本日放送の『ウルトラマントリガー』第14話、また展開被りっぽい描写があってたびたび運命を感じますね……!
拙作も現時点では2クール構想なので、まず間違いなくトリガーに先に完結されるでしょうが、今後もこういうことがあるのか楽しみです。
……地球人類が存在するのとは違う、異次元の世界。
その支配者である怨念は、静かな思索に耽っていた。
……あなたは確かに、私たちより遥かに大きな闇の存在――だけど、それだけでしかない!
「……認めてやろう鳥羽ライハ。我らもまた変わらねば、先には進めぬということをな!」
ちっぽけな地球人如きに敗北した際、浴びせられた侮蔑の言葉を、異次元の支配者は是とした。
暗黒の化身、異次元人ヤプール――その勢力は、もう幾星霜を重ねた長い年月、増すことはないままであるということを。
敗れ去る度に、ヤプールは怨念の力で強くなり、蘇り続けた。個を捨て、肉体を捨て、概念と化し、滅びを越えた。
到達点として、ヤプール全ての怨念を結集した最強の戦闘形態である、究極超獣の創造にも成功した。
だが、その後も。ヤプールは一度も勝利を掴むことなく、敗北を続けて来た。
究極超獣を生み出してからというもの。ヤプール自身のパワーアップや、既存超獣全般のヴァージョンアップは続けてきたものの――革新には、恵まれなかった。
同じく陰の気の結晶たる宇宙の歪み、幻影宇宙帝王を利用しても。能力を向上させた究極超獣を、何度生み出しても。ヤプールは敗北を重ね、かつてのような、征服者の地位からは転落したままだった。
それは決して、ヤプールが手緩くなったためではなく。ウルトラマンキングの巫女が告げたように、ヤプールには、既に極めた闇しかなかったからだ。
発展の袋小路に陥ったままでは未来永劫、敗北し続けるだけ。
ならば、どうするか――答えは決まっている。
「これより、新たなる究極超獣の合成を開始する――!」
底上げを続けるだけではなく、到達点と定めた極限こそを突破する。
限界を越えるため、ヤプールはこれまで避けていた、幾つもの新たな試みに挑んでいた。
自らの器として産み出す従来の究極超獣、その肉体に宿ることなく、ただの素材として超獣製造機に溶かし。
かつて
そして、手を出すことを避けてきた天敵、究極生命体の因子を組み込まれた、怪獣使いたるウルトラマンの遺伝子を、強大な二つの存在、さらにこれから奪い取っていく数多の力を繋ぐための触媒として、厳重に制御した上で注ぎ込む。
……今からヤプールが産み出すのは、次世代の究極超獣だ。
禁忌としたレイオニクスの遺伝子を組み込み、今までにない力に手を伸ばしながら。さらに仮想敵に備え、初めての完全自律思考を――すなわち正と負、陰陽の揃った心を宿した、今までにない一個の生命としての超獣を、造り出す。
……最初は平坦な心だろうと、他者のそれを後から闇に染めることなど、ヤプールの得手とするところに過ぎない。
丹念に育てれば、充分コントロール下に置くことができるはずだと。緻密な計算の上で、ヤプールは新たなる最終兵器の育成に心血を注いだ。
「まもなくだ! 次代の究極超獣が生まれ、新たなる滅亡の邪神として羽化し――自らの心で、全てのウルトラ戦士を! 全てのレイオニクスの末裔を! そして、ベリアルの子らを抹殺するのだ!」
稼働する超獣製造機を前に、暗黒の征する未来を思い描いていたその時、ヤプールは気がついた。
自らの居城とするこの異次元空間に――ヤプールと、その配下である超獣以外の何者かが、新たに存在しているということに。
「――なっ、貴様は……っ!?」
次元規模の怨念の集合体として存在する異次元超人ヤプールが、焦燥のまま振り返る。
その時を境に。異次元は暫しの間、またもその支配者を喪うことになった。
……それが、ほんの数日前のことで。
ヤプールによって産み落とされた新たな超獣は、今。同じ遺伝子から先んじて造られていた、二つの生命との邂逅を果たしていた。
◆
戦闘用不連続時空間、メタフィールド。
ウルトラマンネクサスのリトルスターを受け継いだ培養合成獣スカルゴモラが生み出した、存在と非存在の可能性が変化し続ける亜空間。
その一角で、ウルトラマンジード・ウルティメイトファイナルは妹とともに、突如出現した異物と対峙していた。
「――待ってくれ。君は、何者なんだ?」
隔絶されたはずの世界への侵入者。
かつてのベリアル融合獣と似通った姿に、究極超獣の特徴を併せ持った生命体。
幼い少女の姿で、そして体高五十メートルを越える異形の竜としての正体を現した今もまた――リクとルカの兄妹を、「お兄さま、お姉さま」と呼ぶ謎の存在に対して。
立ち尽くしていたウルトラマンジードは、強烈な胸騒ぎを覚えながらも、何とか疑問の言葉を絞り出した。
