ウルトラマンジード ベリアルの子ら   作:ヨアンゴ

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『ウルトラマンジード』放送開始五周年、おめでとうございます。
 去年はうっかりしていましたが、流石に今年はこのタイミングは更新したい、ということで何とか間に合いました。
(……実は6/25に更新したい内容だったりしましたが。理由は以下、本編でどうぞ)





第十八話「僕が僕らしくいるために」Aパート

 

 

 

 

 

 

 この宇宙(サイドスペース)の時間で、約一年前。

 

 クライシス・インパクト以来に、地球へ降り立ったウルトラマンベリアルと、その遺伝子から造られたウルトラマンジードが初めて戦い、息子の勝利で緒戦が終えられた後のこと。

 

 ベリアルが所持していたカプセル――怪獣たちの魂を囚えた悪夢のカケラは、ベリアルの体の一部とともに散逸した。

 

 地球環境への悪影響を防ぎ、さらには野心を持った反社会的異星人の手に渡らぬよう、異星人捜査局AIBが即座に回収したそのカプセルについては、当然、AIBの研究セクションで調査が行われていた。

 

 その中の一つに、真っ黒なブランクのカプセルが存在していた。

 

 それが、起動に失敗した不良品であることは、AIB地球分署極東支部研究セクションの責任者の手によって、即座に解き明かされた。

 

 ……だが、その失敗作が存在したという事実は、AIBの記録――そして、関わったAIBの関係者の記憶からも、その時を境に、忽然と消え失せた。

 

 代わりに――隠されたそのカプセルは、失敗したはずの黒地に、新たな影を落とすようになった。

 

 怪獣というより、ウルトラマンとよく似た――一体の巨人の影を。

 

 

 

 

 

 

 ……ウルトラマンベリアルの故郷、光の国がある宇宙、M78ワールド。

 

 その何処とも知れない座標に、とある惑星があった。

 

 その星は、ただ一人の住人にあやかり、伝説を知る異星の民からキング星と呼ばれていた。

 

 そのたった一人の住人である、身長五十八メートルの銀色の体躯と、豪奢な髭を持った伝説の超人――ウルトラマンキングは、三十万年を越す永き生涯の中で、数えるほどしかない驚きを覚え、顔を上げていた。

 

 全知全能、不可能はなし――という謳い文句は、流石に誇張だとしても。

 

 それでも、幾つもの宇宙で起こる様々な出来事を見通し知り得る力を持った、ウルトラマンの中のウルトラマンであるキングが――今の今まで見失っていた存在を、再び捉えたための、驚きだった。

 

 ……その気配を感じたのは、初めてではなかった。

 

 こことは別の宇宙を癒やすため、融合していた最中。キングをして身動きが取れなかった頃に、ベリアルたちの悪意が招いた一つの気配。

 

 だが、一つの宇宙と同化していたために、別宇宙に伸ばす感覚が薄まっていたキングの目を、その存在は見事に掻い潜り、まんまと姿を消し――こうして元の体に戻った後も見つけられず、既に亡きものと見ていたその存在を、知覚した。

 

 気配は、再び消えようとしていた。ウルトラマンキングの感覚からすらも。

 

 ……だが、今ならばまだ追える。

 

「確かめねばならないな」

 

 遣いを用意していては間に合わない。

 

 元より、この気配の正体が、キングの予想のとおりであれば、あるいは――光の国のウルトラマンたちに任せても、今は解決の目がない。

 

 故にここは一度、自らが直接赴くべきだと――そのように思考したウルトラマンキングは身を起こし、その瞬間には忽然と、自らの棲まう宇宙から、その存在を消失させ、別の宇宙まで旅立っていた。

 

 

 

 ……その気配の裏に潜む、もう一つの巨悪の企みを、まんまと見過ごしてしまったまま。

 

 

 

 

 

 

 星山市天文台の地下五百メートル、星雲荘の中央司令室。

 

 培養合成獣スカルゴモラが、人間に擬態した姿――最愛の兄から、朝倉留花(ルカ)の名を授かった少女は、モニターに映し出された記録映像を見ていた。

 

「ルカ、何を見ているの?」

 

 そこへ現れたのは、ルカの兄である朝倉リク――ウルトラマンジード、その人だった。

 

 傍らには、彼の親友であるペガッサ星人ペガの姿もあった。

 

〈つまり私は、己の手で――自らの生きる意味と出会えたわけだ!〉

「これって、あの時の……?」

「――うん」

 

 ペガへ頷く最中にも。過去の出来事を記録した映像は、モニターの中で再生を続けていた。

 

「ルカの希望です」

 

 ルカの回答を補足したのは、妙齢の涼やかな女性――地球人型の活動用ボディに意識を移したままの、星雲荘の報告管理システムであるレムだった。

 

「スカルゴモラNEX(ネックス)の力について把握し、二度と暴走しないようにするため、記録を参照したいとのことでした」

「それと……何をやっちゃったのか、ちゃんと確かめなきゃ、って思って」

 

 ちょうど、何が起こっているのか、映像だけでは記録しきれていないほどの大爆発が画面を埋め尽くした頃に、ルカは呟いた。

 

