ウルトラマンジード ベリアルの子ら   作:ヨアンゴ

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第七話「ネクスト・ステージ」Cパート

 

 

 

 既に、銀河マーケットへの興味を失ったらしい光怪獣プリズ魔は、培養合成獣スカルゴモラに狙いを絞り、幾度となく結晶化光線を繰り出していた。

 それに対し、スカルゴモラはウルトラマン同様のバリアを展開し、強烈な熱線を凌ぎ切る。

 怪獣念力という新たな力へ目覚めた妹の頼もしさを、実際に見届けながら。ジードは敵の注意の外から思い切り、プリズ魔の中枢を殴りつけた。

 落下の勢いまで加算したギガファイナライザーによる打撃は、プリズ魔の構造体に罅割れを走らせる。さらに二撃目、三打目と続く必勝撃聖棍による殴打は、確かな損傷をプリズ魔の表面に刻んで行き――

 

 再び光に還ったプリズ魔が、距離を取った地点に出現した時には、その外傷は綺麗さっぱり消え去っていた。

 

「――くそっ!」

 

 思わず、悪態がジードの口から漏れる。

 

 ウルトラマンやその血を組み込まれた培養合成獣と、光怪獣プリズ魔は、同じ光量子情報生命体と分類される種族だ。

 理屈の上では、先程ジード自身がソリッドバーニングからウルティメイトファイナルへと転身した際に、結晶化作用や軽度な外傷が消え去っていたのと、プリズ魔の再生は同じ現象だ。

 だが、ウルトラマンとプリズ魔の系統樹は、人間とミドリムシほどに隔絶している。

 どちらかといえば、原始的な存在に近いプリズ魔は――自身を光量子情報へ分解し、実体を再構成するために要する負荷が、情報構造が複雑化しているウルトラマンやその亜種と比べて、著しく低かった。それこそ、降り注ぐ太陽光から得られるエネルギーだけで、消耗を帳消しとできるほどに。

 故に、プリズ魔は平然と自身の分解と再構成を繰り返し、ギガファイナライザーで負った傷も即座に修復してしまう。それも、際限なく。

 

 ……この白い悪魔を撃破するには、プリズ魔を成立させるグレアム配列が効果を発揮しない状態に追い込む必要がある。

 だが、その一因となるエネルギーの枯渇は太陽の下では起こり得ず、近似した状態に持ち込める低温環境や暗闇を用意する術が、ウルトラマンジードには存在しない。

 

 残る最後の手段は、その配列構造自体を破壊すること。だが、実体化しているところに叩き込む物理攻撃以外は無効だというのに、軽微な損傷は再構成で無意味と化す。一度に広範囲を攻撃できる光線技を実質封じられているということが、これほど歯痒い相手も居ないだろう。

 

 ウルティメイトファイナルもまた、ある意味で無尽蔵の活動エネルギーを有するとはいえ、プリズ魔のような再生能力は持ち合わせていない。疲労とは無縁でも、損耗はするのだ。スカルゴモラの場合は、体力も有限。このままがむしゃらに戦い続けても、徐々にこちらが不利になるのは明白だ。

 それでも、こうして相手に守りを誘発させることで攻撃頻度を落とさせることが、プリズ魔分解酵素という切札の到着までにジードたちの取れる、唯一の対抗策だった。

 

「はぁああああああああああっ!」

 

 雄叫びとともに、ジードは再びプリズ魔へと超音速の打ち込みを仕掛ける。今度は自身の体を独楽のように回転させ、時間当たりの攻撃回数を増やそうと試みた。

 

「(お兄ちゃん、いっけー!)」

 

 脅威を察知したらしいプリズ魔は青いフラッシュ光線でジードの動きを縛ろうとするが、敵の狙いから外れたスカルゴモラがバリアを発生させ、その妨害を防いでくれる。

 その間にさらに加速しつつ、ジードは敵の射線上から逃れた。その勢いのまま、横合いからプリズ魔の角のような頭頂部をへし折ろうとギガファイナライザーを振り回すが――プリズ魔の頭頂部からバリアを避けて放たれた、赤い光の刃鞭に迎え撃たれ、突撃を阻まれてしまう。

 

「なっ――今のは!」

「(今朝見た、ギーストロンの……!?)」

 

 レムが照会した情報によれば、それは地球の化身、ウルトラマンガイアに由来する力。

 兄妹が驚きに、思わず動きを鈍らせた瞬間。攻め手を弾いた赤い光の刃(フォトンエッジ)はその勢いのまま竜巻の如く旋回し、道中にあった家屋やビルを熱したバターのように切断しながら、ジードとスカルゴモラに襲いかかる。

 

〈……なるほど。あいつはただタッコングたちを喰っただけでなく、完成したリトルスターの力まで奪っていたのか〉

 

 さらに、もう一本。同じく地球の化身であるウルトラマンアグルの力、青い光の刃鞭(フォトンクラッシャー)まで追加した斬撃の嵐から、ギガファイナライザーでスカルゴモラを庇うジードの耳に飛び込んできたのは、ペイシャンの感心したような声だった。

 

