ウルトラマンジード ベリアルの子ら   作:ヨアンゴ

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第十六話「君の笑顔を取り戻す」Cパート

 

 

 

 必勝撃聖棍ギガファイナライザー。

 

 選ばれた使用者の心の力を、物理的なエネルギーに変換する機能を備えた、伝説の武器。

 

 ダークサンダーエナジーに打たれ、暴走した培養合成獣スカルゴモラNEX(ネックス)を止めるため、そのエネルギーを全て放出するまで踏み留まり続けるという、あまりにも不器用なウルトラマンジードの策。それを成立させる根幹を担いし物。

 

 ……過去から未来へ受け継がれる命を守る。そんな願いを繋ぐため、あの人が遺してくれた大事な宝物。

 

 それが、折れた。

 朝倉リクの心より先に、強引に治療を続けたウルトラマンジードの肉体より先に、超技術の結晶たるギガファイナライザーが音を上げた。

 

 それを境に、ウルティメイトファイナルへのアルティメット・エボリューションが、機能不全に陥る。

 ウルトラマンジードは、その表面から光に解けて消え始め――

 

「――まだだ!」

 

 崩れ行くインナースペースで、リクは即座に、ジードライザーとウルトラカプセルへと手を伸ばしていた。

 

「父さん……力を貸してくれ。ユー、ゴー!」

《ウルトラマンベリアル!》

 

 実体を失いつつ在ったウルトラマンジードが選んだのは、父であるウルトラマンベリアルと、そして。

 両親の仇の写し身である培養合成獣スカルゴモラを、リクの妹である朝倉ルカとして受け入れ、弟子とし、家族と呼んで大切にしてくれた、鳥羽ライハの祈りで起動した、ウルトラマンキングのカプセルによる、最強のフュージョンライズ形態。

 

 ……もしも、ルカが。あの日ルカ自身が嘆いたように、怪獣だから。

 やはりやっつけるしかない、本当は家族と一緒に生きることができないのが運命だと、言うのなら。

 ――――そんなもの!

 

「変えるぜ、運命! ジィィィィィィィィィィィドッ!!」

《ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!》

 

 そうしてロイヤルメガマスターに変じながら、その長剣を振って、再びジードは暴走するスカルゴモラNEXに挑みかかった。

 何度致命傷を与えても、しぶとく復活したジードが、今度こそ分身同様消滅し始めたと。そう判断して、警戒度を下げていたらしいスカルゴモラNEXに、キングソードがそのまま振り下ろされた。

 ……あまりにも呆気なく通った一閃で、一瞬だけ。相手の身を心配したジードの肉体を、スカルゴモラNEXが放っていた熱線インフェルノ・ノバが遅れて直撃した。

 

 一瞬で貫通され、本来ならば致命傷となるところを――ジードはフュージョンライズが解除される際の特性により、一度だけ回避した。

 プリミティブの姿へと強制的に変わるのと引き換えに、死を免れたジードは――後方に抜けていく爆発的な力に踏ん張って耐え、限界を迎えて今度こそ消滅する前に。

 

「……もう大丈夫だ、ルカ」

 

 スカルゴモラNEXの懐で、もう一歩だけ、前へ進み――

 

「約束だ。君は僕が守る」

 

 両腕で、その体を抱きしめた。

 

「だから――戻ってきてくれ!」

「(……お兄、ちゃん――?)」

 

 そして、ずっと。何度も何度も死にかけながら、それを乗り越えるための目標としていた。

 ――ずっと望んでいた声が、頭の中に直接響いた。

 

 

 

 

 

 

 ……恐ろしかった。

 周りの全てが、私を消そうとする、世界の悪意そのものに見えた。

 周りにいるのが誰なのか、何なのかすら、暗い靄に覆われ判別できなくて。とにかく全部あっちに行けと、やたらめったら暴れることしか、私はできなかった。

 

 だって、私が死んだら――兄が、家族が、皆が、殺されてしまうから。

 どうしてそうだったのかは、今は忘れてしまったけれど。

 

 ……どれだけそうしていたのだろう。

 どんなに暴れても、何かがずっと私の周りに居て、命を脅かしているように見えて。

 一時も心安らがず、恐怖を遠退けているはずなのに、ずっとずっと心が疲れて行って。

 