「わたしは究極融合超獣サンダーキラー
果たして、ジードの問いかけに対し。八本の黒い触手を蠢かせる青白い竜は、自らを『超獣』と宣った。
「ヤプールがベリアルの血から作った新しい究極超獣で……お兄さまとお姉さまの、妹だよ」
そして、予想した通りの――外れていて欲しかった正体を、口にする。
ウルトラマンとレイブラッドを憎悪する異次元の悪魔・ヤプール製の生物兵器にして、リクたちと同じ、ベリアルの子。
その出自が、意味することは――
「だから……ねぇ、あそんで? お兄さま、お姉さま」
「(待って……待ってよ)」
この後予想される展開へ戦慄するジードと、入れ替わるように。あるいはまだ、この現実を受け入れられないがために。
姉と呼ばれた
「(遊ぶ、って。あなたはいったい、ヤプールから何を命令されているの……?)」
「なんにも」
スカルゴモラの思念に、サンダーキラーSは呆気なく首を振って答えた。
「ヤプールはお兄さまとお姉さまをまっさつするために、わたしを完成させようとしていたけど……作りはじめてすぐ、いなくなっちゃったから」
だからヤプールのことなんてどうでもいいと、そう語る超獣の姿に、ジードは思わず緊張が緩むのを感じた。
「君は……ヤプールに従っているんじゃ、ないのか?」
「うん、そうだよ」
ジードの問いかけに、サンダーキラーSは淀みなく頷いた。
――なんだ。そういうことなら、話は別だ。
敢えて、自分たちと同じ血を引いた超獣を産み出し、ジードとスカルゴモラを抹殺するための刺客として差し向けて来た……なんて、悪意に満ちた手法、ヤプールならやりかねないとは思ったが。いや、現に企んでいたそうだが。彼女の言葉が真実なら、どうやらそれは既に失敗していたらしい。
それなら、本当にただ、新しい妹が会いに来てくれただけで――家族を苦しめていた光怪獣プリズ魔との戦いにも駆けつけてくれたと、そういうことなのだろう。
安心して、大きく一息吐いたジードは、ゆっくりと新たな妹に呼びかけた。
「何だ、そういうことなら……ありがとう、色々と助けてくれて」
「お兄さま……! ふふ、どういたしまして」
ジードが受け入れる姿勢を見せたからか、サンダーキラーSは声に喜色を滲ませて、返礼の言葉を口にした。
代表して喋るジードの様子を見ながら、スカルゴモラも異を唱えないのは、彼女も同じ気持ちだからだろう。
〈……リク、油断しないでください〉
「レム、わかってる。でも、まずは話を聞いてみよう」
ジードライザーを介し、亜空間まで通信を届けるレムの助言を敢えて振り払い、ジードはサンダーキラーSの様子を窺うこととした。
果たして。新たな妹を名乗る超獣は嬉しそうに、期待のまま、一本の白い尻尾と、八本の黒い触手を揺らしていた。
「じゃあ、あそんでくれるの……?」
「約束していたもんね。次に会ったら、って……それで、何して遊ぼうか」
彼女を製造する最中に、ヤプールが居なくなったという気になる情報もあるが――既に何度も待たせて、こちらの質問に答えて貰ってばかりだ。
だから、今度は相手の希望を尋ねてみようとしたジードは、続く返答に間の抜けた声を漏らすことになった。
「怪獣ごっこ」
「え……っ?」
「怪獣ごっこ、しましょ」
「いや、怪獣ごっこって……」
そもそもごっこも何も、自分たちは本物のウルトラマンに怪獣と超獣じゃないか、とジードは内心でツッコミを入れてしまった。
だが、兄の困惑した様子に気づかないのか、サンダーキラーSは淡々と続ける。
「見てたよ、わたし……二人とはじめて会った時。よその子たちが、きょうだいで怪獣ごっこしていたの」
その景色のことは、ジードもよく覚えていた。それを見たルカが、沈んでいた表情を輝かせたのも。
新たな妹だというこの超獣にとっても、どんな理由であれ、それは確かな思い出となっていたようで。
「だからわたしも、怪獣ごっこがしたいの。それがきょうだいのあそびかたなんだよね?」
「……いや、それは……」
別にそれだけではない、と思いながらも。そういう遊びをしている子供達が居ることを否定するのも躊躇われて、ジードはつい言葉を濁す。
――でも、ごっこなら良いのかな、と思いかけた時には、既に。
「それじゃあ、しょうぶだ! ウルトラマンジード、スカルゴモラー!」
究極融合超獣が伸ばした触手が、四本ずつ、ウルトラマンジードと培養合成獣スカルゴモラに襲いかかってきていた。
「ちょ――っ!?」
抗議の声を出し切る前に。超音速で迫った触手を、迎撃すべきかも迷っていた間に、四肢を絡め取られて。
その触手が纏っていた高圧電流に痺れさせられながら、驚異的な膂力で締め上げられたジードは、同様の状態のスカルゴモラともども、軽々と宙に持ち上げられてしまっていた。
「べりあるじぇのさんだー」
