緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二章・『赤十字旗の下で(Ⅱ)』~

 オズボーンと妖精女王の会談は夕方まで続いていた。

 まずは外界調査の話から始まり関東の事、聖連の事、P.A.Odaの事、そして英国内の貴族派達の事。

 様々な話をしたが主に話していたのはハワードだ。

宰相のオズボーンと会計のハワードが会議をし、時々女王が頷く。

その為、非常に暇だった。

 部下が優秀なのは良い事だ。

だがこうもやる事が無いと……。

━━退屈だな……。

 どうやら二人の話も終わりそうだ。

ここはちょっと。

「宰相、少し右へ移動しろ」

 その言葉に宰相は無表情のまま右へ移動し、ハワードは口を大きく開けて「いや、ちょっと……!!」と言ったが遅い。

王座に備え付けられたスイッチを指で押すと床が開き……。

「は……?」

 ハワードが落ちた。

 足元に出来た穴にハワードが落ち、暫くすると穴の底からハワードが水に落ちた音が聞こえた。

それからとりあえず床の蓋を閉め。

「どうやらスイッチを間違えたようだ。新しく作ったのはこっちだな。うん」

 そう言ってスイッチを押そうとするとオズボーンが口を開いた。

「二度ネタは滑りますぞ?」

「…………っち」

 なんか悔しかったので別のスイッチを押した。

それと同時にずぶ濡れのハワードが戻ってきた。

「まったく、女王陛下、趣味でスイッチを増やすのは止めていただき……はぅあ!?」

 ハワードがまた落ちた。

 それを宰相と共に見ると頷く。

「おお、そうか。これは入口の落とし穴か」

 十個以上あるのでどれがどれだか分からなくなっていた。

 まあ、結果として少し面白かったのでいいか。

「宰相、例の件。今日中に決めておく。明日の代表者会議で宣告するとしよう」

オズボーンは「女王陛下のお心のままに」と頭を下げ、退出しようとする。

その途中で足を止めて、「あと一つ」と振り返った。

「明日の代表者会議が終わり次第、私は関東へ飛びます」

「関東? 何をしに行く?」

「近々関東で開かれる東日本国際会議、そちらに英国代表として出席しようかと思いましてな」

「……それにはオリヴァルト皇子が出席するだろう?」

「確かに、英国からは皇子とシェイクスピア殿が出席される。だが、本当にこの人選でよろしいのですかな?」

 オズボーンの真意を探るように目を細める。

英国代表の二人、“よろしい”か“よろしくない”かなら、“よろしい”だ。

だが。

「オリヴァルト皇子が私の意とは違う事をする可能性があるという事か」

そう言うと宰相は「いかにも」と頷く。

「オリヴァルト皇子は大変優秀な方です。ですが、彼は少々私情に流されやすい。

英国代表として、“英国の意思”を伝えるには私が行った方が良いかと」

「ふん、それは“鉄血宰相の意思”ではないのか?」

「我が意は陛下の、英国の意で御座います」

 狸が。

 そう思った。

 この男、まったくもって油断ならない。

その鉄面皮の下でいったい何を考えているのか。

 だが彼の言う事が正しいのも事実だ。

 関東で行われる会議は東側とその同盟国にとって大きな意味を持つだろう。

そこで英国が道を違わないためにも……。

「いいだろう。宰相、行くがよい。お前が行けば“獲物”が罠に掛かりやすくなるだろうしな」

 その言葉に宰相は「御意」と頭を下げると退出する。

 その背中を見送ると深くため息を吐いた。

 明日の事、その後の事、世界の事。

色々と大きなイベントが続きそうだ。

それを考えると。

「面倒だな」

 そう苦笑した。

 

***

 