「……もう大丈夫だ、ルカ」

 

 そんな時に――また、あの人の声が聞こえた。

 

「約束だ。君は僕が守る」

 

 私の兄。朝倉リク=ウルトラマンジードの、声が。

 

「だから――戻ってきてくれ!」

 

 そんな風に……私なんかに、兄が祈ってくれていたから。

 拒むことなんか、できるはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 ……そうして正気を取り戻した培養合成獣スカルゴモラは、頬の痛みを感じながら、周囲の様子を見渡した。

 位相固定が崩れ始めているが、スカルゴモラは、まだ己が展開したメタフィールドの中に居ることを理解した。

 自身がカラータイマーを鳴らすウルトラマンジードに抱擁され、その様を妹である究極融合超獣サンダーキラー(ザウルス)や、ウルトラウーマングリージョや、ウルトラマンゼロが見守り、安堵している様子が見て取れた。

 

「……っ、お姉さま!」

 

 大地の端が見えるほど小さくなり、空が真っ黒と、すっかり様変わりしていたメタフィールドが消える最中。

 そんな変化を待つのも堪えきれないといった様子で、サンダーキラーSが触手の間に飛膜を形成して虹色の翼と化し、抱擁を交わす兄姉まで飛び出して来ていた。

 

「(うぇ、サラ!?)」

 

 だが、その前に。ウルトラマンジードが、光になって解けた。

 それを知覚したスカルゴモラは、兄の容態を察したために、同じく巨大生物としての姿を解き――兄が変化したのと同じ、地球人に擬態した姿。兄が、朝倉ルカという名前をくれた少女の形となって、倒れかけた彼の体を寸でのところで抱き止めた。

 その時には、メタフィールドが完全に消え去り、ルカたちは揃って星山市へと帰還していた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

 

 リクへ呼びかける最中に、どんと大地が揺れる。目標物が小さくなってしまったサンダーキラーSが着地するも、抱きつく相手を空振ってしまったために生じた音だった。

 ……どうして、同じように人間の姿へ変わらなかったのだろうと疑問に思ったルカは、妹を見上げて――その手に何かを抱えていることへ、気がついた。

 

「……サラ、それは?」

「あ……そうだ、ライハ……!」

 

 緊迫した妹の声に、ルカは目を剥く。

 そうだ、思い出した。ライハの乗っていたキングギャラクトロンMK2が、かつて兄が倒したギルバリスとかいうロボットに乗っ取られて、それで……!

 

 そこで、何か湿った気配を感じて。ルカが視線を下ろすと――リクの腹から、赤い血が垂れていた。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 いつかのように、腹を割かれたリクが意識を喪いつつあった。

 

「サラ、早くお兄ちゃんを治して……!」

「――っ、逃げるんだ、二人とも!」

 

 その時、ルカ以上に切迫した声で、リクが叫んだ。

 くぐもった雷鳴が聞こえたのは、そのすぐ後だった。

 

「――させない!」

 

 いつの間にか、雲一つなくなっていた蒼穹から降りて来ていたのは、渦巻く黒い稲妻だった。

 宇宙恐魔人ゼットを追って降り注ぎ、キングギャラクトロンMK2がギルバリスに変貌する際にも落ちて来ていた、あの異常な暗黒の稲妻だ。

 ルカを目掛け、一直線に迫って来ていたそれを、サンダーキラーSが自らの触手を避雷針のようにして受け止め、浴びていた。

 

「サラっ!」

「そん、な……!」

 

 ルカが叫び、リクの呻く頭上で、黒い稲妻は、サンダーキラーSの全身に纏わりつき――彼女の中へと、完全に吸い込まれて、消えていた。

 

「……えと、だいじょうぶみたい、わたし。超獣だからかな?」

 

 何一つ変わった様子のない妹の返答に、兄姉は揃って拍子抜けしていた。

 だが、一瞬の後――気が抜けて意識を失ったリクの全体重を預かったルカは、今度こそ思い出した。

 

 その暗黒の稲妻は、前後不覚に陥るその直前――培養合成獣スカルゴモラにも降り注いでいたことを。

 

 ……あの雷を浴びて、宇宙恐魔人ゼットは何かダメージを受けていたか?