そして次の瞬間、さらに強烈な雷撃が、ジードとスカルゴモラに注ぎ込まれた。
「――うわぁあああああああああっ!?」
「(きゃあああああああああああっ!?)」
敵意も、殺意も、害意も感じられず、故に対応が遅れていた兄と姉に対して。サンダーキラーSは容赦なく、父ベリアルに由来する電撃技を、その触手から流し込み続ける。
「ルカ――! この、やめろ、離せ……っ!」
「えぇー? ……はーい」
スカルゴモラの苦しむ姿に、感電していたジードが思わず語気を強めると。不服そうな様子ながらも、サンダーキラーSは頷いて、触手を撓らせて二人の身柄を投げた。
その巨体が赤い空を切り裂いて、兄妹揃ってメタフィールドの大地に転がる前に。スカルゴモラを受け止めようとしたジードは、一瞬、視界が金色に染まると、元の青空の下に自分たちが戻ってきたことを知った。
「あら――お姉さまの作ったせかい、きえちゃった」
サンダーキラーSが景色の変化へ気を取られている隙に、ジードはスカルゴモラと大地の間に身を潜らせ、妹と星山市、その双方が受けるダメージを和らげることが間に合った。
「(お兄ちゃん、大丈夫――!?)」
「……平気だ。ルカは、休んでて」
身代わりになったジードを、痺れたままでも、慌てて体の上から退いたスカルゴモラが気遣おうとしてくれる。それを制しながら、ジードは身を起こした。
もちろん、光怪獣プリズ魔の戦闘から引き続き、究極超獣の先制攻撃を受けて、全く無傷というわけはないが――その条件は、スカルゴモラも同じ。
むしろ、プリズ魔からの被弾数が多く、何よりその生命力を亜空間へと変換し、その維持が叶わなくなったスカルゴモラの方が消耗しているのは、真っ直ぐ立つことも覚束ない様子を見れば明白だった。
「――やめるんだ、サンダーキラー……」
ザウルス、まで言い切るには、名前が長過ぎた。
本人は遊び感覚だとしても、危険過ぎる行為を迫る超獣を制止しながら、スカルゴモラへ治癒光線を放とうとしていたジードは振り返ったその時、自由になった触手が既に、自分たちを照準していることに気がついた。
「じゃあ、こんどはわたしのおほしさま、見せてあげるね――!」
張り切る様子の究極融合超獣の胸にある、カラータイマー状の器官。そこに浮かんだ赤と青の輝きが、それぞれ左右に伝わって行き――彼女の末端となる八本の触手、その鉤爪の中央が発光する。
「ふぉとんえっじ! ふぉとんくらっしゃー!」
一瞬、上を向いた触手の先端から伸びた光の刃が、鉤爪が振り下ろされるのに合わせて鞭のように伸び――ジードとスカルゴモラ目掛けて、八条の光線となって降って来た。
「――っ!」
咄嗟にジードは、ウルティメイトバリアを展開。回復を阻止され、消耗したままのスカルゴモラもまた、余力を振り絞った怪獣念力で光子障壁を重ねるようにして生成する。
だが、寸前まで戦っていた強敵プリズ魔が使っていた際の、さらに四倍となった光の刃は消耗したスカルゴモラの光子障壁を易々と切り裂く。その分威力を減衰しながらも、ウルティメイトバリアにまで強烈な負荷を加えてくる。
「(この、おい、妹!)」
「なぁに? お姉さま」
「(こんなことやめろ、おまえ! 全然遊びじゃないよこんなの!)」
防御を続けるジードと代わるようにして、スカルゴモラがサンダーキラーSを叱りつける。
そうすると、ウルティメイトバリアを襲っていたフォトンエッジとフォトンクラッシャー、赤と青の光子の奔流がたちまちに消え去り、ジードは力みを解くことができた。
「そっか。そうよね……」
自慢していたリトルスターの輝きを、どこか寂しそうに見つめる究極超獣。
あまりに消沈するものだから、見ているジードもどこか、居た堪れない気持ちになっていると、またサンダーキラーSの声が響く。
「お兄さまもお姉さまも、さっき見たばっかりだから、楽しくないよね……」
「(いや、そういう意味じゃなくてね……)」
ズレた理解を示す究極融合超獣に向けて、何と言ったものか、ジードと同様に戸惑うスカルゴモラ。
危険だからやめろ、と伝えるのが間違いないのだが――困ったことに、光怪獣プリズ魔から奪った二つのリトルスターから得た力、ウルトラマンガイアとアグルの必殺光線を八発も同時に浴びせてきながらも、やはりサンダーキラーS自身からは、何の害意も感じ取れない。
究極超獣の力を発揮するのが危険であるということを、彼女自身が認識できていないと見受けられるのだ。
「……こんな攻撃を受けたら、僕らでも大怪我しちゃうよ」
ならば、どうしてやめなければならないのか――それを伝えるところから始めようと、ジードは語りかけ始めた。
「もしかしたら、怪我じゃ済まないかも……とにかく、凄く痛いから、やめて欲しい」
「どうして?」