 結果的に、その力がかつてない強敵を退ける切札になったとはいえ。ダークサンダーエナジーで正気を喪い、危うく家族を殺しかけた――そんな己の所業と向き合う覚悟を決めるのに、ルカは時間を要してしまっていた。

 

「そんなの、気にしなくてもいいのに」

「そうはいかないよ……ちゃんとわかってなきゃ、お兄ちゃんに御礼も言えないから」

 

 少しだけ。妹への気遣いからか、意気の消沈したリクの声を聞きながら、ルカは首を横に振った。

 

「ゼロとアサヒも、明日には帰っちゃうんでしょ? だったら、今のうちに見ておかなきゃ」

 

 兄とともに、まるで家族のように。ルカを救ってくれた、大切な仲間たち。

 

 そして、ルカが傷つけてしまったのかもしれない、その二人にも、正しく御礼と謝罪を伝えたいと――それを間に合わせたいというルカの気持ちを察してくれた兄は、もう何も言わなくなった。

 

〈……いや、待て。何故、そんな表情(カオ)をしているのだ〉

 

 そうして、兄やペガも、一緒にルカの所業に向き合ってくれるようになった頃。

 

 単純な戦闘力で言えば、ルカの出会った中で最強だった生命体――宇宙恐魔人ゼットを、暴走したルカ自身であるスカルゴモラNEXが葬るその場面に、辿り着いていた。

 

〈ふざけるな――勝者なら、笑え〉

 

 微かな後悔を滲ませながらの、哀願するような言葉を聞き入れず――記録映像の中のスカルゴモラNEXは、全力を解き放って、魔人をこの宇宙から消滅させていた。

 

「……勝手な奴」

 

 気がついた時には、ルカは魔人の最期に、そんな言葉を漏らしていた。

 

「本当だよね。自分から戦いを挑んで来て、リクを殺して、ルカを泣かせたくせに……!」

 

 シャイニングウルトラマンゼロによって、時間が巻き戻り、なかったことになったとはいえ。

 

 身勝手な都合で大切な人を奪った宇宙恐魔人ゼットへの憤りを持つ者同士、ペガがルカに同調を示した。

 

 だが、不思議なことに。あの時はともかく、今のルカは、ペガほど――

 

「……けど、もしかすると。あのゼットが居なかったら、僕はルカとの約束を守れなかったかもしれない」

 

 自分自身の中の戸惑いに気づき、微かに揺らいでいたルカの状態に、気づいたわけではなく。

 

 ただ、己の中にある真実を口にする――そんな様子の兄の言葉が、不意にルカの耳を打った。

 

「確かに、許せないくらい勝手な奴だった。でも、彼は彼なりに……自分が生まれてきたことを、悔やみたくなかったんだと思う」

 

 最強となるために産み出された人工生命体、宇宙恐魔人ゼット。

 

 その設計思想から、培養合成獣スカルゴモラの同類とも言える存在が、生涯の最期に目にしたもの。

 

 自らが価値あると信じる行為を果たした同類が、それで何ら高揚せず、安堵もせず、ただ苦しんでいるだけの光景。

 

 それを見た魔人が末期に、何を感じたのか……同じく造られた命であるウルトラマンジードは、想うところがある様子だった。

 

 ……もしかすると。ルカがあの戦いの最中ほど、もう恐魔人ゼットを憎めないのも、そんな理由によるものかもしれない。

 

 ほんの少し、ボタンがかけ違っていた自分。

 

 あの戦いの後、ダークサンダーエナジーに脅かされていたルカ自身が味わった、自らが生きる意味を見失った苦しみ――それを晴らすことができないまま、散ってしまった生命。

 

 そんな同類を、ただ自分と相手は違うからと、線を引いてしまうことが、ルカにはできなくなったのかもしれない。

 

 あるいは、リクが――兄妹の父であるウルトラマンベリアルに対して、彼を嫌いだと公言する妹たちと比べ、歯切れが悪い時があるのも。同じ理由によるものかもしれないと、ルカはようやく思い至り始めた。

 

 

 

 

 

 

 AIB地球分署極東支部、研究セクションにて。

 

 助手としての午前のお仕事を終え、お昼ごはんの時間を前にした一人の少女――滅亡の邪神の幼体でもある、究極融合超獣サンダーキラー(ザウルス)が人間へ擬態した姿である朝倉サラは、ピット星人トリィ=ティプに手を引かれて、ある人物の下へ向かっていた。

 

「……ねぇ、トリィ」

 

 その道中で、サラは先程小耳に挟んでから、膨らんでいた不安を口にした。

 

「どうしたの、サラ?」

「……ペイシャン、いなくなっちゃうかもしれないって、ほんと?」

 

 それは、トリィの同僚たちが口にしていた、噂話の一つだった。

 

 急なリトルスターの発症が原因とはいえ、総本部の査察官を相手に、怪獣兵器であるゼガンを暴走させてしまったこと。

 

 ベリアル因子で蘇った石刈アリエに、保管室からの脱走を許してしまっていたこと。

 

 そして彼の肝入で実現させた、新型防衛兵器の完成品であったキングギャラクトロンMK2(マークツー)が、危うく巨大人工知能ギルバリスの復活に繋がるところだったこと。

 

 研究セクションの長であるゼットン星人ペイシャン・トイン博士は、立て続けに大きな失敗を起こしてしまっている。

 