 キングギャラクトロンMK2は――それだけが原因ではないとしても、あの雷でどのように変わり果てたのか?

 

 その恐るべき脅威であった宇宙恐魔人とラストジャッジメンターは、メタフィールドの中からいったいどこに消えたのか?

 ……彼らが健在であるのなら、サンダーキラーSも、全てが解決したという雰囲気で抱きつこうとはしなかったはずだ。

 

 己が前後不覚となった間、星が無くなるほどに変わり果てたメタフィールドの中で。

 兄はいったい、何を見て――怪獣である(ルカ)を庇った(超獣)のサンダーキラーSは、何を大丈夫と言ったのか?

 

 サンダーキラーSの抱える、ライハが中に居るのだろう傷ついた筐体は、どこから出てきたもので。

 リクの……ウルトラマンジードの腹を穿った犯人は、何者なのか。

 

 今度は夢ではない――兄の血が付いた掌を見て、ルカは悪寒のままに口を開いた。

 

「……わた、し? 私が、やったの?」

 

 恐怖しながら誰にともなく問うルカの耳に再び、答えの代わりとばかりに、あの雷鳴が突き刺さった。

 また、一度に何条も降り注ぐ暗黒の稲妻が、ルカに吸い寄せられるようにして落ちてきて――サンダーキラーSが、放射状に拡げた自身の触手で兄姉を庇い、一つたりとも通さない。

 

「ルカちゃん!」

 

 呆然自失の手前まで追い詰められながらも、それが許される事態ではないと気を張るルカのところへ、湊アサヒが駆けてきた。どうやらメタフィールドを出、星山市に戻ったことで、彼女はウルトラウーマングリージョであることを保てなくなったらしい。

 

「早く、逃げましょう! あの雷は危ないです!」

「……いや、逃げたって無駄だ。今はサラの下から動くな」

 

 続けて、ゆっくりと大地を震わせながら歩み寄って来たのは、アサヒと違ってウルトラマンの姿をまだ保てているゼロだった。

 

「位相の違うメタフィールドにまで降って来ただろ。少なくとも同じ宇宙に居る限り……グリーザからは逃れられない」

 

 四十メートル以上の高みからゼロが述べた瞬間、それは降って来た。

 暗黒の稲妻の発生源。妙に綺麗な紫色の光を放つ、放射状に棘を生やした球体が――ふよふよと落下しながら、こちらにダークサンダーエナジーを降り注がせていた。

 

 ……あれが、虚空怪獣グリーザ――?

 

「お姉さまに、ちかづかないで……!」

 

 グリーザが降り注がせるダークサンダーエナジーに、それを浴びた己が何をしでかしたのかを理解した、ルカが怖気づいていると――そのエネルギーをたっぷりと吸収したサンダーキラーSが、八本の触手と、その口腔から同じ色合いの光を放った。

 デスシウムD4レイ。次元壊滅現象の発生を示す破滅の輝きが九条、一斉にグリーザを目指し直進する。

 

 ……サンダーキラーSが迎撃に入る直前、グリーザの姿が変わっていた。

 

 それは、黄色く発光する無貌の頭部を持った、白と紫の巨人――

 ……で、合っているのだろうか?

 

 不規則に、ユラユラと。輪郭そのものが不安定に揺れ、その容姿を確信することすらもできない気味の悪い巨人態――第二形態に変わったグリーザは、そのまますうっと、正面に進むようにして、殺到するデスシウムD4レイの嵐へ飛び込んだ。

 そして、その射線と重なりながら――周りの空間が次々と罅割れていく中、何の影響も受けていないように、奇天烈に狂ったような笑い声を発しながら、平然と空を泳いで向かって来る。

 

「な……っ!?」

「き、気味が悪いですっ!」

 

 D4レイの理屈を知らないだろうアサヒは、その挙動だけで嫌悪感を抱いた様子だったが、ルカの抱いた衝撃は、そんな生理的嫌悪感だけでは済まなかった。

 次元の壁を壊すことで、時空構造体ごと、座標上に存在する全ての物質を破壊するD4レイ――その干渉を無防備に受けて、平然と進んで来るなんて、あり得ない!