そこで、サンダーキラーSは小首を傾げた――そこに、何の悪意も含まずに。
「どうして、って……痛いのは、誰だって嫌だろ」
「そうなの? わたしを作っている時、ヤプールは言っていたんだよ? 今までの超獣は痛みを感じる心がなかったから、だめだったって」
呆気に取られそうになったジードの言葉に、サンダーキラーSは素直な様子で問いを返した。
「だから、痛みを感じられる方が、いいんでしょ?」
「――離れろ、ウルトラマンジード、スカルゴモラ!」
その時。街角に出現した新たな巨影が既に、青い光を蓄えていることを。相手に呼びかけられてようやく、ジードは気がついた。
「ゼナさん――!?」
駆けつけたのは、時空破壊神ゼガンと――それを駆るAIBの上級エージェント、シャドー星人ゼナだった。
ゼガンは既に、胸部の主砲のチャージを終えていた。
「究極超獣だろうと、この攻撃が防げないことは既に判明している――!」
プリズ魔という脅威の襲来に対して、相性上完封されてしまうために待機していたゼガン。それが続けて出現した究極融合超獣への追加戦力として、たった今参上したらしい。
直前の、ジードたちとサンダーキラーSのやり取りはおそらく、聞こえていないまま。
「待って――っ!」
そしてジードが制止の声を掛けるより早く、ゼガンの主砲、時空転送光線が発射された。
それはベリアル融合獣サンダーキラーがジードを苦しめた、正面からの光線を吸収し撃ち返す反射技・キラーリバースの発動も許さない、角度とタイミング。
究極超獣ベリアルキラーザウルスが見せた、次元に穴を空けることによる防御も、同じく空間構造体に干渉するこの光線の前には意味をなさない。
故に、間違いなく直撃し――その光線の威力で傷つけ、もしかすれば時空の彼方へと追放してしまうかもしれないという結果を、ジードが想起した、その頃には。
「きらーとらんす」
サンダーキラーSは、口走った単語を合図に、その姿を変化させていた。
「プリズ魔・ぷりずむ……!」
ゼガントビームが放たれたと同時。全身を白く眩い――まさに光怪獣プリズ魔を想起させる結晶状に体表を変化させたサンダーキラーSは、時空転送光線を浴びても傷一つ負わず、その光を消し去るように吸収してしまった。その中に含まれていた、時空の因子の働きまで無力化して。
ジードと、スカルゴモラと、ゼナとゼガン、四者が揃って驚く中で。精緻な水晶の彫刻のようになったサンダーキラーSは、そのまま触手の一本をゼガンへ向けた。
「ぜがんとびーむ」
そうして、その単語を口走ったと同時に。ゼガンが先程放ったのと瓜二つの青い輝きが、サンダーキラーSの触手から放たれた。
突然の事態に、回避行動の間に合わなかったゼガンを、究極融合超獣が放った時空転送光線が直撃。被弾に苦鳴を発するゼガンを、続けて発生した次元の裂け目が呑み込んで、呆気なくこの時空から追放してしまった。
「……あ」
リトルスターもろとも、プリズ魔を取り込んだだけではなく。その光を捕食する特性まで再現を可能とし、さらにはそれでゼガントビームを吸収し、我が物として扱ってみせる。
そんな恐ろしい能力の片鱗を見せたサンダーキラーSは、元の姿へ戻った後になって気づいたようにして、ジードとスカルゴモラへと顔を向けてきた。
「――今の怪獣さん、お兄さまたちのおともだち?」
「(……そうだよ。ゼガンは私の友達だったのに、よくも――!)」
仲間であることは間違いないが、とゼナのことを思い浮かべていたジードの隣で、何度もゼガンと共闘したスカルゴモラが肩を震わせていた。
「そうなんだ……じゃあ、なかまに入れてあげたらよかったのかな?」
姉と呼ぶ怪獣から怒りを向けられていることに、気づいているのかいないのか。究極融合超獣は、呑気に過去を省みる。
「――でも、おともだちもああだったから、やっぱりいいのね? 怪獣ごっこしても!」
それから、一人で勝手に納得した様子のサンダーキラーSは、再びその触手の群れを走らせた。
「く……っ!?」
スカルゴモラを連れて逃げることはできない、攻撃の速度と密度。
妹を庇って再びウルティメイトバリアを展開したジードだったが、触手の鉤爪が直接触れに来ると、その打撃力以上に光子障壁の強度が低下することに気づいた。
〈どうやら、
状況を訝しむジードの疑問に答えるように、解析した現状報告をレムが行う。
〈プリズ魔の能力と違い、キラートランス……ウルトラマンビクトリーを模倣したヤプールの技術を用いていないのは、最初から備わっていたのか、肉体変化を要さずに再現できるからかは不明ですが、あの爪に触れるだけでエネルギーを奪い取られてしまいます〉
このまま触手に襲われ続ければ、すぐに防壁を突破されることを悟ったジードは、苦渋の決断で片手をバリアから外した。
「――ウルティメイトリッパー!」