 一年前、ゴドラ星人の工作員を見抜けず、誘拐事件を起こされかけたことも考えれば、流石に責任を問われるのではないかと、そんな憶測が広まっていたのだ。

 

 それで、もし――ペイシャンがここから居なくなってしまったら嫌だな、と。サラは感じていた。

 

 別に、ただ会いたいだけなら。彼が別の星に転属になっても、究極融合超獣であるサラならば、自力だけで気軽に会いに行けるだろう。

 

 だが、それだけでは足りないのだ。ただ会えるだけではなくて、ここで皆と一緒に居て欲しいと、サラはそう想っていた。

 

 その気持ちが大きくなったのは、アリエの凶行から身を挺してトリィを庇ってくれたことと――友達である伊賀栗マユに言われた、ある一言がきっかけだった。

 

 究極融合超獣サンダーキラーSは、ウルトラマンベリアルの遺伝子を用い、異次元人ヤプールに造られた生命体だ。

 

 だが、ヤプールはサンダーキラーSを製造している最中、突如として消え去った。

 

 兄姉との縁となってくれた血の根源であるベリアルは、生まれた時点で故人であり――そもそも、トリィたちにたくさんの悲しみを与えたベリアルを、父として慕う気持ちにもなれなかった。

 

 サラという名前をくれ、受け入れてくれた兄姉は居るが――逆を言えば、二人には存在する名付け『親』が、サラには居ないわけで。

 

 そこで、マユの口にした一言が、サラの意識を変容させた。

 

 マユが言ったように。きっと、母親というのは――大切な人で、憧れの先生で、いつも優しく導いてくれる、トリィのような人で。

 

 もし、父親と想える相手が居るなら――それは尊敬できるぐらい賢くて、普段は感じが悪くても、ここぞという時には頑張ってくれるペイシャンのような人ではないかと、この頃のサラは想うようになっていた。

 

 それこそ、サラ自身の姉が、鳥羽ライハとの関係を指して言うように。血縁だけではない、家族という形。

 

 その幻想を、サラは身近な二人の大人に抱いていた。

 

 だから。その関係性が崩れる未来を、滅亡の邪神の幼体は、酷く恐れていた。

 

「……きっと大丈夫よ」

 

 サラの不安をしっかりと受け止めてから、トリィはそれを拭うように微笑んでくれた。

 

「だって、サラたちが助けてくれたもの。だからきっと大丈夫」

 

 暴走したゼガンの制圧や、兄姉のおかげでアリエを元の人間に戻せたこと。

 

 復活したギルバリスも、結果的には外部に影響を及ぼす前に滅び去った。

 

 それはベリアルの子らの奮闘の結果であると同時に、その戦いを支えたAIBの働きの賜でもあり、ペイシャンはほとんどの事件で中核に近い働きをして来た。

 

 だから、功罪が充分相殺できるはずだと、トリィがサラを励ましてくれた。

 

 ……そんな話が段落する頃には、二人は目的地に辿り着いていた。

 

「お疲れ様、ペイシャン」

 

 ノックの後、返事を待たずに扉を開けたトリィが、上司に当たる人物に気軽な調子で問いかけた。

 

「伊賀栗さんたちがお昼に誘ってくれたの。あなたも一緒にどう?」

「……行ったか」

 

 来訪した理由をトリィが述べる頃、ペイシャンは何事かを呟き、表情に浮かべる笑みを深めていた。

 

「どうしたの? 変な笑い方しちゃって……」

 

 入口でサラを待たせながら、手を離したトリィが数歩、前に進んで、急に動きを止めた。

 

 その理由が何故なのか、サラはトリィの体が影になって、すぐにはわからなかった。

 

 いや――究極融合超獣であるサラの感覚機能からすれば、決して不可知の出来事ではなかった。

 

 だが、直接目にしなければ……まさか、そんなことが起きるなんて、想像もできなかったから。

 

「お疲れさん」

「――っ、サラ……!」

 

 次の瞬間。

 

 目の色を変えて振り返り、サラに手を伸ばそうとしたトリィの体が、勢いよく倒れ込んだ。

 

 寸前――トリィの体を通り抜け壁を貫いた光速の熱源を、サラは過たずに認識していて。

 

 なのに、超演算能力を持ち合わせながらも、一切の理解が追いつかず。自らの呼吸が途絶する感覚を、異次元の究極兵器である生命体はどこか遠くに覚えていた。

 

「え……?」

 

 そして、恐る恐る視線を回し、トリィを撃ち抜いた光線の出処――嘲笑を崩さないペイシャンが持つ拳銃を確かめて。

 

 信じ難い現実を前に、サラの心はその時、恐怖に凍りついていた。

 

 

 

 

 

 

 驚愕に固まる究極融合超獣の心は、二度の呼吸を挟んで再起動を果たしていた。

 

「――トリィ!?」

 

 相変わらず状況は意味がわからないまま――いや、理解したくないままだったが。立ち竦んでいたサラは姉に買って貰った白衣の隙間から触手を伸ばし、治癒光線をトリィに浴びせようとする。

 

 だが、そこに次々と光線が撃ち込まれた。

 

 重傷で身動きできないトリィへの追撃を阻むため、サラは触手を治療ではなく、防御に動員することを余儀なくされていた。

 