〈リトルスターが宿主から分離されるのは、ウルトラマンに祈った時だけ――だが、プリズ魔は宿主ごとひとかたまりの光として吸収することで、複数のリトルスターを維持したまま取り込める。しかも、以前の宿主よりも多くの能力を引き出せているようだな〉

 

 かつて、朝倉スイが千里眼とバリアの二つの能力を扱えたように。一つのリトルスターから発現する能力は、決して一つとは限らない。

 ウルトラマンと同じく光量子情報生命体であるプリズ魔ならば、より多彩な能力を、一つ一つのリトルスターから引き出すことができるらしい。

 

「(感心してる場合じゃないでしょ!?)」

 

 ジードと揃ってその猛威に晒されるスカルゴモラの、叱るような声。それに対しペイシャンは、ああ、と短く頷いた。

 

〈こっちの準備はできた。間もなくネオブリタニア号が奴を射程に捉える。有効な距離で酵素ミサイルを叩き込めるよう、足止めをしろ〉

 

 そのための通信と、ちょうどプリズ魔が新たな能力を披露したタイミングと重なったらしい。ジードはペイシャンからの指示に頷き、ギガファイナライザーを操って、四度目となるプリズ魔への突撃を開始した。

 予想外の反撃で作戦が失敗するよりも、事前に手の内を知ることができて良かったと、そう判断するべきか。飛来する光の刃、その単調な攻撃パターンは既に掴めた。それ以上のペースで旋回させたギガファイナライザーで二本の鞭を弾き続け、ジードは厄介な攻撃の注意を自らへと釘付けにする。

 その間に、スカルゴモラもまた直進。プリズ魔が放つ結晶化光線も、物理運動に干渉する青い光線も、スカルゴモラの強力な念動力場が形成した障壁は防ぎ切る。

 だが、次の瞬間。無数の煌めきを凝縮したような、怪しげな光波が障壁越しにスカルゴモラに作用して、その歩みを止めさせた。

 

「(うっ……あぁああああああああっ!?)」

「ルカ! 落ち着いて!」

 

 幻惑光波を受けたスカルゴモラが身悶えるのを見て、赤と青の光の鞭を一度に切り返したジードは、間髪を入れずギガファイナライザーを投擲。牽制のため飛来した赤き鋼をプリズ魔が光量子化して回避する間に、ジードが放ったネオフルムーンヒーリングが、スカルゴモラの正気を取り戻す。

 

「(あ……ありがとう、お兄ちゃん!)」

 

 幻覚から解放されたスカルゴモラが感謝の声を漏らすと同時に、近距離で再出現したプリズ魔がまたも、幻惑光波を照射する。

 だが、ジードにそれを届かせまいと、身を乗り出したスカルゴモラが再びその光を浴びる。

 そして妹も、今度は、正気を奪われるという失態は演じなかった。

 それは、培養合成獣の耐性獲得能力ではなく、もっと単純な理屈――目を閉じ、超振動波現象の応用で、反響音波による感知に切り替えたスカルゴモラが、幻惑するための輝きを直接視ることがなかったという、それだけの理由だ。

 それ以外の攻撃は、先程証明されたようにスカルゴモラならバリアで凌げる。無論、耐久限界はあるが、それを迎える頃には、彼女は既に光怪獣を間合いに捉えていた。

 

「(とりゃぁあああああああああああああっ!)」

 

 目を見開いた時。砕け散る寸前のバリアを、右の裏拳に載せるようにして揮ったスカルゴモラは、近距離の迎撃として突如伸長した青い光剣(アグルブレード)を受け流し。彼女は続けて一歩、左脚を踏み込んだ後に、戻ってきた右拳を立てながら、登るような殴打を放った。

 この数日だけでも、毎日何十回とライハに仕込まれているのをリクも見ていた、太極拳の術理が導く剛なる一撃、進步搬攔捶。

 数多の並行宇宙を震撼させたベリアルの遺伝子を用い、そのベリアルをも越える最強の生命を創造するために産み出された培養合成獣スカルゴモラ。その超身体能力で繰り出す全身全霊の拳打が直撃したプリズ魔は、若かりし日のウルトラ兄弟でも砕けなかったその結晶体に、確かな亀裂を走らせた。

 

 そのまま衝撃に浮き上がったプリズ魔は、次の瞬間、実体を光量子に解かして消え去った。

 それが再び実を結ぶまでに、ジードは手放していたギガファイナライザーを回収。出現と同時に、打ち込みを放つことができていた。

 

「――今だ!」

 

 兄妹の連携が、プリズ魔に反撃よりも再生を選ばせ続けることができるようになった。先に息切れするのはこちらだろうが、しかし今だけは、プリズ魔側も充分に反撃する余裕がない。

 そこへ、プリズ魔に気づかれることなくネオブリタニア号が接近。戦場を有効射程に捉えたところで、その艦体に外付けされたプリズ魔分解酵素を搭載したミサイルが発射され、そして無事に炸裂した。

 

 酵素ガスが充満する中、ジードの攻撃がプリズ魔の外殻を砕く。またも光量子化を行い、完全な姿を取り戻すプリズ魔だがしかし、再出現が明らかに遅くなっている!

