緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二章・『遠距離の狙撃者達』 どうもこうも、色々と規格外と判断します (配点:射撃戦)~

 駿府城の外壁上部。

そこに組み立て式のテーブルと椅子を設置し、座っている三人の人物が居た。

 一人は口ひげを生やした男で表示枠に映る梅組合同訓練の様子を面白そうに観戦しており、一人は同じく観戦しているがやや前のめりに、手に汗握っている白髪の少女。

そして最後に椅子に腰掛けテストの採点をしている女性だ。

「おー、天人が切り込んだぞ。こりゃ、いけるんじゃないか? 妹紅?」

 そう男が笑みを浮かべながら白髪の少女に訊くと彼女は頷く。

「ええ、でもまだ勝負はこれからよ」

 白髪の少女━━藤原妹紅の言葉に男は頷く。

「そうだな。まだ始まったばかりだ」

 そう言うとテストの採点をしていた女性が赤ペンを机に置き、顔を上げる。

「……さっきから妹紅はなんでそんなにのめり込んでいるんだ?」

「あー、これな、こいつ輝夜の姫さんと賭け事してるらしいんだわ。全裸と武蔵の姫、どっちのチームが勝つかってな」

 男の言葉に女性は険しい表情をした。

「……おい、賭け事は感心しないぞ」

「大丈夫よ、慧音。賭け事って言っても今日の夕飯奢るって事だから」

「……ならいいが」

 女性━━上白沢慧音は「しかし」と続けると男の方を向く。

「義元公は会議に参加しなくて良かったのですか?」

「ん? ああ、今の俺は今川義元じゃなくて“義元先生”だからな。

竹千代が助けを求めん限りは静観してるさ」

 今駿府城では徳川に加わった各大名たちを招き会議を行っている。

内容は織田戦後の状況報告、そして今後の、北条にどう対処をするかを取り決める。

━━相模の獅子は手強いぞ?

 関東最大の大名、北条家。

その当主である北条氏康は相模の獅子と称されるほどの名将だ。

そこに神州の北条・印度連合、そしてかの早雲公までもいると聞いている。

織田との戦いで大きな傷を負った徳川にとって北条は大きな壁だ。

 だが……。

━━乗り越えるだろうな。

 そうでなくては困る。

 自分は彼らに期待しているのだから。

そう思っていると天人娘が相対中の二人に接近しているのが見えた。

「お? やるのか? 天人?」

 

***

 

 比那名居天子は前方で相対しているネンジとペルソナ君を目視した。

 二人はなにやらポーズを取り合っており。

どうやらどちらがより芸術的なポーズを取れるかで争っているようだ。

━━あれ、ネンジのほうが圧倒的に有利なんじゃないかしら?

 いや、筋肉美でペルソナ君のほうが有利か?

まあ、兎に角。

 駆ける速度を速め、二人に接近し。

「はぁい! ネンジ!」

「む? おお! 天子か? どうだ? 我輩たちと一緒にポーズ勝負をしないか?」

 首を横に振ると同時に右足を大きく伸ばす。

そして一・二・三と踏み込むと跳躍した。

 空中で足を揃え、相手をよーく狙って……着地した。

 ブーツの裏でピンクのスライムが弾け、周囲に飛び散る。

それを確認するとそのまま駆け抜けた。

「じゃーね! ネンジ!!」

 潰れたスライムと呆然としているバケツヘルムに一瞥すると表示枠を開き、一勝したかどうかを確認する。

「…………よし!!」

 

***

 

『オリオトライ様、色々と抗議したいのですがよろしいでしょうか?』

『相対中の人を攻撃しちゃいけません、ってルールは無いし今の有効よ。せこいけど』

 

***

 

 全力で平原を駆け続け、組み立て式の椅子に座っているホライゾンの姿を確認すると腰に提げている機殻剣を引き抜く。

 彼女の隣りに立つ“曳馬”が此方を迎撃しようとするが浅間の狙撃を受け、動けないでいる。

━━いける!!