 王座の間から出ると灰色の軍服を着用し、水色の髪をサイドポニーにした女性が待っていた。

 彼女は此方に一礼すると後ろに付き、共に歩き始める。

 長い廊下をしばらく歩いて居ると背後の女性が「関東へ向かう航空艦の準備、全て完了しております」と伝えてきた。

それに「ご苦労」と返すと女性が訪ねてくる。

「このタイミングでの渡航、彼らは動きますね」

「それが狙いよ。女王陛下もその事は既に承知済みだ。事が起きたら女王陛下の指示に従い動け」

「了解(ヤー)」と答えると女性は「それにしても」と半目になった。

「いい加減、どうやってあの状況で助かったのか、教えてくださってもいいのではないですか?」

 あの状況。

 嘗てゼムリアで狙撃された時。

あの時、自分は胸を狙撃銃で撃ち抜かれた。

だが。

「秘密だ」

 そう言うと女性はピクリと眉を一度動かしてから表情を正した。

「英国憲兵隊、中々活躍しているようではないか」

「はい。女王陛下の護衛やここロンドンの守備、また貴族派の監視など様々な場所で活動を行っております。正直に言うと人手が足りないくらいですね。

鉄道憲兵隊の時は帝国内の鉄道を用いて迅速に行動していましたが今は飛空艇と導力車による移動が主になっています」

「正規軍との連携はどうだ」

「良好です。

女王派・革新派とは常に連携が出来るようにしております。

ただ極東派、島津兵との連携は上手く行っていませんね。

彼らの軍規や戦術は特殊ですから」

「極東派との連携は今後重要になって来る。彼らとの接触は続けるように」

 現在の英国は二分されている。

 女王派と革新派。貴族派。そして中立を守っている極東派。

 今後の事を考えるなら極東派との同盟ないしはそれに近いものは必須だ。

 ふと、目に留まるものがあった。

 廊下から見えるグラウンド。

そこに立ち並ぶ見覚えのある子供たち。

その中でも一人……。

「……スカーレット卿とⅦ組のようですが。いかがいたしましたか?」

「いや、何でもない」

 再び歩き始める。

その時にもう一度だけ視線をグラウンドに移し、一人の少年を見た。

━━リィン・シュバルツァー。

 あの少年は次の嵐をどう乗り切るのだろうか。

それを考えるのは少し、楽しかった。

 

***

 

 グラウンドに集まっていたⅦ組一同は皆、困惑した表情を浮かべていた。

 突然の大物の登場。

しかもあのスカーレット卿だ。

 レミリア・スカーレットと言えば英国では有名で、妖精女王と三日三晩戦った事や他派閥との対立などをしょっちゅう引き起こしているトラブルメーカーだ。

だがそれと同時に本人の実力の高さ、従う者の多さから英国内でも最上位の権威を持つ存在だ。

 そんな彼女が俺達に用があるという。

━━嫌な予感がするな……。

 その予感は的中したらしくレミリアがサラに何かを伝えるとサラが「リィン、アリサ、ラウラ、エリオット、前に出なさい」と言ってくる。

それに従い四人は前に出るとレミリアの背後に居たメイドが此方と向かい合うように前に出た。

「さて、それじゃあ早速だけれどもあなた達四人にはうちの咲夜と戦ってもらうわ」

「……え!?」

 やはりと言うかなんというか……。

「理由を聞いてもいいですか?」

「理由? そんなの面白そうだからよ」

 本気で言っているのか!?

 いや、この小さな吸血鬼は本当に冗談でこういう事をする人物だと聞いている。

クラスメイト達が皆、口を開いて唖然としていると咲夜と呼ばれたメイドが「お嬢様」と主を窘める。

「あー、面白そうだってのは半分。残りの半分はあんたたちの力を知りたいから。

ちなみにその理由はまだ内緒よ。知りたかったら咲夜に勝ってみなさい」

 “どうするの?”とエリオットが視線で此方に訊くが従うしかないだろう。

だが、戦うのだとしたら。

「あの、俺たちの演習用武器は教室に……」

「真剣を使いなさい」

「…………」

 今度こそ絶句した。

 相手は戦闘人形じゃなく人間だぞ!?

真剣で戦えばどうなるのか、簡単に想像がつくはずだ。

だがそんな此方を見て咲夜は微笑んで首を横に振った。

「ご安心を、あなた方ごときに後れを取るつもりはありませんから」

「……ほう? 言ってくれるな。驕るつもりはないが我らもそれなりに力を付けているぞ?」

 ラウラが表情を正し、メイドと向かい合う。

「でしたら、それを証明してくださいな。威勢だけ良くてもなんの役にも立ちませんわ」

 いつの間にかに全員がやる気になっていた。

 ここまで言われたら引き下がれない。

それにこのメイドが相当の実力を持っているのは確かだ。

「分かりました。この真剣勝負、お受けしましょう。

ですが、スカーレット卿。俺たちの武器は寮にあるので取りにいかなくては……」

「ああ、その事なら心配ないわ。もう後ろにあるもの」

 “後ろ?”と振り返ればいつの間にかにトランクが地面に置かれて並んでいた。

そしてさらにその後ろには自分たちにとって見覚えのある顔が。

「シャ、シャ、シャ、シャロン!? いつの間に!?」

「はい、シャロンはいつでもアリサお嬢様と一緒ですわ」

 トランクの後ろで微笑んでいる銀髪のメイドの名はシャロン・クルーガー。ラインフォルト家のメイドでⅦ組が住んでいる学生寮の管理人となっている。表向きは。

 ひきつっているアリサに皆が苦笑すると互いに顔を見合わせ、トランクに向かい始めた。

 

