ウルトラマンジード ベリアルの子ら   作:ヨアンゴ

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第十八話「僕が僕らしくいるために」Bパート

 

 

 

〈星山市に、黒い巨人が出現――ダークザギです〉

 

 襲撃者と、最年少者だけが消えた星雲荘の中央司令室で、レムが状況の変化を告げるその最中。突然の揺れが、リクたちを襲った。

 

「わっ、地震!? 怖い……っ!」

 

 以前にも、そんなもので星雲荘は壊れないと言われたのに、相も変わらずペガが取り乱す。

 

 だが、無理もないのかもしれない――今回星雲荘を襲った揺れは、過去に経験した同様の事象の中で、明らかに最大規模の物だったから。

 

〈地震だけではありません〉

 

 未だ星雲荘――ネオ・ブリタニア号全体が揺れる中、レムがその悲鳴の中身を補足する。

 

〈各大陸でカテゴリーシックス相当のハリケーン、シベリアではさらに全土に大規模な火災が発生。大気の鉛直構造にも異常が見られ、地球上の複数の地域で宇宙から有害な電磁波が素通りとなっています〉

 

 何の前兆もなく、世界の箍が外れたような大災害が、同時多発的に発生した。

 

 ……もし、事前に対ビースト抗体が散布されていなければ、これに加えて無数のスペースビーストが発生し、地球全土で捕食活動を開始していた、という事実までは知らずとも。

 

 それを除けば、似たようなシチュエーションを、リクやライハは知っていた。

 

 それはリクの父、ウルトラマンベリアルが、究極に至る(アトロシア)姿()と化した時――宇宙を維持していたウルトラマンキングのエネルギーを吸収し始めた時のことだ。

 

 奇しくも、暗黒の巨人が降臨しているという状況の相似性は、偶然、では済まないのだろう。

 

〈全て、ダークザギの出現に伴う現象であると考えられます〉

 

 そんなリクの予感を肯定する結論を、報告管理システムであるレムが述べた。

 

 ……アトロシアスのような、宇宙を繋ぎ止める力を横取りしたという最低限の理屈もなく。ただ出現しただけで、世界を乱し滅びに導く破壊の神。

 

 伝説の超人を模した人工の黒き巨人、ダークザギの猛威を知らされたリクたちが選ぶべき手段は、根源となる脅威そのものを、どうにかすることだろう。

 

 何より……彼の裏切りを受け、傷ついた末妹が一人、皆を守るために。既に、ダークザギと対峙していたから。

 

 すぐ、助けに行かなくては――!

 

 ……その想いは、ペイシャン=ダークザギの真実を未だ受け止めきれていないままでも、(ルカ)も共有してくれている様子だった。

 

「――行こう、お兄ちゃん」

 

 その、ルカに対して。ネクサスのリトルスターを譲渡した先代の宿主だというダークザギの、その秘めたる意図を問い質すためにも。

 

「そうです! サラちゃんだけに押し付けるわけにはいきません!」

 

 さらには、突然の事態へ純粋に巻き込まれた形でありながら、物怖じせず、リクの妹を気遣ってくれるアサヒにも促されて。

 

 頷きを返したリクは、決意を述べると共に、二人とともに転送用のエレベーターに駆け込んだ。

 

「ジーッとしてても……ドーにもならねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 ウルトラマンノアと似通った姿で、世界を崩す災いを伴って出現した、暗黒破壊神を前に。

 

 対峙するだけで伝わって来る凄まじい力のほどを、肌で感じ取り――平時であれば折れてしまっていただろう心が、しかし烈しく燃える感情に支えられ。

 

 究極融合超獣サンダーキラー(ザウルス)は、大地の揺れと共振するような相手の咆哮が終わるより早く、第二撃の準備に移っていた。

 

「ですしうむD4れい……!」

 

 口腔と胸部の発光体、そして八本の触手の先端に集約するのは、次元回廊を開くのと同じ、超獣の基本特性として備える空間破壊に用いるエネルギー。

 

 それを、空間ではなく、そこに属する物質への破壊目的に転用した、サンダーキラーSの持つ中でも最上位の攻撃手段。

 

「――いっせいはっしゃ!」

 

 計十条のD4レイに対して、淀みなく対応したダークザギの動作は極めてシンプル――ただ、正面に向けた手でバリアを展開しただけだった。

 

 あらゆる物理的防御を無効化するデスシウムD4レイも、作用するために放出された以上のエネルギーには相殺され、潰えてしまう――そんな単純な理屈で、ザギ・リフレクションは、D4レイの殺到を容易く防ぎきってしまっていた。

 

 そして、バリアを投げ捨てるようにして攻撃を跳ね除けたザギは、荒々しく両手の拳を前に突き出し、そこから黒い波濤を光速で放射して、サンダーキラーSを攻撃した。

 

 黒い波濤は、サンダーキラーSが照射を続けていたデスシウムD4レイのエネルギーをあっさりと洗い流し、押し返し、究極融合超獣の本体にまで到達。光速で届いた波動は、あらゆる光学干渉を吸収するサンダーキラーSにまるで抵抗を許さず、巨大生物の肉体を何キロメートルも弾き飛ばした。

 

「――うぁあああああああっ!?」

 

 全身を圧搾されるような痛みで悟る。ダークザギが放ったのは、光や電磁波ではなく、コヒーレント化された超重力波――サンダーキラーSの吸収対象外の作用だった。

 

 ブラックホールに相当する圧力に全身を呑み込まれ、内外から貫かれたサンダーキラーSは、たったの一撃で戦闘不能寸前へ追い込まれた。投げ出された勢いのまま抵抗もできず、大地震で躯体の劣化したところに余波を浴び、微塵に崩壊する星山市の建物ともども倒れ込む。

 