 そう確信し、ホライゾンに突撃しようとした瞬間、眼前に稲妻が落ちた。

「あ、ぶな!?」

 閃光は大地を砕き、破片が顔を掠る。

 そして即座に構えると自分の左側から衣玖が駆けてくるのが見えた。

「総領娘様! こう来ると思っておりました!!」

 衣玖!?

 流石に付き合いが長いだけあって此方の考えはお見通しか。

だが……。

━━振り切ればいいだけ!!

 駆ける速度を落とさずホライゾンへと向かうと衣玖は右腕を伸ばし、羽衣を構える。

 この距離なら羽衣は此方に届く。

 衣玖の動きを良く見、彼女が羽衣を延ばしたのと同時にブレーキを駆ける。

突然獲物が速度を落とした事により羽衣は空振り、眼前に延びた羽衣を潜り抜け避ける。

 彼女は即座に羽衣を戻すが遅い。

彼女の元に戻る前に自分はホライゾンにたどり着ける。

そう判断した瞬間、右足に羽衣が巻きついた。

「!?」

 何故!?

 何故羽衣が自分の足に!?

そう驚き振り返れば羽衣が折れ曲がっていた。

 自分が潜り抜けた場所で羽衣は直角に折れ曲がり、此方の足に伸びている。

 折れ目がやや青く光っており、それはつまり……。

「重力制御!?」

「はい! 簡単な重力制御ですが、応用すればこんな風に使えます!!」

 そう宣言すると同時に衣玖が羽衣を引っ張り、足を取られ。

「へ、ぶぅ!?」

 顔面から転んだ。

 

***

 

━━天子の奇襲は失敗しましたわね……。

 ネイト・ミトツダイラは浅間から送られて来た情報から天子が衣玖に捉まったのを知った。

「あっちの奇襲が失敗してこっちも奇襲が失敗。

となると……正攻法しかありませんわね」

 誰かに一勝しホライゾンとの相対権を得る。

そうなると自分の相手は……。

「ハァイ! ミトツダイラ、元気ー!?」

「……まあ、こうなりますわね」

 獅子型の戦闘用魔獣に乗った喜美が現われ。

彼女は獅子から飛び降りると空中で三回縦スピンをし地面に着地する。

その時に軽快な効果音が流れたが、これ、前にきみとあさまでの新作に使おうとしていたメロディーではないだろうか?

「……ところで、その獅子、何ですの?」

「何って、戦闘用の獅子よ? ほら、ミトツダイラ、アニマルカーニバル、あおおおんって、あおおおんって、ほら!!」

「しませんのよ!!

じゃ、なくて何でその獅子連れてますの!?」

 喜美は「ペット枠で参加よ」と言ったがこんなペットがいてたまるか。

「というか、貴方、随分と低い忠誠心ですのね」

 ついこの前まで私の騎士になるとか言っていなかったっけ?

この獅子。

そう半目で見ると獅子は額に汗を掻き目を逸らした。

『違うのです。我が主よ』

「…………は?」

 獅子から放たれた余りにも渋い、壮年の男の声に思わず反応が一瞬遅れる。

「今の……」

『私です、我が主よ』

 獅子が此方を見、彼と目を合わせると喜美の方を向く。

「あの……これって」

「Jud.、 私も今日知ったんだけどね。神道術式で動物の声を極東語に翻訳しているらしいのよ」

 相変わらず何でもありですわね! 神道!!

だがまあ、これは有用だろう。

獅子と言葉を交わせるならば戦闘のときに役立つ。

「……それで? 何が違うんですの?」

『私は貴女への忠誠心は微塵も衰えておりません。我が心の中には何時も貴女の貴きお姿が』

 言われてむず痒い。

 こうストレートに言われるとふった罪悪感もあり、ちょっと居心地が悪くなる。

そんな此方の心境を理解してか喜美がニヤニヤしているのちょっと腹立たしいが無視だ。

『今回の合同訓練、魔獣であり梅組の生徒でない私は参加する事が出来ませんでした。

そこでこの方に頼んでペット枠として連れてきてもらったのです』

 成程、そう言う理由か。

戦闘用の魔獣として戦いの場に居たいという事だろう。

『そして此処に来るまでの間に気がついたのです』

「何に?」と訊くと獅子は遠くの空を見上げた。

『私が駆ける度に大きく揺れる二つの山。

━━おおきいっていいよね』

 とりあえず横から獅子の顔面に全力の打撃を入れた。

 

***

 

 平原の北側を銀髪の少女とインド人が互いの位置を変えながら戦闘を行っていた。

 少女は手に持つ太刀を振るい、高速の三連斬りを叩き込むがインド人はそれを体を捻らせ避けて行く。

━━的確な回避!!