空いた手で作ったのは、高速回転する手裏剣状の切断光輪。エネルギーを光線ではなく、刃の形に凝縮した特殊な攻撃だ。
今の時点で、見て取れる範囲では。サンダーキラーSの攻撃力は、あの触手が大部分を占めている。
それを切り落とし、鎮圧することを選んだジードは、妹を名乗る究極融合超獣に対して光輪を投げつけた。
しかし、苦悩に満ちた一撃は、呆気なく。黒い触手が、一瞬で白い結晶状に変化したかと思うと、そのまま吸収される形で消え去ってしまったのだった。
「――しまったっ!」
「お兄さま……! やっとあそんでくれるのね――!」
決意の反撃が、むざむざと吸収されて終わってしまったことを、ジードが悔やむと同時に。
一方的に仕掛けるだけではなく、遂に反撃を受けた事実を、むしろ相手をして貰えたと喜びに変換したサンダーキラーSは、一度触手を引っ込めた。
「うれしい……お兄さまが教えてくれたわざ、いっぱいためさなきゃ――!」
狂喜したように叫ぶサンダーキラーSは、再びその触手を放射状に展開した。
「うるてぃめいとりっぱー!」
そうして、サンダーキラーSの八本の触手、そのいずれもの先端に、ジードが先程投擲したのと同型の光の巨大手裏剣が出現し、剥き出しの電動丸鋸のようにして高速回転し始める。
「そぉーれっ!」
「(ひぇっ!?)」
触手の撓る、遠心力まで載せて。投擲するのではなく、手持ち武器のようにして叩きつけてくるのを、ジードはギガファイナライザーで受け止める。巨大な光輪が迫る恐怖に思わず悲鳴を漏らすスカルゴモラを背に庇い、ジードは迫る猛攻を弾き続ける。
だが、捌けたのは最初の四本まで。次を止める前に、最初にウルティメイトリッパーを弾かれた二本の触手がジードの両腕に巻き付いて、ギガファイナライザーを保持する力を阻害し、五本目の触手が閃く勢いのまま、赤き鋼を投げ出させた。
「(お兄ちゃん、危ないっ!)」
無手となり、拘束され、隙を晒したジードを襲う六本目を、スカルゴモラが最後の力を振り絞ったバリアで防いでくれた。だがただの一撃で強度限界を迎えたバリアは砕け散り、その奥では――
「これでわたしのかち――!」
七発目と八発目のウルティメイトリッパーを融合させ、一際巨大な――それこそ大きさだけならばあのウルトラマンオーブの最強形態、オーブトリニティのトリニティウム光輪に並ぶサイズの凶器を生み出したサンダーキラーSが、それを保持する二本の触手を思いきり振り被り終えていた。
そうして究極融合超獣は、息を呑む光の巨人と培養合成獣目掛けて。二キロメートルを越す上空から、超音速で触手を振り下ろし――
「――やらせるかよっ!」
そこに、横合いから駆けつけた銀色の流星が、巨大な光輪を弾く様を、兄妹は揃って目撃した。
「――ったく。別件で来たっていうのに、いきなり賑やかじゃねぇか」
「……あなたは、だぁれ?」
巨大ウルティメイトリッパーを弾かれ、八本の触手を縮めて間合いを改めたサンダーキラーSは、乱入者への誰何を発した。
だが、ウルトラマンジードと……培養合成獣スカルゴモラは、大地を揺るがし降り立った、巨人の正体を知っていた。
「俺はゼロ――ウルトラマンゼロだ!」
翼のような銀色の鎧。そして巨大光輪を弾いた手甲と一体化した剣を、左腕のブレスレットへと変化させながら。すっくと立ち上がるとともに、究極融合超獣へと高らかと名乗りを上げたのは――一月ぶりにこの地球を訪れた、ジードの一番の戦友である光の巨人、ウルトラマンゼロだった。
◆
「ウルトラマンゼロ……知らない名前」
「この無敵のゼロ様を知らないとは――さては潜りだなてめー」
触手をくねらせるサンダーキラーSと最前線で対峙しながら、突如現れたウルトラマンゼロは、小馬鹿にした様子で鼻を鳴らした。
「……おまえこそ何者だ。ベリアル融合獣なのか、それともヤプールの――」
「わたしは究極融合超獣サンダーキラー
返答に、流石のゼロも驚きを隠せない様子でジードとスカルゴモラを振り返った。
「――兄妹喧嘩……って様子でもなさそうだな」
「うん。怪獣ごっこしているだけだよ」
「随分過激なごっこ遊びだな。……ジードもルカも、ボロボロになってるじゃねーか」
「うーんと……それってだめなの?」
「――おいジード、それとルカ。とりあえずこいつ、代わりに躾けさせて貰うぞ」
「待って、ゼロ……」
拳を鳴らすゼロに、兄は返答に困っている様子だった。スカルゴモラもまた、立っているのがやっとの状態で、適切な回答が思いつかずに困惑する。
「――何にせよ、もうやめろ。近所迷惑だ」
「なんだかヤなかんじ……」
一方、金色の兜に包まれた表情のない顔に、ムッとしたような気配を漂わせたサンダーキラーSもまた、ゼロへの嫌悪感を口にした。