 ……だが、サンダーキラーSはまだ絶命していない。

 

 光怪獣プリズ魔と液汁超獣ハンザギランを取り込んだサンダーキラーSは、太陽光の下では無尽にも等しいエネルギー回復能力と、不死身に近い自己再生能力を獲得する。

 

 超重力場で崩壊しかけた肉体を繋ぎ止め、命を拾ったサンダーキラーSは、内から囃し立てる感情に押し上げられるまま再起動した。

 

「きらーとらんす……!」

 

 全身隈なく蹂躙した痛みは変わらず記憶しながら、肉体を高速再生して傷を消し去ったサンダーキラーSは、悠然とこちらに歩んで来るダークザギを見据えて、次の動作を音声認証した。

 

「ハイパーゼットン・しざーす! リガトロン・ぶーすたー!」

 

 右腕を、宇宙恐竜ハイパーゼットンの槍状の腕に変化させ。

 

 背部には、再生した触手の後列に、複合怪獣リガトロンのロケットブースターを再現して。

 

 そして、宇宙航行用のブースターを点火し、瞬時に第二宇宙速度まで加速したサンダーキラーSは、自身を一本の矢としてダークザギに飛びかかった。

 

 再びバリアで防がれたとしても、近接戦なら突破する術はある――そんな目論見を抱えながら、まずは単純な最大突進力の一撃を叩き込もうと、右腕の穂先に一兆度の炎を灯し、ダークザギ相手に振り抜いて。

 

 呆気なく。迅雷のように閃いた掌に掴まれただけで、その攻撃は無力化された。

 

 まるで、蝋燭の火を消すように。指先だけで軽く一兆度の火球を掻き消したダークザギの、超重力を纏った掌がさらに力を加えると――仮にも完全体の滅亡の邪神を模したハイパーゼットンの右腕が、握り潰され砕けて行く。

 

「あ、ぅ……っ!? ――うっ、うるてぃめいとりっぱーっ!」

 

 右腕を捻り上げられる苦しみに呻きながら、サンダーキラーSは兄から学んだ光輪技を八本の触手の先端に生成。

 

 各々がダークザギの急所を狙い、遠心力まで叩きつけようとする軌道で襲いかかった触手の携えた八つの光輪は、斬りつけたダークザギの腕の力を緩めることもできず、石に叩きつけたガラスのような音を残して砕け散った。

 

 首筋や、目や、腹――そしてカラータイマーに相当する器官であるエナジーコアに激突したものも含めて、一つ残らず。

 

 純粋な強度を前に、ウルティメイトリッパーは通じなかったが、それでも。得物が砕けて手が空いた触手、その先端に備わった鉤爪でダークザギに掴みかかり、リガトロンから奪った特性によるエネルギー吸収を開始する。

 

 だが、それを意にも介さない暗黒破壊神は、究極融合超獣の右腕を砕き終えた左の拳に、炎を灯した。

 

 それは、サンダーキラーSが先程繰り出したのと同じ――最高一兆度に達した、劫火。

 

 ただし、規模と持続時間、すなわち総エネルギー量が、桁違いだった。

 

 それを目標物に叩きつける、腕力も。

 

 そもそもが並の超獣を凌ぐ膂力をした、究極超獣の触手。それが八本も合わさった拘束に、エネルギーを吸われていることも物ともせず、ダークザギが力任せに繰り出した一兆度の拳――ザギ・インフェルノはサンダーキラーSの顔面を捉え、何かが砕け、折れる鈍い致命的な音を連続させながら、再びその体を星山市の街中に投げ出させた。

 

 吹き飛んだサンダーキラーSの十万トン近い質量が、何キロも飛んだ末市街地に落下。本体や触手が直接押し潰した建物だけでなく、地震の収まっていた街を衝撃波と震動が再び蹂躙し、あちこちで古い家屋が一斉に倒壊した。

 

「……ぅ……ぁ……っ」

 

 太陽の光を浴びながらも修復の追いつかない、頭部の陥没。水の中で居るように声が濁り、また口に届く前に抜けていくような首の怪我。

 

 ……もし、ダークザギの殴打が本気だったなら。サンダーキラーSの亡骸は、容易く地球の重力を振り切って、宇宙の果てまで飛んで行ったのだろうが。

 

 破壊神の思惑によって、幼き邪神はまだその命を潰えさせることなく、激痛に呻くだけで済んでいた。

 

 それでも、環境が違えば致命傷であった自身の状態を朧気ながらも把握し、逆にキャパシティーを越えてしまった痛みが鈍くなったところで、サンダーキラーSは再び立ち上がった。

 

「――まけ、ない……っ!」

 

 本体だけではまだ、満足に立ち上がることもできない状態なのを、八本の触手が介助することで補って。

 

「トリィにひどいことをした、あなたにだけは……っ!」

 

 サンダーキラーSが決意を吐いた直後。歩くだけで爆発を伴い、住み慣れた街を灰燼に帰しながら、ゆっくりと距離を詰めようとしていたダークザギの足が止まった。

 

「……尽くすねぇ、あんな女に」

 

 そうして。ザギの姿を晒してから、獣のように吠えるばかりだった彼は――ペイシャンの時と変わらぬ声で、サンダーキラーSに語りかけて来た。

 

「あいつにとってのおまえは、前に飼っていたエレキングの代替品だ。そのエレキングのことも、育てておいて自分の勝手で死なせたような女だぞ?」

 

 ……なぜだか。それを告げる声と調子に、ペイシャンとの変わりがないことが。サンダーキラーSは無性に悲しかった。

 

「おまえ自身を見ていない女のために、おまえがそこまで傷ついてやる意味はあるのか?」

「……そんなこと、ないもん」

 

 ザギの問いかけに、サンダーキラーSは首を振った。

 