 そう銀髪の少女、魂魄妖夢は内心で敵を賞賛した。

 最初はなんというか緩キャラ的な見た目に油断していたが、このインド人、かなり出来る。

 敵は先ほどから巧みに此方の攻撃を避け続け、時折……。

「!!」

 蹴りが来た。

 突然の、回避を行いながら放たれた死角からの蹴り。

それを顔を引いて避けると今度は前へ詰めて来る。

「カレーは、いかがですかー」

 いつの間にかに持っていたカレーを此方にたたき付けようとしており、咄嗟に後ろへ跳躍する事により回避する。

━━流石は梅組!!

 一般生徒、しかもこんなギャグっぽい見た目をしているのにこのインド人、相当の兵だ。

「やはり参加したかいがありました!!」

 今日の合同訓練には無理を言って参加させてもらった。

 武蔵に来てから自分は周りに流されてばっかりで何時もエステルやヨシュアに助けられていた。

あの八雲紫との戦いのときも二人は勇敢に戦い、結果勝利を得た。

 あの時の自分はそれを見ていただけだ。

━━だから、少しでも皆に追いつけるようになります!!

 今日の訓練は自分にとっていい経験になるだろう。

だから……。

「全力で参ります!!」

 笑みを浮かべ、突撃した。

 

***

 

 ホライゾンチームの本陣。

 そこにはホライゾンとネシンバラ、そして銃を構えた“曳馬”が居た。

「さて、いい感じに拮抗してきましたが次の策は何でしょうか? ネシンバラ様」

 そうホライゾンが訊くとネシンバラは笑みを浮かべ眼鏡を指で押し上げた。

「どうすると思う」

 「さっさと言えよ」と“曳馬”が呟いた様な気がしたが、うん、気のせいだろう。

「さっきやられた事をやり返せばいいのさ。今、こっちで動けるのは僕と裏で待機させていたイトケン君。

二人で動いてペルソナ君を倒す。

そしてその後、僕とイトケン君は葵君を倒す! どうだい! 僕の策!」

 そう自信満々に言うネシンバラにホライゾンと“曳馬”は半目になると「……その」と“曳馬”は手を上げた。

「なんと言うか随分と地味……いえ、しょぼ……あ、普通な策ですね。前評判とは随分と違うように思われます」

「……前評判って?」

「Jud.、 武蔵の艦長方からの評判では作戦は何時も見た目重視で人の事考えず、とりあえず一言で表すなら邪魔?」

「…………」

 沈黙したまま固まったネシンバラを放置してホライゾンは“曳馬”を見る。

「そちらはどうですか?」

 

***

 

「そうですね。現在、十三発目の射撃を……」

 咄嗟に銃撃を放ち、遠くで金属の弾かれる音が響いた。

「今ので十四発目を迎撃しました」

ホライゾンが「浅間様の狙撃ですか?」と訊いて来たので頷く。

「非常に正確な狙撃だと判断します。狙撃のタイミングを微妙にずらしてきたり、とても興味深いです」

「“曳馬”様の狙撃も浅間様に劣らない精度だと思いますが?」

「Jud.、 精度だけなら互角です。ですがそれ以外のタイミングや、フェイント、狙撃の連射力などは浅間様の方が上だと判断します」

 実際何度か危ない事があった。

 此方にわざと撃たせ、そこを狙った狙撃や突然の二連射撃など自分の高速思考を使用しなければ対応できない事態が何度も起きている。

「流石は武蔵の射殺巫女。同じ狙撃手として非常に勉強になります」

 そう頷くと突然表示枠が開いた。

『あの? 別に射殺してませんからね? 普段は正当防衛、そして今日は訓練だからやってるんですからね!?』

『でもよー、おめえこの前紫さんズドンするときめちゃいい笑顔してたじゃん』

『あ、あれは彼女は基本的に神道の敵だから!