「……なんでっ!?」

 

 容易く光弾を弾きながらも、止む気配を見せない銃撃に声を荒らげたサラは、涙で視界を滲ませながら射手を問い詰めた。

 

「どうして、こんなことするの!? ペイシャンっ!」

「おまえを強くしてやるため、と言ったら満足か?」

 

 にやついた顔のまま、ペイシャンは淡々と答えた。

 その嫌らしい笑顔が、サラに限界を迎えさせた。

 

「――っ、いみわかんない!」

 

 正面から光弾を弾きながら、触手のうちの二本がペイシャンに勢いよく伸びる。

 

 ペイシャンを拘束しようとする禍々しい疾走は、目標へ届く前、彼の眼前に生じた黒い穴に吸い込まれたかと思うと、微かな痛みを与えられた後、外へ跳ね返された。

 

「う……っ!?」

「このまま遊んでやっても良いが、その間にトリィは死ぬぞ」

 

 痛みを吐き捨て、苛立ちに呑まれそうになったサラを正気に返すように、未だ銃撃を止めぬまま、ペイシャンが忠告して来る。

 

「俺が助けてやっても良いが……トリィはトリィじゃなくなるかもな」

 

 その嘲弄を合図に、先程サラの触手を跳ね返した黒い穴から、闇が放射された。

 

 サラは咄嗟に触手からバリアを展開し防ぐ。だが驚異的な勢いで迫る闇は、人間に擬態して不完全とはいえ、究極融合超獣の用意した防壁すら、徐々に食い破ろうとする。

 

 かつてスペースビーストと交戦した時のように、同化して、保護しながらの治療――は、このままではできない。そのために隙を晒した途端、二人ともがやられてしまう。

 

 そう判断したサラは、異次元の生物兵器たる超獣としての特性を活かし、自分たちの足元に存在する空間を割ることで、次元回廊を構築。

 

 揃ってその穴に落ちることで、回避と同時に撤退して、サラはペイシャンの魔の手からトリィを切り離した……つもりだった。

 

「……それで良い」

 

 だが、サラの挙動へ満足そうに呟くペイシャンの声が最後に聞こえたために――

 そして、未だトリィが一言も発することなく、死の淵に追いやられているまま、ピット星人には大きな負担の掛かる次元移動を行うこととなっために。

 

 サラは安心とは切り離されたまま、父を幻視した男から、母のように慕う女性を連れて、逃げ出していた。

 

 

 

 

 

 

 買い出しに行っていた鳥羽ライハと、一時的に居候している湊アサヒが帰宅する頃には、スカルゴモラNEXの記録映像もある程度段落していた。

 

「……ありがとう、お兄ちゃん」

 

 それを中止したルカが、二人を出迎える前に――彼女にとってはショッキングだったはずの、変貌したスカルゴモラNEXがウルトラマンジードを何度も殺しかける映像を見終えて。ルカは、彼女が生きることを望んだ兄に対して、感謝の言葉をもう一度、伝えてくれた。

 

 ……ごめんなさい、より。ずっと嬉しい言葉を貰えたリクが、安心して笑っていたところで。

 

 突然、中央司令室の、天井付近の空が割れた。

 

「たすけて!」

 

 超獣の特性による、次元回廊の開通――AIBでのお手伝いに向かっていたはずの末っ子が、お昼ごはんのためか帰って来たのだと予想したリクは、その逼迫した声に意表を衝かれた。

 

「サラ、どうしたの!?」

「トリィが、トリィが……っ!」

 

 問いかけた時には。末妹(サラ)は一部擬態を解いて顕現させた触手に包んだ、母や師のように慕う女性の身に何かあったことを訴えて来ていた。

 

「すぐに修復装置へ」

 

 予想外の事態で慌てふためくリクやルカを制し、微塵も動揺することなくレムが指示を出す。

 

 ……そんな、彼女の背後で。サラが開く次元回廊とは別の、闇の穴が拡がっていた。

 

 気づいたレムが振り返った、次の瞬間――そこから放たれた稲妻が、リクたちを庇うように両手を拡げた彼女を丸呑みにして。

 

 爆音を伴い迸る勢いのまま、レムの全身を灼き切った雷霆は、彼女の身を呆気なく四散させた。

 

「レム――っ!?」

 

 リクたちがその喪失に驚愕していられたのは、レムが消し飛ばされる寸前――ライハが操龍刀から展開したハニカム魔法陣状の多層バリアの展開が、盾になってくれたレム以外には間に合ったからだ。

 

 その半透明の防壁の向こうで、レムが身に着けていた服の切れ端が舞い散り、燃え尽きていた。

 

「そんな……そんなっ!」

〈私は無事です〉

 

 あまりにも突然の事態で、リクたちが取り乱すその最中に、天井から吊り下げられた山吹色の球体が発光する。

 

 本来の居場所である、ネオブリタニア号のメインコンピュータに意識の転送が間に合っていたらしいレムは、続けてアラートを鳴らすと同時にユートムを呼び出して、彼女の人間体を破壊した闇の穴――そこから出て来た人物を、照準した。

 

「嘘……」

「……ペイシャン博士?」

 