 

〈配列効果への阻害は、今のところ再生をやや遅くした程度……この場で仕留めきれない可能性もあるが、最低でも撤退させられる目は出てきた〉

「いや――ここで倒してみせる!」

 

 本来あり得ない、原因不明な日中での出現。捕食したリトルスターを保持し、以前の宿主以上に力を引き出す潜在能力。

 予想外の事態を次々と起こしたこの白い悪魔の無差別な食欲を、これ以上野放しにするわけにはいかない。

 そんな決意とともに、奮起して飛びかかったジードは次の瞬間――またも、予想すらしなかった展開を、目にすることになった。

 

 

 

 

 

 

 その現象を、培養合成獣スカルゴモラは既に見知っていた。

 かつての宇宙植物獣スタンパウロスに始まり。ウルトラマンジードが不在の間、度々襲来した怪獣の中で、何体かが同様の事象を見せていたからだ。

 

 ――光怪獣プリズ魔の中心で炎が弾け、その全身を一瞬だけ、燃えるようなオーラが包み込む。

 

「(お兄ちゃん、危ない!)」

 

 鋭い警告をスカルゴモラが発したのと同時に、プリズ魔が眩く発光した。

 プリズ魔が放ったのは、既に幾度と目にした結晶化光線。

 だが、今まで一条のビームに過ぎなかったそれが――青い中心核のみならず、他に結晶体内に存在していた二つの黄色い光点からも、合わせて発射されていた。

 

「(――っ!)」

 

 防御の間に合わなかったジードの眼前に、スカルゴモラがバリアを発生させて、一撃を防ぐ。

 だが、まだ結晶化光線は二条残る。一発はたまたま射線上に存在していたビルを襲い、残る一発が、無防備なスカルゴモラを直撃する。

 

「――ルカっ!」

 

 スカルゴモラによる防御が功を為し、プリズ魔本体まで肉薄できたジードの攻撃が、すぐに照射を中断させてくれたから。何とかスカルゴモラは、重傷を負うことなく済んでいた。

 だが、ギガファイナライザーの振り下ろしを、プリズ魔は狙い澄ましたタイミングで出現させた光の剣で受け止め、あろうことかそれを完全に防いでみせていた。

 

「……強くなっているっ!?」

 

 刀身を圧し折るべく、ギガファイナライザーを押し込もうとするジードを、プリズ魔は光の鞭でさらに牽制する。そうして距離を取ったところに、再び三条の結晶化光線が放たれて、さらなる後退を強制する。

 ジードも、スカルゴモラも、自前のバリアで直撃を防ぐが――先程までとは異なり、拡散して放たれているはずの結晶化光線は、その一発一発の出力すら向上させていた。

 

〈戦闘中、前触れ無く怪獣の出力が上昇し、さらに戦闘技能まで向上する――ウルトラマンジードが不在であった間、幾度か確認できた事例です〉

「レム、下がってて――これが、あの時言っていた……!」

 

 ネオブリタニア号に退避を促す一方、ジードは帰還直後の情報交換の席で聞いた話を思い出したようだった。

 

「(よくわからないけど……ああいう、怪獣が燃えるイメージみたいなのが見えることがあったの!)」

 

 強化された結晶化光線の威力に、バリア越しでも圧されながら。スカルゴモラは自身の経験を、兄へと伝える。

 

「それで、プリズ魔まで強化された――折角酵素で弱体化させたのに、このままじゃ街が!」

 

 兄の叫ぶ間に、ジードとスカルゴモラ、二体の敵を同時に釘付けにする光線と合わせて、余った三発目が放たれる度に、街が結晶と化して行く。

 光量子情報体である結晶から、光へ解けていく建造物が、次々とプリズ魔に吸収されていく。酵素で弱まった分を、太陽光以外からもエネルギーを賄い補おうとする白い悪魔相手に、スカルゴモラは角を光らせる。

 

「(調子に乗るなっ!)」

 

 砲撃の隙を衝き。プリズ魔を取り囲むようにバリアを出現させ、街と自分たちを守る。

 だが、こちらが反撃へ転じる前に。プリズ魔はまたもその身を光量子へと拡散させ、バリアに阻まれていない地点で再出現し、結晶化光線を放って来る。

 咄嗟に割り込んだ兄が、無防備となっていたスカルゴモラをそのバリアで庇ってくれたものの。一箇所に固まれば、今度は三条の光線が集約され、遂にはウルティメイトファイナルの防御さえも砕いてしまう。

 

「くそ、どうすれば……っ!」

 

 散開し、各々の身を再展開した自前のバリアで守りながら。忸怩たる思いをジードが零すのを、スカルゴモラも同じ気持ちで聞いていた。

 的が一つになれば、防げない威力の三重光線が飛んで来る。分散すれば多少は持ち堪えられ、互いを庇い合うぐらいならできるが、街がどんどん破壊されていく。

 流石に近隣は避難が完了しているが、このまま遮蔽物がなくなった後、光線の射角がほんの少しズレてしまえば――どれだけの人々を巻き込むのか、わかったものでない。

 

「(――内側から攻撃するしかないの……!?)」

〈推奨できません。プリズ魔分解酵素による機能不全の効果は、投与量だけ見ても当初の予定の三十パーセント以下。しかも内部爆破は、本来夜間を想定した戦法です。未だ拡散しても自己を維持できている相手に飛び込み爆破したところで、容易く再生されてしまうでしょう〉