別によっしゃ全力で撃てるとか、ついでだから新作の攻撃術式全部つぎ込んでみようなんて思ってませんよーぅ。

本当ですよーぅ』

 今も結構いい笑顔なのは伝えないほうが良いのだろう。きっと。

━━それにしてもあの狙撃は見事でした。

 前回勝利できたのは比那名居様の力と浅間様の狙撃のお蔭であった。

人の身でアレだけの狙撃をするのを見ると狙撃用の自動人形として少しだけ己の性能に不安が生じる。

━━今も迎撃に徹してますし……。

 此方から狙撃を行う隙が無い。

 人間的に言えば少し落ち込む、と言ったところでしょうか?

 そう頷いているとスカートの裾を下から引っ張られた。

「?」

 何事かと振り返れば足元に腕が居た。

 右腕は親指を上げると反転し、地面を張って行く。

そして主の許へと戻るとホライゾンの右肩に装着される。

「…………」

 沈黙してその様子を見ているとホライゾンが右肩を回し、頷いた。

「おっとホライゾンとしたことが“曳馬”様を応援しようとし、無意識のうちに腕を外していました」

━━なんと器用な!?

 己の腕を外し動かすのは完全重力制御型の自動人形なら可能であるが、まさか腕に意志が宿るとは!

━━これは一考の余地がありますね!

 今度自分にも出来ないか榊原様に訊いてみよう。

腕を外して独立行動させられればより柔軟な戦術が取れる。

 そう思い遠くの方、相手チームの本陣を見ると声が漏れた。

「あ」

 それから振り返り、出陣準備をしているネシンバラを見る。

「……あの、ネシンバラ様」

「ん? どうしたんだい?」

「誠に言い辛い事なのですが先ほど、一瞬だけ目を離した隙に敵の攻撃がありまして、迎撃が間に合いませんでした。

ですので━━━━そこに居ると当たりますよ?」

 言った直後、ネシンバラの姿が消えた。

 

***

 

 ネシンバラが浅間の狙撃を受け、吹き飛ぶのを見届けると“曳馬”とホライゾンは顔を見合わせた。

「あの、その、今のは……」

「問題ありません。ちょっとした事故です。誤差の範囲内です」

 リーダーがそう言うのならそうなのだろう。

 取り合えず“事故”でいなくなったネシンバラ様は無視し、銃を構える。

 今の狙撃で浅間様にポイントが入った筈だ。

故に敵は大将を狙撃できる。

そしてそれを今止めれるのは自分だけ。

━━つまり私がキチガ……いえ、げど……えっと、ホライゾンチームの運命を握っているわけですね。

 前方、二度目の射撃が来た。

 矢の狙いはホライゾンではなく、自分。

「私を先に無力化しに来ましたか。良い判断です」

 即座に銃撃を放ち、銃弾が矢を空中で弾く。

 即座に次弾を装填し構えると前方から三本の矢が迫ってくるのが見える。

━━三本同時射撃ですか!!

 格納用の二律空間から残り二丁の長銃を出すと迎撃。

銃撃の三重奏と共に矢が弾かれ、新たな矢が突如現われた。

「!!」

 放たれた矢は三本ではなかったのだ。

三つの矢を同時に放ち、それから僅かに遅れて一本を放つ。

四本目の矢は三本の矢の後ろに隠れており発見が遅れた。

━━迎撃は間に合いません!!

 なら回避だ。

 上体を捻り、迫る矢を通過させればなんと五本目の矢が既に放たれていた。

なんという連射能力!

自分の中にある浅間・智のデータを上回った連射力と精度。

━━更に成長なされましたか!!

 自分は上体を捻っており五本目の矢を避ける事は出来ない。

故に重力操作で浮かしていた長銃の一つを咄嗟に前に射出し矢とぶつける。

矢を受け吹き飛んでゆく長銃を横目に手に持つ銃を構える。

「堪えました! 今度は此方の番です……!!」

 そう宣言し、引金を引こうとした瞬間後頭部に強烈な衝撃を受けた。

━━…………は?