 ルカが零す驚愕に、リクの疑問が後から続いた。

 レムのボディを破壊した、闇の穴から現れたのは――ノワール星人との衝突から、今日まで。何度も何度も協力してきた、仲間であるはずの人物だった。

 

「――どういうこと?」

「前に、サイコキノ星人の査察官が来ていただろ?」

 

 微かに動揺しながらも、警戒を解かず対峙するライハの問いに、平然とした様子のペイシャンは質問で返した。

 

「だいたいはあいつの睨んだとおりだった、ということさ」

 

 ペイシャンが続けた裏切りの告白に、その時に立ち会っていないペガとアサヒは、なおも疑問符を浮かべる様子だった。

 

 ……だが、無理もない。あの時、一緒に居たリクだって、未だ理解が追いつかないのだから。

 

「ちょっと、待ってよ……」

 

 混乱するリクの隣、今にも泣き出しそうな声で呟いたのは、ルカだった。

 

「そんな冗談、もうやめてって言ったでしょ……?」

「ああ。だからこれは、冗談じゃない」

 

 縋るように問うルカへ、冷たく答えたペイシャンは――そこでおもむろに手を上げると、薄く笑う顔面を狙って放たれていたユートムのレーザー射撃を、何と素手で掴み、止めてしまっていた。

 

〈あなたは何者ですか?〉

 

 そのユートムを用い、牽制射撃を行ったレムの核心を衝く問いに、嘲笑を貼り付けていたペイシャンの顔から、人間らしい表情が消えた。

 

「――ダークザギ」

 

 そして、リクにとっても無視できない正体を、その口から紡いでいた。

 

 

 

 

 

 

 ……生涯で二度目となる、友好を装った他者からの裏切り。

 

 しかも、一度目よりもずっと、ずっと。長い間、共に戦い、信頼を築いてきたと思っていた相手――最初の頃の印象は決して良くなかったのに、今は打ち解けてきたとすら思っていた彼が、その正体を明かしたのを前に。

 

 ルカは、こんな時だというのに。衝撃で体に芯を通すことができず、呆然とするしかできなかった。

 

「な、ぜ……」

 

 そこで、新たに口を開いたのは、サラが触手に包んで連れてきた――状況的に見て、ペイシャン、否、ダークザギにやられたとしか考えられない、トリィ=ティプだった。

 

「――トリィ!」

 

 サラの呼びかけにも答えず、彼女の手で修復装置に横たえられていたトリィは、AIBの一員としての責任を果たそうとするように、背信者への問いかけを続ける。

 

「AIBに……いつ、から?」

「一年前だ。AIBなのはたまたま――こいつが、愚かなストルム星人の作った俺のカプセルに触れたからだな」

 

 息も絶え絶えなトリィの問いかけに、ダークザギを名乗ったペイシャンは、その胸を自らの親指で指し示した。

 

 ストルム星人の作ったカプセルというのは、リクやルカたちの父であるウルトラマンベリアルが、その野望のため製造させていた怪獣カプセルに違いない。

 

 例えばあの、エンペラ星人カプセルのように。一部だけとはいえ、強大過ぎる力を元にしたカプセルは、存在するだけで周囲に影響を与えるほどだったという。

 

 同じように。そのカプセルが、無謀にも捉えようとしていたダークザギ――伝説の超人と讃えられるウルトラマンノアを模した、邪悪なる暗黒破壊神の魂は、カプセル如きに収まることなく、逆に自らが宇宙を越えるための足がかりにして。挙げ句、触れた者の肉体を乗っ取ってしまったということらしい。

 

 そうして一年前から、成り代わられていたというのなら――トリィ以外、ルカたち星雲荘の面々が会っていたのは、最初からダークザギだったということになるのか。

 

〈あなたが黒幕で、ダークザギだというのなら……かつてあなたの宇宙でTLT(ティルト)へしたように、私たちの認識や記録を、あなたが書き換えていたということですか〉

「多少、な」

 

 ……例えば、レムがベリアル軍として有していたグリーザの情報であったり。

 

 強力なテレパス能力を持つ、生きた嘘発見器――ゾベタイ星人が帯同した尋問への、対策であったり。

 

 電子的なデータだけでなく、異種知性体の記憶や認識をも改竄する――それを持ち合わせた超科学文明に造られたダークザギが、当然のように自らも有していた能力。

 

 そんなものを前提にしてはキリがないから、と。AIB総本部の査察官の追求すら回避させた力を行使して来たことを、ゼットン星人を乗っ取っていた邪悪な意志が言う。

 

「ただ、おまえらの推測が少しだけ違うのは――俺が主に細工していたのは、リトルスターの方だった、ということだ」

 

 告げて、彼の視線がルカを向いた。

 既に、兄へと譲渡し喪われた――リトルスターを宿していた、胸の中心を射抜くように。

 

「ネクサスのリトルスター……ルカの前、最初の宿主は、この俺だったからな」

 

 予想もしていなかった告白に。そこへ込められた悪意の気配に。

 

 ルカが身を竦めたところで、ペイシャンの死角を見逃さず、ライハが駆け出した。

 

「おっと」

 

 だが、ライハの鋭い斬撃すら。ルカに注目していたはずのペイシャンは、軌道がわかっていたように、悠然と翳した掌で止めた。

 