 

 プリズ魔の体内に飛び込めば、外部に発射されているものとは比較にならない結晶化光線に晒されることになる。そんな警告のデータを送りながら、レムが特攻を制する。

 

〈加えて言えば、ルカ。光量子化さえ封じることができれば、光線に頼らずとも、あなたたち兄妹にはプリズ魔の情報体に致命打を与える手段があります〉

〈そうか――音か!〉

 

 レムが続けたのに、ペイシャンが指を鳴らした。

 

〈奴に光学干渉は無効……だが先程、目を瞑ったスカルゴモラが飛び込んだ際の、ソナー探知は機能していた。物質に近い凝縮状態なら、プリズ魔の情報体にも音による物理干渉は有効というわけだな!〉

 

 すなわちそれは、スカル超振動波なら。またジードが放つ、同じく共振周波数で物質を破壊する絶叫攻撃ならば。殴打では回復の追いつく僅かな範囲しか攻撃できないプリズ魔の全身を一気に粉砕し、下手に拡散すれば存在を維持できなくなるほどに、光怪獣を成立させる構成情報全体を破壊できるということだ。

 ただし――それは、プリズ魔の全身に必要な音エネルギーを作用させるまで、その実体が保たれた場合に限られるのだが。

 

〈酵素の働きが残っている間なら、怪獣念力で全身に圧を加えれば、理論上は奴の拡散を阻止できるはずだ〉

〈ですが、その場合は出力が足りません。出力で勝るジードは逆に、細かな応用でスカルゴモラに劣っています〉

 

 解決策を見出したブレーン二人の討論が交わされる間に、スカルゴモラの張っていたバリアがまたも限界を迎えた。

 再展開までのクールタイムを狙うように、結晶化光線がスカルゴモラの肌を灼く。

 

 結晶化作用そのものは、怪我の功名で早々に耐性獲得できているが――要は、干渉される度に、効率良く体力を消耗して自己治癒する、抗体持ちのような状態に過ぎない。

 このまま、体力を削られ続ければいつかは限界を迎え、スカルゴモラも結晶化させられることは避けられない。

 そこでさらに、赤と青、二条の光の刃まで疾走し。無防備を晒すスカルゴモラの体表を切り刻み出血させる。

 致死の光が降り注ぐ最中へ、また割り込んで庇ってくれた兄が、さらに癒やしの波動を浴びせてくれる。しかし、鎮静効果を帯びたその光でも掻き消せないほどの不安と、それを補おうとする闘争心が、スカルゴモラの中で膨らんで行く。

 

 再び、三条が束ねられた結晶化光線がジードのバリアをも打ち砕く。兄が身を守る術を取り戻すまでの時間を稼ごうと、スカルゴモラはレムたちの言葉を信じ、牽制の飛び道具としてスカル超振動波を発射する。

 反射されて来た超音波を聞き分け、プリズ魔の構造体の固有周波数を特定したスカルゴモラが放つ破壊音波の奔流に、プリズ魔は確かに全身の軋むような様子を見せるものの。微かに亀裂が走ったところで、その姿を光に変えて、蓄積されたダメージを捨て去ってしまう。

 

「(この……っ!)」

 

 痛みを知らない、とばかりの無機質な怪獣の挙動に、スカルゴモラの苛立ちが募る。

 再出現したプリズ魔が次々と放つ結晶化光線が、またジードとスカルゴモラ、そして星山市へと降り注ぐ。

 

 ……辺り一帯は文字通り、既にプリズ魔に平らげられてしまっていた。

 

 遮蔽物がなくなった今、戦闘中に次々と発射する角度を変えるプリズ魔の光線が、避難しようとする車の渋滞や、徒歩で逃れようとする人の波にまで及び始め――飛行能力を持つ機敏なジードが先回りすることで何とか防ぐものの、その守りも限界が近づいている。

 援護のために放つ再びのスカル超振動波も、やはりプリズ魔は砕かれる前に分解と再構成を繰り返してしまい、埒が明かない。

 

 ――そんな状況の果てに、スカルゴモラは激高した。

 

「(いい加減にしろぉーっ!!)」

 

 そうして、遂に怒りを解き放ち、叫びを上げた時だった。

 闘争本能の昂りに合わせたように、スカルゴモラの胸に備わったカラータイマー状の器官が、誰の目にも明らかな輝きを発したのは。

 

「――なっ!?」

〈……どういうことだ?〉

〈そんなはずは――〉

 

 兄やペイシャンのみならず。レムすら驚愕したような声を発するのを、初めて聞いた気がしたが。

 その時は、脳内に走ったイメージのまま。新たに目覚めた力を初めて行使することに、スカルゴモラの意識は向けられていた。

 

 ……それが、自らへ組み込まれた遺伝子に由来する力ではないことに、まだ気づいていないまま。

 

 

 

 

 

 

 ウルトラマンジードの眼前で、培養合成獣スカルゴモラの胸から拡がった輝きが、全身の角から一斉に天へと迸った。

 その現象が、何を引き起こすのかを知らぬまま。今も逃げ遅れた人々を庇い、結晶化光線を防いでいるという事実さえも、忘却しかけてしまいそうなほどに。ジードはスカルゴモラの胸に宿った光にこそ、意識の大部分を奪われていた。

 

「なんで……どうして、ルカにリトルスターが!?」

 

 かつてこの宇宙と融合していた、ウルトラマンキングのエネルギーの結晶体、リトルスター。

 確かに、キングが宇宙と分離した後にも、今朝の怪獣たちのように。既に宿っていた光が遅れて観測可能になる例はあるとしても――新たなリトルスターが発生することは、あり得ないはずなのに。

 プリズ魔のような特性は、培養合成獣スカルゴモラには備わっていない。他の宿主から奪うなんてこと、能力的にも、ルカの性格的にも、あり得ないはずだ。

 だが、ならば、何故――――?