「あなたとはあそびたくないから、どこか行ってよ」
「それはこっちの台詞だ。大人しく退かないっていうなら、腕尽くで大人しくさせてやるぜ!」
言うが早いか、ゼロはサンダーキラーS目掛けて駆け出した。だがその時には既に、出迎える究極融合超獣も攻撃態勢に移行していた。
プリズ魔の破壊活動で生まれた更地を走るゼロに対し、サンダーキラーSは口から三日月型の光刃・ライトニングカッターを連射する。
対して歩幅を変化させ、狙いを狂わせることで躱したゼロが、爆発に紛れて空へ飛ぶ。同時、彼の頭部に装備された宇宙ブーメラン・ゼロスラッガーが脱離して、ウルトラ念力に操られて飛翔。サンダーキラーSの触手を狙うが、前列の二本にあっさりと弾き返されてしまった。
「べりあるですさいず」
ゼロスラッガーを払った触手がそのまま閃き、ベリアルキラーザウルスも見せたウルトラマンベリアルの得意技、鎌状の切断光線が、上空のゼロ目掛けて繰り出される。
究極超獣が扱うのは初見のはずの攻撃を、ゼロは余裕綽々で躱してみせる。しかし光刃の飛来は一度で止まず、二度、三度と、ライトニングカッターと変わらぬ連射性で発射され続け――無敵を自称するゼロをして、回避し続けることに専念させられる。
〈サンダーキラー
「――何!?」
八度続いたベリアルデスサイズの投擲を凌ぎ、反撃に転じようとしたゼロを、レムの警告が制止したその時。烈風がスカルゴモラたちを叩いた。
それこそが、ゼロの驚愕したもう一つの理由。人間の姿でプリズ魔に飛び込んだ際と同様、触手の間に虹色の光の膜のような物を展開したサンダーキラーSは、それを翼の代わりにして、その巨体を宙に浮かばせていたのだ。
「わたしも飛べるんだよ……!」
「空を飛ぶエレキング……それに、未発達だがあの翼――まさか!?」
サンダーキラーSが音速突破の衝撃波を残しながら迫るのに、ウルトラマンゼロは珍しく隙を晒した格好となっていた。
だが、前列の触手が攻撃態勢へ入る前には集中を取り戻し、縦横無尽に走るフォトンエッジと、プリズ魔が扱っていたのと同じ結晶化光線の殺到を、地上への流れ弾を出すことのない、計算し尽くされた飛行でゼロは躱していく。
「さんだーですちゃーじ!」
尾の先端から、全身に纏っていた電流を、サンダーキラーSは本体左腕の爪に集約。かつてのベリアル融合獣であれば、ただ爪から高圧電流を流し込むだけの技だったはずが、膨大な稲妻でその五指を巨大化させたような形を作って振り抜かれ、触手に取り囲まれたゼロへと襲いかかる。
「甘えっ!」
逃げ場がないかと思われたゼロは、左腕のブレスレットを発光させる。盾として顕現させたウルティメイトイージスでサンダーデスチャージを受け止めたゼロは、その下を潜ってサンダーキラーSの背後を取った。
対してサンダーキラーSは、尻尾から再び膨大な稲妻を迸らせることでゼロを牽制。ゼロが攻めあぐねた隙を衝き、両肩の棘の群れ、ザウルススティンガーをミサイルとして次々と発射する。
「――ルナミラクルゼロ!」
そこでイージスを呼び戻したゼロは、そこに宿っていた光を我が身に取り込むことで、その姿を青く塗り替えた。
ウルティメイトブレスの力でルナミラクルゼロに転身したゼロは、再びゼロスラッガーを発射。双子の刃はゼロの身体を離れた途端、彼の超能力の働きで無数に分裂し、ザウルススティンガーの弾幕を切り刻んで全弾撃墜してみせる。そのまま無数のゼロスラッガーは、サンダーキラーSが開いた次元の落とし穴による防御を回避する軌道を描くと、究極融合超獣本体へ襲いかかる。
刃の群れを触手で弾くも、翼代わりに飛行しながらでは流石に余裕がないのか、サンダーキラーSは地上へ降り立つ。そして振り返りながらサンダーデスチャージを再発動すると、巨大な雷の爪でゼロスラッガーの群れを掬い上げるようにして打ち弾いた。
「きらーとらんす」
跳ね返されたゼロスラッガーを頭部に再装填したゼロが迫るのに対し、サンダーキラーSは背後の空間を割ってまたも異次元の穴を露出させると、触手の内の三本をその中に潜り込ませた。
「バッカクーン・ている」
そして、勢いよく触手が戻ってきた時。変化したその先端は、無数の巨大キノコを生やした発光体を備えていた。
その形状に、スカルゴモラは覚えがあった。
「(あれは……バッカクーンの尻尾!?)」
「知ってるの、ルカ?」
〈バッカクーンは、ジードの不在中に襲来し、ゼガンが異次元に追放した怪獣です〉
兄の疑問への答えは、レムが解説してくれた通りだ。
寄生怪獣バッカクーン。ジードの留守中、おそらくはスカルゴモラの宿したリトルスターに引き寄せられて飛来した宇宙昆虫サタンビートル、その亡骸に寄生し操っていた、冬虫夏草のような怪獣だ。