***

 

 トランクから自分の武器を取り出すと点検する。

 真剣を持つのは薩摩内戦以降だ。

 再び武器を手に取る。

それが意味するのは……。

「リィン様」

 刀を見ているとシャロンに呼びかけられ、彼女の方を向く。

「今から戦う十六夜咲夜はあのスカーレット家のメイド長。数々の死線を潜り抜けてきた猛者で、三征西班牙との戦いではユリア・シュバルツ准佐と引き分けましたわ。

決して、油断しないようにしてくださいな」

「ありがとう御座います。でも、大丈夫です。俺も、みんなも、油断なんか一切していませんよ」

 そう言うと「頼もしいですわ」とシャロンは微笑み、一歩下がる。

 とはいえあのユリア・シュバルツと引き分けた、か。

これはかなり苦戦しそうだ。

 元の場所に戻り、仲間たちと肩を並べると相手の雰囲気が変わっている事に気が付いた。

 最初の、レミリアの傍にいた時に放っていた物静かな雰囲気は消えており、今の咲夜からは酷く冷たい気配を感じた。

「さて、ここから先はお嬢様の知り合いでは無く、敵として対応させてもらうわ」

 敬語を使わなくなった咲夜はスカートの中から一本のナイフを取り出す。

あれが彼女の武器か……。

 相手が武器を取り出したことによって全員に緊張が走り、武器を構える。

するといつの間にか木箱の上に乗っていたレミリアが拡声術式を使って話し始めた。

「じゃあルールを説明するわ。まず咲夜は“能力”を使わない事!

次にあんた達だけど、前衛はアーツの使用禁止! 後衛は使ってもいいわ! ああ、あと戦術なんちゃらも使用禁止ね。

勝利条件は相手が降参するか、私たちがストップをかけるかのどちらか!!

ちなみに私はどっちかが死にかけるまで止める気は無いから!!」

 言葉通り死ぬ気でやれ、という事か。

 久々に感じる戦いの感覚。

背筋が凍る、命のやり取り。

だが、俺達は何時だってそれを乗り越えてきた。

だから。

「正々堂々、いい戦いにしましょう」

「実践だからね。正々堂々やるかは保証できないわ」

 互いに口元に笑みを浮かべるとレミリアが手を掲げる。

そして。

「じゃあ、始め!!」

 戦いの火蓋が切って落とされた。

 

***

 

 先手は此方が打つつもりだった。

だが。

━━速い!!

 メイドが動いていた。

 敵は開始の合図と共に姿勢を低くし、地面を蹴って突撃してきた。

 姿勢を低くしてから地面を蹴るまでの動作が非常に綺麗だった。

無駄が一切なかったため実際以上に相手が速く感じる。

 先手を打たれた以上迎撃を行うしかない。

 腰を低くし、鞘に入った刀の柄に手を掛けると待つ。

 相手が此方の射程に入った瞬間、抜刀するが……。

「!!」

 跳んだ。

 ちょうど刀の先端が来る辺りで敵は大きく跳躍し、此方の頭上を飛び越える。

此方を飛び越えた敵が狙うのは。

━━エリオットか!!

「ラウラ!!」

「承知した!!」

 ラウラがエリオットの前に立ち、敵を迎撃しようとする。

それに対して敵は手に持っていたナイフをラウラに投げつけた。

 ラウラは飛来するナイフを大剣で払うが、敵は既に二本目のナイフを取り出している。

そして、二本目をラウラの前方の地面に投げた。

 投げられたナイフは地面で跳弾し、ラウラの首を狙う。

「く!!」

 ラウラが顔を逸らし、ナイフを避けている間に咲夜は着地した。

そのまま避ける動作を行っていたラウラの横をすり抜け、エリオットを狙うが。

「させないわ!!」

 アリサが導力弓から流体の矢を連射し、相手を牽制する。

 だが止まらない。

 矢と矢の間を咲夜は器用に抜けていき、エリオットに迫る。

━━あの弾幕の中を動けるのか!!