 

「無駄だサラ! あいつは不条理の権化、存在しない者……次元ごと壊滅させようが、何の意味もない!」

 

 ゼロが警告した時、クジラの歌のような音色を残して、急にグリーザは消えた。

 そして、迎撃のため見上げていたサンダーキラーSの眼下で――ルカたちを見つめるように、四つん這いとなった姿で現れていた。

 

「――――っ!」

 

 急に沈黙して、微動だにせず、じっとこちらを見つめている無貌の観察者の悍ましさに、悲鳴すら上げられないルカの視線に気づいたのか。そこで再びグリーザは、幾重にも残像を描きながら首を振り、あの狂ったような笑声の奏でを再開する。

 

 構えも定まらない手が持ち上がり、それがルカたちへと伸ばされる前に――サンダーキラーSの触手が、連結して巨大化させたウルティメイトリッパーを抱えて、グリーザの胴を薙ぐ。

 だが、光の刃が通る際、その軌道が奇妙に歪み……果たしてどうやったのか、D4レイの時と同様、無傷で八つ裂き光輪を潜り抜けたグリーザは、しかし前進もせず、コマ落としした映像のように突然立ち上がった姿に変わっていた。

 

 途端、周辺にあった物質が次々とグリーザに引き寄せられる、負の圧力のようなものが全方位に発生する。

 吸い込まれる――かと思うと、今度はその力が逆向きになり、吸い寄せられていたゴミや車や街路樹が、元あった場所に向けて、爆発的な勢いで逆流する。

 

「――お兄ちゃんっ!」

 

 咄嗟に兄を庇うように抱くルカと、ルカごと庇うようにさらに覆い被さるアサヒと。その上から、サンダーキラーSが全員を守る八重のウルトラバリアを展開する。

 対して、輪郭を揺らすグリーザは頭部の発光を強めながら、その頭を八の字を描くように揺らし――巨大な鐘の音のような物を響かせて、究極融合超獣が展開した防壁を素通りする攻撃を繰り出していた。

 

「きゃあああああああああああっ!?」

 

 直接脳を揺さぶってくるような音に、特に聴覚に優れたルカはもちろん、アサヒや、超獣であるサンダーキラーSさえも悲鳴を上げる。

 レム製の通信機を兼ねたヘッドホンのノイズキャンセラーを全開にしてしても、効果がない。だが兄を両手に抱えたルカは、耳を塞ぐこともできない。

 

 全員の膝をつかせる鐘の音を絶ったのは、双つの宇宙ブーメランの旋回だった。

 不気味な振動に集中力を乱されながらも、ウルトラ念力で刃を飛ばしたゼロがグリーザを急襲し、怪音波による攻撃を中断させたのだ。

 

「……サラ、悪いが回復してくれ。あいつは俺がどうにかする」

 

 既にカラータイマーを鳴らしていたゼロの頼みに、太陽光とダークサンダーエナジーで一度は尽きかけた体力を充填させているサンダーキラーSは、素直に触手を一本差し出す。

 同じように、妹が足元に向けてくれた触手の先端からも治癒光線が放たれて、リクを含むルカたちの受けたダメージを軽減する。

 そうして柔らかな光を浴びているルカたちの隣、突如強い光が出現した。

 

 グリーザの新たな攻撃かと身構えたルカだったが、その眩い光は人型を取り、ルカたちとは別の方角へ振り返っていた。

 

「ゼロさん!?」

「ありがとなレイト。今日だけでも、おまえが居なきゃ何回か死んでた……!」

 

 戸惑いの声を上げる光の正体は、ゼロから強制的に分離させられたらしき、伊賀栗レイトだった。

 

「だが、この先まで俺に付き合う必要はねぇ……そろそろマユが心配しているだろうしな」

「ゼロ、何をする気……?」

「――起きたのか、リク」

 

 サンダーキラーSの治癒光線によって、カラータイマーを青色に戻したウルトラマンゼロは、ルカの腕の中で生じた疑問を聞いて、少し安堵したような声を漏らした。

 