「わたしだって、トリィがむかし、エレキングをそだててたの、知ってる……! そのエレキングがいたから、わたしは生まれてこれたんだから――!」

 

 ――そのことに気づいたのは、かつてトリィと融合した後のことだった。

 

 究極融合超獣サンダーキラーSが、ベリアル融合獣サンダーキラーと酷似した姿をしている理由――それは、ただ素材が近いからだけではない。

 

 サンダーキラーへのフュージョンライズに用いられていた、エースキラーのカプセル。それを介して、手を出せぬまでもこの宇宙の情報を収集していたヤプールが、最上の生体資源であるハイパーエレキングの力を利用した超獣を作るため、モデルとしたのがサンダーキラーなのだ。

 

 だから、素材に由来しないベリアル融合獣(サンダーキラー)独自の技を、究極融合超獣(サンダーキラーS)も使うことができていた。

 

 ……そこまでは、サンダーキラーSもこの形で生まれた時点で、漠然とは知っていた。

 

 ただ、そのサンダーキラーの素材の片割れとなっていたエレキングの正体が、トリィの育てた生命であったことは……トリィと融合して、その記憶を知った時に、ようやく気づいた。

 

 ……トリィは、サンダーキラーSと自身の間に存在する、そんな奇妙な縁を知りはしないだろうが。サンダーキラーSがこれまで興味の薄かった故人、実父であるベリアルを嫌悪するようになったのは、トリィを苦しめたその一件が大きな理由だった。

 

 そんな、トリィの思い出を見たからこそ、サンダーキラーSは躊躇いなく言える。

 

 確かに、あの日。トリィが雨の中で倒れていたサラを助けてくれたのは……ザギの言う通り、そのエレキングを重ねて見てのことだった。

 

 だが、今となっては。ダークザギの言葉は、絶対に間違っているのだと――!

 

「でも、トリィは……っ! あの子も、わたしも、ちゃんと! ちがう子だって、どっちもだいじにしてくれてる――っ!」

 

 その想いを。サンダーキラーSは、かつてトリィと一つになった時、確かに感じていた。

 

 だからこそ、サンダーキラーSは、サラは。トリィのことが、一層、好きになったのだから。

 

「……そうか」

 

 自らの見当違いだと切って捨てられたウルトラマンの模造品が、その声から嘲弄の気配を消した頃には。

 

 未だ完治には至らずとも、サンダーキラーSもまた、再びダークザギに立ち向かう力を取り戻していた。

 

 ……例えそれが、嵐へ晒される一本の松明に等しい抵抗だとしても。

 

 大切なものを傷つけられ、愚弄され、今も悪意を持って狙う相手から、一歩だって退くことはできない――!

 

「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 そこで、サンダーキラーSに加勢するように、青い無数の光刃が飛来した。

 

「(大丈夫、サラちゃん!?)」

「あ……」

 

 心配の滲んだ呼び声を受け、サンダーキラーSは一瞬、忘我の心地で呟いていた。

 

「――マユちゃんの、お父さん……?」

「……なんてやつと戦ってやがるっ!」

 

 父を幻視した相手に裏切られ、一方的に甚振られるサンダーキラーSへ駆け寄る青いウルトラマンゼロ――本体であるルナミラクルゼロとは対照的に。ダークザギへと立ち向かうのは赤い体に金のラインを走らせた分身である、ストロングコロナゼロだった。

 

「ガルネイト……バスター!」

 

 ミラクルゼロスラッガーの刃を無防備に受け、体表だけで全て弾き返したダークザギは、続くストロングコロナゼロの拳とそこから放たれる爆熱光線の零距離射撃を構えもせずに受け切ると、無造作に拳を返した。

 

 ストロングコロナゼロを打ち抜いた握り拳から、着弾と同時にザギ・シュートの破壊光弾が放たれる。

 

 その小さな光弾は、ガルネイトバスターのような決戦火力ではなく、小手先の牽制技に過ぎない。

 

 しかし、ダークザギの出力で放たれた、至近距離からの着弾には耐えることができず、分身体であるストロングコロナゼロは一撃で消滅してしまった。

 

 だが、その間に。ダークザギや、彼と対峙するゼロとサンダーキラーSもろとも。黄金の波動が周囲を取り囲み、星山市から隔離を始めていた。

 

「……お姉、さま」

「あたしたちも居ます!」

 

 メタフィールド展開が完了する頃には。互いの位置関係を補正して、名乗りを上げるウルトラウーマングリージョや、そしてウルトラマンジードもまた、術者であるスカルゴモラとともに、サンダーキラーSを庇うような位置取りで集まり、ダークザギと対峙していた。

 

 

 

 

 

 

「(ペイシャン……よくも、私の妹を!)」

「どうしてこんなことをするんですか、ペイシャン博士!?」

 

 妹を傷つけられたことで、今更ながら。自身を見舞う混乱に耽溺する場合ではないと、芯の通った培養合成獣スカルゴモラと。

 

 隣に並んだ兄のウルトラマンジード・プリミティブとが、邪悪なる暗黒破壊神に問いかけた。

 

「――待て、ペイシャンだと?」

「(そんな、嘘でしょう……!?)」

 

 ダークザギに対する呼びかけを拾って、星雲荘襲撃の現場に居合わせなかったゼロとレイトが、驚愕の声を漏らしていた。

 

「……本当です。レイトさん、ゼロ」

「(こいつ……ずっと私たちを、騙してたんだ!)」

 

 ジードに続いて。怒りに震えるスカルゴモラが、レイオニックバーストを遂げながら伝えても、目に見えてウルトラマンゼロは狼狽えていた。

 

 それは、ゼロ自身の意志ではなく――彼に体を貸している、地球の一般人の反応だった。

 