「――目的は何!?」

 

 対し、ライハは押し切ろうとさらに踏み込みながら、気合を兼ねて問いかける。

 それを受けて、ペイシャンの首を微かに傾けさせながら、ダークザギは答えた。

 

「ある意味でおまえや、以前のレムと同じ……ベリアルの子らを、強化することだよ」

 

 ライハの握る、ペダニウム超合金製の刃――ゼットン星人ペイシャン博士として自ら与えた得物を、容易く素手で捻じ曲げながら――空いた方の拳を握ったダークザギは、そこに闇のエネルギーを集約させ始めていた。

 

「その最後で……おまえをルカに殺させるつもりだったんだが」

 

 ……あまりにも悍ましい意図を、聞かされて。

 

 衝撃に目を見開くルカと、至近距離で声の主を睨めつけるライハに対し――彼女に戦場へ出るための手段を与えていた張本人は、微かに嘆息した。

 

「ゼットの馬鹿のせいで、予定が狂った」

「――ライハっ!」

 

 関心の薄い――未必の、しかし紛れもない殺意が篭った声に、悪寒が走って。

 

 裏切りのショックで腑抜けていたルカに、芯が入ると同時。怪獣念力の行使と同じタイミングで、リクが跳んだ。

 

 生身のまま、ウルトラマンジードとして多用する飛び膝蹴りを試みるリクと。レムがユートムから放った光線と、サラが走らせた触手に。後方からペガとアサヒが投げた、リクの私物である枕やタコのぬいぐるみが、一斉にペイシャンに襲いかかり、その手の中の闇が爆ぜた衝撃波で薙ぎ払われ、一掃される。

 

 だが、的が散ったおかげか――ライハが直接狙われることはなく、剣を手放した彼女を、ルカの念力が引き寄せ、ザギの魔の手から退避させることに成功した。

 

 しかし、その最中。ライハから奪った剣を、巨大なダーツの矢のように指先で弄んだペイシャンが、その刀身を投擲する。

 狙いは、ルカが受け止めたライハ――ではなく。修復装置の上とは言え、体に黒い穴を開け倒れたまま、とうとう意識を失った様子の、トリィだった。

 

「――っ、わぁあああああああっ!!」

 

 その剣を横に弾いたのは、幼女の手首から伸びた光の剣、アグルブレードだった。

 

 可愛い顔を、決死の形相に歪め目を見開いた(サラ)が……大切な人を守ろうと、触手を傷つけられた痛みを圧して動いていた。

 

「良い顔だ」

 

 激憤した表情を、まるで。上手く笑えた娘を褒める父親のような調子で、悍ましくペイシャンが煽る。

 

 その彼を、強制的に排除しようと――星雲荘の転送用エレベーターが彼を取り囲むように出現するが、次の瞬間にはその仮想壁が爆砕され、ペイシャンの握り拳が天井から吊るされたレムの本体を悠然と照準する。

 

「危ないっ!」

 

 咄嗟に起き上がったペガが、宙へダークゾーンを形成。亜空間を盾の代わりにして、ペイシャンが放った黒い光弾を受ける。

 

 ダークゾーンは一瞬で食い千切られたが、亜空間の干渉で微かに射線が逸れたことで、レム本体はエネルギー弾が掠めるだけで済んでいた。

 

「ペイシャン――ッ!!」

 

 そして、その間に。長い触手を手足の代わりにしてペイシャンへ飛びかかったサラが、彼の背後の空間に次元回廊を開いていた。

 

 サラの突撃を、両肩に手を置いて易々と制したペイシャンは、しかしその勢いに流されるまま――サラと共に、異次元へとその姿を消して行った。

 

 

 

 

 

 

「……おそいね、サラちゃんたち」

 

 ようやく取れた休日。一家団欒のための昼食に向かっていた伊賀栗レイトは、一人娘のマユが零した声に腰を屈めた。

 

「仕方ないよ。サラちゃんは、ペイシャンさんやトリィさんのお手伝いで忙しいんだから」

 

 レイトがそう言い聞かせると、不承不承と言った様子ながらも、マユは頷いてくれた。

 

 それから立ち上がり、レイトは妻のルミナの視線を配るも、綺麗な小皺を作った彼女は首を横に振るだけだった。

 

「ペイシャンさんを誘ってみる、って連絡が最後。それから既読も付かないわ」

「……うーん、困ったね」

(――ったく。マユとの約束すっぽかすとか、どういう了見だ)

 

 レイトにだけ聞こえたその呟きは、同化しているウルトラマンゼロの苛立ちが発露したものだった。

 

 マユの友達への嫉妬を多分に含むその声に、レイトは呆れながら釘を差した。

 

「ゼロさんは僕と会社の約束をすっぽかさせてるじゃないですか」

(おまっ、それは謝っただろ!)