菌糸で繋がった怪獣の死体を操るだけでなく、その残骸から栄養を吸い出すことによる不死身に近い再生力と、猛毒の胞子を放つ難敵だった。
最終的には、ゼガントビームで処理したはずだったのだが――などと、考えている間に。割れた空の裂け目から、触手の先についた見えない糸で引っ張られるようにして、大小三つの獣の影が飛び出した。
――それは、身体のあちこちから巨大なキノコを生やした、三体の怪獣だった。
複合怪獣リガトロン。催眠魔獣ラグストーン・メカレーター。そして全長一キロメートル近い巨体を誇る、宇宙凶険怪獣マザーケルビム。
時期は不揃いながら、バッカクーンと同じくゼガンによって時空の彼方に追放されたはずの怪獣たち。その骸が、サンダーキラーSの再現したバッカクーンの尾から伸びた菌糸に寄生され、操られていたのだ。
「ヤプールは、わたしのレイオニクスの血をおさえたかったみたいだけど……これでわたしも、怪獣使いかな?」
「それじゃあゾンビィ使いだろうが!」
悍ましい光景を演出しながら、無邪気に笑うサンダーキラーSに対し。三体の怪獣のゾンビを差し向けられたゼロは、まるで焦る様子もなく突撃した。
その最中、ゼロが発光したかと思うと――その影が、三つに別れた。
いや、影だけではなく――本当に、ゼロが三人に増えていた。
「ゼロが……増えた!?」
〈あれは、実体を持った分身を生み出す、ルナミラクルゼロの超能力です〉
「(そんなのありっ!?)」
スカルゴモラが驚愕する間に、ルナミラクル、剛力特化の赤いストロングコロナ、そして通常時という三者三様の姿となったゼロが、各々ゾンビ怪獣と激突する。
まず、生前は百万トン近い体重を有していたマザーケルビムが大地に接触し、それだけで周辺に甚大な被害を齎してしまうより前に、ストロングコロナゼロが額の鉈状の角を受け止める。
「ガァルネイト……バスタァーッ!!」
そのまま体格差を物ともせず、空中で投げ飛ばした巨大怪獣へと、ストロングコロナゼロは拳に纏わせた炎を打ち出して追撃し、跡形もなく爆砕する。
「ワイドゼロショット!」
放たれた幅広の光線は、複合怪獣リガトロンに直撃。過去の記録から、エネルギーが不足すれば装甲も脆弱化することがわかっているとはいえ、スカルゴモラの攻撃を寄せ付けなかったリガトロンを、一撃で粉砕してみせる。
再生怪獣二体を瞬殺し、あまりにも無体な強さを見せつけるウルトラマンゼロ。だが残る一体、ラグストーン・メカレーターはリガトロンと異なり、エネルギーが枯渇しても装甲が弱まるという記録もない。その堅牢さは万全のリガトロンや、あの超時空魔神エタルガーにも相当し、ウルトラマンジードや超弩級怪獣グランドキングメガロスでも倒しきれなかった、強敵中の強敵だ。
「――オメガ・アーマゲドンで、何度倒したと思っている」
だが、ルナミラクルゼロは落ち着き払った様子で、減速することなく超パワーの改造魔獣へと突進していた。
「目は光を受け入れる――パーティクルナミラクル!」
叫びとともに。先程散々プリズ魔がしたように、全身を光量子へと変化させたルナミラクルゼロは、そのままラグストーン・メカレーターの大きな眼へと吸い込まれた。
「――フィニッシュ!」
そして次の瞬間、立ち止まったラグストーン・メカレーターが痙攣したかと思うと、その身体を内から突き破ったルナミラクルゼロが飛び出して、徹底的に破壊したラグストーンの活動を強制的に停止させた。
「(うわ、えっぐ……)」
「ぜがんとびーむ」
思わずスカルゴモラが引いた瞬間、何の躊躇もなしに、サンダーキラーSの触手群が時空転送光線を発射した。
あるいは元より、ゼロの注意が逸れるこのタイミングだけを狙っていたのかもしれない。三大怪獣を撃破した瞬間、その遺体の影から時空転送光線を浴びせられたウルトラマンゼロは、自らを完全に取り囲んで発生した時空の裂け目から逃れる術を持ち合わせていなかった。
「さようなら、ウルトラマンゼロ」
「舐めるなよ」
時空の穴との接触を先延ばしにするように基本形態の一人へ戻りながらも、ゼロは別れの言葉を告げるサンダーキラーSを指差した。
「この程度で今の俺を倒そうなんざ、二万年早いぜ!」
だが、その言葉だけを残して。二本指を突き立てて見せたゼロは、時空の彼方へと消し飛ばされてしまっていた。
「これでおじゃまむしもいなくなったね。お兄さま、お姉さま」
「誰がお邪魔虫だ」
振り返るサンダーキラーSへの抗議の声は、ゼロが消えた地点から響いていた。
そこにはいつの間にか、超獣が開くのとも、ゼガントビームが発生させるのとも異なる時空の穴が生じていて――そこから、次元移動機能を持つウルティメイトイージスを鎧として纏ったゼロが、銀色の流星のように飛び出した。
「……言っただろ。この程度で今の俺を倒そうなんざ、二万年早いってな!」