「(待ってください! あなたはあの時、アリエさんから僕たちを庇ってくれた……あれも、嘘だったんですか!?)」

 

 テレパシーだというのに。震えているのがわかる声でレイトが問いかけた時、ダークザギは彼ではなく、皆の背に庇われているサンダーキラーSを見ていた。

 

 そうして、レイトの主張を境に、微かにサンダーキラーSの敵意が薄れたのを見取ってから……ザギはゼロを見ないままで答えた。

 

「一つ教えてやる。そもそも石刈アリエが蘇生したのは、ベリアル因子のせいじゃない」

 

 そして、今の今まで、この場の全員が信じていた事実を、悪意に満ちた声で覆した。

 

「その因子を使いたかった俺が、アリエの死体をウルティノイドに創り変えたから、だ」

 

 ウルティノイド。

 

 即座に検索したレムが表示した情報に拠れば――それは、ダークザギを祖とする闇の巨人。

 

 適合する人間の悪心を増幅させ、あるいは心を消し去り……果ては、死者を創り変えて、ダークザギの意志のままに操られる道具たちのことだ。

 

 ザギは質問したゼロ(レイト)ではなく、サンダーキラーSに向けて、真相を明かし続ける。

 

「公園の件も、俺の一人芝居……お人形遊びだったのさ」

 

 ……あの時の石刈アリエは、その遺体をウルティノイドに改造され――肉体に残留していたベリアル因子の力を利用するため、表向きの黒幕として操られていたということなのか。

 

 本来レイオニクスではないダークザギが、自身の関与を隠蔽しながら、怪獣使いの力を行使するために。

 

「見込みほどは役に立たなかったが……都合良くグリーザを呼び出すために、サラを誘導し易くなっただけでも、まぁ御の字だったな」

「(お、まえ……っ!)」

 

 結果的に、シャイニングの力で、アリエは奇跡的に元へ戻れたとはいえ。

 

 被害者であった死人の尊厳を、意にも留めずに踏み躙り。

 

 その我欲のせいで、自分たちがどんな目に遭ったのかを振り返り。

 

 そして、妹の心を弄ばれたと理解したスカルゴモラは、遂にその怒りを堪えきれずに咆哮し、気づいた時には進撃を開始していた。

 

「ルカ――! いけない、一人じゃ!」

《シャイニングミスティック!》

「俺たちも行くぞ、レイト!」

《ネオ・フュージョンライズ!》

 

 スカルゴモラが駆け出したのに合わせて。メタフィールドの補助を受けたジードが、現在変身できる中では最強の形態へとフュージョンライズして。

 

 同じくゼロが、最大戦闘力を発揮できるゼロビヨンドの、さらなる強化形態――黄金に輝くギャラクシーグリッターまで変身する。

 

「――ジードマルチレイヤー!」

 

 そして、かつて世界を崩壊寸前に追いやった闇の巨人――父であるベリアルを倒した最大奥義、マルチレイヤーを発動したジードが、四体の分身を召喚する。

 

 単体戦力で言えば、シャイニングミスティックに伍するライハの祈りで生まれた姿(ロイヤルメガマスター)と、ルカの(ノアク)光で到達した形(ティブサクシー)()

 

 加えて、それらに準ずる上位形態である、サラの願いに(フォトン)依る騎士(ナイト)と、二人の父に由来する戦士(ダンディットトゥルース)

 

 ベリアルを倒した時以上の戦力が揃い踏みして、一斉に動き出す。

 

 最初にザギへ届いたのは、先行していたスカルゴモラ――ではなく。空間を切り裂いて跳躍する力を持った、ノアクティブサクシードの攻撃だった。

 

「ソードレイ・オーバードライブ!」

 

 再出現と同時、空間を操作する力で拘束し、斬りかかったノアクティブサクシードは――一瞬でその拘束を引き千切ったザギの掌でウルティメイトゼロソードを止められ、掴まれ、腕力に抗えず振り回された。

 

「――何っ!?」

 

 そのまま、動作を加速し、黒い稲妻のように駆けたザギは、同時に瞬間移動して来たゼロビヨンドへ――まるで、このタイミングでそこに出現することが、予知できていたかのように。自らの打撃武器のようにしたノアクティブサクシードを叩きつけ、二人のウルトラマンを鈍い激突音もろとも、纏めて彼方へ投げ飛ばしていた。

 

「(やぁああああああぁっ!)」

 

 二人の巨人が超極音速でかっ飛んで行ってから、ようやくザギを間合いに捉えたスカルゴモラの突進――特訓を重ね積み上げた武芸を揮う怪獣の技を、ウルトラマンの似姿をした暴虐の巨人は、何の術理もない片手間の裏拳一発で薙ぎ払う。

 

 ただの膂力の多寡であっさり押し切られ、激しい衝撃に視界が歪むも、こうなることは――数秒先の未来が視える今のスカルゴモラにも、予知できていた故に、転倒だけは耐えられた。

 

「(――お兄ちゃん、今っ!)」

「スペシウムスタードライブ!」

 

 三連撃がダークザギに対処を強いた瞬間。シャイニングミスティックを最強のフュージョンライズ足らしめる時間操作の力を扱うための準備が、完了していた。

 

 スカルゴモラの号令に合わせるように、シャイニングミスティックが、メタフィールドの天辺へ打ち上げた光球。

 

 それは、時間の概念すらない無であったグリーザにこそ通じなかったものの、時を止める力を持った輝きを放つ、絶対的な異能の発動を意味していた。

 

 それを完了するまで、シャイニングミスティックを守るように。ウルトラ六兄弟のカプセルを用いたロイヤルメガマスターが、六人分の光子障壁を重ねがけするブラザーズシールドを展開し、さらにその裏にはグリージョバーリアも控えていて。

 