 

 かつては世界の危機だから、と――実際、それはいつも大局的には正しいことだったと、レイトも今は思うが……憑依先の事情を振り回し、結果として、マユの将来に必要な稼ぎの心配を招いてしまったことを後から気づいたゼロは、この件で責められるとすっかり弱くなっていた。

 

「まぁ、スペースビースト? の時からはペイシャンさんがフォローを手配してくれるようになったので、もう大丈夫ですけどね」

 

 星雲荘の子供たちを戦いに巻き込んでしまう際にも、きちんと謝礼を払うように体制を改善させたとのことで、レイトはペイシャンのことをああ見えて義理堅く豆な人物だと評価していた。

 

 ベリアルの残滓で復活し狂ってしまったという石刈アリエの襲撃から、自分たち家族を直接救ってくれた恩人であることを考えれば、なおさらだった。

 

「……もしかしたら、例の相談をしているのかもね」

 

 そこで、待たされているルミナが怒る様子でもなく、こっそり微笑んだ。

 

「サラちゃんを小学校に通わせるとしたら……っていう、例の?」

 

 もし、そんな運びにならなかった時、ガッカリさせないで済むように――マユに聞こえないよう声量を絞ったレイトの問いかけに、ルミナが頷いた。

 

 ……実は、現役小学生を養育するレイトたち夫婦は以前、トリィ=ティプから相談を受けたことがあったのだ。

 

 もしもサラが望んだなら、学校に通わせてあげたい――そのために、里親役を偽装するとすれば、どんなことが求められるだろうか、と。

 

「あの日以来、サラちゃんがお気に入りなんだもの、ペイシャンさんのこと。それでトリィさんも、どうせ里親役にするなら……ってね」

「確かに、運動会とか、お父さんじゃないと参加し難い行事もあるからね」

 

 その中で。朝倉という姓は、リクたちとの関係を公的に残してあげたいから、残すとして。

 

 教育のための、里親役だけを引き受けるのなら――女手一つよりは、やはり形だけでも夫婦の方が、周囲の視線も和らぐだろうと、そんな結論を三人で導いた。

 

 なら、トリィの夫役は、誰に求めるべきかということで――その後もルミナとトリィが相談を続けた末、白羽の矢が立ったのが、ペイシャンだったらしい。

 

(ベリアルの娘で、滅亡の邪神の幼体で、究極超獣がマユと同じ学校、ねぇ……)

「……駄目ですか、ゼロさん?」

(いや。正直ビックリはするが、リクと同じで……サラ自身はベリアルとは違う)

 

 ウルトラマンベリアルとも、ヤプールの超獣とも、滅亡の邪神とも、敵であった過去を持ちながら。ゼロはそんな風に、静かに事実を述べていた。

 

(――それに……その方が、マユが喜ぶなら、良いことなんだろうな)

 

 その上で覗かせた、慈愛の心に。レイトも思わず頬が緩んだ。

 

 ――真昼を白く染めるほどの強烈な稲妻が迸ったのは、その直後のことだった。

 

「え……あれ、サラちゃん?」

 

 強すぎる光から、咄嗟に家族の目を庇ったレイトの肩越しに、顔を伸ばし――馴染みのある巨大生物の咆哮を聞いたマユが呟くのに釣られて、レイトも振り返った。

 

(――馬鹿な、あいつは……っ!)

 

 そして、直後に轟いた――ウルトラマンゼロをして戦慄させる、野獣の如き濁った叫びの主。

 

 ウルトラマンベリアルと類似した体色の、しかし彼とも異なる暗黒の巨人が――サンダーキラーSと対峙するように星山市へ出現した瞬間を、レイトは目撃していた。

 

 

 

 

 

 

 次元回廊に引きずり込んだ直後。ペイシャンは背後にあの闇の穴を開き、あっさりと究極融合超獣の領域から脱出を果たしてしまった。

 

「――にがさないっ!」

 

 執拗にトリィを狙った彼を……父を重ねてみれば、本当に実父(ベリアル)のような外道の本性を顕にしたペイシャンを追って、サラは自身を雷に変貌させながら穴に飛び込む。

 

 ……闇を抜ければ、その先は星山市の街中だった。

 

 先日のグリーザ戦で破壊された残骸がある程度撤去された更地の上に、雷から、究極融合超獣サンダーキラーSとしての本来の姿に戻ったサラは着地する。

 

 それからゆっくりと起こした、兜に覆われた無貌の視線の先に――裏切者は、その特異性を隠すこともなく、浮遊していた。

 

「……この宇宙で、デビルスプリンター事件が少ない理由は何だったと思う?」

 

 戦闘態勢に入ったサンダーキラーSを前にしても、悠然と呟くペイシャンの背後には、やはりあの闇の穴が開いていて――

 

 その穴から、橙色の欠片――件のベリアルの細胞片(デビルスプリンター)が、次々と、ペイシャン目掛けて吐き出されていた。

 

「予め、俺が独占していたからさ」

 

 それは、彼自身の超常の力による回収と。

 

 AIBの記録や認識を改竄することで、組織として保管していたデビルスプリンターの大部分を掌握していたことの、告白だった。

 

「因子じゃないが……一時的に、俺を解き放つだけなら充分だ」

 

 呟いたペイシャンが、リクが使うのと同型の――そしておそらくは、アリエが使っていたのと同一のライザーを手にした瞬間、サンダーキラーSは躊躇を捨てた。

 

「――べりあるじぇのさんだー!」

 

 ほんの数分前まで、居なくなって欲しくないと想っていた、裏切者を消し去るため。人間大の大きさの相手に放つには過剰に過ぎる高電圧を、八本の触手から放出し――

 

 その時には、既に遅かった。

 