 前方へ加速し、宙に浮く体を捻らせ見えたのは自分の後頭部を穿った一本の矢であった。

 どこから!?

 突然の致命打に高速思考をすると一つの結果が出た。

それは……。

「四本目の矢……此方が回避するのを見越して自動追尾術式を掛けてましたか!!」

 そして体は地面に叩き付けられ、一瞬だけ思考が途絶えた。

 

***

 

「よっし!!」

 トーリチームの本陣で浅間・智は笑みを浮かべてガッツポーズを取った。

それから慌てて振り返る。

「よ、喜んでませんよーぅ。ちょっと、気持ちいいぐらいクリーンヒットしたなーと思っただけですよーぅ」

 表示枠越しに皆が半目になるのに冷や汗を掻いていると全裸で椅子に座っていたトーリが「うし」と頷いた。

「これで浅間が二勝だろ? おめえがホライゾン撃ったら勝ちじゃね?」

 それに頷いたのは敵チームのホライゾンだ。

『なんと、ついにホライゾンも浅間様のズドン処女卒業ですか』

 それから暫く沈黙すると彼女は冷や汗を浮かべた。

『ば、ばっちこーい』

「あの、ホライゾン、降伏もありですよ?」

 現状ホライゾンが助かる確率は無い。

無駄に狙撃されるよりは降伏してしまったほうが楽だが……。

『いえ、それは無理ですね。なんか、トーリ様に降伏するといのは凄まじい屈辱のように感じます。

きっと今まで武蔵に負けてきた側もこんな屈辱だったのでしょうねえ』

 何だか遠い目をしている彼女に苦笑するとトーリの方を見る。

「トーリ君、いいですか?」

「ん? まあ、ホライゾンがああいってるならしょうがねえよなあ。

普段の十分の一くらいで頼むわ」

 彼の言葉に「Jud.」と頷き、弓を構える。

 威力は先ほどまで使っていたものの十分の一にし、矢は先端が潰れたものを。

その代わりに直撃後相手を拘束する術式を搭載した。

「では、行きますよー。念のため防御姿勢を取ってください」

 冷や汗掻いたホライゾンが頷き右腕で体を守るのを見てふと疑問に思った。

「ホライゾン、両腕で防御した方がいいと思うのですが……」

『いえ、ホライゾンとしましてもそうしたのですが左腕が行方不明で』

 また外れたんですか……。

 本人の意思と関係なく動くって、それどうなんだ?

まあ何時もちゃんと戻ってくるし大丈夫なのだろうが、左腕は一体何処に行ってしまったのか。

 そう首を傾げながらホライゾンを狙った瞬間、後方で鈍い音が聞えた。

「おごぉ!?」

「え?」

 振り返れば全裸が宙を舞っていた。

 顎に強烈なアッパーカットを喰らった彼は緩やかな弧を描きながら落下して行き、頭から地面に落ちた。

そしてそんな彼の変わりにどう見てもホライゾンの左腕が椅子に座り、誇らしげに親指を立てている。

 平原を静寂が支配した。

 

***

 

・貧従士:『えっと……この場合……』

・不退転:『大将同士の戦いは認められていたわね。で、姫の左腕が総長を倒したわけだから……』

・ホラ子:『おっと、そんな所に腕が。浅間様、回収しておいて下さい』

・あさま:『え? あ! J、Jud!!』

・ウキー:『ふむ、結果が出たな……。ホライゾンチームの勝ちだそうだ』

・天人様:『…………こんなオチありか!?』

 

***

 

 余りにも予想外の逆転撃に今川義元らは沈黙していた。

 そしてトーリチームに賭けていた妹紅はゆらりと体を揺らし、机に突っ伏した。

その様子を見て慧音はカップに入ったコーヒーに口を吐け“やっぱり賭け事はするものでは無いな”と一人内心頷くのであった。




梅組合同訓練その2。梅組は今日も元気です。
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