 それら防壁の前面では、ザギを足止めするように、フォトンナイトとダンディットトゥルースが、各々の最強光線を発射していた。

 

「ですしうむD4れい――!」

 

 さらに、闘志を取り戻したサンダーキラーSが、再びD4レイによる次元崩壊現象での攻撃をダメ押しで重ねる――が、同時にダークザギの放った重力波が、先程の再現とばかりにD4レイのエネルギーを押し返し、吸収不能の遠距離攻撃として究極融合超獣の全身を蹂躙しながら弾き飛ばす。

 

 だが、先と違って。太陽光の届かないメタフィールドの中では、消耗と損傷を重ねたサンダーキラーSが自力で立ち上がることは困難だろう。

 

「(この――っ、インフェルノ・バースト!)」

 

 妹が手酷くやられる様を目撃し、怒りで痛みを押し退けて振り返ったスカルゴモラもまた、リトルスター由来の分子分解効果を帯びた、必殺の青い熱線をダークザギに照射する。

 

 D4レイを退けてなお、三方から自身を襲う光に対し、ダークザギは防御の構えすら見せなかった。

 

 それは、時間を止められ、抵抗することができなかったためではなく。

 

 両手を拡げたザギ自身の背後で、ペイシャンの肉体を操って星雲荘を襲撃した時に見せていた、赤黒い闇の穴を拡げていたためだった。

 

 それを目にした時――何かが自らを侵食するような悪寒を、スカルゴモラは覚えた。

 

 ……闇が、メタフィールドを塗り替えて行く。

 

 空はより赤黒く、大地は不気味な緑色の発光が点在するようになり。

 

 何より――寸前までウルトラマンたちを助けていたこの亜空間が、突如として、彼らに牙を剥いていた。

 

「――なっ!?」

 

 最初に、シャイニングミスティックが打ち上げていた光球が、時を止めるより早く、闇に呑まれて消えた。

 

 続いて、本体であるシャイニングミスティックを残して、分身として顕現していたジードたちが、次々と沫のように解けて行く。

 

 本体であるジードも、メタフィールドの助けがあって初めて成立するシャイニングミスティックを維持できず、プリミティブへ強制的に退化させられ――さらに、いきなりカラータイマーを激しく点滅させ始めた。

 

「これって……いったい!?」

〈ダークフィールド。ウルティノイドが展開を可能とする異空間に、メタフィールドが書き換えられたようです〉

 

 ジードと同じく。周囲に満ちた闇に力を奪われた挙げ句、毒のように体を蝕まれ、カラータイマーを点滅させたグリージョが膝を着いたところで、レムが何が起こったのかを説明してくれた。

 

〈この空間内では、通常のメタフィールドとは逆に、ウルトラマンの力が弱まり――闇の巨人の力が増します〉

 

 レムの言葉を、証明するかのように。

 

 ただ一つ、ダークザギへの攻撃として残っていたインフェルノ・バースト――無防備に浴びたその作用で透き通る青へと変わり、分解効果が出始めていたはずのダークザギは、あっさりと自身の色を取り戻し、最早何の効果も及ばない熱線を片手で払い除けてしまった。

 

 まるで、グリーザにそれを反射された時の――スカルゴモラNEX(ネックス)と同じように。

 

 ……この空間がある限り。仮にウルトラマンが何人居ても、まともな戦力にはならず、ただそのエネルギーを奪われて、ダークザギを強化するだけになってしまう。

 

 しかも、レムが追加で送ってくれた詳細によれば。厄介なことに、この空間を維持する負担は、書き換えられたメタフィールドを展開した者に掛かるらしい。

 

 だが。

 

「(――私は何ともない?)」

 

 微かな戸惑いが、疲弊するウルトラマンたちを背に庇い、単身ザギと対峙するスカルゴモラを襲っていた。

 

 ダークフィールドは、メタフィールドの反転空間。作用が逆転し、世界の助けを受ける者と、虐げられる者が入れ替わる。

 

 だから、独力ではまともに立つこともできなくなった兄やアサヒのように、自分も苦しむのが道理のはずなのに。

 

 この空間を維持する、メタフィールド同様の負担は確かに感じるものの――スカルゴモラは世界が創り変えられる前と何ら変わらぬ己の調子に、驚いていた。

 

「それだけ、おまえが俺に近づいたということだ」

 

 そんなスカルゴモラの零した疑問に、ダークザギは聞き慣れたペイシャンの声で答えた。

 

「(どういう、意味……?)」

「答え合わせと行こうか」

 

 喉を唸らせ、臨戦態勢は解かないままでも。戸惑いを示すスカルゴモラに、ダークザギは嘲笑を返した。

 

「ネクサスのリトルスターを媒介として、おまえには俺の力を写しておいた。それが、おまえが今でもメタフィールドを使える理由でもある」

 

 そして、衝撃的な真実が告げられた。

 

「(……私も、あなたの人形だった、ってこと?)」

 

 真っ先に連想したのは、先程ザギが告白したアリエの正体。

 

 自らの意志で振る舞っているように見えた彼女同様――認識していないだけで、自分もまさか、既に。

 

 そんな悪寒に襲われていたスカルゴモラに対し、ダークザギは首を横に振った。

 

「いいや。単にファウストやメフィストにするんじゃ、わざわざリトルスターや、おまえを使う意味がない」

 

 使う、と。人形ではないとしても、結局は物のように認識していたと吐き捨てながら、ダークザギが続ける。

 

「ただのウルティノイド化とは違う。俺の情報の一部をおまえの光量子情報に転写させ、紛れ込ませた……道標とともに、そこへ至るための自己進化プログラムをな」

〈――ルカの成長が、私の予測から逸脱した理由はそれでしたか〉

 

 ダークザギの言葉で、やっと理解したとばかりに、レムが通信した。

 