 

 数々の予想外の最後に叩きつけられた、特大の疑問を前にして。ウルトラマンジードと化した朝倉リクの思考が迷走している間に、その変化は完了していた。

 何もない空で弾けた、黄金の光。それは球状に拡がっていき、スカルゴモラを中心に、ジードやプリズ魔を包み込んで、星山市の風景から壁のように切り離し――そして、本当に空間が断絶したのだ。

 

「何が――っ!?」

 

 驚愕している間にも、ジードはプリズ魔がまたも放った結晶化光線の前に飛び出した。

 謎の空間――見渡す限り、赤土色の発光する物質に充ちた大地と、オーロラのような光が満ちている空、その二つしかない世界。そこに敵と味方だけを引き込んだスカルゴモラが、まるで能力行使の反動を受けたように無防備を晒したところへ。プリズ魔が周囲の変化に一切頓着せず、結晶化光線を撃ち込んでいたのだ。

 三条が束ねられた強烈な光線。ウルティメイトファイナルが展開する強靭なバリアでも、一撃しか持ち堪えられない恐るべき威力から妹を庇ったジードは、予想外の結果に瞠目した。

 

 これまで何度と破られたバリアが――三重の結晶化光線の着弾に、平然と耐えていたのだ。

 

〈リク、ルカ。その空間は、メタフィールドです〉

 

 隔離された空間にも、レムの声はジードライザーを介して届いていた。

 

「メタフィールド……?」

〈ウルトラマンネクサスが展開する、戦闘用不連続時空間のことです。現実世界から隔離されると同時に、ウルトラマンの力を高める効果があるとされています〉

 

 プリズ魔の攻撃を防ぎきれた理由をジードが理解すると同時に、レムも幾つかの謎が解けた、と報告を続ける。

 

〈ネクサスは、複数の宿主の間を移ろう光であるウルトラマンと伝わっています。リトルスターにも、その特性が顕れていたのでしょう〉

 

 つまり、キングが去った後にこの宇宙に現れたルカが、最初の宿主というわけではなく。

 以前にネクサスのリトルスターを発症した者が別に存在し、その誰か、あるいはそのまた次の誰かから、やがてルカにネクサスのリトルスターが自然と継承されていたのだと――そういった真相であったらしい。

 

〈おそらく、ルカが怪獣念力に目覚めたのも、リトルスターを宿したことで、ウルトラマンに由来する遺伝子が活性化した影響だったのでしょう〉

 

 それこそ、大地の化身(ウルトラマンガイア)のリトルスターを宿したアーストロンが、大地の怒りの化身とも称されるギーストロンへと自己進化(ヴァージョンアップ)したのと同様に。

 リトルスターの発症、それ自体が齎す刺激が、培養合成獣スカルゴモラの新たな力を目覚めさせたのだと語るレムは、その仮説を補強するための証拠を付け加える。

 

〈怪獣の襲来が続いたのと、時期的にも一致します〉

「つまり……こいつもルカを狙って――!」

 

 本来大人しくしているはずの日中に、プリズ魔が出現したのはやはり、リトルスターに惹き寄せられていたからのようだ。

 思えばずっと、プリズ魔が結晶化光線を浴びせる相手としてスカルゴモラを優先していたのも。単なる生存には余分な欲望のまま、今度はルカの命ごと、その光を奪おうとしたための――っ!

 

「(そっか……怪獣たち、私を狙っていたんだ……)」

 

 二つのリトルスターを取り込んで、なお飽き足らぬ強欲な悪魔へと、怒りが沸騰しかけたその時。どこか力ない調子でスカルゴモラの思念が漏れたのを、兄は聞いた。

 

「ルカ……?」

「(――ううん、大丈夫。守ってくれてありがとう、お兄ちゃん)」

 

 呼びかけで、正気に返ったようにスカルゴモラは首を振ると――その視線を、今、彼女の宿した光を狙う、恐るべき怪獣へと向け直した。

 

「(ここなら、街の被害も心配ない――今度こそこいつをやっつけちゃおう、お兄ちゃん!)」

「――ああ!」

 

 妹の呼びかけに、ジードは力強く頷いた。

 

 向き直った兄妹に対し。直線的な攻撃は通用しないと悟ったらしいプリズ魔が、空中を這うように移動しながら、赤と青の光の刃鞭を左右同時に繰り出して来る。

 対して、妹を庇うように前へ出たジードは、これまでより軽く感じられるようになったギガファイナライザーを操って、プリズ魔の繰り出す光の刃を捌いてみせた。

 その最中、再び放たれる結晶化光線。三重の破壊光線を片手で展開したウルティメイトファイナルバリアが遮断して、横合いから連携して迫るフォトンエッジとフォトンクラッシャーの連撃を、ギガファイナライザーで弾き返す。