 大量のデビルスプリンターをその身に吸収したペイシャンが、ライザーを起動させ――哀れなゼットン星人の肉体が消滅し。

 

 その中に潜んでいた、邪悪なる暗黒破壊神の顕現が、既に決定付けられていたから。

 

 ――並の怪獣なら、それだけで蒸発させるベリアルジェノサンダーを浴びながら、降臨する余波だけでそれを散らし。

 

 二筋の装甲を浮かせた頭部の下、三本の線が走った赤い双眸で天を睨み、濁った獣の咆哮を発しながら。

 

 禍々しい黒い体躯に、真紅のラインを走らせた闇の巨人――

 

 暗黒破壊神ダークザギが、星山市に出現していた。

 

 

 

 

 

 

 




Aパートあとがき



 ここまでお読み頂きありがとうございます。

 ようやくペイシャンの秘密を明かすところまで来ました。ダークザギという正体についても、気づいている人は登場してすぐぐらいから気づいていたかもしれませんが、今まで展開潰しにならないよう黙っていてくれて本当にありがとうございました。おかげで原作再現となるような唐突なカミングアウトが演出できていたら良いなぁと思う次第。

 ということで、実はオリキャラじゃなくてゲストキャラだったペイシャンこと、『ウルトラマンネクサス』のラスボスとして有名なダークザギ。
 もちろん、『ウルトラマンジード』本編中から怪獣カプセル由来で潜伏していました、なんて設定は公式には存在しません。正直「培養合成獣スカルゴモラの生存」以上にIF要素が強い展開ですが、どうかご了承くださると幸いです。

 自己満足として、特に登場当初の正体匂わせ要素やそれに関連するメタネタだけ解説したいと思います。興味ない方は適当に読み飛ばしてください。



・ゼットン星人ペイシャン・トイン
 まず名前及び乗っ取っていた存在ですが、『ウルトラマンジード』脚本の乙一先生がウルトラマンに関わるに当たってリスペクトを表明していた故小林泰三先生が円谷プロ公認で発表された『ウルトラマンF』が元ネタになります。
 ダークザギも登場する同作の重要なネタバレとなりますが、『F』の黒幕は味方陣営の怪しい博士として登場した新キャラのインペイシャント――となり変わっていたゼットン星人でした。
 それを元ネタとするネーミングのゼットン星人ということで、原作のザギさん同様、現時点で明かされているのとは別の正体がある黒幕という匂わせ……になっていたら良いなぁと思っていたりしました。
 一応、本作中では本名そのままという想定のため、「光彦」みたいにザギさんが意図して名乗っているわけではない扱いです。

・ペダン星人に擬態
 作中のザギさんの思考としては、ただの売り言葉に買い言葉ですが、現在唯一素顔が明らかになっているペダン星人の男性キャラクター・ダイルを演じたのが、ダークザギの人間体を演じた加藤厚成氏という中の人ネタでした。もちろんペイシャンは(他人の空似で)同じ顔している想定です。
 ちなみにダイルの肩書はレイオニクスハンターで、名の通りゴモラ使いの主人公レイオニクスと敵対する関係だったりもします。

・「道具」という言葉で感情的になる
(放送短縮による設定変更の煽りもあって)『ウルトラマンネクサス』本編では描かれていませんが、小学館の漫画版『ウルトラマンネクサス』に付属している設定資料集や上記『ウルトラマンF』で「道具」や「模造品」というワードがザギさんの地雷であるという描写がされており、公式設定の出自から考えてみても特に矛盾することがない設定のため、匂わせ要素として使っていました。
 オリジナルを越えた模造品、ウルトラマンジードとの絡みが見たい理由ナンバーワンとして両者のファンの間では共有されているのかな、と思っています。

・スパークドールズやイージスに妙なリアクションをする
 前者は『ウルトラマンギンガ 劇場版スペシャル』での登場で、ダークザギもスパークドールズになったことがあるのが映像作品上の正史であるためですね。多分『ネクサス』及び今作とも同一人物で、ここで痛い目を見たことで今回は復活に当たって回りくどいことをしていた……という裏設定。計画の内容についてはBパート以降。
 後者については言うまでもなくノアへのコンプレックス。特に明確かつ最も劣る点である『イージスに相当する器官』がないのに、ノアがゼロに似たような武器をあげたりあまつさえそれをザギさん視点の下等生物が複製したりしていたので、思うところがあり過ぎた想定です。

・紅茶好き
 これはエイプリルフール企画の『ネット紳士ダークザギ』ネタになります。特に言及していた銘柄がバニラティーの『セント・バレンタイン』(廃盤)だったので、第六話でそのまま言及させた形です。完全に番外編ギャグネタですが、それだけにここで気づいた方も多かったかも、と思っていたりします。



 それ以外の正体匂わせはだいたいはリクくんがダークザギのことを考えるたびにペイシャンが絡んで来たぐらいになるかなと思います。17話のレム相手に監視していると言われた時も地雷を踏まれて本気で睨んでいた(から今回爆殺した)のだと思われますが。
 ……等々、解説でちょっと小物感を盛られてしまったザギさんが本来の姿でどう暴れるのかはBパート以降になります。

 よろしければ引き続き、お付き合い頂けると幸いです。




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