〈言うなればあなたの手で、ルカの遺伝子情報はアップデートされていた……ということですね〉

 

 出し抜かれていたレムの問いに、ザギは答えなかった。

 

 ……破壊神と畏れられるダークザギは、本来はウルトラマンノアを模して造られた人工の守護神、ウルティノイドザギだった。

 

 そのために、ウルトラマンノアを模した能力を、彼は生まれながらに備えていた。その特性を応用することで、ノアの弱体化した姿である、ウルトラマンネクサスの能力もまた、再現できた――メタフィールドの亜種であるダークフィールドは、その最たる例だ。

 

 そして、光を闇に変換できるように。理論上はザギとその眷属にも、ダークフィールドではなくメタフィールドを展開することが可能だと考えられる。

 

 スカルゴモラはこれまで、気づかずに。純粋なリトルスターの働きで一時身につけた能力を、転写されたザギの力で再現し続け、メタフィールドを創り出していたのだ。

 

 ……それはわかった。だが、まだ謎なのは。

 

「(何故、そんなことを?)」

 

 結局は、その動機。

 

 培養合成獣スカルゴモラや、究極融合超獣サンダーキラーSといった、ベリアルの子らを強化することで、ダークザギがどんな目的を達成しようとしているのか。

 

「簡単な話だ。俺が完全な形で復活するための、器作りだよ」

 

 ……碌なことではないだろう、という嫌な確信は、的中した。

 

「……カプセルを媒介にやって来た以上、俺の解放にはベリアルの力が必要だった」

 

 隙を探すために問いかけたつもりが、逆に悍ましさで身を竦ませてしまったスカルゴモラに対し、ザギは――ペイシャンとして振る舞っていた頃の、上機嫌な時と似た口調で、その企みの全容を明かし始めた。

 

「前に、半端な復活をして足をすくわれたこともあったからな。さっきみたいにすぐ消し飛ぶ在り合わせではなく――カプセルの分と合わせれば、最初から俺本来の力を発揮できる体をちゃんと準備してから、復活することにしたわけだ」

 

 ……この圧倒的な力も、カプセルによる一部の再現に過ぎないと告げながら。ザギはなおも語り続ける。

 

「最初はベリアルの体を使うつもりだったが……調整の途中で、奴がジードに倒されてしまい、計画の修正が必要になった」

 

 巨悪として一つの時代に君臨していた父、ウルトラマンベリアル。

 

 そんな彼すら密かに利用しようとしていたという、さらに強大な闇の巨人の思惑をも――意図せずとはいえ、一度は阻んだヒーローの名が、ザギの口から述べられた。

 

 だが、そのウルトラマンジードも。今は真相を聞き逃さないようにするのが精一杯というほど。ザギの展開したダークフィールドの作用によって、命を蝕まれていた。

 

 それでも、ここでスカルゴモラがフィールドを解除してしまえば、星山市や地球への被害を防げない――しかも、ザギ自身にもダークフィールドを展開する力があることは明らかだ。これ以上敵に主導権を渡さないためにも、ジードとグリージョは空間そのものに拒絶される苦しみに耐えながら、現状維持を選んでくれていた。

 

「幸い、俺には未来を予知する力があった。それでおまえの存在を知った」

「(……っ!)」

 

 なのに、未だザギの隙を見つけ出せず。事態を好転させられないと臍を噛んでいたスカルゴモラは、その告白で二重に呻いた。

 

 あの時、ザギがアリエの口を操って吐いた出任せに、まんまと騙されていたが――スカルゴモラが可能とした未来を予見する力の出処が明かされて。

 

 ……あるいは、ハイパービースト・ザ・ワンが一時だけ、スカルゴモラの指示に従ったのも。レイオニクスの力だけではなく――ダークザギに由来する、スペースビーストを支配する力との相乗効果だったのではないかと、今更ながらに思い至って。

 

 そして、己がこの世に生まれ落ちる前から、この邪悪な存在に目をつけられていたという事実に、戦慄したのだ。

 

「……木を隠すなら森の中。最初から戦うたびに強くなる存在として生まれてきて、それを知る者たちに庇護されるおまえなら――俺の力を忍ばせても、半端な時点で危険視されることもなく、事を運べた」

 

 そんな、スカルゴモラに現れていた数々の怪しい要素を、共に戦う解析担当の仲間という偽りの立場と、黒幕としての暗躍で覆い隠して。

 

「充分な下地ができれば、ダークサンダーエナジーでさらに強化するとともに、おまえが自分から消えたいと望むように仕向ける。空っぽになったその肉体を俺が頂き、器として完全復活する……予定だったんだがな」

 

 悍ましい計略を吐露したところで、ザギが嘆息した。

 

「おまえの当て馬として呼び寄せた馬鹿と、ジードのせいで、ライハが生き残った。そしてレムの邪魔まで入って、おまえに心の底から消えたいと願わせることに失敗した」

 

 ……その思惑に、スカルゴモラはぞっとした。

 

 本当に、後少しのところで――自分の心はこいつの悪意のまま、消えてしまうところだったということに。

 

 同時に。あの時、レムが来てくれたこと。ライハが死なないでいてくれたことに、改めて深い感謝を覚えて――スカルゴモラは、自身を脅かす恐怖に抗った。

 

「流石に、及第点まで育った今のおまえを、合意なく乗っ取るのは俺にも難しい」

 

 ずっと、朝倉ルカの心を消し去り、培養合成獣スカルゴモラの肉体を奪おうとしていたという暗黒の巨人は、その計画の断念を口にした。

 

「だから、残念だが……計画はサブプランに移行する。おまえは器として乗っ取るのではなく、単に力の塊として取り込ませて貰う」

 

 告げた直後、ダークザギが無造作に手を翳し、そこに防壁を展開した。

 