 もう三人は間に合わない。

しかし、時間は十分に稼いでいた。

 既に迎撃の体勢を整えていたエリオットが岩を叩き付けるアーツ<<ニードルショット>>を放っていた。

 迫る岩に対して咲夜は横へ跳躍して逃れる。

そこへラウラが飛び込み、大剣を横に薙いだ。

 敵はそれをナイフで受け、あえて体を浮かせると吹き飛ばされる。

そして空中で後方一回転すると此方から離れたところで着地した。

 それに合わせて此方も陣形を立て直した。

 

***

 

「やるわね……」

 戦いの様子を見ながらそうサラは呟いた。

 あの咲夜というメイド、噂通りの実力だ。

彼女は相手の急所を常に狙い、動いている。

「咲夜様の戦い方は戦士というよりも暗殺者のそれですね」

 そう言ったのは横に立っているシャロンだ。

「まっとうな戦士にとっては一番戦い辛い相手ね」

 特にラウラのようなタイプは咲夜みたいなタイプを苦手とする。

だが。

「ラウラはフィーとの連携でそこら辺熟知しているからね。冷静に対処しているわ」

「それだけではありませんわ。皆さん、とても上手に戦っています。

これもサラ様の教育の賜物ですわね」

「私が教えたのは基礎と心構えだけよ。今のあの子たちの実力は、あの子たち自身で掴みとったもの」

 ダメダメだったⅦ組がいつの間にかに立派になったものだ。

 正直、今の彼らを相手にしたら自分でも辛いだろう。

「それにしてもあの咲夜とかいうメイドも大変ね。彼女、実力を半分くらいしか出せてないんでしょう?」

「ええ、咲夜様の能力は時を操るものだと聞いていますわ。その能力を使えていたらもう少し戦いの展開が変わっていたかもしれませんわね」

 「でも」とシャロンは続ける。

「咲夜様的には嬉しいでしょうね」

「嬉しい?」

「今回の戦いは咲夜様にとっても基礎を鍛え直す良いきっかけになる。

そして何よりも、主から無理難題を押し付けられるのはそれだけ信頼されている証拠。

メイドとして冥利に尽きますわ」

 「そういうもんかしらね?」と苦笑すると戦いに視線を戻す。

 すると一つの変化が生じていた。

それは……。

「成程、そう来たか」

 咲夜がリィンにひたすら肉薄していた。

 

***

 