 

 そんな攻防を繰り広げている間に、突然、プリズ魔の移動が停止した。

 

「(――捕まえたっ!)」

 

 手応えを告げるのは、ジードに守られていた間、精神統一を続けていたスカルゴモラのテレパシー。

 ジードのみならず、術者としてメタフィールドの補正を受け、出力を向上させたスカルゴモラの怪獣念力。それが全方位から余すことなく、強烈な圧力を加えることにより、一時的にプリズ魔の動きと光量子化を封じ込めていたのだ。

 

「(お兄ちゃん、合わせて!)」

「よし――!」

 

 スカルゴモラの角が震える音を聞いて、ジードも喉の調子を整える。

 次の瞬間、プリズ魔の実体が有する固有振動数に周波数を揃えたジードの絶叫攻撃、ウルティメイトロアーと、スカルゴモラが角の音叉から増幅して放つスカル超振動波が重なり、同時に光怪獣の全身を呑み込んだ。

 膨大な音エネルギーを浴びせられたプリズ魔の全身が、共振現象を起こして超高速微細振動を開始。それに震える構造自体が耐えきれずに、次々と亀裂を走らせる。

 

 だが、砕け散る前に。最後の力を振り絞ったように、プリズ魔は青い破壊光弾(リキデイター)を、スカルゴモラ目掛けて発射した。

 咄嗟にジードが前に出て防ぐが、その動作で兄妹の二重奏は途絶えた。バリア越しでも強烈な爆発に体勢を崩したところで、集中の乱れたスカルゴモラの怪獣念力による拘束を脱したプリズ魔は、全身に無数の亀裂を走らせながらも、這々の体で距離を取ろうとした。

 

〈光量子化できなくなっている……もう一息だ、今なら奴を倒しきれるぞ!〉

 

 レムを介しているのか、ペイシャンもまた、状況を察知して通信を飛ばしてきていた。

 

〈急いでください。メタフィールド内であれば取り逃がすことはないでしょうが、その空間を維持するためにはルカの体力を消耗しています。過去の例では、平均三分が限界とされていますが、リトルスター由来の能力の上に、初使用です。限界時間を長く見積もるべきではありません〉

 

 牽制の――もう一本ずつしか撃てない様子の結晶化光線を防ぎながら、二人の解説に頷いた直後。

 ジードの青い瞳は、発光するプリズ魔の向こうに、在り得ざるものを見た。

 

 

 

 

 

 

 ジードが異変に気づいたのとほぼ同時に、スカルゴモラもまた、自らの生み出した空間に出現した異物に気づいた。

 

「(――どうして、あの子が!?)」

 

 それは、あり得ないはずの存在だった。

 スカルゴモラがメタフィールド展開時に巻き込んだのは、味方であるジードと、撃破すべきプリズ魔のみ。それ以外の何者も、この世界には招いていないはずなのに。

 

 プリズ魔の後退する先には、小さな白い影が存在していた。

 しかも、目を凝らせば、その正体は――あの元星公園前で出会った、修道服に身を包んだ少女だった。

 

 彼女がここに存在する理由が、不慣れな己の手違いかもしれないと焦ったスカルゴモラは、慌てて怪獣念力を行使した。プリズ魔に反撃した際に巻き込んでしまうことがないように、彼女とプリズ魔の間にバリアを展開し、同時に念動力で、少女を包み安全な場所へ動かすために。

 だが、その時。またも信じられない手応えが、スカルゴモラの脳裏を走った。

 

 女の子を包み込もうとした念動力場が、切り裂かれたフィードバックが、その脳を揺らしていたのだ。

 しかも、その感覚は――スカルゴモラにとって、覚えのあるものだったからこその、二重の驚きが襲いかかってきた。

 

「(リガトロンの……鎌……!?)」

 

 たった今脳裏を走ったのは。思い浮かべたそれに、怪獣念力の拘束を無効化された時と、まるで同じ感覚だった。

 そのために一瞬歪んだ視界が、正常に戻った時。スカルゴモラはさらなる異変を目の当たりにした。

 

「(え……っ!?)」

 

 スカルゴモラが念力を行使したのと同時。プリズ魔の行く手に先回りし、少女を庇おうと降り立った、ウルトラマンジードのその背後で。

 修道服の少女は――その背から、先端に鉤爪を備えた、八本の黒い触手を生やしていた。

 

「(お兄ちゃん、気をつけてっ!)」

 

 結晶化光線を被弾しながらも、それどころではない異常を前に、スカルゴモラは警告を発した。

 だが、それを受けたジードが、状況を把握し身構えるよりも早く。触手から光の膜のような物を展開して、歪な翼として拡げた少女は自ら――弾丸のような勢いで、バリアを避ける軌道を描いてプリズ魔へと飛んで行き、罅割れた隙間から、その内部へと侵入していた。

 

「な――っ!?」

 