「――お姉さまに、近づくな……!」

 

 これまでになく、荒れた口調で。

 

 怒りの滲んだ幼い声とともに、D4レイを叩き込んだのは――自力ではもう起き上がれないと思われていた、サンダーキラーSだった。

 

〈ダークフィールドの効果が、サンダーキラーSの能力を増強したようです〉

 

 太陽光の届かない環境下、低下したはずのサンダーキラーSの自己修復能力が発揮された理由を、レムがそのように推測する。

 

「……それで良い。もっと俺を憎め」

 

 だが、そんなサンダーキラーSの復活を、ダークザギは予期していたように笑った。

 

「プリズ魔やハンザギランの力は後から模倣した小手先。おまえの本質は究極融合超獣――闇でこそ、おまえの力も増幅される」

 

 ……その視線が、自らに向けられたものと同じだと感じて。

 

 挑発されるまま暴発しそうになった妹の進行ルートに割り込んだスカルゴモラは、サンダーキラーSの移動を遮るように尾を起こし、無謀な特攻を阻止していた。

 

「お姉さま……!?」

「(一人じゃ駄目、サラ。このままじゃこいつの思惑どおり……!)」

 

 訴えかけている最中、それを遮るようにダークザギが咆哮した。

 

 その叫びに応えるように、スカルゴモラとサンダーキラーSの頭上に巨大な暗黒球体が発生し、避ける間もなく降下。超重力に押し潰されるのを何とか堪えていると、その影響をまるで受けないように高速移動してきたザギの蹴りがサンダーキラーSの首を打ち据え、薙ぎ倒す。

 

「(サラ――っ!)」

 

 怪獣念力で重力場を相殺し、身軽さを取り戻したスカルゴモラがダークザギに挑もうとするが、根本的な機動速度に差があり過ぎる。

 

 抜き打ちの肘鉄を防ぐこともできず胸に受け、息を詰まらせた瞬間、さらにザギの肘から指先にかけてが発光。生じた光の刃による追撃が、スカルゴモラの胸から脇腹へと逆袈裟に切断する。

 

 背を抜けて胴を貫いたザギ・スパークによる裂傷を、レイオニックバーストで得た強靭な生命力によって高速再生する――が、癒着するまで動きが滞ったところで、ザギが突き出した拳から放たれたザギ・シュートの光弾を何度も浴びて、スカルゴモラも吹き飛ばされた。

 

 そうして、サンダーキラーSとともに倒れ伏したところに、ダークザギの両腕から光線が発射された。

 

「ルカ、サラ!」

 

 兄の悲鳴が鼓膜を叩く――が、今度の光線は、スカルゴモラたちを苛むための物ではなかった。

 

「(傷が……っ!?)」

 

 受けたダメージが、瞬く間に取り除かれ、肉体が完全な物に修復されて行く。

 

 いや、スカルゴモラ自身の遺伝子――そこに、ダークザギから写されたという自己進化プログラムの働きも合わさって、さらに強化された状態で、スカルゴモラは復活していた。

 

 ……あるいは、ダークザギへの憎悪を燃やす妹も。

 

「ほら、また向かって来い」

 

 煽るように手招きするダークザギに対し、弄ばれていることを理解した姉妹は、なおも敵わぬことを悟った上で立ち上がり――たちまちに打ちのめされた。

 

 瀕死に追いやられ、強化復活させられ、また捻じ伏せられる。何度も、何度も。

 

「――やめろっ!」

 

 妹たちを襲うそんな残虐を許すまいと、決死の思いで立ち上がってくれた兄が、両腕を外に開く動作で放つ切断光線、レッキングリッパーをダークザギに浴びせる。

 

 だが、暗黒破壊神はまたもザギ・リフレクションを展開すると、今度は防ぐに留めず、その攻撃をジードとグリージョに反射して、二人の命をさらに削っていた。

 

「(この……っ!)」

 

 怒りで立ち上がろうとしたスカルゴモラだが、ダークザギの超重力を纏った足裏に顔面を蹴り上げられ、仰向けになって再び倒れ伏した。

 

 兄や姉への追撃を食い止めようと、倒れたままだったサンダーキラーSは触手を伸ばしてダークザギの拘束を試みるが、容易く投げ飛ばされて抵抗が終わる。

 

 ちょうど、スカルゴモラの腹を強打する格好で叩きつけられたサンダーキラーSもまた、動きが鈍ったその時。

 

 痛みで抵抗できなくなったベリアルの娘たちに対し、ダークザギが再び、超重力波を放射して――

 

「(……いい加減にしろ!)」

 

 光線吸収能力を持つサンダーキラーSでも防げないその黒い破壊の束を、直前に割り込んで来た、翼状の楯が受け止めていた。

 

 その楯を――ウルティメイトイージスを構えていたのは、早々に戦線離脱させられた上、ダークフィールドによる衰弱で身動きを阻まれていた、ウルトラマンゼロだった。

 

 それは口癖のとおり、限界を越えて駆けつけた勇姿だったが――その動作を伴って、ゼロから周囲に発せられる意志の主体は、ウルトラマンゼロの物ではなかった。

 

「(ルカちゃんを狙って――そのために、あなたを慕っていたサラちゃんを利用して……っ!)」

 

 ウルトラマンゼロに憑依されたために、またしても戦いへ巻き込まれることになった一般人。

 

 ――そう思われていた伊賀栗レイトは、自分の意志で、理不尽への強い怒りを表明していた。

 

「(それが、大人が子供にすることですか!?)」

 

 そんな、場違いにも思われる叫びを、レイトはダークザギ――ペイシャンへと、ぶつけていた。

 

 現に、浴びせられた当人には、何ら響く様子もない言葉。

 