 咲夜がこの苦境の中取った策は一人に肉薄し続ける事であった。

 敵は一人一人の実力があり、そして良く連携が取れている。

対して此方は一人、それも能力を使えない状況だ。

 この苦境を乗り越えるためには、まず数の優位を無くす。

 鼻と鼻がぶつかりそうな距離でのインファイト。

それを行う事によって他の三人が援護できなくする。

 弓やアーツを使えば仲間に当たるかもしれないし、大剣を振るえば同様に巻き込むかもしれない。

 ナイフを両手で、逆手に持つと相手の急所を狙って何度も攻撃を加える。

 一撃目は首、二撃目は左腋、三撃目は右大腿。

人間は脆い。

動脈を切れれば此方の勝ちだ。

 だが刃は当たらない。

 インファイトではリーチの短いナイフの方が有利。

しかしこの黒髪の少年は刀を縦に構え、上手く迫る刃を弾いていた。

十七撃目。

 相手の右眼球を狙った突きを出した瞬間、敵が踏み込んできた。

それによって狙いが外れ、刃は相手の頬を切り裂くだけだ。

さらに体が正面同士で密着し、互いに止まる。

「あら、もしかして私、このまま押し倒されるのかしら?」

「それをやったら左手のナイフで腹を裂かれるでしょうね」

 相手の刀の刃は此方の右肩に、此方のナイフは相手の腹の辺りにある。

 さて、この状況、どうしたものか。

至近距離で視線を交え、お互いに次の行動を警戒する。

 お互いの息を肌で感じる。

 頬を汗が伝い、顎先へと向かう。

そして、顎先に辿り着いた汗が水滴となって落ちた瞬間、リィンが動いた。

「!!」

 刀が浮いた。

 リィンは刀を手放し、膝蹴りする事によって此方に放ってきたのだ。

それを避ける為に僅かに距離を開けると再び踏み込む。

 成程、こちらの意表を突くための武器の手放しか。

だが。

「得物を手放したのは失敗ね!!」

 この程度、私なら対処できる。

 跳んでくる刀を僅かに体を逸らし、避ける。

 刃がメイド服の右肩部分を裂き、血が迸った。

しかし、これで決まりだ。

 相手は武器を投げた。

 突き出したナイフを防ぐ手立てはない。

「そうでもないさ!!」

 敵が動いた。

 流れるように腕を動かし、迫るナイフを右掌で横から穿つ。

更にそのまま左腕で此方の腕を掴むと、後方に投げた。

「八葉一刀流・八の型<<無手>>。刀を振るうだけが八葉一刀流じゃない。そして!!」

 リィンの背後からラウラが現れ、此方に向かって来ている。

それを迎撃すべくナイフを投げるが、空中で流体の矢に撃ち落とされた。

「やらせないわ!!」

「!!」

━━やってくれるわ!!

 ならば次に来るのは……。

 魔導杖を構えたエリオットだ。

彼は此方に杖の先端を向ける。

「当たったら痛いじゃすまないと思うので、できれば避けてください!! スパークアロー!!」

 魔導杖の先端から一直線に雷撃が放たれ、此方に迫る。

 それを地面に着地したのと同時に跳躍する事によって避けるとラウラが大剣を地面に叩き付けた。

「地裂斬!!」

 衝撃波が放たれ、此方の眼前の大地が砕ける。

それによって動きが完全に止まってしまい。

「ちぃ!!」

 リィンが構えていた。

 重心を低くし、回収した刀を鞘に収めると構える。

抜刀の構え。

八葉一刀流の一撃が来る!!

「八葉一刀流・七の型<<無想覇斬>>!!」

 直後、リィンが迫った。

 

***

 

リィンは自分の攻撃が不発に終わった事を理解した。

 必中のタイミングだった。

だが、すれ違いざまに相手を切り裂くはずだった刃は空振り、宙を彷徨う。

━━そうか、これが彼女の能力か……。

 首元に突きつけられたナイフ。

 背後から感じる殺気。

 敵は何かをして此方の攻撃を避け、一瞬で背後に回り込んだ。

そう言う事だ。

だが、これは……。

「咲夜、反則負け!!」

 レミリアが判決を下し、背後の殺気が収まる。

そしてナイフが首元から離れた。

「お見事です」

 そう伝えると背後から苦笑が聞こえる。

「そちらもね。私の負けだわ」

 振り返った瞬間、咲夜が消え、いつの間にかにレミリアの近くに立っている。

「リィン! 大丈夫!?」

 此方を心配して仲間たちが近づいてくる。

それに頷くと咲夜の方を見た。

「ああ、なんとか無事さ」

 最後、能力を使った瞬間に彼女は己の負けを理解した。

その後の行動は……。

「意外と負けず嫌いですか?」

 そう問うと咲夜が微笑んだ。

「そうかもね。自分でもちょっと意外だったわ」

 此方の背後に回り込み、首にナイフを押し付けたのは主の顔に泥を塗らないようにするためだろう。

本気を出せば、このぐらい出来るんだと。

 咲夜は一度大きく息を吐くと雰囲気を落ち着いたものに変える。

「貴方方との戦いで己の未熟さを改めて実感いたしました。次に戦う事があればお互いに本気で戦いましょう」

「ええ、いつか」

 戦術リンクを使った自分たちと能力を最初から使った咲夜。

本気で戦えばどちらが勝つのか……。

 そう思っていると「はいはい」とレミリアが手を叩いて注目を集めた。

「そこの四人、下がりなさい。あんた達は合格よ。で、残りの五人、前に出なさい。咲夜、まだ行けるわよね?」

「勿論ですわ。レミリアお嬢さま」

 レミリアに言われたとおりに下がり、それと交代するように残り五人が前に出る。

 咲夜もナイフの補充をすると再び前に出た。

 そして互いに向かい合うとレミリアが頷く。

「それじゃあ二回戦目! ルールはさっきと同じ!!

━━━━始め!!」

 号令と共に再び戦いが開始されるのであった。

 




咲夜との相対戦。レミリアの目的とは?
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