の後続が来るかもしれないし、今度は怪魔かもしれない。

 少しの間休んだら再び戦闘態勢を整えるべきだろう。

そう考えていた時にそれは来た。

「え?」

 その場の気の変動。

大地を流れる地脈の荒れ。

突然、それが起き、慌てて崩落富士の方を振り返ると驚愕した。

「みなさん!! あれを!!」

 指さす先、崩落富士が光っていた。

 黒・白・緋。

三色の光が混じり合い異様な光を放っている。

「あれはいったい何だ!?」

「時・幻・空……上位三属性の地脈、いえ、流体が可視出来るほどの濃度で放出されています!! このままだと……!!」

 直後、崩落富士方面から凄まじい振動が生じ、山が割れた。

 




トロイメライ戦。そしていよいよ第一部最後の戦いへ!!
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