先んじて時空の彼方に追放されていたゼガンを抱えて帰還したゼロは、消耗した様子の時空破壊神をスカルゴモラたちの方へ送り出すと、イージスを纏ったまま再びサンダーキラーSと向き合った。
「えー……しつこいなぁ」
そんなゼロの様子に、辟易した調子でサンダーキラーSは溜息を吐いた。
彼女目掛けて、さらに無数の火炎や光線が上空から降り注いだのは、その次の瞬間だった。
「――無事か、ゼロちゃん!」
スカルゴモラが振り仰ぐと、声の主はウルトラマンとは別種の巨人だった。
炎を思わせる巨人の隣には、また異なる特徴の銀と緑の巨人が。さらに両脇を、二体の人型巨大ロボットが固める編隊で飛行し、ゼロの周囲へと降り立って来る。
「ウルティメイトフォースゼロ……!」
どうやら顔馴染みであるらしいジードが、新たに現れた四体の巨人の並びを見て声を上げた。
レムが送ってくれた情報によると、彼らはゼロとともに活動する、宇宙警備隊の外郭団体のような集団らしい。
その包囲射撃を受けたサンダーキラーSは、しかし触手から多重展開していたウルトラバリアによって、無傷のまま攻撃を凌いでいた。
「……またヘンなのがきた」
「変なの」
「お嬢さん、少々聞き捨てなりませんね」
最初に現れた炎の巨人、グレンファイヤーと。彼と並んだ銀と緑の騎士、ミラーナイトが、サンダーキラーSの呟きでショックを受けたように話しかける。
だが、サンダーキラーSは彼らを無視すると、ジードとスカルゴモラの方にだけ顔を向けた。
「お姉さまも、つかれちゃってるみたいだし……また、おじゃまむしがいないときにあそんでね」
言い終えると同時に、再びサンダーキラーSの背後の空が割れて、次元の裂け目が発生した。
「待ちやがれ!」
ゼロを筆頭とする、ウルティメイトフォースゼロの一斉攻撃が、サンダーキラーS目掛けて放たれる。究極融合超獣はその尽くを触手で払い、バリアで防ぎ、プリズ魔状態へのキラートランスで吸収し、無力化する。
「さようなら」
結局、傷の一つも負わぬまま。究極融合超獣サンダーキラーSは悠然と、しかし嵐の如く理不尽に、異次元の穴へと去って行った。
「くそ、逃したか……だが、今はあいつを深追いしている場合じゃないな」
呟きとともに、イージスを解除するゼロへ、ジードが前に出た。
「……ゼロ、ありがとう」
「あ? まぁ、気にするな。おまえだって万全なら……」
「手加減してくれたんだよね」
ジードがそう言うのに、ゼロは一瞬固まった。
――あれだけやりたい放題に見えたゼロが、しかしサンダーキラーSへの攻撃に一切の殺意を載せていなかったことは、スカルゴモラにも読み取れていた。
それが、自分たち兄妹への気遣いを理由とすることに、スカルゴモラは兄の言葉を聞いてようやく思い至った。
対してゼロは、認めまいとするように、慌てた様子で首を振った。
「そんなわけあるかよ。相手は超獣で……それにあの翼、多分あいつは……」
意味深な間を挟んだものの、ゼロはそこでサンダーキラーSへの言及をやめた。
「そんなことより、だ」
代わりに、深刻な声音で、ジードに向けて問いかけた。
「この地球で、
Aパートあとがき
サンダーキラーS対ウルトラマンゼロ、当初考えていたTV放送の尺ならゼガンの出番ごとカットして『ジード』本編第六話をオマージュするところだとは思われますが、本家サンダーキラーが二作品計三回もゼロ(※内一回は変身未遂)と遭遇しながら何と一度も直接対決していないので、我慢できずに書いてしまいました。お許しください。
以下、お約束の公式設定との整合性に対するいつもの言い訳になります。
・ウルティメイトリッパー
ウルトラマンジード超全集63pに記載のある、ウルティメイトファイナルの劇中未使用の技になります。
正直、ネーミングの法則的にこの技とジーディウムスラッシュの説明が入れ替わっている誤植を疑ってはいるのですが、レッキングリッパーの上位技ではなく、「腕から手裏剣のように発射する切断光線」ということでマグニフィセントのメガスライサークロスのような、ウルティメイトファイナル版の八つ裂き光輪系の技だという解釈で作中に登場させました。後々にやっぱりこの技はジーディウムスラッシュだ、という確認が取れたらこっそり修正するかもしれません。ご了承ください。
・ルナミラクルゼロ
ルナミラクルゼロの分身能力は、実のところストロングコロナとルナミラクルの二体同時分身しか公式の映像媒体では確認されていませんが、勢い余って三人にしてしまいました。まぁノーマルゼロの追加ぐらいなら「ゼロに限界はねぇ!」ってことでお一つ。
エタルガー戦で試しているか不明なパーティクルナミラクルでラグストーンを攻略している件については、目の大きさが違うからという強引な解釈でお許しください。