「……『無』であるグリーザを倒すには、奴の中に存在するこの宇宙の『針』が必要だ。それがなきゃ、例えさっきのルカでも絶対に勝てない」

 

 リクに答えながら、ゼロは彼にあらゆる環境での活動を約束する神秘のアイテム、ウルティメイトブレスをちらりと見た。

 

「それを今から、俺が取って来てやる。ついでに動きも止めておいてやるから、おまえは休んでろ!」

 

 リクへの気遣いを叫んだゼロは、またもその全身を輝かせた。

 その姿は、ジードを救ったシャイニングウルトラマンゼロ――だが、黄金ではなく、眩い白銀にその輝きを変えていた。

 本来――シャイニングウルトラマンゼロと融合しているはずの、ウルティメイトイージスが、彼の変身と同時に出現し、その身を装甲していたからだ。

 

 それは、世界を越えるウルティメイトイージスと、時間を操るシャイニングの力を相互作用させ、本来同時に存在し得ない世界と時間の可能性を重ね合わせることにより、強引に成立させたウルトラマンゼロの、奇跡の形態。

 

「ウルティメイトシャイニング――ウルトラマンゼロ!」

 

 眩い光の塊となったゼロは、間違えてぶちまけた絵の具のように輪郭をぼやけさせていたグリーザへと、猛烈な速度で飛びかかった。

 

 その寸前、サンダーキラーSやその足元目掛けて、グリーザが背中から伸ばしていた無数の青白い腕。ゼロはそれらをウルティメイトソードで纏めて切り払い、押し返し、後退した腕がグリーザの眼前で変化した光の壁に輝く切っ先を叩きつける。

 

「ぜぇえええええええやっ!」

 

 絶叫したゼロは、ウルティメイトソードでグリーザの防壁を切断。そのまま切っ先を虚空怪獣の胸元に押し付けると、まるで亀裂が走ったように稲光が漏れ出し、グリーザから甲高い音が漏れて……

 

 ――次の瞬間、ゼロは『穴』の中に吸い込まれ、グリーザは瑕疵一つない完全な形を取り戻した。

 

「ゼロさぁあんっ!」

 

 レイトが絶叫する中、衝撃波が発生して星山市の拡散。超獣としての姿を保ったままだったサンダーキラーSが一行を庇ってくれた、その前で。

 ゼロを丸呑みにしたグリーザは、現れた当初の球体――第一形態に戻って、星山市の上空にふわふわと浮き上がり、そこで静止した。

 

 きっと、宣言したとおり――ゼロが、グリーザの動きを封じ込めたのだ。

 

 だが、宇宙に開いた『穴』はそれでも決して、消え去ることなく。

 朝倉ルカを――培養合成獣スカルゴモラを、未だ狙い続けているように、虚空に留まり続けていた。

 

 

 

 

 

 

 朝倉リク=ウルトラマンジードは、自らの宝物と引き換えに――妹との約束を一つ、守り抜くことができた。

 もしもルカが世界を傷つけてしまいそうな時は、リクがルカから世界を守るという約束を。

 

 ……だが、それは、たった一度。代償を支払った上で、仲間との協力の末にやり抜けただけ。

 今のままでは、もう一度、ダークサンダーエナジーを浴びてしまえば。またも朝倉ルカの心は隠されて、膨大な力の災害である怪獣スカルゴモラに変貌してしまうだろう。

 

 そして、そんな薄氷の勝利の上に立つ彼が、妹と交わしていた約束は、もう一つある。

 

 それは、もしも世界がルカを傷つけるのなら、リクがルカを守るというもの。

 

 そんな彼を試すように、今。ダークサンダーエナジーの発生源である、この宇宙に空いた『穴』――宇宙の生命のバランスを『無』に変換して保とうとする世界の法則が形となったような、しかしてそれ自体はあらゆる理に縛られない、自身の欲望と喜びにのみ従う怪しい獣。

 

 触れることもできない生命の天敵、虚空怪獣グリーザが、培養合成獣スカルゴモラの命を無に還そうと。

 

 死という絶対の運命のように、リクたちの目前まで迫っていた。

 

 

 

 

 

 