 モノトーンの長い尾を引いて飛翔する姿を、辛うじて目撃しただけとなったジードは、何が起きたのかを理解しきれていない様子だった。

 一部始終を見守っていたスカルゴモラにとっても、それは同じことだった。

 

 そうして、異形の少女が潜り込んだその先――瀕死の重傷を負っていた、光怪獣プリズ魔は。

 スカルゴモラもジードも、今は攻撃を加えていないというのに、カタカタと震え出し。賛美歌のような鳴き声を、音の大小をめちゃくちゃにして発しながら、体内に灯していた核となる青い生体光を、激しく点滅させ始めた。

 まるで、限界が近いウルトラマンの、カラータイマーであるように。

 

 異様な光景の圧力に、兄妹が呑まれていると――やがて、プリズ魔の体内から光が消えて、歌が止んだ。

 次の瞬間、中から迸った稲妻とともに。長大な白い尾が、その無機質な骸を貫いて飛び出した。

 

「うふ、うふふふふふふふ……!」

 

 プリズ魔の外殻を震わせ、幼い――しかし人間の童女が発するには大き過ぎる笑い声が、外へと漏れ出る。

 

 そして、衝撃的な光景は、まだ終わらない。

 

 続けてプリズ魔の全身を、内側から食い破って伸びた四対の黒い触手――何十倍にも巨大化していることを無視すれば、まさにあの少女の背から生えていたのと……そして、かつて戦った、究極超獣のそれと瓜二つの形状をした触手が反り返り、その先端をプリズ魔の残骸に突き立てると、何の遠慮もなしに引き裂いた。

 

「ごちそうさま――!」

 

 そうして、卵の殻を脱いだ雛のように。プリズ魔に隠れていた中から、捕食者がその真の姿を現した。

 文字通り八つ裂きに引き千切ったプリズ魔の残骸を、光に還しながら――爪を介してその触手の中へと吸収して行く存在は、究極超獣ベリアルキラーザウルスを連想させる形をしていた。

 だが、違う。触手の数が倍も多いとか、そんな程度の問題ではなく。二周りほど小さなシルエット以外は、余りに容姿がかけ離れていた。

 

「ベリアル融合獣……!?」

 

 ジードが、逼迫した様子で疑問の声を発した。

 

 ――それは金色の鎧を身に着けた、細身の白い竜だった。

 体色は屍蝋のような白を基調としつつ、全身に赤いラインを添えた黒い斑点模様を走らせていた。

 籠手と一体化した両腕は長い爪を備えているのに、後ろ脚には指もない。先端が漆黒の三日月状で、一定の周期で互い違いに回転するアンテナのような、独特の一対の角を頭部に生やした、二足歩行の異形の竜。

 

 それと酷似した姿を、培養合成獣スカルゴモラも朝倉ルカとして知っていた。

 スカルゴモラと同じ、ベリアル融合獣――かつてウルトラマンジードと交戦したその一体、サンダーキラー。

 

 だが、サンダーキラーの体色――首から尾の先端まで、背面で表出していた血の滲んだような赤い色素が、黒と見紛う濃い青に入れ替わっていた。さらに、ちょうどスカルゴモラの背中の八本角と同じ位置から生える先述の触手や、その後ろに備わった未成熟な翼のような器官。両の肩当てには無数の棘を備え、さらには右手同様の巨大な鉤爪が左手にも備わっているという、細部の違いも無視できない。

 

〈感知されるエネルギーの組成は、ベリアル融合獣のものとも似ていますが、決定的に異なってもいます〉

 

 そんな兄妹の疑問に答えるように、状況を分析していたレムが告げる。

 

〈この存在は、ベリアル融合獣よりも、ヤプールが作る超獣そのものと――そして、あなたの方が近いようです、ルカ〉

 

 謎の怪獣――否、超獣の胸元には、蛾とも、隙間を埋めた異形の斜め十字架とも見えるような赤い模様が浮かんでいて。その中心に嵌められた、スカルゴモラの物と同じ、紫色の球体からは……寸前まで、プリズ魔の中に囚われていたはずの赤と青の双つの輝きが、蠱惑的に瞬いていた。

 

「これで……お姉さまとおそろい」

 

 謎の超獣は、金色の兜に覆われた無貌の頭部を、スカルゴモラの方へと向けた。

 目がない顔からの、見えない視線を浴びると同時に。レムの解説から、培養合成獣スカルゴモラは――そしてウルトラマンジードは、一つの確信染みた予感を、その胸に抱いていた。

 立ち尽くす光の巨人と、培養合成獣の双方へと。メタフィールド内の張り詰めた空気を全く気にしていない様子で、怪獣を越える生物兵器として創造された超獣は語りかける。

 

「やくそく、したよね。お兄さま、お姉さま」

「(お兄さま、お姉さまって――!)」

「……まさか」

 

 

 

「ねぇ、いっしょにあそびましょ?」

 

 

 

 その言葉とともに。新たに出現したベリアルの子――究極融合超獣サンダーキラーザウルスは、同じ遺伝子から先んじて造られていた、二つの生命へと。

 表情のないその顔で、無邪気に、不敵に、笑いかけていた。

 

 

 