 けれど、彼に庇われた一人であるスカルゴモラは……そこに込められた想いの強さを感じ取っていた。

 

 ああ、この人は――娘の友達に酷いことをされたから。

 

 それが、よりによって、父親みたいに慕われていた相手だったから。

 

 サラの友達の、父親として……相手がどれほど強大な存在なのか、わかった上でも。

 

 傷ついた子供たちの分も、大人として怒ってくれているのだ。

 

「(答えろ!)」

 

 ゼロや、レイトからの呼びかけを無視し続けるダークザギが、なおも重力波に注ぐ力を増して――楯ごと、足の裏が大地を削って後退し始めても。

 

 ウルトラマンゼロと一体化した伊賀栗レイトは、膨大な力を受け止めながらも、怯む様子を見せなかった。

 

「(……もういい。だったら僕は、あなたを……許さないっ!)」

 

 そしてレイトの抱いた、他の誰かのための、激しい怒りが。

 

 ウルティメイトシャイニングの力を、発現させる寸前。

 

 一瞬だけ、レイトと、彼に融合したウルトラマンゼロ自身には見えない赤い変化を、その身に起こさせていた。

 

 

 

 

 

 




Bパートあとがき



 ここまでお読み頂きありがとうございます。

 そういうわけでベリチル版のアリエ復活真実。「何とかダークネス」系統から「ダークエンプレス」に名前が変わったのも、顔が銀灰色で黒目とベリアルっぽくなかったのも、実は「ベリアル因子を持った人間ベースのダークファウスト」があの時のアリエの正体だったからでした。
 アリエ回の14話冒頭で出た前座怪獣がフランス人形を操る円盤生物ブリザードで、サンダーキラーSが「おにんぎょうあそび? わたしもするー!」と叫んだのまで伏線みたいになりそうですが、正直に告白すると確か当時はそこまで考えていなかった気がします。

 そしてザギさんの目的と、培養合成獣スカルゴモラがここまで強くなった理由。レムの予測を第六話から越え始めたのは、その時にリトルスターと一緒にダークザギ由来の自己進化プログラムも獲得したため、本作独自設定であるゴモラ(≒ザラガス)の遺伝子以上の耐性獲得能力や、その後の戦闘力の増強に繋がっていたという理由でした。

 この「ヒロインがダークザギの情報を獲得し、パワーアップする」という展開の元ネタは、Aパートあとがきで触れました『ウルトラマンF』で描かれたものになります。

『ウルトラマンF』は映像作品とはパラレルになると思いますが、今作では未来予知能力を持つザギさんが予知した可能性世界の一つとして、朧気ながらその展開を認識し、自分でその特性を利用してみた、という裏設定になります。本文中では触れられませんでしたが、ルカがタピオカミルクティー=紅茶をオレンジジュースより選んだのもこの影響です。



 その他細々とした元ネタや独自解釈の解説。


・現在のザギさんの戦闘力
 今回はネクサスの力+恐怖の記憶で復活した『ウルトラマンネクサス』最終回ではなく、来訪者の星で暴れていた頃等の、スペックだけならノアと互角だった全盛期を基準に、カプセル化を介した復活でそこからは弱体化し、結果として『ネクサス』最終回以上の強さになっている想定。
 その表現として、『ネクサス』最終回オマージュ(?)として報告だけで描写される被害も(スペースビーストがない分)なんか種類が増えている、みたいな感じです。


・エースキラーのカプセルでヤプールが情報収集
 これは『ウルトラ6兄弟 THE LIVE in 博品館劇場-ゾフィー編-』で登場した、ビクトリーキラーの強化体・ウルティメイトキラーの設定が元ネタです。
 同ステージショーでは、他作品に出る一般超獣と同様に、ベリアル融合獣サンダーキラーからのフィードバックで、ジードの戦闘データを集めていたとされており、あくまで正史に組み込まれてはいないショー展開ではありますが、現状は公式展開とも矛盾がないので本作でも同じようなことがある、とみなして採用させて頂きました。
 筆者がショーを実際に見たのが本作でサンダーキラーSを登場させた後になってしまったので後付にはなりましたが、ヤプールがベリアル融合獣サンダーキラーを把握しているというのはサラとトリィとの縁としてずっと欲しかった設定だったので、出すチャンスを伺っていた形です。構成が変になってなかったら良いな、と願うばかり。


・ウルティノイドもメタフィールドを展開可能
 これは公式設定ではありません。ただ、ダークザギの出自を考えると、メタフィールドを張ることも可能だろうという予想に従ったものになります。
 そんなこと言っていたら『ウルトラギャラクシーファイト 運命の衝突』でネクサスがウルトラマンから衰弱死するほどエネルギーを奪えるメタフィールドという、ほぼダークフィールドのようなものを使ったりもしたので、逆もまた然りでないかと予想できる根拠が増えた気がします。
 ちなみに『ウルトラマンX』で共演した際のメタフィールドは他のウルトラマンに害を及ぼす様子はなかったため、ある程度調整が効くものだと想定して、本作でここまで描いてきた他ウルトラマン強化という性質は公式と矛盾はしないと解釈しております。


・暗黒球体攻撃
 ゲーム『HEROES' VS』版のザギ・ギャラクシーのイメージになります。映像作品では地味に使われたことのない技なので、少なくともダークフィールド内ならメテオの種類を変えられるというふんわりしたイメージです。


・ウルトラマンゼロ(ワイルドバースト)
 本来はこのタイミングで出る形態ではないのですが、今回はレイトさんの影響で一瞬だけこっそりなっている(誰も気づいていない)という想定です。
 我武者羅な守りたいという強い決意で魂を原点回帰させたゼロ、という意味ではマユの友達の心を守ろうとするレイトさん込みなら行けるかな、ということで、お見逃し頂けると幸いです。




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