Cパートあとがき



 ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
 ずっと書きたかったシーンの一つを書くところにまで至れて、筆者としては非常に感慨深いところであります。

 Aパートのまえがきでも触れましたが、これを連載開始一周年の日に、第五十話で到達できたのは、原作がそれだけのモチベーションをくれる魅力を備えていたことと、私が感じた魅力に共感を示してくれた読者の皆様のおかげであります。改めて、本当にありがとうございます。

 とはいえまだまだ、書きたかったシーンというものは残っています。何なら今回の話の中で提示されたことになる問題点も全然解決しきれていませんので、そこの決着と、そろそろ作劇的にも露骨になってきたルカに残している秘密の回収に向かっていきたいと思います。

 流石に連休ほどのペースは無理ですが、今年の前半のような状態からは脱せると思うので、どうか引き続きお付き合い頂けると幸甚に存じます。



 以下、いつもの言い訳です。



・フュージョンライズの特性
 さらっと第十五話でゼロがやられるシーンから挟んでいるこの設定。ここに挙がるということはおおよその予想通り公式設定ではありません。
 ただ、伏井出先生含め、『ウルトラマンジード』本編及び劇場版や各種客演で、フュージョンライズ中に即死したキャラクターが存在しないのもまた事実。ゼロやベリアルなんかは明らかな致命傷でもフュージョンライズ解除だけで凌いでウルトラマンとして活動できていますしね。
 ジードも(第十一話や第十四話等で怪しいシーンはありますが)だいたいの場合は他形態で大ダメージを負った場合は一度プリミティブに変わる、という描写が基本であるために、一種のリアクティブアーマーのような変身解除による即死/即変身解除のキャンセル効果があるみたいな扱いにして地の文で扱ってしまいました。お目溢しくださると幸いです。


・限界を越えすぎるUS(ウルティメイトシャイニング)ウルトラマンゼロ
 一連の戦闘三回で三回ともシャイニングになっているゼロですが、シャイニングスタードライブを使ったのはあくまでも初戦のみ(スカルゴモラNEX戦は不発)で、合間にグリージョの力によって回復しているため、シャイニングスタードライブ抜きなら三連戦もゼロだしでギリギリ通るかな……という甘え。
 順序としては逆ですが、『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』~『ウルトラマンZ』で描かれた連続シャイニングの描写とも大きくは矛盾せず、公式で描写のないレイトさんとの融合状態かつウルトラマンに有利なメタフィールド内でのシャイニング化だったことで負担が軽減されている、ということでお見逃し頂けると幸いです。
 あとは、本来は同時に存在し得ない二つの力を、それぞれの特性で時間と世界に同時干渉して~は独自解釈になります。ご了承ください。




(オリジナル)ウルトラカプセルナビ


名前:ラストジャッジメンターキングギルバリス
身長:82メートル
体重:12万トン
得意技:バリスルーチェ、バリスコルノーラ、ペダニウムハードランチャー

 怪獣カプセルから召喚されたギルバリスのコアが、キングギャラクトロンMK2を素体に、培養合成獣スカルゴモラの尾を取り込んで高次元物質置換し復活した戦闘形態。
 予め鋳造されていたペダニウム超合金を取り込んだ装甲は以前以上に強化され、ベリアル因子とダークサンダーエナジーを取り込み、さらにサイバー惑星クシアのとある破片(セクター)から提供された戦闘データを反映したことにより、カプセルによる復活でありながらかつてウルトラマンジードたちと戦った際のさらに数倍以上に戦闘力を向上させている。
 コア周辺胸部にはキングジョーの胸部装甲を追加し、両肩にはキングジョーの腕を模したフレキシブルアームの先端にペダニウムハードランチャーを二門、脚部にも増設装甲に直付けする形で二門の計四門のペダニウムハードランチャーを装備することで、砲撃力を大幅に上昇。一斉射撃バリスダルティフィーに頼らずとも、前面への火力は充分以上のものとなった。
 さらにキングジョーのような分離合体機能を身に着け、身動きが鈍くなった点もカバーされている。
 ただし、肝心のコアが怪獣カプセルからの召喚であるため、かつてのようにギガファイナライザーの直接攻撃でなければ破壊できない、という特性までは再現できなかった模様。


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