第七話Cパートあとがき



 ここまでお読み頂きありがとうございます。
 いよいよ公式時系列との整合性がガチガチな時期を抜けた先のネクスト・ステージということで、今回からはさらに独自色を強めています。公式と矛盾はしないというのは公式が言及していないところを全て独自解釈しても良いという意味ではないですが、はい。
 ということで、タイトル的に予想されていた方も多いと思われますが、遂に公式で一切存在の可能性について言及されていない、本作独自の新たなリクくんの妹が出てきちゃいました。
 一応、今後公式で非ベリアル融合獣のサンダーキラーが登場した際に、肩書が違うと嫌なので完全に別存在にしたい、という意図で少し捻った設定としておりますが、TV放送されている作品のノベライズ想定と言いながら、恐ろしく操演に向いていない造形ですね(今更)。また、独自設定や独自解釈ながらもリトルスターやベリアル融合獣が話の軸になるのはジードの二次創作らしくなって来たかなという気持ちもしております。

 公式様の設定や展開と可能な限り齟齬が出ないようにしよう、という心がけ自体は変わらないつもりですので、どうか今後ともよろしくお願いできれば幸いです。



 以下、現時点で言及可能ないつもの公式設定との乖離を言い訳する独自設定の解説、という名のいつもの雑文。



・メタフィールド
 拙作中ではメタフィールド内でウルトラマンが強化される、とレムが述べていますが、実はあくまで「ウルトラマンネクサスが本来の力を発揮できるようになる」止まりで明言されていない設定なのを、対となるダークフィールド系列の亜空間内では「闇の巨人やスペースビーストが強化され、ウルトラマンの力が減退する」という設定の拡大解釈した形になります。本物ではなくリトルスター由来の能力なので微妙に違う、というのは本編でも度々見られた描写ということで、ご容赦ください。


・レムが言及するジードがスカルゴモラの念力に出力で勝り、応用で劣るというのは、本編中でウルトラ念力を用いた技がまるでなく、超能力戦士という側面も特に描かれていないための拙作内での設定になります。バリアやスラッガー等、ベリアルの息子だけはあり、ジード自身もウルトラ念力を使えることは間違いないはずなのですが、一応(ロイメガなんか本体が念じるだけで相手を倒せても良いぐらいの素材なんですが、本編では披露されませんでしたね……)。



ウルトラカプセルナビ


・光怪獣プリズ魔
身長:35m
体重:1万8000トン
得意技:プリズ魔光線(結晶化光線)


 光が極限まで圧縮され、物質化された怪獣。
 初めてその存在が確認されたのはM78ワールドの地球を、『帰ってきたウルトラマン』ことウルトラマンジャックが防衛していた頃。
 南極の氷の中に閉じ込められていた光生命体で、世界各地の灯台を襲う。結晶化光線を放ち対象物を光の結晶体に変え、消滅せしめる。昼は活動しないが、夜は光を放つものを狙う習性がある。外からのあらゆる攻撃が通用せず、ジャックをも苦戦させた。
 南極に閉じ込められていたことから冷気が弱点の一つと見抜かれるもなお耐え抜き、そこへ自らの身体を小さくしてプリズ魔の内部に飛び込んだジャックのスペシウム光線により、急激な熱膨張を起こしてようやく撃破された強敵。

(ここまでが公式の映像作品に登場した個体の設定であり、以下は、拙作独自の解釈により付与された設定)

 光量子コンピュータの理論と同様に、光を情報伝達の手段とし、その膨大な処理能力で物質的な干渉力まで獲得することで活動する、光量子情報生命体の一種。

 光の結晶である体は強固であるのみならず、その単純さ故に、外部からの光学干渉は基本的に餌として全て無効化・吸収してしまう。
 さらに、日中活動しない間、姿が消えるのは、日光に満たされている間は捕食範囲を拡げるために拡散し、その姿が光量子に戻っているため。

 自身という光量子情報体を凝縮し、外部の存在を光量子情報に変換して取り込まなければ情報代謝を維持できない夜間と異なり、太陽から充分な光量子を得られる日中ならば結晶化せずとも存在できる=日中ならばいつでも光量子化することができるため、結晶体の強度のみならず物理攻撃もほぼ無効化、さらには再結晶化することで結晶体を新生し、それまでに受けた外傷をなかったことにしまえる恐るべき能力を持つ。

 本来、昼間は太陽光を浴びているだけで満足していたのをリトルスターの輝きが惑わし、昼間でもなお実体化して個別捕食に走らせる異常行動を招いた。その結果、本来披露されるはずのないその真価を、文字通り白日の下に晒すこととなった。

 さらにこれらに加えて、結晶化光線で物体を結晶化/光量子情報化させて吸収するという食性から、リトルスターを宿していた生物を捕食する際、分離も霧散もさせずリトルスターごと取り込むことができたため、ウルトラマンに祈る以外の形でのリトルスターの除去・後天的な獲得に成功している。
 なお「祈り」と区分できるような精神活動は行わないため、本来プリズ魔に取り込まれたリトルスターの回収は不可能となる。

 最終的に、自身の光量子情報を維持するグレアム配列の構造自体に大打撃を受けた後、究極融合超獣サンダーキラーザウルスが同じく光量子情報生命体の怪獣リガトロンからラーニングしたエネルギー吸収能力によって、二つのリトルスター諸共に捕食される最期を遂げた。



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